深夜の永遠亭。
本来なら兎達も寝静まり静寂が訪れるはずのこの時間、
今日この時に限ってはざわざわと喧騒が鳴り響いていた。
兎達は慌てふため、皆一様に主である蓬莱山輝夜の部屋の前にたむろしている。
蓬莱山輝夜が、何物かに殺されたからだ。
死体は未だ輝夜の部屋に置かれたままになっていた。
弾幕で身体が貫かれ、何故か全身に火傷を負っている。
部屋は荒れていてここで犯人と争った形跡があり、窓ガラスも割られていた。
そして、その部屋に今、4人の容疑者が集められた……
「輝夜……どうしてこんなことに……」
「姫様ぁ……」
「はぁ……早く帰りたいウサ……」
上から順に永琳、鈴仙、てゐである。永琳は難しい顔をして考え込み、
鈴仙は涙目になっている。てゐは、悲しむ様子も無くだるそうにしていた。
「話は聞かせてもらったよ!」
とそこに、扉を開けて一人のネズミ女が入ってきた。
「だ、誰!?」
「事件のあるところに探偵が現れるのは当然のこと……私の名は!」
「身体は1ボス、頭脳は6ボス、その名は、名探偵ナズリン!」
(ツッコむべきところだろうか、ここは。)
部屋に集められた4人のうちの一人である妹紅は一人頭を悩ませる。
しかし周りを見るとまったくのノーリアクションだったので、自分も無視することにした。
「さて、ここにいる皆は、皆被害者である輝夜さんと親しかった者達だね。
この中に犯人が居ると見て間違いなさそうだ。
ではまず、今夜どこで何をしていたかを教えてほしい。要はアリバイというヤツさ。」
ナズーリンは勝手に仕切り始めた。
とは言えこのままの状況でもラチがあかないと思ったのだろう、
「……わかったわ。」
まず永琳が名乗りをあげ、言われた通りに話し始めた。
「私は部屋で一人、ずっと薬の整理をしていたわ。」
「へぇ、それを証明する人物は?」
「ミスがあってはいけなかったし、うどんげも中に入れなかったわ。
夜の間は私以外は誰も入らなかったわね。」
「つまりアリバイを証明はできないということだね?」
「残念ながらね。」
続いて鈴仙
「私は……あの、ずっと部屋に居ました……」
「それを証明する人物は?」
「いえ、誰も……」
「つまりあなたもアリバイは無いということだね!」
「ちっ、ちがいます!私は姫を殺してなんかいません!」
声を荒げる鈴仙。ギャラリーの兎達も
『そうだそうだ!鈴仙様が殺すわけないじゃないか!』
『いや、あの動揺っぷり、あれは怪しいな……』
『言ってるのよ!あの方がそんなことするわけないじゃない!』
などと好き勝手に騒いでいる。
そして、次は因幡てゐ
「あなたはどうですか?てゐさん。」
「黙秘権って、知ってるウサか?」
「……ほう、しゃべりたく無いというんだね?何かやましことでも?」
「さあてね。私にだってプライバシーがあるウサ。クックック……」
怪しく笑うてゐ。ギャラリーも
『あやしい!あやしすぎるぜ!』
『絶対てゐ様が犯人よ!間違い無いわ!』
『まて、落ち着け、これはミスリードかもしれないぞ!』
と騒いでいる。どうやら兎達からは一番疑われているようだ。
さて、次は私の番だな。
「さて、藤原妹紅さん、君はあの時間何をしていた?」
「私か?私は……」
「輝夜を殺していたな……!」
「なるほど、つまり全員に犯行の可能性があるというわけだね……」
「うおおい!ちょっと待て!!」
妹紅は慌ててナズーリンに駆け寄った。
どう考えても今の反応はおかしいだろう、探偵を名乗るならここはスルーしてはいけないだろう、という思いをこめて。しかしナズーリンはうざったそうに、それはもうとてもうざったそうに妹紅をあしらう。
「なんだ君は。捜査の邪魔をしないでくれないか。」
「しないでくれないか……じゃない!
今私が思いっきり自白しただろう!なんで何事も無く話を進めようとしてるんだ!」
「ふふふ、しかし状況を見れば推理はたやすい。死体の状況をよく見てほしい。」
「無視すんな!」
妹紅がぎゃーぎゃー騒いでいるのを無視しつつ、
ナズーリンは死体の火傷の痕を指差した。
「見たまえ。酷い火傷の跡だ。ここまで酷い火傷はなかなか無い。
こんな火傷の痕をつけられる人物と考えれば、自ずと犯人は見えてくるのだよ。」
その推理を聞いて妹紅は目を輝かせた。
「おおっ!探偵さんなかなかいいとこつくじゃないか!」
「ふふ、ありがとう。では続けるよ。
これほどまでの火傷を与えることが出来る人物は一人しかいない!
その人物とは!」
「その人物とは!」
「八意永琳、君だ!!」
「なんでだよっ!!」
ビシッ!
