Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

待て

2010/02/13 15:29:15
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もし目の前に美味しそうなご馳走が置いてあったら、あなたはどうする?

もしあなたが猫なら、おそらく何の躊躇いもなく食べてしまう筈。
何故なら彼・彼女らは自由気ままに、自分の欲するままに生きる存在であるから。

もしあなたが犬なら、いくつかの場合分けをしなければならない筈。
何故なら彼・彼女らは主人の躾によって名犬にも駄犬にも変わる存在であるから。

もしあなたが不躾な犬なら、猫達と同じ様に躊躇いなく食べてしまうだろう。

もしあなたがある程度躾のある犬なら、主人の前では我慢出来ても人目につかなければ、
ご馳走の誘惑に負けてしまい、きっとそれを食べてしまうだろう。

もしあなたがよく躾られた犬なら、主人の許可がでるまで、例え餓死しようとも我慢するだろう。

そして私はその「よく躾けられた犬」であると自負している、…だというのに。

※※※※※

私こと十六夜咲夜は迷っていた、厳密にいえば悩んでいたというべきか。

場所は紅魔館内にある従者達のための休憩所。
時間帯によって大勢の妖精メイド達が羽を休めているが、現在は私だけ…の筈が
何故か目の前のソファーの上では紅い髪をした長髪の妖怪が安眠をしている。

確かこの時間帯は勤務中の筈よね…?

では何故、この妖怪はこんな場所で寝ているのだろうか。
彼女の勤務シフトを見誤ったとでもいうのだろうか?この私に限って?
そんな事はまずありえないだろう、私は彼女の勤務シフトを彼女以上に把握している。
もちろん、仕事上の都合で知っているだけであり、他意や下心なんてものは微塵もない。
何時に何処にいたら/行けば彼女に会えるだの、考えていたりなどしている筈がない。

何か特別の事情でもあるのかしら…?

確かに彼女は勤務中に、職場である門前でよくシエスタを嗜んでいる。
しかし根が真面目なためか、自分の職場を放棄した事は一度もなく、いつも門前で寝ている。
それなのに、今日は門前ではなく休憩所で寝ている…彼女の身に何かあったのだろうか?
見たところ彼女に熱があるだとか、負傷しているだとか変わったところは見受けられない。
では一体全体なにゆえに、彼女は今ここにいるのだろうか?

それにしてもよく寝ているわね…

彼女はソファーの上で安堵しきって、そして本当に幸せそうに寝ている。
彼女の長身と相まって、まるで日向ぼっこ中に寝てしまった大型犬のようである。
私は自分のそんな想像に言い得て妙だなと、自然に一人微笑んでしまう。
果たして、こんな幸せそうな顔をして彼女はどんな夢を見ているのだろうか?

少しくらい平気よね?

私は寝ている彼女に静かに近づき、屈んでそっと紅い髪に手を伸ばしてみた。
幼い頃は頻繁に触れていたのに、成長するにつれて疎遠になっていった感触がそこにはあった。
昔はよくこの紅い髪に触っていたし、彼女もよく私の頭を撫でてくれていた、
一緒にお風呂に入った時なんかは、いつも流しっこしたりして、
幼い自分には彼女の長い髪を洗うのは重労働だったが楽しかったなぁ…
などと過去に思いを走らせつつ、次に私は彼女の両頬にまで手を伸ばした。

うん、ふにふにだわ。…それにしても起きないわね?

彼女の頬を触れて、揉むだけではなく、いっーとなるよう引っ張ってみても起きる気配がしない。
彼女は依然として規則正しい寝息を奏でているだけである。
ここまでしているのに、全然反応が返ってこないのはなかなか癪である。

いい度胸じゃない

私は思い切って彼女の上に覆いかぶさるようにソファーに上った。

起きない貴方が悪いのよ?

そして勇気を振り絞り、彼女の唇に向かって自分の顔を近づけていった。
だんだんと彼女の顔が近付く度に、自分の胸の鼓動が早くなっていくのが分かった。

別に悪い事をしているわけではない。
私と彼女は確かに通じ合っているだろうし。
私は彼女の事を愛しているし、きっと彼女も同じ筈である。
だから、きっとこの行為に咎められる箇所などないのである。

ここまで思考した時点で咲夜はそれ以上顔を近づけるのを止めた。


これではまるで、夜這いじゃない…最低だわ。


彼女の了承もないまま、これ以上の事をすれば過ちを犯す事になる。
私は彼女を傷つけたくなんかないし、何より失いたくない。
それならば、こんな夜這いじみた卑怯な事をしてはいけない。
本当に大切なものを自分で汚してしまうなんて愚かにも程がある。

「ごめんなさい、美鈴。愚かな私を許して…」

そう言って私は優しく彼女の頬を撫でて、最後に彼女の顔を見てから、
ソファーからゆっくり下りて、そっと退出し…

さっ

あっという間の事だった。
私は寝ている筈の彼女にギュっと抱き寄せられ、
そのまま、彼女の上に覆いかぶさるように抱きしめられた。


ちゅっ、と可愛い音と柔らかな感触が私の唇に…


一瞬、私は何が起きたのかが理解できなかった。
ただ、私の目の前には満面の笑みの美鈴の顔があった。

あぁ、可愛い笑顔、こんなに顔を赤くして…じゃなくて、今私は何をされた?
そもそも、この子は寝ていたんじゃなかったの?
思考が追いつかない、というよりも思考が出来ない。

