「餅につけるのは醤油でしょう、常識的に考えて!」
「何言ってるのよ。餅にはきなこが一番に決まってるじゃない」
「お言葉ですが、お餅には砂糖が一番だと思います!」
正月、普段の日常とはほんの少し違う時期、八雲家の居間にはそんな言い争いが響いていた。
大きな声で言い争っているのは八雲家の住民である紫と藍。そしてお正月ということで遊びに来た橙の三人である。
普段はとても仲のいい八雲家の、言い争いの原因はというとこんもりと盛られた白い山。
ぷっくりと膨れている純白の肌にところどころついた焦げ目が食欲をそそる、お正月には欠かせない日本のソウルフード、お餅であった。
様々な調味料にその身を預け、そして一切の不協和音を作り出すことなくいかなる味付けにもマッチし、私たちの舌を楽しませてくれるお餅。
そんなお餅には一体何をつけるのがベストなのかという、一度は誰しもが経験したことのある議論が行われているのだった。
そしてこの議論には、絶対と言っていいほどある特性がみられる。
議論に参加した全員が必ず別々のものを推すという特性である。
日本のソウルフードである餅にはやはり日本の魂である醤油、と醤油を推す者が現れ。
いや、甘くそれでいて上品な香りを生み出すきな粉こそが一番、ときな粉を推すものが現れ。
そして、シンプルイズベストな砂糖が最もおいしい、と砂糖を推すものが現れる。
最終的にケッチャプやマヨネーズ、あんこやピザソースなどを推すものが現れて、収拾がつかなくなっていくというのはもう周知の事実であろう。
そして、そんな得にもためにもならない言い争いは、正月になれば必ず日本のどこかで行われるものであり、
今回は八雲家の番だったというわけだ。
「一番といったら醤油です! 当り前じゃないですか!」
と醤油を推すのは藍である。
小皿に入れられた醤油に餅を浸して、はむはむと食べている。
「きな粉が一番おいしいわ。そんなことも分からないのかしら」
ときな粉を推すのは紫。
まんべんなく餅にきな粉をまぶして、粉が落ちないように気をつけて食べている。
「わ、私はやっぱり砂糖だと思います! ふうふう」
と砂糖を推すのは橙。
砂糖がたっぷりついた餅を、猫舌だからだろうか念入りに冷ましている。
この言い争い、初めは長閑な雰囲気のもと、
「やっぱり醤油が一番ですねぇ」
「何言ってるのよ、きな粉が一番よ。ね、橙?」
「えっと、私は砂糖が好きです」
という風にのほほんとしていたのだが、やはり時間が経つにつれて主張は激しくなるものであり、
それが半刻も続けば誰か一人がしびれを切らすのもまた、当然である。
きな粉をまぶした餅を食べ終えた紫は、その口元にきな粉の粉をつけたまま、
突然立ち上がって二人に向かってこう言った。
「そこまで言うなら他の人に決めてもらいましょう!」
==================================================================
「というわけでどれが一番おいしいのか決めて頂戴。霊夢」
「帰れ」
所変わってここは博麗神社。
一人でのんびりと炬燵に埋もれ、午後の午睡にまどろんでいた霊夢の前に、突然スキマから八雲家が勢ぞろいで現れた。
そして餅に一番合うものはどれか決めてくれと、三人それぞれが迫ってきたのだった。
とりあえず眠りを邪魔された霊夢は、紫を陰陽玉で殴ってから詳しく話を聞くことにした。
「というわけで私たちは今、重要な問題にぶつかっている訳なのよ、霊夢」
「餅に何をつけるのが一番かっていうのが、重要な問題になるようなあんたの頭が一番の問題ね」
炬燵に三人を座らせて詳しく話を聞いて、霊夢はため息をつく。
そのため息は、こんなくだらないことで言い争いになる目の前の三人への非難。
