地底の縦穴。
パルスィは、いつものようにヒマをしていた。
いつものように欄干に腰掛け、縦穴を見つめている。
「ふう」
パルスィはため息をついた。
ややくせのある金髪を、指先でくるくるといじる。
「ん?」
パルスィは、耳をぴくりとさせて、視線を動かした。
自分が座る橋の、端っこを見る。
橋の真ん中にちょろちょろとした影がある。
ネズミである。
ネズミは、ひくひくと細かい髭を振るわせ、橋の上に足を踏み入れてきている。
そのまま、忙しない動きで、休み休み橋の上を走ってくる。
パルスィはふんと半眼で鼻を鳴らした。
とんと橋の上に降り立つ。
ネズミは、たちまちぴたりと立ち止まった。
パルスィから見たら、二歩半ほどの間合いである。
パルスィは、ネズミをじいっと見下ろした。
ネズミは様子を見るように、身体を硬直させて、立ち往生している。
いつでも逃げ出せるように身構えているらしい。
パルスィは、ざっざ、と無造作に足を踏み出した。
ネズミはたちまち逃げ出した。
さすがに機敏である。
が、鬼の動きには敵わない。
パルスィは、短い一歩目から、いきなりたん、と一足飛びに飛んだ。
とん、ぐしゃ、と三歩目で追いつき、ネズミの背中を踏む。
ぽきりと背骨の折れる感触がした。
パルスィは足をどけた。
ネズミは血まみれで、動かない。
うまく絶命したらしい。
パルスィは、尻尾をつまんで持ち上げた。
そのまま欄干へ行って、ネズミの死体を川へ投げ捨てる。
「ふう」
パルスィは息を吐いた。
別に好んでやったわけではない。
ネズミは橋をかじるので、見かけると放っておけないのだ。
「かわいそうなことするねー」
パルスィは上を見た。
見れば、この付近をよくうろついている土蜘蛛が、ぷらーんと下がって、こちらを見ている。
土蜘蛛は言った。
「いきなり殺しちゃうなんて、ちょっとひどいんじゃないの?」
「そりゃあひどいわよ。鬼だもの」
「おやおや」
土蜘蛛はからかう声をあげた。
逆さまに垂れた頭の団子が、ゆっくりと旋回していく。
パルスィは言った。
「しょうがないじゃないの。私だって好きでやってるわけじゃないわよ。ネズミは橋をかじるのでね。猫でもいればいいんだけど」
「だからって見かけただけで殺しちゃうのかい? あのネズミだって別に橋をかじる気なんかなかったかもしれないよ? ちょっと橋を渡るのに、あんたにお伺いを立てていたのかもしれない」
「ネズミの言うことなんて分からないわよ? 話が出来ればそうしてあげなくもないけど。だいたいネズミなんて食べても不味いしね」
パルスィはそっけなく言った。
土蜘蛛は、一本の糸で回りつつ、半眼を返してきた。
「あらあら、ひどい理屈だな。いかにもお仕事人て感じだよねー。けど地獄の閻魔様なんかはこう言ってるそうだよ。仕事だからお役目だからっていうのは免罪符にならないんだって。なにか悪いことが起きなきゃ良いけどねえ」
「ちょっと止めてよ。たかがネズミ一匹くらいでなに大袈裟なこと言ってるの?」
「おやおや。三分の虫にも五分の魂だよ、畜生だろうが鬼だろうが、御仏様の前じゃあ同じ穴のドングリさーね」
土蜘蛛は、言うだけ言うと、するすると昇っていった。
パルスィは、ちょっとしかめっ面でそれを見送った。
「やな奴ね。なんなのよ?」
ぶつぶつと呟いて、パルスィは頬杖をついた。
また欄干に腰掛けて、水面に足をぷらぷらさせる。
「あの……すみません」
しばしして、声が聞こえた。
パルスィはそちらを見た。
橋の端っこの方に、いつのまにか、娘が一人立っている。
人間か、と一瞬見えたが、妖怪だろう。
着ている服が、人間のものより、ちょっと変わった風体をしている。
