Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

幻想郷の秘法

2010/02/10 16:33:44
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「さぁ蓮子、今日は蓮子の奢りよ。じゃんじゃん飲んで食べましょうよ!」

 とメリーがビールを片手に騒ぎ出す。ここは居酒屋、メリーが「とってもいいお知らせがあるから今日は飲みに行きましょうよ」と言うので蓮子は半分期待半分不安な気持ちで着いて来たのだが。

「どうして私の奢りなのよ。割り勘に決まってるでしょ」

 当然、蓮子は奢る気なんか無いので、不満げな表情でメリーに言う。

「まあまあ蓮子、落ち着いて私の話を聞きなさい」
「私は落ち着いてるよ。メリーが一人ではしゃいでるだけ」

 メリーの顔は一目で酔っていると分かるくらいに赤くなっていた。蓮子の顔も少しは赤くなっていたが、まだ酔っ払っていないように見える。

「私の話を聞いたら絶対に貴方は奢りたくなるわ」

 メリーは自信たっぷりな顔で蓮子に指を指す。指された蓮子の方は、不安でしょうがない様子だった。

「そういえば何か良いお知らせがあるんだっけ?」
「そうよ蓮子! よく聞いてくれたわ!」

 メリーは興奮が冷めないのか、持ってるビールを一気に飲み干し店員に「ピッチャー二つで!」とさらに注文を追加する。

「夢の話なんだけどね! 本当にいいお知らせなのよこれは!」
「また夢の話か……」
 
 ガッカリする蓮子をよそに、メリーはさらにビールを飲み干し話を続ける。

「夢の世界に行った私なんだけどね、そこである重要な秘密。いいえ、秘法を入手してきたのよ。なんだと思う?」
「人の話を聞く方法」
「ブッブー、違います」
 
 投げやりな態度の蓮子に対して、メリーのテンションは最高潮にまで達していた。ビールもさらに追加されて、メリーの酔いはさらに加速していく。

「それが驚かないでよ蓮子、なんと長寿の秘訣なのよ!」
「長寿の秘訣? なんだそんな事か」
「あら? 驚かないの?」
「うん、まあね」

 現代医療の発達、食品の安全化など、昔に比べて平均寿命は比べられないほど伸びている。それなのに今更長寿の秘訣なんて、何の役にも立たない、そう蓮子は思った。

「甘い、甘いわよ蓮子。貴方の甘さはアスパルテームにも匹敵するわ」
「わざわざややこしい例えをするのね」
「夢の世界の住民はとても長生きなのよ。それこそ人間の何十倍も。医学などでは到底到達できない極地よ!」
「うーん、そうなの?」

 蓮子はメリーの夢が現実にメリーが体験した出来事なのをうすうすと理解している。メリーには境目が見える程度の能力があるから、この世界の常識では考えられない、想像もつかない場所に行けるという事を理解している。

「ちょっと気になってきたかも」

 だからメリーの言う事に関心を示してきた。もしかしたら、現代科学を遥かに超えた秘訣があるかもしれないから。それを期待した。

「そうでしょ蓮子! やっぱり今日の奢りは蓮子で決定ね!」
 
 メリーはさらにビールを飲み干す。呂律はしっかりしてるが顔はもうパンパンに赤くなっている。

「その秘訣によるわね。それでどんな方法なの?」
「それはまだ私にも分からないわ」
「……どういう事?」

 少し興奮してた蓮子だが、一気に落胆の色を見せる。それを見たメリーはおかまいなしにビールを飲み干していく。

「まあまあ慌てないで蓮子。実は秘訣ってこの中に入ってるみたいなの。夢の世界から帰ってきたら空けなさいって言われたのよね。せっかくだから蓮子と一緒に空けようと思ってとって置いたの」

 そう言ってメリーは自分のバッグから一枚の茶封筒を取り出し、蓮子に手渡した。

「茶封筒なんてまた懐かしいわね。しかも、ずいぶんと軽いし。本当に信用出来るのこれ?」
「本人は相当長生きしてるって話だったから大丈夫よ蓮子」
「その自信が何処から来るのやら」

 とはいえ蓮子も少し期待はしていた。メリーが夢の世界から一体どんな長寿の秘訣を持ってきたのか。この茶封筒にはどんな秘法が入ってるのか。もしかしたら、不老不死の薬が入っているかもしれない。そういう期待が蓮子にはあった。

「これ私が空けていいの?」
「どうぞどうぞ、盛大に開けて頂戴!」

 メリーはそう言ってさらにビールを飲み干した。興奮が抑えられないようだ。
 蓮子もクリスマスのプレゼントを開ける子供のような顔をしながら茶封筒を開ける。しかし、

「なんだこれ?」
「なに? 何が入っていたの?」
 
 茶封筒の中に入っていたのは、薬でもなくただの一枚の紙だった。蓮子はその紙をじっと見つめる。そして、ある事に気が付く。

「何か文字が書いてあるみたいねこの紙」
「それに長寿の秘訣が書いてあるのね蓮子! さあ読んで読んで、そして私に奢りなさい!」
「慌てないでよメリー、今から私が読むから」

 メリーはもう完全に酔っ払っていた。完全に蓮子に奢ってもらう気でいる。
 一方、紙の文字を読んだ蓮子の方はもう冷静だった。喜びもせず、ガッカリもせずただただ冷静にメリーに言った。

「なるほど、確かに長寿の秘訣だわこれは」
「やっぱりそうでしょ! ほら蓮子、私に感謝しなさい。そして今日の奢りは貴方で決定ね!」

 蓮子の奢りを確信したメリーはさらにビールを追加する。しかし蓮子は、首を横に振る。

「長寿の秘訣だけど、さすがにこれじゃ奢れないわね」
「えーどうしてよ蓮子? ちゃんと長寿の秘訣だったんでしょ?」

 不満そうな顔をするメリーに、蓮子は無言で紙を手渡した。それを見たメリーは急に酔いが醒める。

 確かに、この紙には長寿の秘訣が書いてあった。

 幻想郷の全ての妖怪、この世界の全ての人間、やろうと思えば誰でも出来る方法が。それはとても簡単で凄い単純な方法だった。その秘訣とは、





         
               

        
              【早寝早起き腹八分目、そしてお酒は控えめにね】
ここまで読んでくれた方、本当にありがとうございます。
この話のオチの元ネタは星新一の「古代の秘法」を参考にさせてもらいました。
健康に気をつけるのが長寿なんてまさにてゐですよね。
でも【お酒は控えめ】これが本当に幻想郷の住民が出来るかどうかといわれたら。無理ですよねンフフ。

>4さん
夢違科学世紀で蓮子がメリーの夢の話を面倒そうに聞いてるように見えたのでそう表現したんですが、
よく考えてみたらその後メリーの夢が現と確信してるんだからガッカリする、というのはちょっと考え難かったですね……。
ムラサキ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
無理ですねンフフ。
2.ぺ・四潤削除
「健康のためなら死んでもいい」みたいな人がたまにいますが、やりたいことを全部我慢したらむしろストレスで早死にしてしまいます。禁酒ではなくて「控えめ」だからなんとかやれそうですけど。
3.名前が無い程度の能力削除
コメントに神主が降臨しておられる…w
4.名前が無い程度の能力削除
なんで蓮子は夢の話といわれてガッカリしたんですかね?
紅茶館と竹林の話の前だったらまだしも、後の話のようですし
5.奇声を発する程度の能力削除
ん、まあ確かにそうですけどwww
6.名前が無い程度の能力削除
詐欺兎の言うことだけどこれは本当だな