再びナズーリンに鋭いツッコミを入れる妹紅。
そんな妹紅を無視しつつ、永琳はナズーリンの前に一歩踏み出した。
「ふふ……面白いことを言うネズミね。
私がどうやってこんな火傷を負わせたというのかしら?」
「……薬品だよ!」
「……!!」
「確かに君は炎を出すことも出来ないし彼女を燃やすことも不可能だ。
しかし、何も火傷は炎だけがもたらすものじゃない!
非常に濃度の強い薬品、例えば塩酸などでも火傷は負わせられるんだ!!」
「だ、だとしても!私には動機が無いわ!」
「残念だが、君が姫のぐーたらさにうんざりしていたという情報は既に得ている!
里の守護者が君が愚痴っていたことを証言してくれたよ!」
「くっ……!」
妹紅はなにやら白熱してきた推理戦を眺めながら、
『炎を出すことも出来ないし』のくだりのあたりで自分の手から炎を出してみた。
「ちょっと、熱いウサ。」
「こんな時に何遊んでるんですかっ……ふざけないでくださいっ……!」
怒られた。
(私か?私が悪いのか?)
妹紅が世の中の理不尽さをひしひしと感じ始めたその時、
「え~、ちょっとお待ちくださ~い。」
何やら間延びした声が事件現場に響いた。
気持ち良く持論を展開していたナズーリンは不機嫌そうに叫ぶ。
「誰だ!せっかくいいところだったのに!」
「えー…ふふふふふ、どうもこんばんは。」
現れたのは古明地さとりであった。
しかし何故か何時もの服装では無く、黒いコートを着込んでいる。
「えー、ルーミアさん、お願いします。」
「バイトなのかー」
何故かルーミアが現れ、あたり一面が暗くなった。
そしてさとりだけがライトアップされ、得意げにニヤニヤと笑っている。
周りの面々もそれに驚くこともなく、ただ静かに暗闇と同化している……妹紅を除いて。
「えー、どうやらこの事件はもう解決です!
心を読んで10秒で解決余裕でした!
今回の問題は……輝夜さんを殺す動機を持っていたのは誰なのか!
ヒントはズバリ……とくにありませーん。
是非みなさんも第三の目を身につけてください。
古明地さと三郎でした。」
さとりが一通りしゃべり終わると、あたりを包んでいた暗闇が無くなった。
謎の推理前トークも、巳も蓋もない有様である。さとり妖怪になれとでも言うのだろうか。
金一封をさとりから受け取ったルーミアが、「やはり世の中金なのかー」と言いながら窓から外へと出ていった。
「んふふふ、失礼しました。じゃあ始めましょうか。」
にやにやと笑うさとり。しかし妹紅は期待していた。
先程の演出は意味不明であったが、こいつは心を読む妖怪であると聞く。
確かに心を読めばコイツの推理が外れることなどありえないであろう。
妹紅は全力で輝夜への憎しみを思い浮かべた。
(さあ!さとり!私の憎しみを読みとってくれ!)
さとりはゆっくりと手を上げ、自らの目で見た情報から犯人を指差そうとしている。
(輝夜憎い輝夜憎い輝夜憎い輝夜肉い……あ、間違えた輝夜憎い……)
「この事件の犯人……それは……」
(輝夜憎い……そうだ私だよ……輝夜憎い……)
「鈴仙さんです!!」
ズビシッ!!
さとりが力強く鈴仙を指差す。
「なんでだよっ!!」
ズビシッ!!
妹紅もそれと同時にさとりにツッコミを入れた。
先程のナズーリンに対するものと合わせて、三回目のツッコミである。
「わ……わたしが……?」
一方の鈴仙は、信じられないといった表情でさとりを見ていた。
そのさとりにツッコミを入れた妹紅のことは、何故か見えていないようである。
「ふふふ、悲しんでいるフリをしても私の第三の目はごまかせませんよ。
あなたは、輝夜さんから虐待を受けていましたね!」
「な……どうしてそのことを!!」
「そして最近寝る前には、『姫様死なないかなあ』とつぶやいていたこともお見通しです!」
「そんな!ちゃんと布団を被って外に声が漏れないようにしてたのに!」
「更に極めつけには……今あなたの心は悲しみの中に安心・喜びの感情も混じっているということ!!」
「……ふふっ、そこまで読まれてちゃ、誤魔化せないわね。」
それまで落ち込んで涙を流していた姿とは一変し、鈴仙は私でもびっくりするような冷酷な表情をさらけ出した。
「そうよ、確かに私は姫様を憎んでいたわ……!
