「あっめあっめふっれふっれ母~さ~んが~♪」
「車でお迎え楽できるー♪」
無邪気な子供たちの歌に続く笑い声。
運転手であるだれかの母親がワゴン車を運転している。
その走っていく車を一人の少女が見ていた。
傘もささず、雨に打たれ続けている。
いや少女の隣に傘はあった。
紫色に色とりどりの花がプリントされているその傘は、少女の足元で二度と起きることの無いだろう眠りについていた。
傘を傘たらしめている部分はビリビリに破れ、それを支える骨もぐしゃぐしゃに折れている。
まるで、沢山の人間に踏みにじられたかのように。
少女はずっと雨に打たれていた。
どこかで何かが切り替わった音がした。
そして世界は暗転する。
現実が幻想に変わる。
幻想の現実を映しだす。
無邪気な子供たちの歌に続く笑い声。
(男の荒い息遣いの後に続く人間達の笑い声)
運転手であるだれかの母親がワゴン車を運転している。
(人間のリーダーが撤退の指示をだしている)
その走っていく車を一人の少女が見ていた。
(走り去ってイく人間達を一本の傘が見ていタ。)
傘もささず、雨に打たれ続けている。
(傘は少女の横で、舌を出し雨に打たれ続けている。)
いや少女の隣に傘はあった。
(傘の隣にはには少女がいた)
紫色に色とりどりの花がプリントされているその傘は、少女の足元で二度と起きることの無いだろう眠りについていた。
(まだ未来がキラキラと輝いていたであろう少女は、傘の隣で二度と起きることの無いだろう眠りについていた。)
傘を傘たらしめている部分はビリビリに破れ、それを支える骨もぐしゃぐしゃに折れている。
(真新しかった綺麗な洋服は無理やり破かれ、少女の体はアザに塗れ、いたるところがありえない方向に曲がっている。)
まるで、沢山の人間に踏みにじられたかのように。
(まるで、沢山の人間に踏みにじられたかのように。)
少女はずっと雨に打たれていた。
(少女はずっと雨に打たれていた。)
「日常と異常は常に隣り合わせ」
少女の傍らに紫の傘を差して立っているのは、幻想の賢者。
八雲 紫。
「貴女にとって之は異常かしら」
「それは幻想郷でも異常なのかしら」
人間が妖怪を襲うこと。
退治ではなく、ただ欲望のままに襲い、全てを奪う。
「妖怪を退治するのが巫女ならば」
紫は少女であったものに、少女の物であろう傘をそっと被せた。
紫の視界から少女の姿が消える。そこにあるのは綺麗に咲いた一輪の大きな花。
隙間を開いた紫はその花に背を向け、濡れた地面を踏みしめる。
そして体を隙間に半分沈め、誰に言うでもなくただ小さく呟く。
「人間を退治するのは……」
「どう、参考になったかしら?」
紫の話に傘のおばけである少女は、木でできたベンチの下に隠れてぶるぶると震えていた。
此処は人里の茶屋。外のベンチでお団子を食べられるちょっとしたグルメスポットだ。
そこのベンチの下に隠れている少女こそ、べろべろばーが良く似合う「多々良 小傘 / Tatara Kogasa」ちゃんだった。
人里ではちょっとした隠れアイドルとして人気があるが、本人はまったく自覚がない。
ところで、どうして小傘がベンチの下でぶるぶると震えだす事になったのかとういうと、
それは3時間前。
今日もいつものように人を驚かそうと、小傘はベンチの下に隠れていたのだが……
「よーし、ここに隠れて今日こそ人間を驚かせるぞ!」
茶屋の前で声高らかに宣言した小傘は、もそもそとベンチの下にもぐりこんだ。
しかしそれは道行く人からしたら頭が丸見えで、茶屋の店内から見たらベンチから突き出たお尻がプリチーで商売繁盛だったので、誰も何も言わなかった。
そしてだれもベンチには座らなかった。座ったが最後、小傘が出てきてしまうからだ。
しかしそこにふらっと現れたのが、団子の評判を聞いてやってきた紫だった。
「団子♪団子♪っと、やっぱり込んでるわねー。あれ? あのベンチだけ誰も座ってないわ」
明らかに誰も座っていないベンチ。の割りに繁盛して込み合っている店内を見て紫は不思議に思った。
だがせっかく開いているなら、と気にせず座って、幽々子へのお土産もついでに頼もうかしらと考えている紫。
そう、団子の事しか頭に無かった紫は気が付かなかったのだ。人の視線が突き刺さる小傘の存在に。
そして、悲劇は起こった。
「べろべろば"ゴツン!"あいたーーー!!」
「ひゃぁん!」
ベンチの下で待ち続けて6時間。やっと回ってきたチャンスに小傘は張り切りすぎた。
一気に外に出ようとしてしっぱいしてベンチに思いっきり背中をぶつけたのだ。
その痛さは息が出来ないほどだったのだろう。小さくうずくまってぷるぷると震えている。
しかしそれは人里ではよくある事だった。それよりも悲劇だったのは、紫である。
「ひゃぁん!」それはとても清んだ綺麗な乙女のような声だった。
「ひゃぁん!」それは常に人を食ったかのような彼女からは想像も出来ない行動。そしてそれは本人が望まないところで彼女のあだ名が付けられた瞬間だった。
後の文々。新聞では語られている。
「少女ゆかりん」誕生の瞬間!! 少女ゆかりんはこうして生まれた!! 少女ゆかりんの666個の秘密とは!?
