ここは紅魔館、レミリア・スカーレットの部屋。
ここでレミリアが暇つぶしに「レミリアディスティニーディアゴノシス(レミリアの運命診断)」というものを開いてみることにした。
占いや予言というものとは違い、レミリアの能力で相手の運命を見る商売だ。
レミリアは自分の能力には絶対の自信があったので大いに張り切っていた。
「お嬢様、お客様をお連れしました」
メイドの咲夜に連れられて来たのは霊夢だった。レミリアは精一杯の笑顔で迎えた。
「よく来てくれたわね霊夢、あなたがお客様第一号よ」
「外の看板を見て来てみたんだけど、信用出来るんでしょうね?」
霊夢が疑い深くレミリアを見る。
「私の能力は確かなものよ霊夢、確実に当たるわ。とういわけでまずは料金を払ってよ」
とレミリアは壁を指さした。そこには料金表が出ている。普通の料金表とは違い、ここでは自分の血液をお金の換わりに支払うようだ。
それを見て霊夢は少し迷った後に、
「うーん、あんたの運命診断が当たってたら払って上げるわよ」
「疑い深いのねぇ霊夢は。まぁいいわ、それじゃあ始めるよ」
とレミリアが張り切って霊夢の運命を見ようとすると、
「ところで、あんたは私のどんな運命を見てくれるの?」
「そういえば説明してなかったわね。私の運命診断は、あなたの一年後の運命をビジョンとして見るのよ。それを私が懇切丁寧に貴方に伝えてあげるわ」
「なんで一年後なのよ?」
「私の気分に決まってるじゃないの」
レミリアは誇らしな顔をして言った。
「まぁいいや、それじゃあさっさと始めなさいよ」
「水を差したのは貴方じゃない、でも今の貴方はお客様だから許して上げるわ。それじゃあ始めるよ!」
レミリアが真剣な顔をして霊夢の運命を見る。
霊夢の運命を見始めてから1,2分くらい経った後に、レミリアが「ふぅー」と一息ついた。
「で? 一年後の私はどうだったの?」
「ふふっ喜んでちょうだい霊夢。一年後の貴方はとても幸せそうよ。博麗神社の賽銭箱には山のようにお賽銭が入っていたわ。それに命蓮寺や守矢神社はあなたの傘下に入っているみたいよ」
「本当に? 私のご機嫌を取ろうとして適当な事を言ってるんじゃないでしょうね?」
霊夢が信用出来ないといった表情でレミリアを見る。
「私がご機嫌なんて面倒な事を取るわけないでしょ。とにかく私の能力は確かなものよ、嘘だったら一年後に退治されても構わないわ」
レミリアが自信満々に言うと、霊夢も納得したような顔をして、
「家の神社に山のようなお賽銭で、あの守矢と聖が傘下か。これは一年後が楽しみね」
と喜んで帰っていった。
「やれやれ、普段お賽銭なんて貰えないからよっぽど意外だったのかしら。まあいいや、咲夜ー、次のお客を連れてきてー」
レミリアが言うと咲夜が次のお客を連れてきた。
「なんだパチェか、どうした?」
「最近、本の盗難が前にも増してひどくてねぇ……、このままだと図書館の本がどれだけ無くなるのか気になって」
パチュリーが憂鬱な顔をする。
「それで私のところに来たという事か。いいよ、友達のよしみで三割引きで見てあげるよ」
とレミリアが再び壁の料金表を指差す。
「本当に当たってたらね、それまではお預け」
「もー仕方ないなぁ」
レミリアがパチュリーの一年後を見ると安堵の息を漏らした。
それを見たパチュリーが心配そうな顔で聞く。
「図書館の本どうだった? もしかして全滅?」
「安心しなよパチェ。なんと、一年後に魔理沙はあなたの本を全部返してくれたわ。その上今までの行いを悔いて、あなたの図書館で司書として働いてるみたいよ」
レミリアの言葉に、パチュリーは疑いの顔を見せた。
「あの魔理沙が? 信じられないなぁ。嘘だったらロイアルフレアの刑よ」
「パチェも疑い深いなぁ、このレミリアの言う事を信じなさいって。嘘だったらロイフレでもセレナでもいくらでも喰らってあげるわよ」
レミリアが自信たっぷりな顔で自分の胸をドンッと叩くと、パチュリーも安心したような顔で図書館へ戻っていった。
その後も咲夜に連れられて多くの客が入ってきた。驚かせられない程度の能力の多々良小傘も来たし、自立人形の研究に行き詰ったアリスも来た。ネタに困った鴉天狗も来たし、幽々子の世話に疲れてた妖夢も来た。レミリアはその全ての運命を見てやったが、そのどれもがいい結果だった。
「なんだか良い結果ばっかりだとつまらないなぁ。おまけにお客はみんな料金と言う名の血液を後払いする気だし。まぁ私の能力は確かなもの、一年後きっちり払ってもらうわ」
そんな事をつぶやいているうちに、また一人の客がやってきた。永遠亭の兎であるうどんげだ。見たところ沈んでいるようだ。
「このところ師匠に内緒でやってる研究が行き詰っていて困っているんです。私は、予言や占いなんか信じないんですが少し気になって……」
「だから私のは予言や占いなんて適当なものじゃなく、確実な運命を見るんだって。すぐに見てあげるよ。もう面倒だから料金は後払いでいいよ」
と言うとレミリアはうどんげの運命を見た。
「どうでした?」
「研究は成功したみたいよ、あなた凄い喜んでいるわ。何の商品かはわらなかったけど売れに売れている。あなたの師匠もあなたを褒めているわよ」
それを聞いたうどんげは、今までとは一片した元気な口調で話し始めた。
「という事は今の研究を続けたほうがいいって事ですね。希望が沸いてきました、ありがとうございます」
「ところで、あなた何の研究をしているの?」
レミリアが興味本位で質問した。
「薬ですよ、師匠の胡蝶夢丸を参考にしたんですが、この薬を使えば寝なくても自分の理想の世界に入り込む事が出来るんですよ。例えば、神社の巫女なら賽銭いっぱいの妄想を、ぱっとしない妖怪も、人間を恐怖のドン底に貶める大妖怪になっている妄想とかが見れるんです。ほら、今の幻想郷って悩み抱えてる人とか多いじゃないですか? だけどこの薬さえ完成すればみんな幸せな世界に入れる。大反響間違いなしですよ! 一年後の完成が楽しみです」
うどんげは飛び跳ねながら帰っていった。あとに残ったレミリアは残念な表情だった。今日来たお客はどれもこれも一年後は幸せな運命、という結果が見えた。
しかし、その結果は一年後うどんげが作るという薬のおかげらしい。
「あいつらから血液を請求出来なさそうね。間違ってはいないけど妄想の世界なんて思わなかったなぁ。まぁあの兎の運命は確かなんだし、あいつの血を飲めばいいや。どっちみち私って少食だしそんなにいらないもん」
とレミリアがため息を付くと目の前にスキマが現れた。
「なんだか面白い事をやっているようね」
「なんだ、紫じゃないの。あなたも私に運命を見て欲しくて来たの?」
「話が早いわね。今ちょっと研究をしていてね、成功してるかどうか貴方に見て欲しいの。御代は後で人間でも捕まえて来て貴方にあげるわよ」
「なんだ、紫も研究をしているの? どんな研究よ」
「スキマを使って相手を「自分の理想の妄想世界」へ連れて行く実験よ。これが成功すれば幻想郷のみんなが幸せに……」
どうやら、うどんげも駄目そうだ。
なるほど、こういう落ちだったのかー
面白かったです。