私の付け耳のスペアをヤフオクに出された時はいっそどうしてやろうかと思った……!」
(やっぱりつけ耳だったのか……しかもスペアまで……)
妹紅は一人新事実に驚いていた。
「でも心を読めるあなたなら分かるはずよ。私は殺していない。
そんな思考読めないでしょう?」
「確かに……あなたの心を読んでも殺した場面は出てこない。
しかしあなたには波長を操る能力がある。自分の心の波長を私に読まれないように狂わすことも不可能ではないはず。」
「ふふ、なら証拠を出してみなさいよ。」
「んふふふ……それが難しいんですよねぇ……しかし必ず尻尾を掴んで見せますよ。」
「楽しみにしてるわ……」
何やらこちらでも推理戦が白熱してきていた。
一方のナズーリンと永琳も未だに言い合いを続けている。
(こんなに分かりやすい犯人はいないと思うんだけどなー。
ひょっとして私、存在感ないのか……?)
妹紅がツッコミに疲れてちょっと切なくなってきたその時であった。
「待ちなさい!!」
再び、窓から新たな人物が侵入してきた。
まるで尼さんのような格好をして、雲で出来た親父をひきつれている。
言い合いを続けていた面々も、一時中断して彼女を見る。
「お前は確か……一輪だっけか?命蓮寺の……」
妹紅は自分の記憶を頼りに彼女の名前を思い出した。
確か命蓮寺というお寺が最近人里に出来て、その中に確か一輪が居たような気がする。
この前慧音と一緒に訪れたこともあるから間違い無い、妹紅は確信していた。
「ああ、違いますよ。」
「あれ?そうだったっけ。雲居一輪じゃなかったっけ?」
「漢字はそれで合ってますけど、切る場所が違うんですよ。私は……」
「『雲居一 輪』よ!」
一輪……もとい、雲居一は高らかに訂正した。
何が違うねんと呆れる妹紅とは対照的に、さとりとナズーリンは驚愕の表情を浮かべる。
「ま、まさか伝説の探偵、雲居一雲山の……」
「そう、孫よ!この事件は必ず解いて見せる、雲山の名にかけて!!」
「『雲居一少女の事件簿』はノンフィクションだったのか……っ!」
なんのこっちゃ。妹紅はさっぱり理解が追いつかなかったが、どうやらさとりとナズーリンの驚き様から見るにコイツも探偵であるらしい。それも非常に優秀な。
(よくわかんないけど、コイツなら真相を暴いてくれるかも!
さあ!推理してくれ!犯人はここに居るぞ!)
妹紅の心の叫びが聞こえたかは分からないが、雲居一は推理を開始する。
「ポイントは、窓よ。よく考えてごらんなさい、普通に輝夜さんの部屋に入ることの出来る人物が、窓を割ってまで侵入しようと考えるかしら?つまり……」
「犯人は外部の人間ということだな!」
「あ、すいませんそこのもんぺさん、ちょっと話に割り込まないで貰えますか?大事なとこなんで。」
「え、あ、ごめん……」
若干腑に落ちない部分もあるものの、妹紅は素直に謝った。
自分が悪いと思ったら謝る、これが長生きの秘訣である。
「では続けます。つまり、犯人は普通に部屋に入ることをしない人物、すなわち……」
「すなわち!?」
「因幡てゐ!あなたです!」
「いやいやいやいや!!」
妹紅が本日4回目のツッコミを入れるが、例によって雲居一は妹紅に目も触れずに推理を続ける。一方のてゐは余裕ある表情を崩していない。
「ウッサッサッサ……よくわからないウサね、どうして私になるウサ?」
「イタズラを好むあなたなら、窓ガラスを割って入るぐらいのイタズラはするわよね?」
「……まあ、否定はしないウサ。」
いや否定しろよ!と妹紅は全力でツッコみたかったが、どうせツッコミを入れたところで無視されるであろうことは分かりきっていたので黙っておくことにした。何度も繰り返されれば、いくら蓬莱人と言え心が折れるのである。
「でも、動機は?私に姫様を殺す動機なんてないウサ。」
「そう、あなたに動機などない。しかし、イタズラが効きすぎてしまって死んでしまったとしたら……?」
「な、そんなことあるわけないウサ!」
「過去にあなたが輝夜さんの夕飯にマムシを混入するというイタズラをして、本当に輝夜さんが死にかけたことがあることぐらい、私にはお見通しですよ!」
「どうしてそんなことを知ってるウサ!お前か!?お前が言ったウサか!?」
動揺したそぶりで周りのウサギ達に怒鳴りちらすてゐ。先程までの余裕はまったくなく、その姿はまるで真相を見破られてしまい最後のあがきをする犯人そのものである。
しかし忘れてはいけないことが一つ。
「犯人は、私なんだよっ……!」
妹紅をそっちのけで、ナズーリンVS永淋、さとりVS鈴仙、一輪VSてゐの推理バトルが繰り広げられ、流石の妹紅も我慢の限界に達したようだ。
