※ちょっとグロい描写があります。
苦手な方はブラウザの戻るを押すことをオススメします。
大丈夫な方はそのままどうぞ。
わたしの部屋は地下にあるの。
かたい石の壁に、かたい鉄の二重扉。
それでも足りないから、何をしても壊れないふしぎな魔法の結界。
壊そうとするのはやめた。
つまらないもの。
【くる狂クルリ】
今日はいつだっけ?
カレンダーなんてないから、わからない。
なんとなく寒いから、たぶん冬のいつか。
でもそんなことはどうでもいいや。
だってほら、扉の向こうにあいつがいる。
わたしは二対の歪な翼をぱたぱた動かした。
動かすたびに、枝みたいな翼についている宝石のようなものが、
しゃらんしゃらんと音を鳴らした。
「ねえ。入ってきてよ、お姉様」
* * *
くる、くる、くる。
「ねえ」
くる、くる、くる。
「なぁに?フラン」
くる、くる、くる。
「どうしてまわっているの?」
ぴたり。
お姉様は一瞬動きを止めて、またすぐにまわりはじめた。
くる、くる、くる。
「機嫌がいいの。フランも踊りましょう?」
くる、くる、くる。
まわるたびにドレスが、リボンが、翼がふわふわ踊る。
その姿は悪魔というより、天使のようだとわたしは思った。
「遠慮するわ」
お姉様は機嫌良く踊り続けている。
くる、くる、くるり。
だけど、わたしはなんとなくそれが不快だった。
だから、
「ねえ」
お姉様のすぐとなりで大きな爆発音が鳴る。
ぴたり、とお姉様の動きが止まった。
表情は驚いてもいない。
お姉様はにこりと笑った。
「何かしら?愛しいフラン」
わたしは、それに応えるように親愛の情を込めて言った。
「わたしはお姉様を壊したいわ」
* * *
どかん、どかん。
ふわり、ふわり。
わたしが弾を放つたび爆発音は鳴り響く。
うるさいけど、それが心地いい。
お姉様はその音に合わせて軽やかに避けていく。
その姿は、まるで音楽に合わせて踊っているようだった。
「舞台のつもり?」
「ええ。楽しいわ」
お姉様は歌うように言った。
噛み合っていないような会話。
意味なんて、きっとない。
爆発音という音楽に、綺麗なソプラノの歌声が混ざる。
「じゃあ、こんな戯曲はどうかしら?」
“禁忌「フォービドゥンフルーツ」”
紅い果実のような弾幕がお姉様を襲う。
お姉様は驚いたように動きを止めた。
弾は展開し、ゆっくりと、だけど確実にその命を摘もうとお姉様に迫る。
しかし、すぐ近くに弾が迫っているというのに、お姉様は動かなかった。
ただ、舌なめずりして、
「あら、美味しそう」
そう言った。
そして、
「!?」
今度はわたしが驚いた。
なんと、お姉様はあろうことかその弾に美味しそうにむしゃぶりついたのだ。
否、むしゃぶりついたというのは語弊がある。
いくら果実の名前をしているからと言って、その弾幕が本物の果実であるはずがないから、
お姉様が弾を飲み込んだ瞬間、それは爆発した。
飲み込んだときに爆発なんてすると、当然頭が吹っ飛ぶわけで。
辺りに血を撒き散らしながら吹っ飛んだお姉様の頭は、一度床で大きく跳ねるとわたしの
足元にごろごろと転がってきた。
「あーあ、部屋が汚れちゃった」
わたしはそう一人ごちると、足元にあるお姉様の頭を、頭がないまま突っ立っている
お姉様の身体の方へ軽く蹴り飛ばした。
「こら、はしたないわよフラン」
頭だけの状態のお姉様はそう注意した。
「人の頭をサッカーボールみたいに蹴らないの」
お姉様は頭を拾い上げて、頭のない身体に接合している。