商売繁盛難波の商人や♪ 今日も文々。新聞は好調に売れているらしい。それはともかく。
彼女たちは出会った。方や大妖怪、方や人里のアイドル妖怪。
出会ったからには、はいさようならとはいかず、二人してベンチに腰掛て団子を頬張っている。
「貴女こんなところで何をしていたの?」
「えっと……その……」
恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていた紫は、さすが生きている年季がちがうのか、すぐに復帰を果たした。
といっても文々。新聞に写真が載っているところを見ると、完全復帰ではなかったようだが。
小傘はまだ背中が痛いのか服を胸の下までたくし上げ、小傘の傘に付いている舌に摩ってもらっている。
単純に声を出すと背中が痛いのか、大妖怪を前に緊張しているのかは分からないが、小傘はなかなか声を紡ごうとはしなかった。
「あの……」
「あ! 思い出したわ。貴女、小傘ちゃんでしょう?」
まさかのいきなりの「ちゃん」つけに目を丸くする小傘。
その見開かれたオッドアイを上から見下ろすように、にっこりと紫は微笑んだ。
何か話をするときは大体扇子で口元を隠す紫だが、今は化粧もしていない艶やかな唇が楽しいと、紫の心境を表現している。
ちなみに紫が扇子で口元を隠す理由は口臭ではないかと言った紅魔館の主は、一週間の間自宅を留守にした。
その間紅魔館はフランを城主として平和な時を過ごしたらしい。
それはともかくとして、小傘は紫からの質問に慌てて答えた。
「あ…はい、そそそそうです」
「霊夢の所にきた泥棒猫、こほん。妖怪の山の巫女から聞いたとおりね」
「早苗のこと? さ、早苗は私のことなんて言ってた、じゃない、なんて言ってました?」
わざわざ丁寧な言い方に直す小傘に、紫は楽に話していいわよと言い、お茶を一口飲んだ。
小傘も、すこし戸惑いながらも、うん! と元気に返事をしてお茶を一口の飲んだ。
ほっこり。先ほどまで合った気恥ずかしさや緊張など、お茶の前では無くなる。霊夢が言ってたから間違いない。
早苗も言ってたから間違いない。早苗の場合、霊夢の受け売りらしいけれど。
そんなことを話ながら団欒していると、ふと小傘が俯いた。
「ぐすん。どうして皆驚いてくれないのかなぁ」
最初の紫の質問の続きである。なぜベンチの下にいたのかという質問に、小傘は人を驚かしたかったと言った。
「あら、私は驚いたわ。あんなに驚いたのは……年ぶりかしら」
「え!? ○☆◇ねnむぐぅ」
大声をあげた小傘の大きく開いた口に、紫は団子をほうりこんだ。
わざわざ年だけ小さな声で言った意味が無いでしょう。めっ!と説教まで始めている。
小傘はただコクコクとうなづく。団子を飲み込むのに必死だった。
「ところで貴女は人を驚かしたいのかしら? それとも怖がらせたいのかしら」
「んぐんぐぷはぁ……えっと、どういうことかな?」
なんとか団子を飲み干した小傘に対し、紫はついに扇子を取り出した。
どうやらスイッチが入ったらしい。
「教えてあげるわ。驚きっていうのはね……」
紫は言うが早いか小傘の前に隙間を開くと、そこに両手を入れた。
小傘は突然目の前に開いた隙間に目を輝かせる。
何か出てくるのではないかと、夢中になっているようだった。
その様子を見た紫はなにやら怪しげな笑みを浮かべると、小傘の後ろにも隙間が現れそこから手を出す。
そして小傘の耳元に手を持っていくと、一気に両手を強く叩いた。
パン!!