そして、それに巻き込まれた自分への同情を秘めていた。
やれやれ、と一拍おいてからとても面倒くさそうに霊夢は言う。
「全部おいしいっていう答えじゃだめなの?」
「どれが、ということが重要なのよ霊夢」
そう言って、紫が指をパチンと鳴らした。
すると炬燵の上にスキマが開き、中から山盛りの餅が乗った皿、醤油が入れられた皿、きな粉が乗った皿、砂糖が乗った皿が次々と出てきて
霊夢の目の前に綺麗に並んだ。
並び終えるまでじっと黙っていた紫が、口を開く。
「それじゃあ藍、橙。霊夢に決めてもらうということで、いいわね?」
「はい、紫様」
「は、はい! 紫さま」
そう勝手に決めて霊夢を見る三人。
そんな三人に向かって、霊夢はもう一度盛大にため息をついた。
(正直、どれでもいい)
それが霊夢の考えなのだが、どうやらそうは許してくれはしなさそうな空気が流れている。
霊夢は不敵に笑っている紫に、真剣な表情の藍、そして少し緊張気味の橙のそれぞれの顔を見ながら
「ふむ」
と、一瞬何かを考えた。
そして、とても面倒くさそうに右手に醤油が入った皿を、左手に砂糖が入った皿を持って、霊夢はその中身をきな粉の皿にぶち込んだ。
「ちょ!?」
「な!?」
「え?」
それぞれ、呆気にとられる三人に対し、霊夢は醤油にきな粉に砂糖が入った皿の中身を箸でよくかき混ぜ始めた。
そして、出来上がったとろみのついたたれに餅をつけて、それを口に運びよく噛んで味わい、ごくんと飲みこんでからこう言った。
「おいしい」
ぽかんとしたままその言葉を聞く三人。
そんな様子に対して霊夢はやる気なさげにこう言う。
「ほら、あんた達も食べてみなさい。おいしいから」
初めはそのまま呆けていた三人だったが、そのうち紫と藍が顔を見合わせ、そして笑いはじめた。
「ふふっ。確かに美味しそうだわ。いただきましょう藍」
「そうですね紫様。ほら、橙もどうだい?」
「え? あ、はい。いただきます」
そう言って霊夢の作ったたれに餅を食べる三人に、それを見る霊夢。
そして、食べ終わったのを確認した後こう問いかけた。
「どう? おいしいでしょう?」
「うん! おいしいよ霊夢!」
橙が真っ先にそう答える。
そんな様子を見ていた紫が頬笑みながら霊夢にこう言った。
「一本、取られちゃったわね」
そんな紫の言葉を受けて、霊夢はどうでもよさそうに答えた。
「私は、一番おいしそうな食べ方を選んだだけよ」
その霊夢の言葉に、紫はもう一度満足そうに微笑むのだった。
「さあ、お餅はいっぱいあるからみんなで食べましょう。霊夢も食べるでしょう?」
「もちろん。初めからそのつもりよ」
「これ本当に美味しいですね、藍様」
「ああ、なかなかいけるね」
そんな会話をしながら、四人は山盛りの餅を食べ始める。
霊夢の作ったたれに餅をつけて食べた紫と藍と橙は、いつもよりも多く食べて、いつもより多く笑うのだった。
その後、正月明けに体重計相手に恐れおののくスキマ妖怪と九尾の狐が天狗によってスクープされるのだが、それは別のお話。
===================================================================
霊夢「でも私は餅にはソースとマヨネーズと青海苔をかけて食べるのが一番だと思うわ」
八雲家「「「それはないわ~」」」
「何言ってるのよ。餅にはきなこが一番に決まってるじゃない」
「お言葉ですが、お餅には砂糖が一番だと思います!」
正月、普段の日常とはほんの少し違う時期、八雲家の居間にはそんな言い争いが響いていた。
大きな声で言い争っているのは八雲家の住民である紫と藍。そしてお正月ということで遊びに来た橙の三人である。
普段はとても仲のいい八雲家の、言い争いの原因はというとこんもりと盛られた白い山。
