Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

東方波動拳10~想いの力~

2010/02/11 17:38:22
最終更新
サイズ
6.36KB
ページ数
1

分類タグ


「くっ・・・そんな・・・」

美鈴は激しく動揺していた
親しかった筈のメイド長・・・
病床だったはずのメイド長・・・
彼女は今、目に見えるような殺意を纏って私を殺しに来ている!

「その程度か・・・笑止!」

美鈴は咲夜を外まで誘導していた
しかし、その間に猛攻で受けたダメージは大きかった
相手が強いのもある。けど・・・

咲夜さんを傷つけるなんて・・・

「美鈴! 動きなさい! 彼女は本気なのよ!!」

レティの声だった
穴のあいた壁に、必死に立ち上がっているレティが見えた
そうだ、私には守るべき人たちがいる
守ってくれた人たちもいる
だから・・・

「負けません!」

美鈴はしっかりと構え直した
サイズの合わないメイド服が肩を圧迫する
やっぱりこの格好じゃ・・・
その一瞬の隙に、咲夜に高速接近されてしまった
速い!
メイド長の鋭い蹴りをすんでのところで受け流した
思うように動けない!
何とかしてもとの服に着替えないと!

「滅殺!」

美鈴が体勢を立て直す前に咲夜が動いた
あの構えは・・・波動拳!?
掛け声とともに咲夜の両手からエネルギーが飛ばされた
よけられない!

「甘いッ!!」

突然人影が目の前に現れ、
はじけるような音とともに波動を消し飛ばした

「この私を差し置いてラスボス気取りとはいい度胸だ!」

美鈴を救ったのは魔理沙だった
あの時と変わらず力強かった
しかし、その構えからは強い欲望が消えていた

「魔理沙さん! 今の咲夜さんは・・・」

「分かってる。厄介なものに取り付かれてるみたいだな」

メイド長が標的を変えて襲ってきた
魔理沙は素早い咲夜の一撃一撃をしっかり受け止めている
その表情には余裕が見られる

「小癪な・・・」

「小癪で結構! それが私だからな!」

魔理沙が反撃に移った
相手の隙を確実に捉え、重い一撃を加えていく
しかし咲夜には効いていないようだった

「なにボケッとしてんだ! さっさと着替えろ!」

「え?」

「さっきスキマ妖怪が来たんだよ!
 お前を助けてやれってな!」

そう叫ぶと同時に思いっきり相手を突き飛ばした
そういえば飛ばされた紫の姿が見えない
咲夜は少し離れたところに受身を取って着地した

「やっぱりあいつを止められるのはお前だけみたいだぜ」

「どういうことです? 咲夜さんは一体どうして!?」

「良からぬ『波動』があのメイドを支配している・・・
 その『波動』を取り除くには、『波動』で対抗するしかないってことだ!」

魔理沙は再び交戦し始めた
『波動』が・・・咲夜さんを?
それも私のせい?
私が『波動』を極めたから?