「おまえらぁぁ!聞けぇぇ!!犯人は私だぁぁぁ!!!」
炎の翼を出しながら大声で自白する妹紅。冷静に見るととてもシュールな絵柄であるが、あいにく今の妹紅にそこまでの気はまわらなかった。
しかし、名探偵達は妹紅に冷ややかな目線を向けながら
「誰をかばっているのか知らないが、見え透いたウソはよすんだ。」
「ん~心を読むまでもありませーん。あなたはシロです。」
「そもそもこういう場合、自分から犯人だと叫ぶ奴が犯人であったためしが無いのよね。」
と、妹紅の叫びを軽く無視する。妹紅が再び叫びをあげようとした、その時であった。
「う、う~ん……」
どこからかうめき声が聞こえた。その方向を見ると、輝夜がもそもそと動いている。
先程まであった弾幕の傷や火傷も治っており、どうやらリザレクションが完了した様子である。
「か、輝夜!」
「あら?妹紅、それに永淋達に……誰?なんでこんな人が集まっているの?」
リザレクションは言わば普通の人間で言う起床に近いものがある。故に、リザレクション直後がまるで寝起きの時のように頭がすぐには働かない。輝夜もその状態で、ぼんやりとした目で周りを見渡していた。状況が掴めずにいるようだ。
「せ、説明は後だ!とにかく輝夜、証言してくれ!お前は私が殺したって!」
「え?そんな……恥ずかしいわ。」
頬に手を当て、「ぽっ」という効果音と共に頬を赤らめる輝夜。
どうやら彼女の価値観の中では殺し合いはキスやらチョメチョメやらと同じようなニュアンスらしい。
「は、恥ずかしがることないって!さあ、ほら、早く!」
「で、でもこんな大勢の前で……知らない人もいるし……」
「いいんだよ!とにかく頼む!言ってくれよ、『私は妹紅に殺されました』って!」
「私は妹紅に『○されました』?」
「伏字にするなああああ!!!」
やんややんや。
輝夜と妹紅がどつき漫才をしている間、3人の名探偵はひそひそ話を始めていた。
そして輝夜と妹紅のどつき合いが終わる頃、3人は場を見渡して告げた。
「3人で知恵を振り絞った結果、ようやくこの事件の真相を見ぬいたよ。」
「んふふ~我々は一番怪しい人物を見逃していたようですね~。」
「灯台元暗しとはまさにこのことだわ。」
おっ、これは!?
妹紅が期待に満ちた目で3人を見つめる。これはいい流れではないだろうか。
いままでスットンキョーな推理をしていた3人だが、流石に3人集まれば分かるであろう、犯人が自分しかありえないことを。さあ、頼む!
「「「真相は……輝夜さんの自殺だったんですよ!」」」
「違うっつってんだろぉぉぉ!!」
「ま、まさか私が自分で……」
「お前も信じるな!安心しろ、私だから!私がお前を焼き殺しただけだから!!」
何故か信じ始める輝夜、一方永遠亭のメンバー達は「な、なんだってー!」のポーズで固まっている。妹紅は必死で輝夜を説得しようとしているが、「自分が焼き殺したから安心しろ」とは常人から見れば物凄く異常なセリフであった。
「ああ、もう分かったよ……!」
そして、妹紅の中で何かがキレた。
「この場でもう一回輝夜を殺してやるよぉぉ!お前ら見ておけぇぇ!!」
妹紅は右手に炎をまとい、輝夜を殴ろうとした。
しかし、輝夜は悲痛な面持ちで叫ぶ。
「やめて妹紅!!」
「なんだ、輝夜、今更命乞いか?」
「殺し合いならいつでも応じてあげるわ。だけどこんな見せしめのために殺されるなんてまっぴらよ。こんな殺し合いには応じないわ。」
「でも、ここでやらないとお前が自殺なんていうわけわからん真相に!」
「それでいいわよもう。周りの目はどうでもいいわ。私はちゃんと分かってるから、妹紅が犯人だってことを。」
「輝夜……」
雰囲気はまさに恋人同士だが、そこに用いられている単語が物騒すぎる。しかしこの場に、そのことにツッコむ者は存在しなかった。
「なるほど、どうやら真相を暴くのはヤボだったようだね……ま、私は最初から分かっていたけど。」
「えー、すべては私の読み通りだったわけですが、あえて明言は避けましょ~う。」
「謎は全て解けたわ!幻想郷は爆発する!」
3人の名探偵も心を改め(?)、それっぽいことを言って退場していった。
鈴仙、永淋、てゐの3人は何時の間にかハンカチを出して涙をぬぐっている。
「じゃあ、行こうか輝夜。」
「ええ、今夜も楽しませてね?」
そして甘い雰囲気のまま、二人は手をつないで竹林へと歩みを進めた。
今度は邪魔者が入らないように、二人だけの時間を楽しめるように。
「おらぁぁぁぁ!!死ねぇ輝夜ぁぁぁ!!!」
「おほほほ!!妹紅殺人事件!犯人は私よぉぉ!!!」
