夕暮れ。
アリスの家。
アリスが椅子に腰掛けていた。
動かしていた手を止めて、ドロワ姿の人形を置く。
人形の服をとって、スカートを履かせて、ボタンを留めてやる。
「……ふむ」
アリスは唸って、人形の髪を梳きはじめた。
「ん?」
アリスは足もとを見た。
なにか、靴下の裾を引っ張る力がある。
見ると、上海人形が服の端を掴んでいた。
つんつんと引っ張ってくる。
「?」
アリスはかるく足を引っ張りかえしたが、人形は離そうとしない。
(なに?)
アリスは思った。
人形に聞いてもわからないことなので、言わないが。
「ちょっと。離しなさい」
アリスは言った。
人形は離してくれない。
アリスは眉尻を下げた。
(困ったわね)
別にむりくり引きはがしても良いのだが。
糸で操れば簡単である。
しかし、それをするのも、なんとなくプライドに触る。ヘンな意地だが。
アリスは少し考えてから、手に持っていた人形を置いた。
すると、人形は服の裾を離した。
「?」
アリスは怪訝に思った。
人形を置いたのは、足もとの人形を持ち上げて、調べようとしたためである。
様子がおかしければ調べなければならないし、何もしていないのに自分の予期しない動作をされれば、気持ちが悪いだけである。
が、離したのなら別にいいか、とも思った。
あとでじっくり調べればいい。
そう思って、今手放した方の人形を手に取る。
櫛を取って、髪を梳き始める。
「……」
アリスはまた眉をひそめて、手を止めた。
足もとを見下ろす。
と、また人形が、靴下の端をぎゅっと握っている。
(なによ?)
アリスは足もとの人形をにらんだ。
が、やはり離す気配はない。
ふう、とため息をついて、アリスはまた人形を置いた。
「? ……」
と、また人形が手を離す。
アリスは怪訝な面持ちで人形を見た。
ふと思い立つ。
「……」
すっ、とテーブルの上の人形を手に取る。
足もとの人形は動かない。
アリスは横目に見たまま、櫛を入れ始める振りをした。
と、ぎゅ、と人形の手が動いて、靴下を掴んだ。
アリスは手を止めた。
じっと足もとの人形を見る。
人形は何も言わない。
これ以上ない無表情である。当たり前だ。
人形なのだから。
手がしっかりとアリスの靴下を掴んでいる。
アリスは、少し考えた。
「……」
困った顔で考えた。
それから、やや戸惑いがちに、手に持っていた人形を置いた。
かがみこんで、足もとの人形を持ち上げる。
ところで、なんか最近どんどん話が短くなってきてます?
可愛いよ!!!!!!
上海がいじらしい~シャンハーイ
この上海は人に見られてもいいから抱きしめてほっぺすりすりしたり枕元に置いて一緒に寝たいぞ。
長い話書けましぇん。