ナズーリンが居間に入ると、また雲山が分裂していた。
「見てムラサ! 雲山が協力して境界を弄ってるわ!」
「ワーオなんてこった! 聖が男になっちゃった!」
一輪とムラサがリビングできゃあきゃあと騒ぎ立てるのを見て、その場に居合わせたナズーリンは、とりあえず頭痛で頭が痛かった。
「どうしたのですかみんな、……って聖!?」
騒ぎを聞きつけた寅丸星が部屋に入ってすぐ、男性化した聖と直面した。
ブロンドの長髪に加えて顔立ちの良いイケメンの聖☆おにいさんを見た星の胸に、タンスの中から飛び出してきた八意永琳が放ったキューピッドの矢がぶっすり刺さった。
「ウオオオオオオオオオオ! ひ、ひ、聖いいぃぃいぃぃぃ!
生物学的にも問題ないから私とケッコンしてえええええ!」
「ぎゃー! 何をするのですか星ー!? 生物学的に問題なくても人間と動物じゃ倫理的に問題が……ってそこはらめえええええええええ!」
イケメンになった聖と、突然盛り始めた星が床の上でイチャコラし始めたのを見届けると、ナズーリンは現状把握のために、何かをやり切った表情の雲山・一輪・ムラサに顔を向けた。
八意永琳は何かをやり切った顔で満足そうに頷くと、再びタンスの中へ戻っていった。
「で……これはどういうわけなの?」
「いやー、雲山たちが力を合わせたら、妖怪の賢者にも匹敵する力が出るんじゃないかと思って」
「そしたらなんか境界弄れちゃってさー」
「きゃっ、星、そこはホントにダメですって、やっ、きゃん!」
「ひ、ひじっ、ひじりっ! ハムッ、ハフハフ、ハフッ!」
「あんた等に聞いた私がバカだった……」
眼前で繰り広げられる茶番に、ナズーリンはげんなりと肩を落とした。
ちなみに複数名の雲山のうち1匹はぬえが変化したものであるが、それはこの際瑣末事である。
「しかし雲山が境界を弄れる能力を持つなんて、放っておいてはいけない……気がする」
一人思案するナズーリンの眼前では、女体化した雲山たちが列を組んで回りながらキャリーオンしていた。
そろそろUNXILEは事業仕分けするべきだと、ナズーリンは強く思った。
◇
「むっ!」
「どうかなされましたか、紫様」
紫はあぶらあげのミソ汁を啜る手を止め、明後日の方向を向いた。
その方角には、洗濯バサミに挟まれて干されている橙のぱんつがあった。
紫はお椀をちゃぶ台に置くと、両手でちゃぶ台をひっくり返した。
「こら藍! 式神にはドロワーズを穿かせなさいと言っているでしょう!」
「だ、だって橙がぱんつが良いって……」
「だってじゃありません! 藍には罰を与えます! 一週間橙と一緒にお風呂入るの禁止!」
「えええええええええ!? 私の毎日の唯一の楽しみを奪うおつもりですか!?」
「悪い子には橙の裸見せてあげません!」
「殺生なあああああああああああああああああ!?」
オーマイガーと頭を抱えながら、あまりの絶望にブレイクダンスで床をのたうち回る藍。
襖に隠れてその光景を眺めていた橙は、式神辞めようかと真剣に悩んでいた。
◇
とんでもない異変が、突発的に各地で起きた。
紅魔館が蒼魔館に変わりレミリア・スカーレットがレミリア・ブルーレットになったり、
もっとロリ化してペドリア・ブルーレットに変化したり、
西行妖が満開になって幽々子が反魂したり、
竹林ごと永遠亭が炎上したり、
小町の胸が急激にしぼんだり、
山の二柱が持ってた「さなえの成長記録ミ☆」と称したアグネスが飛んできそうなアレな写真集のコピーがバラ撒かれたり、
らぶらぶちゅっちゅに飽き足らずねっちょりウフフしてる古明地姉妹の様子がテレビ中継されて幻想郷全土に流れたりした。
そのころ霊夢は、ぽかぽかな陽のあたる縁側で魔理沙とイチャコラしていた。
そんなわけで順調に異変は続いた。
慧音が人里の長のプロデュースでグラビアデビューしたり、
阿求が「あきゅあきゅ!」としか喋れなくなったり、
香霖堂の品物全てが勇☆儀☆王カードに変化したり、
天界の桃が全部尻に変わってたり、
月の都がきゅとしてドカンした。
やりたい放題だった。
境界操作能力便利すぎた。
その頃の博麗神社では。
「んうっ……霊夢……」
「魔理沙ぁ……もっとキスしてぇ……」
異変は順調に続いた。
美鈴が中国語しか喋れなくなったり、
魂魄妖忌総受け本が大流行したり、
再建した永遠亭がさっそく再び炎上爆発したり、
丘に咲くヒマワリが全部ラフレシアになって幽香が爆発したり、
神奈子のオンバシラがビタミンちくわになって神社が爆発したり、
核融合に失敗した地霊殿は爆発した。
ついでに命蓮寺も爆発した。
爆発させれば大抵オチがついた。
爆発オチ偉大すぎた。
爆発した命蓮寺の跡に残っていたのは、瓦礫と木屑――そして雲山たちだけであった。
境界を操っていた八人の雲山たちは、額の汗を白い腕で拭った。
皆一様に、何かをやり遂げた清清しい顔つきだった。
そして命蓮寺跡に到着したチューチュートレインに颯爽と乗ると、次なるときめきを運ぶために、何処かへと旅立っていくのだった。
彼らこそが境界を操る大妖怪――八雲山だった。
<終わってしまえ!>
もう雲山たちは世界を征服しちゃっていいと思う。
雲山=EXILEの等式がすり込まれてしまった……
頭がどうにかなりそうだ……
爆発オチが偉大過ぎるw
えぇい!古明地姉妹の映像誰か録画してないのか!?
レイマリ、こいさと、ひじ星ちゅっちゅ!
>竹林ごと永遠亭が炎上
>再建した永遠亭がさっそく再び炎上爆発
でもこれは異変じゃなくて某氏の恨みによる犯行だろw
畜生、笑った!
ところで星ちゃん、聖☆おにいさんのナニをハフハフしてたのかな?
いいぞもっとやれ