これは、幻想郷でもっとも物騒ないちゃつきであった。
了
本来なら兎達も寝静まり静寂が訪れるはずのこの時間、
今日この時に限ってはざわざわと喧騒が鳴り響いていた。
兎達は慌てふため、皆一様に主である蓬莱山輝夜の部屋の前にたむろしている。
蓬莱山輝夜が、何物かに殺されたからだ。
死体は未だ輝夜の部屋に置かれたままになっていた。
弾幕で身体が貫かれ、何故か全身に火傷を負っている。
部屋は荒れていてここで犯人と争った形跡があり、窓ガラスも割られていた。
そして、その部屋に今、4人の容疑者が集められた……
「輝夜……どうしてこんなことに……」
「姫様ぁ……」
「はぁ……早く帰りたいウサ……」
上から順に永琳、鈴仙、てゐである。永琳は難しい顔をして考え込み、
鈴仙は涙目になっている。てゐは、悲しむ様子も無くだるそうにしていた。
「話は聞かせてもらったよ!」
とそこに、扉を開けて一人のネズミ女が入ってきた。
「だ、誰!?」
「事件のあるところに探偵が現れるのは当然のこと……私の名は!」
「身体は1ボス、頭脳は6ボス、その名は、名探偵ナズリン!」
(ツッコむべきところだろうか、ここは。)
部屋に集められた4人のうちの一人である妹紅は一人頭を悩ませる。
しかし周りを見るとまったくのノーリアクションだったので、自分も無視することにした。
「さて、ここにいる皆は、皆被害者である輝夜さんと親しかった者達だね。
この中に犯人が居ると見て間違いなさそうだ。
ではまず、今夜どこで何をしていたかを教えてほしい。要はアリバイというヤツさ。」
ナズーリンは勝手に仕切り始めた。
とは言えこのままの状況でもラチがあかないと思ったのだろう、
「……わかったわ。」
まず永琳が名乗りをあげ、言われた通りに話し始めた。
「私は部屋で一人、ずっと薬の整理をしていたわ。」
「へぇ、それを証明する人物は?」
「ミスがあってはいけなかったし、うどんげも中に入れなかったわ。
夜の間は私以外は誰も入らなかったわね。」
「つまりアリバイを証明はできないということだね?」
「残念ながらね。」
続いて鈴仙
「私は……あの、ずっと部屋に居ました……」
「それを証明する人物は?」
「いえ、誰も……」
「つまりあなたもアリバイは無いということだね!」
「ちっ、ちがいます!私は姫を殺してなんかいません!」
声を荒げる鈴仙。ギャラリーの兎達も
『そうだそうだ!鈴仙様が殺すわけないじゃないか!』
『いや、あの動揺っぷり、あれは怪しいな……』
『言ってるのよ!あの方がそんなことするわけないじゃない!』
などと好き勝手に騒いでいる。
そして、次は因幡てゐ
「あなたはどうですか?てゐさん。」
「黙秘権って、知ってるウサか?」
「……ほう、しゃべりたく無いというんだね?何かやましことでも?」
「さあてね。私にだってプライバシーがあるウサ。クックック……」
怪しく笑うてゐ。ギャラリーも
『あやしい!あやしすぎるぜ!』
『絶対てゐ様が犯人よ!間違い無いわ!』
『まて、落ち着け、これはミスリードかもしれないぞ!』
と騒いでいる。どうやら兎達からは一番疑われているようだ。
さて、次は私の番だな。
「さて、藤原妹紅さん、君はあの時間何をしていた?」
「私か?私は……」
「輝夜を殺していたな……!」
「なるほど、つまり全員に犯行の可能性があるというわけだね……」
「うおおい!ちょっと待て!!」
妹紅は慌ててナズーリンに駆け寄った。
どう考えても今の反応はおかしいだろう、探偵を名乗るならここはスルーしてはいけないだろう、という思いをこめて。しかしナズーリンはうざったそうに、それはもうとてもうざったそうに妹紅をあしらう。
「なんだ君は。捜査の邪魔をしないでくれないか。」
「しないでくれないか……じゃない!
今私が思いっきり自白しただろう!なんで何事も無く話を進めようとしてるんだ!」
「ふふふ、しかし状況を見れば推理はたやすい。死体の状況をよく見てほしい。」
「無視すんな!」
妹紅がぎゃーぎゃー騒いでいるのを無視しつつ、
ナズーリンは死体の火傷の痕を指差した。
「見たまえ。酷い火傷の跡だ。ここまで酷い火傷はなかなか無い。
こんな火傷の痕をつけられる人物と考えれば、自ずと犯人は見えてくるのだよ。」
その推理を聞いて妹紅は目を輝かせた。
「おおっ!探偵さんなかなかいいとこつくじゃないか!」
「ふふ、ありがとう。では続けるよ。
これほどまでの火傷を与えることが出来る人物は一人しかいない!
その人物とは!」
「その人物とは!」
「八意永琳、君だ!!」
「なんでだよっ!!」
ビシッ!
