「ぐ~、すぴ~……」
「まったく、気持ちよさそうに寝てますね……」
「むにゃ……そんなに褒めなくても~……」
「さっさと起きなさいよこらぁ!」
「ごふぁっ!?」
太平楽に寝ていた小傘のお腹に、大量の弾幕が降り注ぎました。
「あなたはいつまで寝てるのよ? もう昼よ?」
「ん~。おおっ、そこにいるのは早苗じゃないか。おはよ~」
ここは幻想郷のどこかにある、小傘のねぐら。
のんきに寝ていた小傘のもとに、珍しい客が尋ねてきたのでした。
「もうこんにちは、よ」
「わちきは妖怪だから夜型なのよ。それにしても……」
「どうしたの?」
「寝起きにいきなり弾幕ぶつけるなんて、ずいぶんとご挨拶じゃないかっ!!」
「起きない小傘が悪い。さんざん揺らしたり叩いたりしたのに」
「む、心なしか全身が痛む気がする」
「それはさておき」
「さておくなー!」
「用件があるのよ。」
「むぅ。そういえば、なぜ早苗がここに……?
わっ。実は夜這いっ!? わちき、寝てる間に襲われてる!?」
はっ……
その時早苗から漏れた失笑は氷点下の冷たさでした。
チルノもびっくりです。レティもびっくりです。
「で、用件だけどね」
「ほぼスルーされた……」
「人を驚かすプロの小傘に、お願いがあるのよ」
「おお、わちきの力が必要とな!?」
「そう、これは小傘にしか頼めないの」
「そこまで言われると嬉しいねぇ~」
とたんに上機嫌の小傘です。
ふだんは返り討ちに遭ってばかりで、褒められることなんて滅多にないのですから。
茄子色の傘を振りかざして小躍り状態です。
「ん、小傘なら人畜無害で安心だから」
「~♪~♪ ん、早苗?なんか言ったー?」
「いや、何にも。」
小躍り状態の小傘も、ここらでようやく我に返りました。
よくよく考えれば、いつも痛い目にあわされている早苗の言葉なのです。
額面どおりに受け取っては大変、とんでもないめにあうのは目に見えています。
「こほん。で、結局用件は何なのよ?」
「今夜ね、人間の里で慧音先生が主催する肝試し大会があるの」
「けーね先生も、意外とイベント好きだね」
「意外とね。その驚かせ役が足りないのよ」
「ふーん。まぁわちきにかかれば、ちょちょいのちょいのお仕事だね」
増長に定評のある小傘です。
早苗も少しは乗ってあげることにしました。
「というわけで、お願いします。引き受けてください」
「え~。でもタダじゃやんないよ! 報酬はないの~?」
「とっても子供に喜ばれますよ」
「そういうのじゃなくて! なんか食べ物とか……」
「それじゃ、昨日博霊神社から奪ってきたお酒をおすそ分けしましょう」
「早苗、それは幻想郷でも犯罪だよ……」
「借金のカタに頂いただけですよ。で、お酒でいいですか?」
「なんか貰ったら、私が霊夢に退治されそうな気がするからやめとく……」
「それなら、今日の夜はうちでディナーをごちそうしましょう」
「早苗のディナー!? あれほんとに美味しいんだよね! それなら行くよー」
渋っていた小傘も、あっさり乗りました。
果物たくさんの早苗の料理は美味しいと、一部の妖怪では評判なのです。
小傘も一度だけ食べさせて貰って、その美味しさに感動した物でした。
しばらく人も驚かせていなくて、まともな食事もしていない小傘は、一も二もなく話に乗るのでした。
「ふふっ、ありがとう。それじゃ、いろいろと説明するわよ」
「おー! 聞くよ聞くよ」
肝試しの準備や注意について、早苗は小傘に伝えていきます。
食べ物が懸かっているせいか、珍しく小傘も真剣な表情です。
「こんなところで、大丈夫かな。足りない部分はまた慧音先生から補足があるはずよ。」
「わかったわー。わちきの驚かせ力を見て驚くがいいよ!」
「訳の分かんないこと言わないの。それじゃ、今夜は頼んだわよ」
そう言い残すと、早苗は飛び立っていきました。
「大船に乗ったつもりでお任せあれー」
気楽に返事をする小傘だったのでした。
「やー、さすがわちき。驚かせすぎで子供にトラウマ残しちゃったかもね!」
「……まさか、あんなので驚くなんて。子供ってほんとに単純ですね」
ホクホク顔の小傘が、ツヤツヤの顔をして戻ってきました。
早苗の予想を大きく裏切ることに、小傘は子供達をさんざん驚かせ、楽しませる(?)ことができたのでした。
小傘が変な事しないように監視役でついていた早苗は、別の意味で驚き顔です。
「本当に驚かせ力に驚いちゃったわ」
「でしょでしょー。さてさて、報酬報酬~♪」
「そうでした、うちでディナーでしたね」
「楽しみー!」
「……ところで小傘、今お腹は空いてますか?」
「これ目当てで1日食事抜いたんだからあたりま……、あれ?」
「どうしましたか?」
「全然おなかすいてない」
「そうですか。それじゃ、今夜のディナーはいらないですかね?」
「なんでなんでなんで!? なんでお腹いっぱいなの!?」
「たっぷりと人を驚かせたからじゃない?」
「あ!」
小傘は忘れていました。人を驚かせることが、自分の糧となることを。
……それほどまでに、「驚かせる」ことができていなかったのですが。
「ふえ~ん。満腹過ぎてディナーなんて食べられない……」
「残念残念。それじゃ今回の報酬はなしということで」
「あ、あした行くから……」
「報酬は、”今日の”ディナーでしたから、明日は無効です」
「計ったなー!! べー! 早苗なんて嫌いだ! 絶対驚かせてやる!」
「いつでも来てください。返り討ちにしてあげますよ」
「くぅ~。覚えてろ~!!」
小傘は言い捨てると、夜の闇へ飛び立っていってしまいました。
「思ったよりも、からかいがいのある妖怪でした」
早苗は独りごちました。
小傘をからかうためにあんなことを言いましたが、どこかで一度ディナーを振る舞ってあげようとは思っているのです。
「もうちょっと遊んでみても、面白いかもしれませんね」
ほんのり優しくて、ちょっぴり黒い。
早苗はそんな笑みを浮かべるのでした。
これは実にいい。
そして、早苗さんも素直じゃ無いなぁ。
やっぱり小傘ちゃんで遊ぶのは楽しすぎる。ナズーリンにも期待です。
ありがとうございます~。
>1さん
小傘可愛いのはもう世界の常識ですねw
>変態紳士さん
ありがとうございますっ!
>奇声を発する程度の能力さん
素直じゃないから早苗さんも可愛いんです!
>ぺ・四潤さん
フルーツ(笑) 基本ですよねー。
ナズーと寅あたり絡ませたいです。
>ずわいがにさん
小傘いぢめるにはS苗さんになってもらわないとw