Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

河童の発明発表会

2010/01/17 19:01:38
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「見て早苗!ついに完成したよ!」
「何ですか?つまようじサイズの有人ロケット?」
「違う!大体、そんなサイズじゃ誰も乗れないでしょうが!」
「じゃあ、弁当箱型のミサイルランチャー?」
「それも違う!何だって私がそんな物騒なもの作るのさ!?」
昼下がりの守矢神社。境内を掃除していた早苗の元に現われたのは、発明好きな河童のにとりだった。
彼女は何か発明品が出来上がると、こうして早苗や文の元などに、披露しに向かっているのだ。いわば、小さな発表会である。
その度に、こうやってからかわれるのもいつものことだが。何だかんだ言いながら、彼女もまた楽しんでいるので、いいのだろう。

にとりは早苗に対してツッコミ疲れたのか、はあはあと荒い息を上げている。
「つっこんではあはあって、にとりさんはとんだエロガッパですね」
「誰がエロガッパだよ!?」
「冗談ですよ」
クスクスと微笑む早苗。
妖怪に対してこうまでマイペースを保てる人間すげえなどと思いつつ、にとりは怒鳴ると、大きなため息を一つ吐いた。

「もう。ちゃんと聞いてよ、早苗。今度のはすごい発明品なんだから」
「あはは、すみません」
おかしそうに笑う早苗を見つつ、つられたようににとりも笑う。
そして、鳥居の側に置いてあった発明品を、早苗の元まで運んできた。
「完成したのはこれ!ジャーン!」
そう言ってにとりが指差したのは、一見何の変哲も無い、大きめなキャンバス。
発明品と聞き、もっとメカメカしいものを想像していた早苗は、思わず拍子抜けしてしまう。
早苗は頭上に疑問符を浮かべつつ、にとりに問いかけた。
「これ、絵を描くキャンバスですよね?これが発明品なんですか?」
「ああ、そうだよ?」
「だって、どう見たって普通のキャンバスですよ……?」
難しい顔をして、キャンパスを見つめる早苗。
そんな早苗を見て、にとりは不敵な笑みを浮かべる。
「ふふん、分からないようだね?早苗」
「うーん、悔しいですけど分かりません」
お手上げとばかり両手を上げる早苗。
そんな早苗の様子を見て、満足したようににとりはうんうんと頷いた。
「よろしい。それでは実践してあげよう」
そう言って、にとりが取り出したのは一本の筆。
にとりはその筆で、キャンバスに向かって何やら球形を描いていく。

「きゅっきゅっきゅー、と」
「初代Q○郎とは随分古いですね、にとりさん」
「さあさあ、出来たよ!早苗!」
ボケを軽くスルーされ、少々凹む早苗。
そんな早苗だったが、描きあがったキャンバスを見て怪訝な表情を浮かべる。
「この絵……爆弾ですよね」
「そうだよ?」
「これが、どうかしたんですか?」
早苗の言うように、キャンバスには、それはもう見事な爆弾の絵が描かれている。
しかし、いかに見事でも、それだけでは発明とは到底言えないだろう。ただの絵である。
「もしかして、からかってます?」
「まあまあ、ちょっと待ちなよ」
訝しげに訊ねる早苗に対し、にとりはにやにやとした笑みを浮かべながら答える。
「待ちなよって、一体何が……」
そこまで早苗が言いかけたとき、ちょっとした異変が起こった。
突如キャンバスからがたがたという音が響きだしたのだ。

「え、あれ……?」
目の前で起こる現象に、驚愕の表情を浮かべる早苗。
それもそのはず、キャンバスからにとりの書いたものと寸分たがわぬ爆弾が、ごとりと音をたてて落ちて来たのだ。
ご丁寧にも、その導火線には既に火まで点されていた。
「ええ!?これ、もしかして、描いた物を実体化する装置なんですか!?」
「驚いた?描いたものの色、形、大きさを記憶し、それと同じものをキャンバスから出力する画期的な装置!その名も『描いたら出てくる君1号』!」
「か、描いたら出てくる君1号……」
そのネーミングセンスはともかくとして、たしかにこれはすごい装置だ。
今のにとりの言葉が確かなら、どんなものを描いても出てくるということなのだから、まさに夢の機械である。
発表すれば、喉から手が出るほど欲しがる輩は山ほどいるだろう。というか、既に早苗自身もすごく欲しいと感じていた。
「大発明じゃないですか、にとりさん!これはたしかにすごいです!」
「ふふーん、褒めたって何にも出ないよ?」
そう言いながらも、鼻を高くするにとり。褒められて、決して悪い気分ではないのだろう。
(実に、実に完成まで3ヶ月……長い道のりだった……!)
これまでの苦難を顧みて、万感の思いのにとり。
しかし、誰かの驚く表情を見れば、そんな苦難などは瞬時に消し飛んでしまう。
だからこそ、にとりは発明がやめられないのだった。