再びナズーリンに鋭いツッコミを入れる妹紅。
そんな妹紅を無視しつつ、永琳はナズーリンの前に一歩踏み出した。
「ふふ……面白いことを言うネズミね。
私がどうやってこんな火傷を負わせたというのかしら?」
「……薬品だよ!」
「……!!」
「確かに君は炎を出すことも出来ないし彼女を燃やすことも不可能だ。
しかし、何も火傷は炎だけがもたらすものじゃない!
非常に濃度の強い薬品、例えば塩酸などでも火傷は負わせられるんだ!!」
「だ、だとしても!私には動機が無いわ!」
「残念だが、君が姫のぐーたらさにうんざりしていたという情報は既に得ている!
里の守護者が君が愚痴っていたことを証言してくれたよ!」
「くっ……!」
妹紅はなにやら白熱してきた推理戦を眺めながら、
『炎を出すことも出来ないし』のくだりのあたりで自分の手から炎を出してみた。
「ちょっと、熱いウサ。」
「こんな時に何遊んでるんですかっ……ふざけないでくださいっ……!」
怒られた。
(私か?私が悪いのか?)
妹紅が世の中の理不尽さをひしひしと感じ始めたその時、
「え~、ちょっとお待ちくださ~い。」
何やら間延びした声が事件現場に響いた。
気持ち良く持論を展開していたナズーリンは不機嫌そうに叫ぶ。
「誰だ!せっかくいいところだったのに!」
「えー…ふふふふふ、どうもこんばんは。」
現れたのは古明地さとりであった。
しかし何故か何時もの服装では無く、黒いコートを着込んでいる。
「えー、ルーミアさん、お願いします。」
「バイトなのかー」
何故かルーミアが現れ、あたり一面が暗くなった。
そしてさとりだけがライトアップされ、得意げにニヤニヤと笑っている。
周りの面々もそれに驚くこともなく、ただ静かに暗闇と同化している……妹紅を除いて。
「えー、どうやらこの事件はもう解決です!
心を読んで10秒で解決余裕でした!
今回の問題は……輝夜さんを殺す動機を持っていたのは誰なのか!
ヒントはズバリ……とくにありませーん。
是非みなさんも第三の目を身につけてください。
古明地さと三郎でした。」
さとりが一通りしゃべり終わると、あたりを包んでいた暗闇が無くなった。
謎の推理前トークも、巳も蓋もない有様である。さとり妖怪になれとでも言うのだろうか。
金一封をさとりから受け取ったルーミアが、「やはり世の中金なのかー」と言いながら窓から外へと出ていった。
「んふふふ、失礼しました。じゃあ始めましょうか。」
にやにやと笑うさとり。しかし妹紅は期待していた。
先程の演出は意味不明であったが、こいつは心を読む妖怪であると聞く。
確かに心を読めばコイツの推理が外れることなどありえないであろう。
妹紅は全力で輝夜への憎しみを思い浮かべた。
(さあ!さとり!私の憎しみを読みとってくれ!)
さとりはゆっくりと手を上げ、自らの目で見た情報から犯人を指差そうとしている。
(輝夜憎い輝夜憎い輝夜憎い輝夜肉い……あ、間違えた輝夜憎い……)
「この事件の犯人……それは……」
(輝夜憎い……そうだ私だよ……輝夜憎い……)
「鈴仙さんです!!」
ズビシッ!!
さとりが力強く鈴仙を指差す。
「なんでだよっ!!」
ズビシッ!!
妹紅もそれと同時にさとりにツッコミを入れた。
先程のナズーリンに対するものと合わせて、三回目のツッコミである。
「わ……わたしが……?」
一方の鈴仙は、信じられないといった表情でさとりを見ていた。
そのさとりにツッコミを入れた妹紅のことは、何故か見えていないようである。
「ふふふ、悲しんでいるフリをしても私の第三の目はごまかせませんよ。
あなたは、輝夜さんから虐待を受けていましたね!」
「な……どうしてそのことを!!」
「そして最近寝る前には、『姫様死なないかなあ』とつぶやいていたこともお見通しです!」
「そんな!ちゃんと布団を被って外に声が漏れないようにしてたのに!」
「更に極めつけには……今あなたの心は悲しみの中に安心・喜びの感情も混じっているということ!!」
「……ふふっ、そこまで読まれてちゃ、誤魔化せないわね。」
それまで落ち込んで涙を流していた姿とは一変し、鈴仙は私でもびっくりするような冷酷な表情をさらけ出した。
「そうよ、確かに私は姫様を憎んでいたわ……!