咲夜さん、可愛い過ぎですよ~

美鈴の嬉しそうな、明るい声が耳を優しく撫でる。
それと同時に私を抱きしめる力が少し強くなった。
痛くはない、むしろ心地よい圧迫感が私を包んだ。

なんて幸せなのだろう…じゃなくて

「貴方、いつから起きていたの?」
なんとか質問してみる。

「咲夜さんが入室した時からですかね」
美鈴はさも当然の如く言い放つ。

どうやら彼女は犬ではなく、狸だったみたいだ。

「狸寝入りしていたってことかしら?」
可能な限り平静を装い、再度彼女へ質問をする。

「結果としてはそうなりますね」
美鈴はそう応えながら、私に優しく頬ずりをしてくる。

やっぱりこの子は犬だわ、しかも大型の犬。

「案外、意地悪なのね」
少し拗ねた言い方で批難してみる。

「咲夜さん程ではありませんよ?」
しかしさらりと返され、今度は頭を撫でられる。

むぅ…言ってくれるじゃない。

「私は貴方を騙したりしないわよ?美鈴」
嘘は頻繁についてしまうけれどね。

「それでも十分意地悪ですよ」
そう言いながら、美鈴は私の髪に顔を埋めている。
どうやら、匂いをかいでいるようで、くすぐったくてしょうがない。

いよいよ犬そのものになってきたわね、そろそろ顔を舐めてきそうだわ。

「さっきから好き放題してくれるわね?」
もちろん本当に嫌なわけではない、むしろ本望である。

「あっ…ごめんなさい。調子に乗り過ぎちゃいました」
割と本気で謝られていまい、美鈴の顔が少し曇ってしまった。
犬ならば、「きゅ~ん」と鳴いているような顔で私を見てくる。
正直な話、私の「ツボ」を的確に押している表情である。
ここでフォローするのが普通なのだろうけど、私は「よく躾けられた犬」である。
「弱った獲物」には容赦なく襲い掛るように出来ている。

「勤務中に寝るだけでは飽き足らず、同僚に手を出す。厳罰ものよね?」
我ながらいい演技をしていると思う。これで形勢は逆転する筈。

「私の腕の中で強がっても、どうも迫力に欠けますね?」
彼女は少しも動揺せずに反論してきた、予想外の出来事である。

「しかも、最初に手を出してきたのは咲夜さんの方ですよ?」
その顔に悪意や怒りは見られない、むしろ楽しそうですらある。
しかし、私が窮地に立たされた事に変わりはない。
早くも狩る側から、狩られる側に立場が変わってしまった。

「ですから、厳罰を受けるのは咲夜さんですね」
自分で言った手前、反論は出来ない。

「負けたわ、何をすればいいの?仕事の肩代わり?煮るなり焼くなり好きにして」
今回は素直に負けを認めよう、これ以上足掻いても意味がない。

「いいえそんな事はしません、咲夜さんはこのまま私とお昼寝の刑です」
そういうと美鈴は私を抱きしめる力を少し強め、私が脱出できないようにした。
彼女の体温がより感じられるようになり、更に心地よくなった。

「待って、まだ仕事が…」

「これは罰なんです。咲夜さんに拒否権はありません」
どうやら逃がしてはくれないようだ。
仕方がない今日くらいは休ませて貰おう。
そう思い、私は美鈴の背に手を伸ばした。
お互いに抱きしめあっているようになる。

「わかったわ、お休み美鈴」
「お休みなさい、咲夜さん」

こうして私は眠りに落ちていった。

まさか「ご馳走」に食べられるなんて思ってもみなかった。
さくめーを目指していた筈。
しかし気付けばめーさく風味に…

何故、美鈴が休憩所にいたかは別の話で補完したいなぁ

誤字訂正、ご指摘ありがとうございます
砥石
コメント



1.よく躾けられたずわいがに削除
ウッキャァアアア!もうダメだ、我慢出来ねぇ!
俺は幻想郷に、紅魔館に、美鈴の部屋に、ベッドの下に行くぜ!
いや間違えた、休憩所だ、ソファーの下だ、落ち着け俺!
2.躾けの悪いぺ・四潤削除
ご馳走を目の前にしてお預けなんか出来ねぇ!!
駄犬と言われようが迷わず喰うぜ!! そして二人に躾けられるんだ!!

まだバレンタイン前日だというのに……明日は俺の命が無いかもしれない。
一つ変なところが「まるで日向ごっこ」日向ぼっこ
3.名前が無い程度の能力削除
たまには、抑えがきかない程甘えられるもまた、良し。
4.奇声を発する程度の能力削除
幻想郷へ逝ってきます!!!
そして紅魔館へ逝ってきます!!!!
そして1&2は躾が悪すぎるwwwwwww