夢の中で。
久しぶりにあなたに会えた。
あなたは相変わらず小さくて、可愛くて。
無邪気に走り回るあなたを、転ぶわよと私は諌めて。
あ、ほら転んだ。
言わんこっちゃない。
あなたは苦痛に顔をゆがめて。
でも平気だぜ、なんて笑って。
バカね。
そんなつよがり、私の前では意味なんてないのに。
すりむいた膝を消毒してやる。
しみる傷口に、顔をしかめるあなた。
最後に絆創膏を貼ってやると、とびきり笑顔でサンキューな、って言ってくれた。
私はそんなあなたの手を取って、一歩先を歩いてあげる。
あなたは嬉しそうに笑いながら、とことこと私の後をついてくる。
そんな、儚くも美しい―――幻想。
そう。
幻想は、永久に非ず。
刹那に過ぎゆくからこその、幻想。
願えども戻らず。
願えども叶わぬ。
それでも。
それでも私は、願わずにはいられない。
もし。
もしもう一度、あなたに逢えるなら―――。
私は力いっぱい、あなたを抱きしめましょう。
その小さな頭を、撫でましょう。
そのか弱い肢体が、二度と傷つくことにないように。
私の全身全霊で、精一杯……守りましょう。
だから。
だから願わくば、もう一度―――。
「……アリス? アリスってば」
「…………ぉが?」
肩を揺さぶられ、私はぼんやりと意識を取り戻す。
ぼやけた視界には、一人の少女……否、女性の姿が映った。
「……魔理沙」
「ったく、もうご飯冷めちまうぜ?」
私は目をこすりながら立ち上がる。
眼前には、私とほとんど背の変わらない魔理沙。
「? なんだよ?」
「……少し前まで、私の肩くらいまでしかなかったのに……」
「え?」
ああ。
なんでだろう。
視界が、にじむ。
「……切ない」
「へ?」
「切ないっ!」
がっしと、私は魔理沙を抱きしめた。
ああ。
いつの間にか、こんなに抱きしめがいのあるサイズになっちゃって。
「ちょ、おい、アリス?」
「うぅ……切ない切ない切ない」
「な、なんかようわからんが……まあ、落ち着けよ」
そう言って、私の頭をよしよしと撫でる魔理沙。
うぅ、あんたいつの間にそんな小憎たらしい技を身に着けたのよ。
「ほ、ほらアリス。とりあえずご飯食べようぜ? 私はもうペコペコだ」
「……うん」
私はぐずぐずと鼻を鳴らしながら、魔理沙に手を引かれて部屋を出る。
魔理沙の一歩後ろを、大人しくついていく。
―――昔の魔理沙と、今の魔理沙。
どっちの魔理沙も、魔理沙であって。
そんなこと、言われなくても分かってるんだけど。
「……でも、たまには」
私の脳裏に、幼かった頃の魔理沙の笑顔が浮かぶ。
「……思い出しても、いいわよね」
「? 何か言った?」
「……ああ、魔理沙の背が縮まないかなって」
「何で!?」
「……冗談よ。ふふっ」
「……アリスの冗談は笑えないぜ……相変わらず」
「それは失礼」
―――昔のあなたと、今のあなた。
今の私は、どっちも好きよ。
了
でも、いつかはその日が来ちゃうんでしょうねぇ…切ないっ!
これで作業に戻れます。ありがとう!
1 Marisa&Alice for 10 Marisa&Alice
世界が救われる日も近い
ありました。
それが今回の話では、もうアリスと同じくらい………
やっぱり、成長していくもんなんですねぇ…。