私の付け耳のスペアをヤフオクに出された時はいっそどうしてやろうかと思った……!」
(やっぱりつけ耳だったのか……しかもスペアまで……)
妹紅は一人新事実に驚いていた。
「でも心を読めるあなたなら分かるはずよ。私は殺していない。
そんな思考読めないでしょう?」
「確かに……あなたの心を読んでも殺した場面は出てこない。
しかしあなたには波長を操る能力がある。自分の心の波長を私に読まれないように狂わすことも不可能ではないはず。」
「ふふ、なら証拠を出してみなさいよ。」
「んふふふ……それが難しいんですよねぇ……しかし必ず尻尾を掴んで見せますよ。」
「楽しみにしてるわ……」
何やらこちらでも推理戦が白熱してきていた。
一方のナズーリンと永琳も未だに言い合いを続けている。
(こんなに分かりやすい犯人はいないと思うんだけどなー。
ひょっとして私、存在感ないのか……?)
妹紅がツッコミに疲れてちょっと切なくなってきたその時であった。
「待ちなさい!!」
再び、窓から新たな人物が侵入してきた。
まるで尼さんのような格好をして、雲で出来た親父をひきつれている。
言い合いを続けていた面々も、一時中断して彼女を見る。
「お前は確か……一輪だっけか?命蓮寺の……」
妹紅は自分の記憶を頼りに彼女の名前を思い出した。
確か命蓮寺というお寺が最近人里に出来て、その中に確か一輪が居たような気がする。
この前慧音と一緒に訪れたこともあるから間違い無い、妹紅は確信していた。
「ああ、違いますよ。」
「あれ?そうだったっけ。雲居一輪じゃなかったっけ?」
「漢字はそれで合ってますけど、切る場所が違うんですよ。私は……」
「『雲居一 輪』よ!」
一輪……もとい、雲居一は高らかに訂正した。
何が違うねんと呆れる妹紅とは対照的に、さとりとナズーリンは驚愕の表情を浮かべる。
「ま、まさか伝説の探偵、雲居一雲山の……」
「そう、孫よ!この事件は必ず解いて見せる、雲山の名にかけて!!」
「『雲居一少女の事件簿』はノンフィクションだったのか……っ!」
なんのこっちゃ。妹紅はさっぱり理解が追いつかなかったが、どうやらさとりとナズーリンの驚き様から見るにコイツも探偵であるらしい。それも非常に優秀な。
(よくわかんないけど、コイツなら真相を暴いてくれるかも!
さあ!推理してくれ!犯人はここに居るぞ!)
妹紅の心の叫びが聞こえたかは分からないが、雲居一は推理を開始する。
「ポイントは、窓よ。よく考えてごらんなさい、普通に輝夜さんの部屋に入ることの出来る人物が、窓を割ってまで侵入しようと考えるかしら?つまり……」
「犯人は外部の人間ということだな!」
「あ、すいませんそこのもんぺさん、ちょっと話に割り込まないで貰えますか?大事なとこなんで。」
「え、あ、ごめん……」
若干腑に落ちない部分もあるものの、妹紅は素直に謝った。
自分が悪いと思ったら謝る、これが長生きの秘訣である。
「では続けます。つまり、犯人は普通に部屋に入ることをしない人物、すなわち……」
「すなわち!?」
「因幡てゐ!あなたです!」
「いやいやいやいや!!」
妹紅が本日4回目のツッコミを入れるが、例によって雲居一は妹紅に目も触れずに推理を続ける。一方のてゐは余裕ある表情を崩していない。
「ウッサッサッサ……よくわからないウサね、どうして私になるウサ?」
「イタズラを好むあなたなら、窓ガラスを割って入るぐらいのイタズラはするわよね?」
「……まあ、否定はしないウサ。」
いや否定しろよ!と妹紅は全力でツッコみたかったが、どうせツッコミを入れたところで無視されるであろうことは分かりきっていたので黙っておくことにした。何度も繰り返されれば、いくら蓬莱人と言え心が折れるのである。
「でも、動機は?私に姫様を殺す動機なんてないウサ。」
「そう、あなたに動機などない。しかし、イタズラが効きすぎてしまって死んでしまったとしたら……?」
「な、そんなことあるわけないウサ!」
「過去にあなたが輝夜さんの夕飯にマムシを混入するというイタズラをして、本当に輝夜さんが死にかけたことがあることぐらい、私にはお見通しですよ!」
「どうしてそんなことを知ってるウサ!お前か!?お前が言ったウサか!?」
動揺したそぶりで周りのウサギ達に怒鳴りちらすてゐ。先程までの余裕はまったくなく、その姿はまるで真相を見破られてしまい最後のあがきをする犯人そのものである。
しかし忘れてはいけないことが一つ。
「犯人は、私なんだよっ……!」
妹紅をそっちのけで、ナズーリンVS永淋、さとりVS鈴仙、一輪VSてゐの推理バトルが繰り広げられ、流石の妹紅も我慢の限界に達したようだ。