フードを目深に被っていて、顔はよく見えなかった。
「なに?」
パルスィは聞きかえした。
「いえ。急に失礼ですが、お聞きします。橋姫さんというのはあなたですか?」
「別にさんではないけれど、私は橋姫よ」
言ってやると、娘は、ちょこんとお辞儀をして言った。
「そうですか、あの……すみません。私、ちょっとこの橋の向こうに用事があるのですが、渡らせていただいてもよろしいでしょうか?」
パルスィは、娘をじろじろと観察した。
ふむ。
一見してつまらなそうだ。
ふと、娘の恰好を見て、パルスィは思いついて言った。
「そうね。別に渡っても構わないわよ。でもその前に、ちょっとあなたの顔をよく見せてくれないかしら?」
「え……」
娘はちょっと気まずそうに言った。
「あの……どうして?」
「そうね、別に理由なんかないけど。見たいだけよ」
パルスィは欄干をおりて、娘のそばに近づいた。
内心ではちょっとほくそ笑んでいる。
「私はこの橋の守り神。つまり番人みたいな者ね。それに断りを入れようって言うのに顔を隠しているのは、失礼なんじゃないの?」
パルスィは、牙を見せて笑った。
もちろん、娘が意識的に顔を隠そうとしているのは、承知の上である。
なんでこんな意地悪をしているのかというと、たいした理由はなかった。
娘の様子から、顔には痣か傷でもあるのだろう、とも察していた。
「あの……すみません……顔は……」
「あら、なにか見せたくない理由でもあるの?」
パルスィは尋ねた。
娘は、困った様子で、言いにくそうにうつむいた。
身体の前で、組んだ手を握っている。
やがて、細い声で言う。
「その……すみません。ちょっと。私の顔、昔、ひどい扱い受けたことがあって……」
「ふうん。大きな傷でもあるのかしら? 大丈夫よ。私は鬼だもの。そんなことで驚くと思う?」
パルスィは笑って言った。
本当は、自分も女生なので、傷を見せたくないのは、この娘が醜い自分を見たくないからだろう、とも見当はついていた。
しかし、そういう顔を見るのがパルスィは好きなのである。
娘は、ためらいがちに言った。
「……本当に、驚きませんか?」
「ええ。もちろん」
「……本当に?」
娘は、フードの下で笑った。
その頬からなにかが垂れる。
たらり、と。
赤黒いものが。
パルスィは眉をひそめた。
娘が静かにフードを下ろす。
「……こんな顔でもかい……?」
パルスィは娘の顔をまともに直視した。
そして、硬直した。
さっと血の気が引く。
旧都。
川沿いの道。
「あ、ちょいっと一杯のつもりで飲んでぇ♪ いつんのまにやっらはっしござけぇ」
鬼の星熊が歩いていた。
歌など歌って、ずいぶんと陽気そうだ。
「きがつきゃ旧都の――ん?」
星熊は、ふと気づいて、道の端を見下ろした。
道の端っこになにか黒いものがへたばっている。
ネズミであった。
星熊は近寄って、かがみこんだ。
ネズミはずぶぬれで、そのうえ血まみれだ。
背骨と頭の骨が、すっかり砕けているようだ。
「……ははあ。なんだ、野良犬にでもやられたかね。しかし、この怪我でここまで逃げるとは、なかなかたいした奴だ。どれ、ほうびに葬ってやるとするかね」
星熊はネズミの尻尾を持った。
まあ、これも一つの縁である。
「あ。分かっちゃいィるけどやめられないっと……んん?」
星熊は、また気づいて、別のほうを見た。
川岸の方だ。
視線を動かしたとき、川の中になにかが見えたのである。
目をこらすと、なにやら、川のどまん中でぐったりした人影が倒れているのが見える。
見たところ、どこからか流されてきた様子だが。
(なんだい、土左衛門か?)
