新年も早一ヶ月が過ぎようとしています。みなさんいかがお過ごしでしょうか。東風谷早苗です。
妖怪の山はすっかり雪に包まれてます。
冬です。
思いっきり冬です。
故郷で見慣れているとはいえ真白に染まった幻想郷とはなかなか壮観なものがあります。
凍った湖、雪空を飛んでいく朱鷺、里には雪合戦に興じる子ども達、そして巨大ロボ。
全てが今は如月だということを物語っています。
…………いや巨大ロボは無いよなぁ。
いくら特撮に憧れた私とは言えあれが場違いだということ位は分かります。
頭や肩に雪が積もった巨大ロボを私はどう捉えればいいのでしょうか。
ええ、ええ、問題はそこではないのです。
巨大ロボの足が私のすぐ隣にあるというのが問題でして。
何故神社のすぐ近くに設置したのかと諏訪子様に問うと、
「うちの神社からゴゴゴゴってロボが発進したらかっこよくない!?」
と満面の笑み。
つい私もその笑顔につられて
「ええ!」
と力強く答えてしまいました。ああ、そんなに非難の目を向けないで下さいまし。
仕方のないことだったのです。考えてもみてください。
幻想郷の危機、慌てふためく人々、そこへ地を割り颯爽と飛び出す巨大ロボ!
なんとロマンティックではありませんか!
というわけでめでたく神社の地が割れることとなりました。
ついでに融合炉もこちらへ移すようで日夜河童達が工事を進めている最中であります。
何故誰も突っ込みを入れてくれなかったのでしょうか。
それとも幻想郷ではこの程度のこと異変のいの字にも入らないのでしょうか。
最近、「また守矢か」と言わんばかりの視線が痛くてしようがありません。
今回は事前に霊夢さんの方にも話を通しておいたので有無を言わさず爆発炎上ということにはならなさそうです。
ですがその際
「あんたらは定期的に何かを企まないといけないルールでもあるのか」
と尋ねられました。
とっさに否定の言葉が出なかった私をどうか責めないで下さい。
企んでるのは私じゃありません。私の尊敬する二柱の神が少々はっちゃけ気味なのです。
ここは外とは違い神々や妖の類がいて当たり前の世界。
思う存分自己を顕示していこうとの所存なのでございます。
その熱意がこのような形となったのです。
現場を指揮するのは神奈子様。流石乾を創造する程度の能力の持ち主です。
神奈子様の的確な指示のおかげで工事は順調に確実に進んでいます。いいんですか?それで。従う河童達も。
「国作り以来の建築事業。気合いを入れないわけにはいかないよ」
国作りと並べて考えるのもいかがなものかと思います。しかしお似合いですねその黄色いメット帽。
いえ褒めてるわけではありません。
今一度ご自分の姿を鏡で見つめなおしてみるのがよろしいかと。
うっとりしないでください。
諏訪子様の帽子を被っても無駄です。
とはいえ融合炉をこちらへ持ってくることで何かと利点はあるのです。
直接エネルギーを神社に回せるのでついに文明の光が差すことになります。文明開化です。
冷蔵庫、洗濯機、液晶テレビ、PSP……ああ、めくるめく夢の怠惰ライフ。
今までの自然と一体化した暮らしが脆くも崩れ去ろうとしています。
でも私は現代っ子なのです。数年前まで女子高生だったのです。
携帯が無ければ生きられない子だったのです。
メモリは一桁でしたが。
「早苗は現人神だから気にすることないんよ」
フォローになってません諏訪子様。
家業やら何やらで忙しく女子高生らしい行為を何一つ出来なかったのは事実です。
しかしあの頃のことを思い出すとベッドに顔をうずめて泣きたくなるので話題を変えます。
ペットが出来ました。
今私の頭の上に乗っているちょっとサイズの大きいカラスがそうです。
使い魔ではありません。新聞記者じゃあないんですから。
どうもこのポジションが気に入ったようで。私が里へ下りる時も離れようとしません。
おかげで巷では「死神の巫女」という二つ名がついたとかつかなかったとか。
何でしょうこの痛々しさ。思わずベッドに顔をうずめてあれ?話題が変わってない。
このカラス、空ちゃんですが元々諏訪子様達と面識があったようで融合炉の管理を任されていたようです。
それでたびたび神社に訪れていたのですが来る度にご飯を与えてたら懐かれました。
未だに名前すら覚えてくれませんが「この人の傍にいればご飯が貰える」程度には認識されてます。多分。きっと。唯一の私の友達ですから。
「おーい、お空ー!いい加減帰ってさとり様に顔見せろー!」
「あ、お燐ー!」
飛んでっちゃいました。友達。
あれですね。私にとって唯一でも相手にとってはそうでなかったと。
ぼっちにはよくあることです。泣いてませんよ?これは間欠泉のガスが目に染みただけです。
そういやあいつら妖怪だけどいいのかって?
いやまあその。ぶっちゃけUFO騒ぎのときは少しはしゃぎすぎました。
騒動後改めて霊夢さんの鬼神の如き容赦の無さを客観的に見るとですね。
無いなと。
やりすぎだなと。
理不尽な暴力は誰でも避けたいものです。
いつか自分に返ってこないようそれなりに振舞っていきたいといった感じです。
影は薄くなりますが。
次の異変、私の出番あるのかしら……
ん?どうしました諏訪子様。それならいい異変があるって?
ははぁ穴を掘ってみたはいいが地盤が柔らかくて神社側が地滑りを起こしたと。つまりは我が守矢神社は現在土の中と。
なるほどなるほど。
「というわけでこちらの神社に泊めてください」
「帰れ」
早苗さん、不憫可愛い。
東風屋←誤字?
DSはw?
早苗さん…不憫すぎるw
ともあれ早苗さんが不憫すぎて不憫すぎて泣きそうです。何故か知らないけど。
早苗さん頑張ったね