「それにしても、よくこんなの思いつきましたね」
感心したような様子でそう言う早苗。
絵が実体化するなど、外の世界ではよくあるアイデアだが、自分では中々出すことのできない発想でもある。
にとりは、よほど考えに考えてこの発想に至ったに違いない。早苗は、そんな風に思った。
しかしにとりは、早苗の言葉を否定するように言った。
「ああ、これ?構想自体は自分で練ったわけじゃないんだ。早苗のおかげだよ」
「私のですか?」
その言葉に驚く早苗。自身でこんな仕組みの装置を考えたことなど、一度も無い。
何がわたしのおかげなのかと考え込む早苗。するとにとりは、早苗に対して微笑みながら言った。
「早苗の家でやらせてもらったゲームがあったでしょ?」
「ファミ○ンのカー○ィのことですか?」
「そうそう。それでさ、こんなので攻撃してくる敵がいたじゃん」
「……ああ、ペイ○トローラー!」
にとりの言葉を聞いて、早苗も思い出す。
たしかに、あのゲームには、絵に描いたものを実体化して攻撃してくるペイ○トローラーというボスキャラがいた。
にとりはそれを見て、何とかこのキャンバスを実際に作れないかと考えたのだという。
「なるほど。それで最初に描いたのが、爆弾なんですか」
「うん、敬意を表す意味でもね」
「たしかに、あのボスはよく出してきますものね、爆弾」
早苗は納得したように一つ頷き、再び興味深そうに、まじまじとキャンバスを覗き込んだ。

「これ、生物は出せないんですか?」
ふと、早苗は気になった点を聞いてみた。本家の方では、ザコキャラも普通にキャンバスから出てくるのを思い出したのだ。
もし生物も産み出せるのだとしたら、それはもう色々な意味で問題になりかねないが、同時にあらゆる可能性も秘めてくる。
そういった機械に対するニーズも、決して少なくないはずだ。絶滅が危惧されている動物だって、救えるかもしれない。
しかし、にとりは首を横に振りながら答えた。
「生物は倫理的な問題もあるし、技術的にもさすがに難しいねー。動物の絵が描かれた場合は、その形を模した人形が出るようになってるよ」
「あ、そうなんですか」
「そのかわり、無機物には強いよ!何てったって、キャンパスに内蔵されたコンピュータに、あらゆるもののデータがインプットされてるんだから!」
その言葉を聞いて、首をかしげる早苗。どうも今一つ、話が見えてこない。
「? どういうことですか?」
「だから、このキャンバスから出てくるものは決して、ちゃちなおもちゃじゃないってこと。ベッドを描けばデータ通りにちゃんとふかふかのものが出てくるし、氷を描けば冷たいし、本物とまったく同じ性能をひめた物が出せるってことさ!それに……」
説明を続けながら、どうだ!と胸をはらんばかりのにとり。その鼻は、天狗もかくやというほどに高くなっていた。
よほどこの発明に自信があるのだろう。実際、1号機とは思えないほどの高い性能を、このマシンは秘めていた。
しかし「所詮は1号機だし、爆弾といっても大したことはないだろう」と高をくくっていた早苗は、その「本物と同性能」という言葉に青ざめる。
「……え?それって、つまり」

つまり、爆弾を描けば、きちんと爆発するわけだ。それも、本物とまったく同じ威力で。

シューっと嫌な音が、辺りに響き渡る。導火線は、もう根元の方まで燃えきっている。



その日、守矢神社からは、大きな火柱が上がったという。
「……こんな爆発にも耐えられるくらい、耐久性抜群なのさ!」
「……(神社が半壊してそれどころではない)」

―――――――――――――

我ながらアホな話だなあ…ワレモノ中尉です。
前回コメント下さった方、ありがとうございました。

さて、今回もギャグです。ギャグなので、発明内容には突っ込まないで頂きたいです(^^;
にとりが何かすげーもんを作ったら、というテーマに加えて、某スレで一時期話題になった爆発オチも盛り込んでみましたが、いかがでしたでしょうか。

書いてる身としては、結構楽しかったですけどね。この二人は、案外こんな会話が似合うと思ったり。
毎度、こういう漫才めいた会話を考えるのは大好きですw

少しでも楽しんでいただければ幸いです。それでは。

関係ないけど「ペイ○トローラーにはボールが一番有効」とか嘘だろ…。
ワレモノ中尉
http://yonnkoma.blog50.fc2.com/
コメント



1.ずわいがに削除
やっぱ○イントローラーよりアド○ーヌでしょう。

ボールの使えなさは異常
2.名前が無い程度の能力削除
「爆弾」を描いたあなたの深層心理…

 『抑え切れない感情、コントロールできない衝動』

にとり大丈夫かw
3.名前が無い程度の能力削除
ペイント○ーラー懐かしいなw
ボス戦はカッターで遠距離からざくざくやるのが常套手段だったな
4.名前が無い程度の能力削除
ボールはうまく使えるとかなり強かったな
5.名前が無い程度の能力削除
キャンパスと聞いて真っ先にアドレーヌが思い浮かんだ
6.名前が無い程度の能力削除
ごめんよペイントローラー、カービィの絵かきキャラはアドしかでてこなかったよ。
キャンバスに神社描いたら復元できるのかな。
7.名前が無い程度の能力削除
これを阿求に持たせれば幻想郷の少女の抱き枕が手に入るんですね。
阿求さん、これに一枚サニーを(ry
8.謳魚削除
この後発明品からマイクを出した早苗さんが超弩級音痴を二回披露してにとりんをKOしつつ、何故か現れたスターロッドの欠片を取ってしまい、これまた何故かモザイクに塗れてマイクで絶叫し続けるのですね分かります。

ファミコン版限定ですけれど……。
9.奇声を発する程度の能力削除
ボールは本当に扱い辛いです…。
このお話を読んでたら久々にカービィをプレイしたくなりましたw