何やら死体に縁がある日なのかな、と思いつつ、星熊は川の方へ近づいた。
下駄を脱いで、ざぶざぶと川へ降りていく。
倒れているのは、女だった。
「うん?」
星熊は、眉をひそめた。
(えーと……)
星熊は、酔い眼で記憶を探った。
女の恰好には、なんとなく見覚えがあった。
やがて思いいたって言う。
「ああ、なんだい。橋のとこのじゃあないか。なにしてんだ、こんなところで」
めったに旧都に顔を出さない、はぶれ者の鬼である。
いったいなにをしてるんだろうか。
星熊は心底から思った。
「うーん。まあ、鬼なら死にゃあしないだろうが……ま、これも縁々」
星熊は、言いつつ橋姫を担ぎ上げた。
星熊だから、このように軽々と持てるが、普通、鬼の体重というのは、人間より遙かに重い。
ざぶざぶと川から上がって、よっこいしょ、と道ばたに下ろしてやる。
星熊は手と顔を順々近づけて、橋姫の呼吸を確認した。
(ふむ)
どうやら、息はあるようだ。
「おーい。大丈夫か? おーい」
星熊は、ぺちぺちと頬を叩いて、呼びかけた。
「うう……」
やがて橋姫は、長いまつげを振るわせた。
けっこうあっさり目を開く。
「おお、目ぇ開けたか。おい、大丈夫かい橋の」
橋姫は、あたりを見回した。
わりと平気そうだ。
「あ、あれ……? ここは……?」
「ここがどこかってえと、そりゃあ天下の往来だが。なんだいお前さん、あんなとこで水浴びなんかして。世をはかなんで、入水でもしたかい」
星熊が言う。
橋姫は、起き上がって、眉をひそめた。
「は? 入水? なんです、それ? ――はっ!! そうだ、ね、ねずみ! ネズミは!?」
橋姫は、なにやら騒ぎ出した。
星熊は怪訝そうな顔をした。
「ネズミ?」
「そっそうよ! ネズミが、ネズミがば、ば、ばけて……」
何やらこんらんしているようだ。
星熊はわけがわからなかったが、ふと気がついて、片手に持っていたネズミの死体を持ち上げた。
「ネズミならここにいるが?」
橋姫は、ネズミの死体を見た。
その顔が、みるみるうちにさあっと白くなった。
何か信じられないものを見たかのように。
「いっ……」
橋姫は、急に起き上がると、よろめくように走り出した。
「いやああああああああ!!! ネズミ! ネズミいいいいいいいいいいい!!?」
ものすごい速度で、あっという間に向こうに消えていく。
すぐに姿が消えた。
声も聞こえなくなった。
何があったのだろう。
「……ま、いいか」
星熊は立ち上がった。
からん、と下駄をおろして、足に履く。
片手にネズミの死体を持ち上げると、からん、ころん、と、星熊は下駄を鳴らして去っていく。
後には、静けさだけが残った。
近くの軒で、猫がにゃおんと鳴いた。
パルスィは、いつものようにヒマをしていた。
いつものように欄干に腰掛け、縦穴を見つめている。
「ふう」
パルスィはため息をついた。
ややくせのある金髪を、指先でくるくるといじる。
「ん?」
パルスィは、耳をぴくりとさせて、視線を動かした。
自分が座る橋の、端っこを見る。
橋の真ん中にちょろちょろとした影がある。
ネズミである。
ネズミは、ひくひくと細かい髭を振るわせ、橋の上に足を踏み入れてきている。
そのまま、忙しない動きで、休み休み橋の上を走ってくる。
パルスィはふんと半眼で鼻を鳴らした。
とんと橋の上に降り立つ。
ネズミは、たちまちぴたりと立ち止まった。
パルスィから見たら、二歩半ほどの間合いである。
パルスィは、ネズミをじいっと見下ろした。
ネズミは様子を見るように、身体を硬直させて、立ち往生している。
いつでも逃げ出せるように身構えているらしい。
パルスィは、ざっざ、と無造作に足を踏み出した。
ネズミはたちまち逃げ出した。
さすがに機敏である。
が、鬼の動きには敵わない。
パルスィは、短い一歩目から、いきなりたん、と一足飛びに飛んだ。
とん、ぐしゃ、と三歩目で追いつき、ネズミの背中を踏む。
ぽきりと背骨の折れる感触がした。
パルスィは足をどけた。
ネズミは血まみれで、動かない。
うまく絶命したらしい。
パルスィは、尻尾をつまんで持ち上げた。
そのまま欄干へ行って、ネズミの死体を川へ投げ捨てる。
「ふう」
パルスィは息を吐いた。
別に好んでやったわけではない。
ネズミは橋をかじるので、見かけると放っておけないのだ。
「かわいそうなことするねー」
パルスィは上を見た。
見れば、この付近をよくうろついている土蜘蛛が、ぷらーんと下がって、こちらを見ている。
土蜘蛛は言った。
「いきなり殺しちゃうなんて、ちょっとひどいんじゃないの?」
「そりゃあひどいわよ。鬼だもの」
「おやおや」
土蜘蛛はからかう声をあげた。
逆さまに垂れた頭の団子が、ゆっくりと旋回していく。
パルスィは言った。
「しょうがないじゃないの。私だって好きでやってるわけじゃないわよ。ネズミは橋をかじるのでね。猫でもいればいいんだけど」