「きゃあぁぁぁああ!」
いきなり耳元でなった音に驚いた小傘は、つい紫に抱きついてしまった。
紫は抱きつかれる前に咄嗟に隙間をしまい、ウェルカムとばかりに小傘を抱きしめる。その間実に0.2秒。
ドキドキと心臓の音が胸を通して伝わってくるくらいに強く抱きついている。
「ふふ。これが……驚きよ」
なにやら熱い吐息が混じってるが、小傘はそんなことを気にしている余裕も無く、ドキドキを押さえようと必死だった。
「ぐすん。びっくりしたぁ」
「ごめんなさいね。貴女を見ていると何かこう、ふつふつと湧き上がるものがあるのよ。こういう感情はなんて言ったかしら」
「きっと、さでずむ」
「そうそうそれそれ」
紫は小傘の柔らかい髪に手を伸ばし、頭をゆっくりと優しく撫でる。
小傘のどきどきしていた心臓の鼓動が落ち着き、リズムのいいトクトクとした音を刻み始めた。
それを確認した紫は、小傘の耳元で優しく語りかけた。
「次はお姉さんが恐怖を教えて・あ・げ・る♪」
「ドさでずーむ!?」
小傘がベンチの下に再びもぐりこみ、ぶるぶると震えだすのはこの数分後であった。
「悪の十字架って話はね……」
「あーあー聞こえなーい何も聞こえないもん!」
「霊夢直伝! 服の隙間から手を入れ体中くまなくくすぐりまくりんぐ!」
「きゃはははははは聞く! 聞くからやめてええあはははは!」
「あら、見た目より結構……かなり大きいのね」
今日も幻想郷は平和です。
口元の扇子は、話す時に口を開けると皺ができてしm
これです、これ!
いやぁ、まさか思い出せずに暫く考えていたことがSSで書かれるとは、ラッキーでした。懐かしいなぁ。
この後怖がってた小傘が馬鹿にしたなーとかいって怒って、さらにそこを紫がつっつくわけですね。
小傘可愛すぎる。
そこにロマンはあるのだろうか…
>「あら、見た目より結構……かなり大きいのね」
ゆかりん、そこの所もっと詳しく
実にかわいいなぁ
出落ちどころか出る前から落とす技術を身に付けた我に隙はなかった
>ああもうこがさかわいいなあ
抱きしめて頭なでなでして膝の上に乗せて一緒にお風呂にはいって一緒の布団で寝たい!
妹みたいなそんな存在なんですよね~
>いえいえ本当に可愛いのは小傘ちゃんの健康的なふくらはぎです。
マッサージと称して、そのすべすべでぷにぷにはふくらはぎを触るとは……おぬしもなかなかのテクニシャンじゃのぅ
>さらにそこを紫がつっつくわけですね。
「む~馬鹿にしたなー!」
「ふふ、じゃぁ次は本当に怖い「青い血」という話をしましょうか」
「そ、そそそそれは今度でいいかな。ほらお団子もお茶も無くなったし!」
「あ、店員さん。お団子とお茶の追加おねがいね」
「さでずむ追加!?」
>小傘さんは新米妖怪で子供みたいにみえて可愛くて仕方ないのかもなぁ
母性本能が全開の紫さんにそっと抱きしめられたら、ついお母さんって呼んでしまいそうで、それをからかわれて、
恥ずかしくてその胸に顔をしずめながらうーうー言うのは我と小傘だけの特権ですよ?
>そこにロマンはあるのだろうか…
双子の人形はこの世界にもきていたのか!
ま、まさか上海と蓬莱の本名は……
>ゆかりん、そこの所もっと詳しく
紫「ノーブラだったから隙間経由で緑巫女のブラを渡しておいたわ」
>そこのベンチの下に隠れている少女こそ
すぐに修正します! 情報感謝!
>実にかわいいなぁ
小傘ちゃんは行動全てがかわいいですよね
背伸びして傘をさしてくれる小傘ちゃん……妄想が爆発したのでちょっとSSかいてきまs(ry
>これは良いさでずむ!
愛とかいてさでずむと読みます
幻想郷は愛に溢れてるナァ
ちょっとお茶飲みに行ってくる!
あるぇ? 夢の中で直したのかな?
これで直ったと思います。情報感謝!
>ちょっとお茶飲みに行ってくる!
二つ並んだ小さな団子と大きな団子を店内から眺めるだなんてそんな……
凄いビックリした
その天然ぶりにww
もうずっと小傘ちゃんがかわいくて俺はそれだけで幸せ
(傘の隣にはには少女がいた)
にはには?にぱー