ぷっくりと膨れている純白の肌にところどころついた焦げ目が食欲をそそる、お正月には欠かせない日本のソウルフード、お餅であった。
様々な調味料にその身を預け、そして一切の不協和音を作り出すことなくいかなる味付けにもマッチし、私たちの舌を楽しませてくれるお餅。
そんなお餅には一体何をつけるのがベストなのかという、一度は誰しもが経験したことのある議論が行われているのだった。
そしてこの議論には、絶対と言っていいほどある特性がみられる。
議論に参加した全員が必ず別々のものを推すという特性である。
日本のソウルフードである餅にはやはり日本の魂である醤油、と醤油を推す者が現れ。
いや、甘くそれでいて上品な香りを生み出すきな粉こそが一番、ときな粉を推すものが現れ。
そして、シンプルイズベストな砂糖が最もおいしい、と砂糖を推すものが現れる。
最終的にケッチャプやマヨネーズ、あんこやピザソースなどを推すものが現れて、収拾がつかなくなっていくというのはもう周知の事実であろう。
そして、そんな得にもためにもならない言い争いは、正月になれば必ず日本のどこかで行われるものであり、
今回は八雲家の番だったというわけだ。
「一番といったら醤油です! 当り前じゃないですか!」
と醤油を推すのは藍である。
小皿に入れられた醤油に餅を浸して、はむはむと食べている。
「きな粉が一番おいしいわ。そんなことも分からないのかしら」
ときな粉を推すのは紫。
まんべんなく餅にきな粉をまぶして、粉が落ちないように気をつけて食べている。
「わ、私はやっぱり砂糖だと思います! ふうふう」
と砂糖を推すのは橙。
砂糖がたっぷりついた餅を、猫舌だからだろうか念入りに冷ましている。
この言い争い、初めは長閑な雰囲気のもと、
「やっぱり醤油が一番ですねぇ」
「何言ってるのよ、きな粉が一番よ。ね、橙?」
「えっと、私は砂糖が好きです」
という風にのほほんとしていたのだが、やはり時間が経つにつれて主張は激しくなるものであり、
それが半刻も続けば誰か一人がしびれを切らすのもまた、当然である。
きな粉をまぶした餅を食べ終えた紫は、その口元にきな粉の粉をつけたまま、
突然立ち上がって二人に向かってこう言った。
「そこまで言うなら他の人に決めてもらいましょう!」
==================================================================
「というわけでどれが一番おいしいのか決めて頂戴。霊夢」
「帰れ」
所変わってここは博麗神社。
一人でのんびりと炬燵に埋もれ、午後の午睡にまどろんでいた霊夢の前に、突然スキマから八雲家が勢ぞろいで現れた。
そして餅に一番合うものはどれか決めてくれと、三人それぞれが迫ってきたのだった。
とりあえず眠りを邪魔された霊夢は、紫を陰陽玉で殴ってから詳しく話を聞くことにした。
「というわけで私たちは今、重要な問題にぶつかっている訳なのよ、霊夢」
「餅に何をつけるのが一番かっていうのが、重要な問題になるようなあんたの頭が一番の問題ね」
炬燵に三人を座らせて詳しく話を聞いて、霊夢はため息をつく。
そのため息は、こんなくだらないことで言い争いになる目の前の三人への非難。
そして、それに巻き込まれた自分への同情を秘めていた。
やれやれ、と一拍おいてからとても面倒くさそうに霊夢は言う。
「全部おいしいっていう答えじゃだめなの?」
「どれが、ということが重要なのよ霊夢」
そう言って、紫が指をパチンと鳴らした。
すると炬燵の上にスキマが開き、中から山盛りの餅が乗った皿、醤油が入れられた皿、きな粉が乗った皿、砂糖が乗った皿が次々と出てきて
霊夢の目の前に綺麗に並んだ。
並び終えるまでじっと黙っていた紫が、口を開く。