「なにやってる! 早く行け!!」

そうだ。もし私のせいだったら、私がけりをつけなければならない
そうじゃなくても、
私が咲夜さんを止める!
美鈴は力強くうなずき、紅魔館に戻って行った

「やっと行ったか・・・!」

「遊びは終わりだ・・・!」

より殺意を強くする咲夜に対し、魔理沙は笑って答えた

「いいや、まだまだ遊んでもらうぜ?」




***紅魔館 更衣室***

「私の服・・・あった!」

美鈴は素早く着替え、更衣室を後にした

・・・私のせいで咲夜さんまでも巻き込んでしまった?
しかもあんな恐ろしい形で
みんな・・・みんな私の・・・

「あら、今日は仕事は休みなのかしら?」

考え事に取り込まれていた彼女を引き戻したのは、
いつもと変わらず本を携帯しているパチュリーだった

「パチュリー様! 危険です! 図書館に・・・」

「分かってるわよそんなこと」

そういうとパチュリーは手に持っている本を開いた

「『殺意の波動』・・・それが咲夜を別人に変えてしまった物の正体よ」

「殺意・・・?」

「見てのとおりよ
 そしてそれを取り除くには・・・」

「『波動』で、対抗するしかない・・・?」

「そう、それもあなたの持つような、『想いの波動』でなければならない」

「想いの・・・波動・・・」

誰かに、「優しすぎる」と言われたことを思い出した
確かに私は甘かったのかもしれない
でも、その甘さは、相手を想う気持ちから生まれたものだ

「“殺”ではなく、“活”の拳で咲夜を止めるのよ
 あなたならできるでしょう?」

「・・・はい!」



***紅魔館 裏庭***

「くっそ・・・そろそろ限界だぜ・・・!」

「しぶといやつめ、一思いに消してやろう」

「まだか・・・門番!」

「そこまで!」

振り上げられた咲夜の拳が止まった
そして叫び声の主を探した
紅魔館を囲う塀の手前に霊夢が立っていた

「次の相手は私よ!」

「霊夢!」

「何人いようが無駄なこと!」

霊夢と咲夜が同時に動いた
魔理沙の目の前で高速戦が繰り広げられる

「美鈴が来るまで持ちこたえるんだ!」

「分かってるわよ!
 まったく、あのスキマ妖怪・・・怪我人をこき使うなんて!」

魔理沙も加わり、咲夜はやむを得ず距離をとった
そうだ・・・それでいい・・・!

「滅殺・・・!」

一歩踏み込んだかと思うと、咲夜の姿がぶれて消えた

「!? なんだ!? 瞬間移動か!」

「魔理沙、上!」

親友の指した真上を見上げた瞬間、
必殺の一撃が天高くから襲ってきた




「ま、魔理沙さん! 霊夢さんまで!」

美鈴が駆けつけたとき、既に二人は立ち上がれる状態ではなくなっていた
そんな・・・本当に・・・

「残るはうぬのみ・・・!」

「咲夜さん・・・」

美鈴は目を閉じた
『想い』の力・・・
本当に咲夜さんを救いたいのなら・・・
咲夜は再び姿を消し、上空から美鈴を襲った

「滅殺!!」

「止めるッ!」

目を見開き、直撃の寸前に左腕で一撃を受け止めた
元に戻してみせる!
咲夜が自分から距離を取り直す前に、素早く反撃に移った

「カイザーウェーブ!!」

右手に集中したエネルギーを拡散させて放った
さすがのメイド長も回避が間に合わず、
正面から波動を受けることになった

「ぐぉ・・・」

確実に効いてる!

「め・・・り・・・」

咲夜さんがかすかに私の名を呼んだ気がした
戻りかけてるんだ
元の咲夜さんに

「咲夜さんを・・・返してもらいますよ!」

「ぬうあぁぁぁぁぁ!!!」

まっすぐに突っ込んできた相手をひらりとかわし、
勢いあまってバランスを崩した咲夜のほうを素早く振り返った
力強く右手を振り上げて地面にたたきつける

「アースドラゴン!」

相手の足元から巨大な波動の気流が発生し、
咲夜を上空に舞い上げた

これで・・・終わらせる!

美鈴も飛び上がり、咲夜と並んだ

「真空!」

構えた両手に渾身の気と『想い』を集中させた

「波動拳!!!」

美しくも思えるような、巨大なエネルギー体が炸裂した




***数日後 紅魔館***

「おっと、もう体はいいのか?」

「また本を盗られては困りますからね、いつまでも寝てはいられません」

「だから借りてるだけだと、何度いえば分かるんだ」

「では貸し出し禁止にしましょうか」

「あぁ、こいつも門番みたいに寝ててくれたら楽なんだがなぁ」

「・・・また寝てたの? あの子は」

「ああ、数日前とは大違いだな」

「まったくよ。あなたもだけどね」

「ははっ、だからいつものように通らせてもらうぜ!」


幻想郷の夏は、毎年のように終わろうとしていた



                          Fin
ようやく、終わりました

前回から三ヶ月以上も経過してしまいました
すみませんでした

展開がめちゃくちゃな最終話でしたが、
幻想郷では珍しくないことなんじゃないかな、
と前回の紫ではないですが思ってしまいました(汗

とにかく、こんなシリーズを最後まで応援してくださった方々、
本当にありがとうございました

また会う日まで



元ネタ

美鈴:アースドラゴン
   『RAGE OF THE DRAGONS』より
    ヨハン・カスパールの必殺技
OB-24800
コメント



0. コメントなし