無縁塚。
小町は煙草を吸う場所を探していた。
なかなか手頃な場所がない。
「おっと」
ちょうど良い木陰を見つけて、小町は近寄った。
尻を下ろす。
腰を下ろしたすぐ隣に、髑髏が一体うち捨ててあった。
目のところから黄色い花が一輪、飛び出して咲いている。
「あらら。なかなかおつだね、お前さん。すまないけど、ちょっくらごめんよ」
小町はわびを入れてキセルを取りだした。
葉を詰めてくわえ、懐を探る。
と、小町は眉をひそめた。
「あれ」
さっさっと身体を探る。
火が無い。
「参ったな」
小町はこのうえなく苦い顔をした。
ついあたりを見回して、火をつけられるようなものを探す。
まあ、見つかるわけもない。
「……う゛ー」
小町は眉をひそめて、頭をかいた。
ふと脇に目を止める。
「んん?」
小町は眼を細めた。
捨てられている髑髏の脇に、なにか見なれたものが落ちている。
火打ち石だ。
小町は拾って、試しに使ってみた。すると火花が出る。
「お」
小町はさっそく、その火打ち石を使ってキセルに火を入れた。
「ふー。……いや、すまんね。勝手に使っちまって――」
「コラッ!! 小町ッ!!」
「きゃん!! はいっ!! すみません!!」
小町は反射的に飛び上がって謝った。
頭を抱えて、あたりを見回す。
「……。あれ?」
小町は首をかしげた。
何も起こらない。
周りを見る。
声が聞こえたはずの閻魔の姿もない。
小町は首をかしげた。
「……なんだろう。あっ!! あちゃー!」
小町は落胆の声をあげた。
今の拍子で、地面にキセルを落としてしまっていた。
火のついた煙草が、少し外にはみ出してしまっている。
「ありゃあ、まったくもう、なんてこったい。災難だなあ……」
「ほう。災難ね。それはけっこう」
小町はびくりと固まった。
そうっと後ろをふり返る。
すると、今度は間違いなく、小町のよく知る閻魔がそこに立っている。
かなりの不機嫌面である。
小町は頬をひきつらせた。
閻魔はゆっくり唇を開いた。
「やるべき仕事をさぼって一服にいそしむような不届きなやつには、バチが下って結構よ。ちなみにここで言うバチは、当然の報いのことであって、このあとあなたがむこうに帰って私の説教を受けることは含まれていないわ。さ。それじゃあ帰るわよ」
「きゃああっすみませんっ! 働きます! 働きますから説教はカンベンしてください!」
「うるさい、いいから早く来い。そして仕事しろ」
暴れる死に神を引きずって、閻魔はその場を去っていった。
あとには落ちたキセルと火打ち石が残っていた。
すー、とキセルの中で、火のついた煙草が赤く染まった。
羨まし過ぎる!!!
髑髏になってからじゃ楽しめないからこまっちゃんとキスしてから髑髏にされます。