今やミミちゃんはどこにいっても大人気である。
可愛らしい目に赤い鼻、おまけに体内に核燃料と来れば、デンジャラスでキュートな日常を求める幻想郷民に受けるのは目に当たり前だった。
紅魔館を爆破し、地霊殿を爆破し、廃洋館を爆破し、命蓮寺も爆破した。
博霊神社は木っ端微塵に吹き飛び、霧雨魔法店は魔法の森ごと地図から消えた。
白玉楼では夕飯にミミちゃんの天ぷらを作ろうと妖夢が頑張ったところ、冥界が地獄化した。
輝夜と妹紅が互いに向かってミミちゃんを撃ちあったが、その後2人の行方に関する情報は入ってこない。
文はさらなる速さをもとめ、にとりの技術力を求めて下駄にミミちゃんを取り付けた結果、制御しきれず結界をぶち破ってどこかに消えた。
どうしても欲しがる橙に藍が買い与えたところ、魚と勘違いしてミミちゃんにかぶりついたのは誰もが知っている珍事件である。
こうして気がつくと、夢美の幻想郷侵略は本人の意図しないところで終了していた。
◆ ◆ ◆ ◆
そんな矢先。
「ご主人様。お願いがあります」
焦土と化した幻想郷を調査していた夢美に、助手兼家政婦のる~ことがやってきた。
「何よ、急に改まって」
「私を爆発するように改造してください」
それを聞いて夢美は開いた口が塞がらなかった。
「え?」
「いや、ですから、私を爆発するように改造してください」
「え、いやいやなんで?」
「だって、だって……」
正直、夢美はそんなことしたくない。
ミミちゃんはミサイルだからいいけど、る~ことはアンドロイドだ。
それも、内部に核の高エネルギーを蓄えて起動するニュークリアアンドロイドだ。
天ぷらを揚げていたらうっかり爆発しちゃった、えへ、など話にならない。
だが、る~ことはもじもじしていながらも、その内側には、確実に決意があるようだ。
第一、アンドロイドである彼女が主にお願いなど、そうそうはありえないことなのである。
「理由があるなら言ってみなさい。家事に何か不都合でもあるなら考えてあげるけど」
「……ミミちゃんばっかり目立ってずるいです」
夢美は頭をかかえた。
だが、そこにる~ことは追撃をかけた。
「だって、だってですよ! 今やミミちゃんは幻想郷一の大スターなんですよ!
かつて友達だった私のことも忘れて、エクスプロージョン三昧の生活なんて、そんなの嫌です!
だから、私も爆発属性追加して、ミミちゃんと一緒にスターになるのです」
すさまじい頭痛が夢美を襲った。
「あのね、る~こと。貴方まで爆発キャラになったら、誰が家事をするの?」
「私がやります!」
「改造したら、貴方は家事キャラから火事キャラになるのよ」
「似たようなものです!」
る~ことの決意は固かった。
そこで夢美は、その天才的な頭脳をフル回転させ、ベストアンサーを瞬時に導き出したのだった。
「ちゆりの着替え映像見せてあげるから我慢しなさい」
「ご主人様の馬鹿! もう知らない!」
なんたる天才の誤算。
る~ことは夢美を八百屋さんで買ったミニトマトでぶん殴ると、そのまま逃走した。
◆ ◆ ◆ ◆
夕焼けの丘。
かつて夢幻館があった焦土の上で、る~ことは膝を抱えて泣いていた。
「ぐすっ……私だって、私だって爆発したいです……」
そう呟きながら、涙(カメラレンズ洗浄液)で潤んだ目で夕日を眺めるる~こと。
その肩を、誰かが叩いた。
振り返ると、そこには
「……きゅーん」
ミミちゃんがいた。
「ミミちゃん……私、爆発させてもらえませんでした。私だって、人気者になりたかったです」
る~ことの言葉に、ミミちゃんはそっとハンカチを差し出した。
(どこからかって?聞くな)
る~ことはそのハンカチでカメラレンズ洗浄液をふき取ると、ハンカチに刺繍が施されていたことに気づいた。
『爆発するのは、リアクターじゃない。ハートなんだ』
その文字を見て、る~ことは衝撃を覚えた。
まるで箪笥の角に小指をぶつけた、あの時のような徹底的な衝撃を受けたのだった。
そして、自分の愚かさを知った。
本当に大切なのは、爆発しようと言う気持ちなのだ。
それなのに自分は、ミサイルとアンドロイドの差を嘆き、爆発の本質を見誤っていた。
心の奥から爆発を楽しんでいるミミちゃんに対し、自分の起爆理由の何たる不純なことか。
己の愚かさが恥ずかしい。ウィルスバスターを勝手にアンインストールしてしまいそうだ。
「きゅーん」
そんなる~ことに、ミミちゃんは手、というか頭を差し出した。
乗って、という合図なのだとる~ことは受け取った。
「ミミちゃん、いいのですか?」
「きゅーん」
「でも私は、私は……」
「きゅきゅーんッ!」
ミミちゃんは強引にる~ことを掬いあげると、そのまま空に飛び立った。
振り落とされまいと掴まって、る~ことはミミちゃんの胴体が震えていることが分かった。
違う。これは爆発の前触れだ。
ミミちゃんは自分の為に、ゼロ距離で爆発を披露してくれようとしているのだ。
ならば、自分も精一杯の爆発をしたい。
この、体に同じ力を宿す親友の為に、そして梅雨場の物干し場みたいにジメジメしていた自分にさよならを告げる為に。
途端に衝撃が2人を襲った。
ミミちゃんが博麗結界に衝突したのだ。
今まで出力では、これ以上先には行けない。
ミミちゃん1人の爆発では、この結界の先には行けない。
別に先に行きたいわけじゃないけど、ミミちゃんが行くところに自分も着いていきたい。
「ミミちゃん!」
「きゅんッ」
言葉はいらない。
今こそ、まさに爆発する時。
体の奥底から何かが燃え上がってきたのが分かる。
あとは、これを力にするのだ。そう爆発するのだ!
「行きますよ!爆発の彼方へ!」
「きゅきゅーんッ」
そうして、幻想郷上空で2つの太陽が爆発した。
◆ ◆ ◆ ◆
目を覚ますと、る~ことは知らない大地にいた。
隣にはミミちゃんが埋まっていた。
ここはどこだろう、と周りを見ると何故か近くに文がいた。
「ようこそ、冥王星へ。歓迎しますよ」
彼女の後ろでは、輝夜と妹紅がオセロで対決していた。
る~ことはいまいち事情が飲み込めなかったが、とりあえず爆発して心底爽快だったので気にしないことにした。
あと全部読んで撲滅さんは御健在だと安心したのは秘密です。
>01
やはり走りすぎましたかね。反省反省。
>02
私もそう思います。
>03
こう、パカッと(どこを?
>04
爆発しましたw
>05
既にヤバイと思いますw
>06
そのうち、背中に棘をつけた玄爺が(ry
>07
細々と生きてまsやめて踏まないで
>08
でもね、る~ことも忘れないであげて欲しいのですよ。