痛くないのだろうか。
「あら、お姉様生きてたの」
「ええ、喜ばしいことにね」
「そう、それはとても残念だわ」
「このくらいで死んでたら、貴女の愛は受け止められないわ」
完全に接合が終わったのか、お姉様は首をコキコキ鳴らした。
「フラン、貴女の愛は美味しかったわ」
お姉様は自分の血まみれな姿をかえりみず、わたしを抱きしめた。
身体から薫る血の匂いがわたしの鼻を刺激した。
まるで甘いお菓子のような匂いに喉が鳴った。
少し、興奮してきた。
「ねえフラン。どうして今日私の機嫌がいいかわかる?」
わたしはふるふると首を振った。
その間も血の匂いはわたしを興奮させる。
「今日は何の日かわかる?」
「カレンダーがないの、知ってるでしょ」
そろそろ限界だった。
いい加減、喉が渇いて仕方がない。
「今日はね、大事な大事な貴女に、チョコレートをあげる日なのよ」
そう言って、お姉様は自分の左腕を引きちぎった。
「……!」
そして、生温かい血が滴り落ちるそれをわたしに差し出した。
お姉様はくすりと笑った。
「さあ、冷めないうちに召し上がれ」
わたしはそれを受け取り、満面の笑みで言った。
「ありがとう。大好きよ、お姉様」
「どういたしまして。私も愛してるわ、フラン」
お姉様は右手でわたしの頭を撫でた。
わたしはそれににかっと笑って応えると、お姉様はわたしのおでこに軽くキスを落とした。
「はやく食べなさい。冷めちゃうわよ」
わたしはこくりと頷くと、甘い薫りを漂わせている“チョコレート”に舌を這わせた。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、わたしはそれに付いている血を綺麗に舐め取る。
表面に付いている血を全て舐め終え、次はどくどくと血が溢れ出ている部分へと舌を伸ばした。
舌で舐めながら、零れ落ちる血を唇で掬う。
甘い薫りと甘い蜜のような味が、口いっぱいに広がった。
「美味しい……」
思わず口から言葉が漏れた。
「喜んでくれて何よりだわ、フラン」
お姉様は嬉しそうに言った。
わたしはそれを横目で見て、また“チョコレート”の方へ視線をもどした。
一応言っておくが、“チョコレート”はまったくチョコレートの味がしなかった。
むしろ蜂蜜に近い味だとわたしは思う。
「……ん」
零れ落ちる血の量が減ってきたので、そろそろ次の味を愉しもう。
「はむっ」
わたしは“チョコレート”の指に勢い良くかぶりついた。
しばらく噛まずにはむはむと口の中で転がす。
感触を味わっていたいのだ。
そして、その指がべちょべちょになってきて、ようやくそれに牙を立てた。
ぐちゃり、という生々しい音とともに指はちぎれた。
わたしはそれをしっかり咀嚼して、飲み込んだ。
うん、甘くて美味しい。
他の指も同じように、味わって食べてゆく。
いつの間にか、わたしは夢中になってしゃぶりついていた。
かじる、舐める、飲む。
ぐちゃぐちゃとグロテスクな音が絶え間無く地下室に響いた。
そして、その音が止むまで、お姉様は優しい笑みを浮かべながら、ずっとわたしを見つめていた。
「ハッピーバレンタイン、フランドール」
苦手な方はブラウザの戻るを押すことをオススメします。
大丈夫な方はそのままどうぞ。
わたしの部屋は地下にあるの。
かたい石の壁に、かたい鉄の二重扉。
それでも足りないから、何をしても壊れないふしぎな魔法の結界。
壊そうとするのはやめた。
つまらないもの。
【くる狂クルリ】
今日はいつだっけ?
