パチュリー・ノーレッジが万能薬を開発したらしい。
風邪から更年期障害、すり傷から骨折と幅広く効く。
ただ、そうは言っても、蓬莱の薬の様なものではない。
死ななくなるわけではないし、当然、死んでしまった者には効果が無い。
そして、ご丁寧に特許を申請したとか。
八意永琳が新聞でその事を知った時には、既に新聞は幻想郷中に撒かれていた。
「健康の商品化……医療の、精神の腐敗につながるというのに」
いや、腐敗故の産物か。永琳はひどく悲しんだ。
万能薬過ぎない万能薬は、すぐに一般家庭にまで普及する事になる。
もう病気や怪我を恐れなくてよい。住民達は手放しに喜んだ。
働ける人口は増え、里での生活水準も上がった。
万能薬の普及の結果、永遠亭は寂れてしまった。医療機関としては。
元に戻っただけ、と考えてはそれまでだが。
代わりに、人参の生産、販売をすることにした。
少なくとも因幡達には食事が必要だし、交流を断つのも勿体なく感じられたのだ。
それに、今の永遠亭はお世辞にも裕福であるとは言えない。
「こら!因幡!それは規定のサイズ内でしょう。形も悪くない。クズに分類したら駄目よ」
「うぅ、ごめんなさい。たまにはちゃんとした人参も食べたかったんです」
鈴仙は人参洗いの場の指揮をしていた。
ここでは売りに出せないような細すぎたり形が悪い人参、クズ人参を分類し、また、売る人参を洗うのが仕事である。
目を離すと因幡達が大きな人参をクズに入れようとするのだ。
輝夜は縁側で内職をしながら眺めている。
そして因幡達が怒られる度に悲しそうに目を細めた。
しかし、人参の販売は永琳が言い出した事なので、誰も文句を言えない。
永琳は部屋で何かしていた。
販売に行っていたらしい、てゐ達が帰ってきた。
10箱持って里に行き、6箱持って帰ってきた。
ノルマには全然届かない。
帰ってきたばかりのてゐが、突然怒りだした。
「もう嫌だよ!こんな生活!姫様にまで稼がせて」
「てゐ。そんな事言わないの」
鈴仙が窘める。
「師匠が『もうじき豊かになる』、そうおっしゃったのだから」
姫様には申し訳ない無いけれど、と鈴仙の耳が萎れる。
輝夜は困った様に眉を寄せつつ、慈しむ様に二人を見ている。
誰も、何も言わなかった。
それからしばらく過ぎると、永遠亭は異変後位の賑やかさを取り戻した。
胡蝶夢丸ナイトメアの注文が殺到したから。
人々はスリルを求めたのだ。
またしばらくすると、病気になる薬を売り出した。
これにも注文が殺到した。
人々は現実にもスリルを求められる、と気づいたのだ。
永遠亭は裕福になった。
永琳は深くため息をつく。
今、人々の現実はどこにあるのだろう。
健康が商品化され、病気すらも商品となった。
人々は怪我を恐れないし、むしろ進んで怪我をする。
恐れはもはやスリルであり、もうじきスリルですらなくなるだろう。
妖怪に対する恐れも漠然とし、いずれはなくなるのかもしれない。
人々は再び現実を求めるだろうか。
永琳は失笑した。
永遠亭での人参の生産、販売は続いている。
畑のニンジンは、ドクニンジンに代わっていた。
永遠亭の誰も文句を言わなかった。
風邪から更年期障害、すり傷から骨折と幅広く効く。
ただ、そうは言っても、蓬莱の薬の様なものではない。
死ななくなるわけではないし、当然、死んでしまった者には効果が無い。
そして、ご丁寧に特許を申請したとか。
八意永琳が新聞でその事を知った時には、既に新聞は幻想郷中に撒かれていた。
「健康の商品化……医療の、精神の腐敗につながるというのに」
いや、腐敗故の産物か。永琳はひどく悲しんだ。
万能薬過ぎない万能薬は、すぐに一般家庭にまで普及する事になる。
もう病気や怪我を恐れなくてよい。住民達は手放しに喜んだ。
働ける人口は増え、里での生活水準も上がった。
万能薬の普及の結果、永遠亭は寂れてしまった。医療機関としては。
元に戻っただけ、と考えてはそれまでだが。
代わりに、人参の生産、販売をすることにした。
少なくとも因幡達には食事が必要だし、交流を断つのも勿体なく感じられたのだ。
それに、今の永遠亭はお世辞にも裕福であるとは言えない。
「こら!因幡!それは規定のサイズ内でしょう。形も悪くない。クズに分類したら駄目よ」
「うぅ、ごめんなさい。たまにはちゃんとした人参も食べたかったんです」
鈴仙は人参洗いの場の指揮をしていた。
ここでは売りに出せないような細すぎたり形が悪い人参、クズ人参を分類し、また、売る人参を洗うのが仕事である。
目を離すと因幡達が大きな人参をクズに入れようとするのだ。
輝夜は縁側で内職をしながら眺めている。
そして因幡達が怒られる度に悲しそうに目を細めた。
しかし、人参の販売は永琳が言い出した事なので、誰も文句を言えない。
永琳は部屋で何かしていた。
販売に行っていたらしい、てゐ達が帰ってきた。
10箱持って里に行き、6箱持って帰ってきた。
ノルマには全然届かない。
帰ってきたばかりのてゐが、突然怒りだした。
「もう嫌だよ!こんな生活!姫様にまで稼がせて」
「てゐ。そんな事言わないの」
鈴仙が窘める。
「師匠が『もうじき豊かになる』、そうおっしゃったのだから」
姫様には申し訳ない無いけれど、と鈴仙の耳が萎れる。
輝夜は困った様に眉を寄せつつ、慈しむ様に二人を見ている。
誰も、何も言わなかった。
それからしばらく過ぎると、永遠亭は異変後位の賑やかさを取り戻した。
胡蝶夢丸ナイトメアの注文が殺到したから。
人々はスリルを求めたのだ。
またしばらくすると、病気になる薬を売り出した。
これにも注文が殺到した。
人々は現実にもスリルを求められる、と気づいたのだ。
永遠亭は裕福になった。
永琳は深くため息をつく。
今、人々の現実はどこにあるのだろう。
健康が商品化され、病気すらも商品となった。
人々は怪我を恐れないし、むしろ進んで怪我をする。
恐れはもはやスリルであり、もうじきスリルですらなくなるだろう。
妖怪に対する恐れも漠然とし、いずれはなくなるのかもしれない。
人々は再び現実を求めるだろうか。
永琳は失笑した。
永遠亭での人参の生産、販売は続いている。
畑のニンジンは、ドクニンジンに代わっていた。
永遠亭の誰も文句を言わなかった。
金持ちの性生活はノーマルに飽きてしまうと最終的にSMに行き着き、そしてそれに飽きるとまたノーマルへと戻る。
そんな感じでしょうか。え?例えがおかしい?
穴だらけの障子の前でつぎはぎの着物を着て内職をしてる輝夜を想像したらいたたまれなくなった……
面白かったです
アーメン