「それじゃあ藍、橙。霊夢に決めてもらうということで、いいわね?」
「はい、紫様」
「は、はい! 紫さま」
そう勝手に決めて霊夢を見る三人。
そんな三人に向かって、霊夢はもう一度盛大にため息をついた。
(正直、どれでもいい)
それが霊夢の考えなのだが、どうやらそうは許してくれはしなさそうな空気が流れている。
霊夢は不敵に笑っている紫に、真剣な表情の藍、そして少し緊張気味の橙のそれぞれの顔を見ながら
「ふむ」
と、一瞬何かを考えた。
そして、とても面倒くさそうに右手に醤油が入った皿を、左手に砂糖が入った皿を持って、霊夢はその中身をきな粉の皿にぶち込んだ。
「ちょ!?」
「な!?」
「え?」
それぞれ、呆気にとられる三人に対し、霊夢は醤油にきな粉に砂糖が入った皿の中身を箸でよくかき混ぜ始めた。
そして、出来上がったとろみのついたたれに餅をつけて、それを口に運びよく噛んで味わい、ごくんと飲みこんでからこう言った。
「おいしい」
ぽかんとしたままその言葉を聞く三人。
そんな様子に対して霊夢はやる気なさげにこう言う。
「ほら、あんた達も食べてみなさい。おいしいから」
初めはそのまま呆けていた三人だったが、そのうち紫と藍が顔を見合わせ、そして笑いはじめた。
「ふふっ。確かに美味しそうだわ。いただきましょう藍」
「そうですね紫様。ほら、橙もどうだい?」
「え? あ、はい。いただきます」
そう言って霊夢の作ったたれに餅を食べる三人に、それを見る霊夢。
そして、食べ終わったのを確認した後こう問いかけた。
「どう? おいしいでしょう?」
「うん! おいしいよ霊夢!」
橙が真っ先にそう答える。
そんな様子を見ていた紫が頬笑みながら霊夢にこう言った。
「一本、取られちゃったわね」
そんな紫の言葉を受けて、霊夢はどうでもよさそうに答えた。
「私は、一番おいしそうな食べ方を選んだだけよ」
その霊夢の言葉に、紫はもう一度満足そうに微笑むのだった。
「さあ、お餅はいっぱいあるからみんなで食べましょう。霊夢も食べるでしょう?」
「もちろん。初めからそのつもりよ」
「これ本当に美味しいですね、藍様」
「ああ、なかなかいけるね」
そんな会話をしながら、四人は山盛りの餅を食べ始める。
霊夢の作ったたれに餅をつけて食べた紫と藍と橙は、いつもよりも多く食べて、いつもより多く笑うのだった。
その後、正月明けに体重計相手に恐れおののくスキマ妖怪と九尾の狐が天狗によってスクープされるのだが、それは別のお話。
===================================================================
霊夢「でも私は餅にはソースとマヨネーズと青海苔をかけて食べるのが一番だと思うわ」
八雲家「「「それはないわ~」」」
意外といけそうだ
それってお好み焼(ry
ありだと思います!
>ソースとマヨネーズと青海苔
普通にうまそうだな。鰹節かけたら居酒屋で出せるぞ。
もち好み焼き?
お雑煮で食べるのが一番好き!
>ソースとマヨネーズと青海苔
今度試してみよう
レミリアお嬢様なら解ってくれるかな…
今は海苔巻いて醤油が俺のジャスティス
>ソースとマヨネーズと青海苔
元はご飯だし、この味は合う筈。
自分も雑煮か、海苔醤油ですね。納豆餅もいいんですが臭くて粘るのがちょっと……
何も付けずに食すのが一番な私は異端でしょうか?
そこにキャベツと鰹節を入れるとさらにうまそうだ
まあ、結局はシンプルに醤油に落ち着くわけだが
だがキムチ、テメーは駄目だ
というのが、ナズーリン年生まれの私のオススメ
我が家の伝統です。オイシイヨー
ちょっときなこ砂糖醤油試してきます!
ソースマヨ青海苔鰹節もち試したら半端なく美味かったwwww