カレンダーなんてないから、わからない。
なんとなく寒いから、たぶん冬のいつか。
でもそんなことはどうでもいいや。
だってほら、扉の向こうにあいつがいる。
わたしは二対の歪な翼をぱたぱた動かした。
動かすたびに、枝みたいな翼についている宝石のようなものが、
しゃらんしゃらんと音を鳴らした。
「ねえ。入ってきてよ、お姉様」
* * *
くる、くる、くる。
「ねえ」
くる、くる、くる。
「なぁに?フラン」
くる、くる、くる。
「どうしてまわっているの?」
ぴたり。
お姉様は一瞬動きを止めて、またすぐにまわりはじめた。
くる、くる、くる。
「機嫌がいいの。フランも踊りましょう?」
くる、くる、くる。
まわるたびにドレスが、リボンが、翼がふわふわ踊る。
その姿は悪魔というより、天使のようだとわたしは思った。
「遠慮するわ」
お姉様は機嫌良く踊り続けている。
くる、くる、くるり。
だけど、わたしはなんとなくそれが不快だった。
だから、
「ねえ」
お姉様のすぐとなりで大きな爆発音が鳴る。
ぴたり、とお姉様の動きが止まった。
表情は驚いてもいない。
お姉様はにこりと笑った。
「何かしら?愛しいフラン」
わたしは、それに応えるように親愛の情を込めて言った。
「わたしはお姉様を壊したいわ」
* * *
どかん、どかん。
ふわり、ふわり。
わたしが弾を放つたび爆発音は鳴り響く。
うるさいけど、それが心地いい。
お姉様はその音に合わせて軽やかに避けていく。
その姿は、まるで音楽に合わせて踊っているようだった。
「舞台のつもり?」
「ええ。楽しいわ」
お姉様は歌うように言った。
噛み合っていないような会話。
意味なんて、きっとない。
爆発音という音楽に、綺麗なソプラノの歌声が混ざる。
「じゃあ、こんな戯曲はどうかしら?」
“禁忌「フォービドゥンフルーツ」”
紅い果実のような弾幕がお姉様を襲う。
お姉様は驚いたように動きを止めた。
弾は展開し、ゆっくりと、だけど確実にその命を摘もうとお姉様に迫る。
しかし、すぐ近くに弾が迫っているというのに、お姉様は動かなかった。
ただ、舌なめずりして、
「あら、美味しそう」
そう言った。
そして、
「!?」
今度はわたしが驚いた。
なんと、お姉様はあろうことかその弾に美味しそうにむしゃぶりついたのだ。
否、むしゃぶりついたというのは語弊がある。
いくら果実の名前をしているからと言って、その弾幕が本物の果実であるはずがないから、
お姉様が弾を飲み込んだ瞬間、それは爆発した。
飲み込んだときに爆発なんてすると、当然頭が吹っ飛ぶわけで。
辺りに血を撒き散らしながら吹っ飛んだお姉様の頭は、一度床で大きく跳ねるとわたしの
足元にごろごろと転がってきた。
「あーあ、部屋が汚れちゃった」
わたしはそう一人ごちると、足元にあるお姉様の頭を、頭がないまま突っ立っている
お姉様の身体の方へ軽く蹴り飛ばした。
「こら、はしたないわよフラン」
頭だけの状態のお姉様はそう注意した。
「人の頭をサッカーボールみたいに蹴らないの」
お姉様は頭を拾い上げて、頭のない身体に接合している。
痛くないのだろうか。
「あら、お姉様生きてたの」
「ええ、喜ばしいことにね」
「そう、それはとても残念だわ」
「このくらいで死んでたら、貴女の愛は受け止められないわ」
完全に接合が終わったのか、お姉様は首をコキコキ鳴らした。
「フラン、貴女の愛は美味しかったわ」
お姉様は自分の血まみれな姿をかえりみず、わたしを抱きしめた。
身体から薫る血の匂いがわたしの鼻を刺激した。
まるで甘いお菓子のような匂いに喉が鳴った。
少し、興奮してきた。
「ねえフラン。どうして今日私の機嫌がいいかわかる?」
わたしはふるふると首を振った。
その間も血の匂いはわたしを興奮させる。
「今日は何の日かわかる?」