「おまえらぁぁ!聞けぇぇ!!犯人は私だぁぁぁ!!!」
炎の翼を出しながら大声で自白する妹紅。冷静に見るととてもシュールな絵柄であるが、あいにく今の妹紅にそこまでの気はまわらなかった。
しかし、名探偵達は妹紅に冷ややかな目線を向けながら
「誰をかばっているのか知らないが、見え透いたウソはよすんだ。」
「ん~心を読むまでもありませーん。あなたはシロです。」
「そもそもこういう場合、自分から犯人だと叫ぶ奴が犯人であったためしが無いのよね。」
と、妹紅の叫びを軽く無視する。妹紅が再び叫びをあげようとした、その時であった。
「う、う~ん……」
どこからかうめき声が聞こえた。その方向を見ると、輝夜がもそもそと動いている。
先程まであった弾幕の傷や火傷も治っており、どうやらリザレクションが完了した様子である。
「か、輝夜!」
「あら?妹紅、それに永淋達に……誰?なんでこんな人が集まっているの?」
リザレクションは言わば普通の人間で言う起床に近いものがある。故に、リザレクション直後がまるで寝起きの時のように頭がすぐには働かない。輝夜もその状態で、ぼんやりとした目で周りを見渡していた。状況が掴めずにいるようだ。
「せ、説明は後だ!とにかく輝夜、証言してくれ!お前は私が殺したって!」
「え?そんな……恥ずかしいわ。」
頬に手を当て、「ぽっ」という効果音と共に頬を赤らめる輝夜。
どうやら彼女の価値観の中では殺し合いはキスやらチョメチョメやらと同じようなニュアンスらしい。
「は、恥ずかしがることないって!さあ、ほら、早く!」
「で、でもこんな大勢の前で……知らない人もいるし……」
「いいんだよ!とにかく頼む!言ってくれよ、『私は妹紅に殺されました』って!」
「私は妹紅に『○されました』?」
「伏字にするなああああ!!!」
やんややんや。
輝夜と妹紅がどつき漫才をしている間、3人の名探偵はひそひそ話を始めていた。
そして輝夜と妹紅のどつき合いが終わる頃、3人は場を見渡して告げた。
「3人で知恵を振り絞った結果、ようやくこの事件の真相を見ぬいたよ。」
「んふふ~我々は一番怪しい人物を見逃していたようですね~。」
「灯台元暗しとはまさにこのことだわ。」
おっ、これは!?
妹紅が期待に満ちた目で3人を見つめる。これはいい流れではないだろうか。
いままでスットンキョーな推理をしていた3人だが、流石に3人集まれば分かるであろう、犯人が自分しかありえないことを。さあ、頼む!
「「「真相は……輝夜さんの自殺だったんですよ!」」」
「違うっつってんだろぉぉぉ!!」
「ま、まさか私が自分で……」
「お前も信じるな!安心しろ、私だから!私がお前を焼き殺しただけだから!!」
何故か信じ始める輝夜、一方永遠亭のメンバー達は「な、なんだってー!」のポーズで固まっている。妹紅は必死で輝夜を説得しようとしているが、「自分が焼き殺したから安心しろ」とは常人から見れば物凄く異常なセリフであった。
「ああ、もう分かったよ……!」
そして、妹紅の中で何かがキレた。
「この場でもう一回輝夜を殺してやるよぉぉ!お前ら見ておけぇぇ!!」
妹紅は右手に炎をまとい、輝夜を殴ろうとした。
しかし、輝夜は悲痛な面持ちで叫ぶ。
「やめて妹紅!!」
「なんだ、輝夜、今更命乞いか?」
「殺し合いならいつでも応じてあげるわ。だけどこんな見せしめのために殺されるなんてまっぴらよ。こんな殺し合いには応じないわ。」
「でも、ここでやらないとお前が自殺なんていうわけわからん真相に!」
「それでいいわよもう。周りの目はどうでもいいわ。私はちゃんと分かってるから、妹紅が犯人だってことを。」
「輝夜……」
雰囲気はまさに恋人同士だが、そこに用いられている単語が物騒すぎる。しかしこの場に、そのことにツッコむ者は存在しなかった。
「なるほど、どうやら真相を暴くのはヤボだったようだね……ま、私は最初から分かっていたけど。」
「えー、すべては私の読み通りだったわけですが、あえて明言は避けましょ~う。」
「謎は全て解けたわ!幻想郷は爆発する!」
3人の名探偵も心を改め(?)、それっぽいことを言って退場していった。
鈴仙、永淋、てゐの3人は何時の間にかハンカチを出して涙をぬぐっている。
「じゃあ、行こうか輝夜。」
「ええ、今夜も楽しませてね?」
そして甘い雰囲気のまま、二人は手をつないで竹林へと歩みを進めた。
今度は邪魔者が入らないように、二人だけの時間を楽しめるように。
「おらぁぁぁぁ!!死ねぇ輝夜ぁぁぁ!!!」
「おほほほ!!妹紅殺人事件!犯人は私よぉぉ!!!」
これは、幻想郷でもっとも物騒ないちゃつきであった。
了
あと雲居一少女には素直に感心。うますぎるwww