Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

健太と胸ともこけーね

2010/02/20 01:02:24
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 「うわぁーーーー! あぁーーーー!」
 竹林に響くような大きな声で、泣いている子どもがいた。
 最初、竹林を発見した時に、ここは「迷いの竹林」であることを子どもは慧音の授業で知っていた。
 一度入り込んだら、迷ってしまい、二度と出られなくなる。そんな場所だと聞かされていた。
 でも、本当に迷うのだろうか? 迷ったら、そもそも中にある診療所に行けないのではないか? 二度と出られなくなったら、診療所の意味がない。
 そんな矛盾したことを思い浮かんで、好奇心から子どもは診療所を目指して、迷いの竹林へと入って行った。
 結論から言えば、子どもはすぐ迷った。
 そして、どうしようもなくなって、泣いた。
 子どもが幸せの兎の話を知っていたら、それを探そうと行動するだろう。
 しかし、悲しいかな。子どもはそこまで成長していないのだ。そんな話は知らず、ただ縦横無尽に歩き回って、そして歩き疲れ、泣き疲れた。
 子どもは、その場にへたり込む。足は棒のようになっていて、もう動けなかった。

 それを狙うものがいた。

 子どもが気付いた時には、もうそれは目の前にいて、口から粘液性が高い涎を滴らせる。
 子どもは恐怖で声すらも出なかった。子どもは本当の恐怖を知ったのだ。涙すら出ることは無く、そのネズミの化け物は大きく口を開き、子どもに喰らいつこうとする。
 子どもがそれを恐怖で呆然として眺めていると、突如、火炎が化け物を襲った。
 「ぎゃう!」
 その化け物は、炎に驚き、一目散に逃げ去っていく。
 子どもはその時になって、初めて自分が助かったのだと知った。
 そして、そこに女性の声が響く。
 「おーい。大丈夫か?」
 子どもが振り向くと、そこには御札を髪飾りにしたもんぺ姿の女性が立っていた。
 「……妹紅姉ちゃん」
 「やっぱり健太か。何でこんなところにいるんだ? ここは危ないって慧音が言っていただろう」
 「うん。でも、迷いの竹林だと、迷ったら診療所まで行けないから、ここに入ったの」
 「……は?」
 「うん?」
 その場に何ともいえない空気が流れた。まるで人間の体温と全く同じ温泉のように、冷たくも温かくも無い空気だ。
 「……とりあえず、慧音のところまで戻ろうか」
 「うんっ!」
 居たたまれなくなった空気をどうにかしようと、妹紅は提案した。健太は満面の笑みで頷いた。
 先程、健太が座り込んでいたことを思い出すと、妹紅は仕方ないな、とぼやきながら、健太に高さにまで体を低め、背中を見せる。
 「ほら、おんぶしな」
 妹紅はしょっちゅう慧音の教え子の面倒を看させられていたから、ある程度の配慮は出来る。その経験から導きだした答えだったのだが、
 「む~……」
 健太は不満そうにしていた。
 「何だ? 何の文句があるんだ?」
 「……だっこがいい」
 「あぁ?」
 「だっこがいい!」
 健太の我侭に妹紅はため息を吐く。
 「分かったよ。抱っこでもなんでもしてやるよ、ったく……」
 そのまま、妹紅は健太を抱っこして人里まで向かって行った。


 (‐-)