「だからって見かけただけで殺しちゃうのかい? あのネズミだって別に橋をかじる気なんかなかったかもしれないよ? ちょっと橋を渡るのに、あんたにお伺いを立てていたのかもしれない」
「ネズミの言うことなんて分からないわよ? 話が出来ればそうしてあげなくもないけど。だいたいネズミなんて食べても不味いしね」
パルスィはそっけなく言った。
土蜘蛛は、一本の糸で回りつつ、半眼を返してきた。
「あらあら、ひどい理屈だな。いかにもお仕事人て感じだよねー。けど地獄の閻魔様なんかはこう言ってるそうだよ。仕事だからお役目だからっていうのは免罪符にならないんだって。なにか悪いことが起きなきゃ良いけどねえ」
「ちょっと止めてよ。たかがネズミ一匹くらいでなに大袈裟なこと言ってるの?」
「おやおや。三分の虫にも五分の魂だよ、畜生だろうが鬼だろうが、御仏様の前じゃあ同じ穴のドングリさーね」
土蜘蛛は、言うだけ言うと、するすると昇っていった。
パルスィは、ちょっとしかめっ面でそれを見送った。
「やな奴ね。なんなのよ?」
ぶつぶつと呟いて、パルスィは頬杖をついた。
また欄干に腰掛けて、水面に足をぷらぷらさせる。
「あの……すみません」
しばしして、声が聞こえた。
パルスィはそちらを見た。
橋の端っこの方に、いつのまにか、娘が一人立っている。
人間か、と一瞬見えたが、妖怪だろう。
着ている服が、人間のものより、ちょっと変わった風体をしている。
フードを目深に被っていて、顔はよく見えなかった。
「なに?」
パルスィは聞きかえした。
「いえ。急に失礼ですが、お聞きします。橋姫さんというのはあなたですか?」
「別にさんではないけれど、私は橋姫よ」
言ってやると、娘は、ちょこんとお辞儀をして言った。
「そうですか、あの……すみません。私、ちょっとこの橋の向こうに用事があるのですが、渡らせていただいてもよろしいでしょうか?」
パルスィは、娘をじろじろと観察した。
ふむ。
一見してつまらなそうだ。
ふと、娘の恰好を見て、パルスィは思いついて言った。
「そうね。別に渡っても構わないわよ。でもその前に、ちょっとあなたの顔をよく見せてくれないかしら?」
「え……」
娘はちょっと気まずそうに言った。
「あの……どうして?」
「そうね、別に理由なんかないけど。見たいだけよ」
パルスィは欄干をおりて、娘のそばに近づいた。
内心ではちょっとほくそ笑んでいる。
「私はこの橋の守り神。つまり番人みたいな者ね。それに断りを入れようって言うのに顔を隠しているのは、失礼なんじゃないの?」
パルスィは、牙を見せて笑った。
もちろん、娘が意識的に顔を隠そうとしているのは、承知の上である。
なんでこんな意地悪をしているのかというと、たいした理由はなかった。
娘の様子から、顔には痣か傷でもあるのだろう、とも察していた。
「あの……すみません……顔は……」
「あら、なにか見せたくない理由でもあるの?」
パルスィは尋ねた。
娘は、困った様子で、言いにくそうにうつむいた。
身体の前で、組んだ手を握っている。
やがて、細い声で言う。
「その……すみません。ちょっと。私の顔、昔、ひどい扱い受けたことがあって……」
「ふうん。大きな傷でもあるのかしら? 大丈夫よ。私は鬼だもの。そんなことで驚くと思う?」
パルスィは笑って言った。
本当は、自分も女生なので、傷を見せたくないのは、この娘が醜い自分を見たくないからだろう、とも見当はついていた。
しかし、そういう顔を見るのがパルスィは好きなのである。
娘は、ためらいがちに言った。
「……本当に、驚きませんか?」
「ええ。もちろん」
「……本当に?」
娘は、フードの下で笑った。
その頬からなにかが垂れる。
たらり、と。
赤黒いものが。
パルスィは眉をひそめた。
娘が静かにフードを下ろす。
「……こんな顔でもかい……?」
パルスィは娘の顔をまともに直視した。
そして、硬直した。
さっと血の気が引く。
旧都。
川沿いの道。
「あ、ちょいっと一杯のつもりで飲んでぇ♪ いつんのまにやっらはっしござけぇ」
鬼の星熊が歩いていた。
歌など歌って、ずいぶんと陽気そうだ。
「きがつきゃ旧都の――ん?」
星熊は、ふと気づいて、道の端を見下ろした。
道の端っこになにか黒いものがへたばっている。
ネズミであった。
星熊は近寄って、かがみこんだ。
ネズミはずぶぬれで、そのうえ血まみれだ。
背骨と頭の骨が、すっかり砕けているようだ。
「……ははあ。なんだ、野良犬にでもやられたかね。しかし、この怪我でここまで逃げるとは、なかなかたいした奴だ。どれ、ほうびに葬ってやるとするかね」
星熊はネズミの尻尾を持った。
まあ、これも一つの縁である。
「あ。分かっちゃいィるけどやめられないっと……んん?」
星熊は、また気づいて、別のほうを見た。
川岸の方だ。
視線を動かしたとき、川の中になにかが見えたのである。
目をこらすと、なにやら、川のどまん中でぐったりした人影が倒れているのが見える。
見たところ、どこからか流されてきた様子だが。
(なんだい、土左衛門か?)