「カレンダーがないの、知ってるでしょ」
そろそろ限界だった。
いい加減、喉が渇いて仕方がない。
「今日はね、大事な大事な貴女に、チョコレートをあげる日なのよ」
そう言って、お姉様は自分の左腕を引きちぎった。
「……!」
そして、生温かい血が滴り落ちるそれをわたしに差し出した。
お姉様はくすりと笑った。
「さあ、冷めないうちに召し上がれ」
わたしはそれを受け取り、満面の笑みで言った。
「ありがとう。大好きよ、お姉様」
「どういたしまして。私も愛してるわ、フラン」
お姉様は右手でわたしの頭を撫でた。
わたしはそれににかっと笑って応えると、お姉様はわたしのおでこに軽くキスを落とした。
「はやく食べなさい。冷めちゃうわよ」
わたしはこくりと頷くと、甘い薫りを漂わせている“チョコレート”に舌を這わせた。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、わたしはそれに付いている血を綺麗に舐め取る。
表面に付いている血を全て舐め終え、次はどくどくと血が溢れ出ている部分へと舌を伸ばした。
舌で舐めながら、零れ落ちる血を唇で掬う。
甘い薫りと甘い蜜のような味が、口いっぱいに広がった。
「美味しい……」
思わず口から言葉が漏れた。
「喜んでくれて何よりだわ、フラン」
お姉様は嬉しそうに言った。
わたしはそれを横目で見て、また“チョコレート”の方へ視線をもどした。
一応言っておくが、“チョコレート”はまったくチョコレートの味がしなかった。
むしろ蜂蜜に近い味だとわたしは思う。
「……ん」
零れ落ちる血の量が減ってきたので、そろそろ次の味を愉しもう。
「はむっ」
わたしは“チョコレート”の指に勢い良くかぶりついた。
しばらく噛まずにはむはむと口の中で転がす。
感触を味わっていたいのだ。
そして、その指がべちょべちょになってきて、ようやくそれに牙を立てた。
ぐちゃり、という生々しい音とともに指はちぎれた。
わたしはそれをしっかり咀嚼して、飲み込んだ。
うん、甘くて美味しい。
他の指も同じように、味わって食べてゆく。
いつの間にか、わたしは夢中になってしゃぶりついていた。
かじる、舐める、飲む。
ぐちゃぐちゃとグロテスクな音が絶え間無く地下室に響いた。
そして、その音が止むまで、お姉様は優しい笑みを浮かべながら、ずっとわたしを見つめていた。
「ハッピーバレンタイン、フランドール」
良い具合に狂気が出て面白かったです。
咲夜さんの言う通り!
ただ、腕ちぎる意味はあるのか?
たしかに、直接吸うよりは狂ってる感はでるけどさ
励みになります(`・ω・´)
皆さん一人一人に返事を書きたいところですが、私はコメ返をすると長文を書いてしまう傾向にあるので、気になった部分のみ返事をさせていただきます、すみません。
>デュラ関係
残念ながら違うんですね~w
実は名前だけは知ってるけど、内容は全然知らないのです。
だから、たぶん偶然の一致かと。
>腕をちぎる必要
彼女たちにとって血はあくまで紅茶、だけどそこに肉がつくと甘いお菓子になる。
という設定には一応してありますが、私としては読んだ方にいろいろ妄想していただきたい部分ですね。
あと、フラン視点なので、レミリアの行動の理由をできるだけ書かないように意識しています。
フランにとってレミリアの行動の理由はどうでもいいのです。
重要なのは自分が面白いかどうか、それだけなのです。
が、こうして私なりに考えて書いたものの、よく考えてみればそれは描写することを放棄しているともとれますね、すみません。
今後作品を書くときはその辺も意識して書けるように頑張ります。
言ってるそばから長文だよもう(^^;
私の悪い癖ですね。
では改めて、読んでくださって、コメントしてくださって、どうもありがとうございました!^^