 「それで……事情は分かったのだが……それで私にどうしてもらいたいのだ?」
 「いや……どうやら歩き疲れて寝ちまったんだがな……しがみ付いて離れないのよ。……胸に」
 「……そうだな。お前の胸に沈んで、さぞかし気持ち良さそうに寝てるな……」
 妹紅は慧音の家で正座をして座っていた。妹紅送り届けたはいいのだが、帰ることが出来なくなっていた。
 健太がふかふかな妹紅のバストを布団代わりにして、気持ち良さそうに寝ているのだ。
 妹紅は実際これは困る事態だった。
 しがみ付かれて歩きにくい。何より、恥ずかしいのだ。
 事実、人里の男衆は妹紅の胸で眠る健太を見て、何か言いたそうな顔をして凝視していた。
 妹紅は顔を赤らめながら、慧音の家まで送り届けたのだった。
 「それで……慧音。起こしてくれないか?」
 「妹紅、自分で起こさないのか?」
 「いや……こうまで熟睡だと、何か起こし辛くって……」
 「はぁ~……全く、優しいのはいいが、それじゃあ優柔不断だぞ?」
 「いや、面目ない……」
 「まぁ、それが妹紅らしくていいけどさ。ほら、健太、起きろ」
 慧音がゆさゆさと健太を揺らす。健太は眠たそうに目を擦って――慧音の胸へと移った。
 「よし」
 「いや、よしじゃねぇだろ!? どうすんだよ、これ!」
 「ん? どうすんだって……」
 慧音は豊満な胸にしがみ付いている健太を一瞥して、晴れやかな笑顔で言った。
 「このまま家事をするが?」
 「うそぉ!?」
 妹紅には信じられなかった。なぜなら、先程その恥ずかしさを身をもって体験したのだ。例え人がいなくとも、その格好でいること自体に恥ずかしさを感じる。思い出して、妹紅は再びを顔が赤くなっていった。
 「お、顔が赤いぞ、妹紅」
 「う、うるさい! お前がそんな恥ずかしい格好しているからだろ!」
 「恥ずかしい……? ……ふむ、それは違うぞ。妹紅」
 「……? 違う?」
 「そうだ。そもそもお前は知らないだろうが、この子は私が預かることになった数ヶ月前、ちゃんと親がいたんだ」
 「え……? たまたま慧音が預かったじゃないのか?」
 「あぁ。お前にはそう話したっけ。そん時は、この子が起きていたからな」
 慧音は胸に顔を押し付けている健太の髪を撫でる。
 「この子の親は、数ヶ月前に流行病で死んでしまってな。父親は妖怪に襲われ、母親だけでこの子を育ててたんだがな……」
 「あ……」
 妹紅は申し訳なさそうな顔で俯く。
 「おいおい。お前がそんな顔してどうする」
 「だって……つまり、その子にはもう……」
 「あぁ……父も、母もいない。一人ぼっちなんだ。何より、まだ母親に甘えたいんだよ。だから、本能的にか、この子は胸に執着するようになってだな……毎日こんな感じさ」
 慧音が苦笑する。妹紅はそんな慧音がまぶしく感じた。
 健太をどうするか、人里での話し合いがあった。村の人々は、どちらかと言えば、健太の存在が鬱陶しく感じていたのだ。誰かが、養育しなくてはいけない。その分のお金もかかる。誰も好きでこの子の面倒を看ようとする人はいない。
 そこで、名乗り上げたのが慧音だ。もちろん、村の人には何の非はないのだ。人一人養うにはお金と手間がかかる。それは仕方が無いことだった。けど、慧音はこの子のことが心配でならなかったのだ。だから、慧音が引き取ることになった。
 妹紅は、その時は知らなかったが、慧音が率先して引き取ろうと言ったのは聞いていた。
 そんな、慧音を、妹紅は尊敬の念すら感じていたのだ。
 「やっぱり、すごいな。慧音は」
 「そ、そんなこと……」
 「お、今度は慧音が赤いぞ」
 「ば、馬鹿っ! もう、お前は竹林に帰れ!」
 「はいはい……じゃあな。慧音、健太」
 妹紅はそのまま慧音の家の玄関から出て行く。
 自分の親友の誇り高さを胸に感じながら…………


































 
 
 「あ、妹紅。この大根持っていけ。太くて大っきいぞ」
 「せめて台詞は選んでくれ」


 
 
本家用の小説が行き詰まったので、軽く息抜きで「幻想郷の住人が幼い子どもの世話を見て、ほんのりと心温まるお話」を書いてみたのですが、なぜか下が入りました。不思議。続編の考えてます。
ちゅーん
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
生まれ変わったら健太になりたい…
続編希望してます!
2.健太(ずわいがに)削除
いやwwwべつにwwwなんも羨ましくねーしwwww健太とかそんななりたくねーしwwwwww
3.名前が無い程度の能力削除
もこの胸がふかふかと聞いてとんできました