何やら死体に縁がある日なのかな、と思いつつ、星熊は川の方へ近づいた。
下駄を脱いで、ざぶざぶと川へ降りていく。
倒れているのは、女だった。
「うん?」
星熊は、眉をひそめた。
(えーと……)
星熊は、酔い眼で記憶を探った。
女の恰好には、なんとなく見覚えがあった。
やがて思いいたって言う。
「ああ、なんだい。橋のとこのじゃあないか。なにしてんだ、こんなところで」
めったに旧都に顔を出さない、はぶれ者の鬼である。
いったいなにをしてるんだろうか。
星熊は心底から思った。
「うーん。まあ、鬼なら死にゃあしないだろうが……ま、これも縁々」
星熊は、言いつつ橋姫を担ぎ上げた。
星熊だから、このように軽々と持てるが、普通、鬼の体重というのは、人間より遙かに重い。
ざぶざぶと川から上がって、よっこいしょ、と道ばたに下ろしてやる。
星熊は手と顔を順々近づけて、橋姫の呼吸を確認した。
(ふむ)
どうやら、息はあるようだ。
「おーい。大丈夫か? おーい」
星熊は、ぺちぺちと頬を叩いて、呼びかけた。
「うう……」
やがて橋姫は、長いまつげを振るわせた。
けっこうあっさり目を開く。
「おお、目ぇ開けたか。おい、大丈夫かい橋の」
橋姫は、あたりを見回した。
わりと平気そうだ。
「あ、あれ……? ここは……?」
「ここがどこかってえと、そりゃあ天下の往来だが。なんだいお前さん、あんなとこで水浴びなんかして。世をはかなんで、入水でもしたかい」
星熊が言う。
橋姫は、起き上がって、眉をひそめた。
「は? 入水? なんです、それ? ――はっ!! そうだ、ね、ねずみ! ネズミは!?」
橋姫は、なにやら騒ぎ出した。
星熊は怪訝そうな顔をした。
「ネズミ?」
「そっそうよ! ネズミが、ネズミがば、ば、ばけて……」
何やらこんらんしているようだ。
星熊はわけがわからなかったが、ふと気がついて、片手に持っていたネズミの死体を持ち上げた。
「ネズミならここにいるが?」
橋姫は、ネズミの死体を見た。
その顔が、みるみるうちにさあっと白くなった。
何か信じられないものを見たかのように。
「いっ……」
橋姫は、急に起き上がると、よろめくように走り出した。
「いやああああああああ!!! ネズミ! ネズミいいいいいいいいいいい!!?」
ものすごい速度で、あっという間に向こうに消えていく。
すぐに姿が消えた。
声も聞こえなくなった。
何があったのだろう。
「……ま、いいか」
星熊は立ち上がった。
からん、と下駄をおろして、足に履く。
片手にネズミの死体を持ち上げると、からん、ころん、と、星熊は下駄を鳴らして去っていく。
後には、静けさだけが残った。
近くの軒で、猫がにゃおんと鳴いた。
色々感想言いたいのに私の文章能力ではうまく書くことが出来ないのがもどかしいです。
ハハッ
ハッ
ッ
橋
俺が殺したゴキブリや蚊もいつか化けて出るのかな?
「お写真は別料金でーす。ハハッ」
夢(笑)を売って帰っていきました。
だけど、それが好きです!
って思ってたら後書きwwww
やはりネズミは害悪だな今回のでそれがよく分かったよとくにあのD
おや、こんな遅くに誰かな……
あなたこんな作品も書けるんですか……!
作品と合わせて二重の戦慄でしたょ;
ただ三文字で、作品の色そのものが危険な色に変わっただと・・・!