「メリークリスマス!」
「もう新年よ」
「アリスは良い子にしてたから、マリサンタからプレゼントをやろう」
「新年だってば」
「はい、プレゼントの土偶詰め合わせ」
「そしてチョイスがおかしい」
「これは私特製の土偶でな、お腹の部分を押すと『土器!』って叫ぶんだ」
「もう帰れ」
サンタクロースの格好をした魔理沙を(帽子だけはいつもと同じ)見向きもせず、アリスは人形を製作中。
アリスの言った通り、今はもう年が明け、クリスマスなんてとっくに過ぎていた。
だからこそ、普通なら魔理沙の言動はおかしい、と疑問を持つのだが、アリスは「まぁ魔理沙だし」と考えて疑問を持つのを放棄している。
「……せめて、私がどうしてこんなことをしているかくらい訊いてくれよ。なんか流されると恥ずかしいだろ」
「知らないわよ。あんたの言動がおかしいのはいつものことだし、疑問に思うほどじゃあないわ」
「アリスは冷たいな。冬なんだから、もっと温かくいこうぜ。そういえば、お茶はまだか?」
「本気で帰れ」
アリスはいつも以上に冷めた態度だ。
別に魔理沙の勝手な行動は慣れてしまっているから、どうでもいい。それよりも、アリスにとっては、人形製作の時間を邪魔されていることの方が、嫌なものだった。
このまま相手にしなかったら、ぎゃあぎゃあ勝手に暴れ出しそうだ。そう思ったアリスは、ため息を吐いて一旦作業を停止した。
「以前、八雲紫から外の世界の飲み物だって渡されたお茶だけど、それでいいかしら?」
「お、外の世界ってことは、レア物じゃあないか。飲んでいいのか?」
「えぇ、私には飲めそうに無かったから」
アリスの言葉に、疑問を覚えつつも、おとなしく椅子に座って待つ魔理沙。
魔理沙が体を椅子に目一杯預けると、木製の椅子がぎぃと音を立てた。
アリスは立ち上がり、部屋を出たかと思えば、数分で戻ってきた。アリスの手には、魔理沙が見慣れない容器を持っている。
「はい、冷たいけどね」
「それがお茶か? なんだその容器は?」
「外の世界ではペットボトルとかいう名前らしいわ」
ペットボトルには『お~いぬ茶』という文字が書かれていた。
魔理沙はそれを手に取って、蓋を開けてみることにした。
「美味しいのか?」
「私はコップに注いだ瞬間、無理って思ったわ。だから飲んでいない」
「それを私に飲ますのか」
「私は紅茶派だけど、あんたはお茶好きじゃない。飲めるわよ、多分ね」
魔理沙はなんとなく、不安になる。
アリスは、ただジッと見ている。それを飲んでどういう反応をするか、見るつもりなのだろうか。
「えぇいっ! 死にはしないだろう!」
「あ、本当に飲んだ」
「ぶはぁっ!?」
「あ、噴いた」
「げほっ、な、な、なんだこれ!?」
魔理沙が飲んだ『お~いぬ茶』は、その名のとおり、ぬちゃぬちゃしているお茶だった。
まるで納豆のように、魔理沙の口とペットボトルをお茶の糸が繋ぐ。
さらに、魔理沙の口内は、ぬちゃぬちゃとした奇妙な感覚で一杯だった。
「お茶好きでも飲めないのね」
「当たり前だ! お茶を侮辱してるぞ、この飲み物! うぅ……口の中が粘っこいぜ」
「はい、ティッシュ」
アリスからティッシュを受け取り、魔理沙は急いで口を拭く。
そしてその後、ペットボトルに蓋をした。間違って零したら大変なことになるからだ。
「ぅ~……最悪の気分だ」
「口直しにクッキーでも食べる?」
「おぉ、ありがたいぜ」
「八雲紫がくれた物なんだけどね。確かどっかの名物クッキーで、『赤い恋人』とか」
「なんか気持ち悪い恋人だな。紫のはもういらん。どうせ変なのばっかりだ。アリスのクッキーが食べたい。別にアリスのクッキーが大好きなわけじゃ無いぜ。紫のを食べたくないから、仕方無くアリスので我慢するだけだぜ」
「何わけ分かんないこと言ってるのよ。昨日焼いたクッキーがあるけど、それで良い?」
「あぁ、もちろん。まだ口の中粘っこいから、早く持って来てくれ」
再び部屋を出て行くアリス。
魔理沙は口をぱくぱくと動かし、粘っこさをとろうとする。よっぽどぬちゃぬちゃだったようだ。
椅子をぎぃぎぃ鳴らしながら、魔理沙は待つ。
魔理沙の視界に、さっきまでアリスが作っていた人形が映る。
「やっぱり、あいつ器用だなぁ」
魔理沙はそれに触れようと手を伸ばし――やめた。自分が簡単に触れて良いものでは無い。そう、魔理沙は思ったのだ。
とりあえず、アリスが来るまで魔理沙はじぃっと人形を見ていることにした。
「ほら、持って来たわよ。ん? なんで人形見てるの?」
「お、さんきゅ。いや、やっぱり器用だなぁって思ってさ」
「そう?」
アリスは首を軽く傾げ、そう言った。
周りから見れば、凄いとしか言えない技術だが、アリスにとってはこれが出来ることが普通なのかもしれない。魔理沙はそんなことを思いながら、クッキーを口にした。
「あー生き返る。口の中が清々しいぜ。でも、口の中の水分が無くなるな」
「さっきの、ぬ茶飲む?」
「お前は鬼か。捨てておけよ、ぬ茶」
物凄く嫌そうな顔をする魔理沙。
アリスは、ここまで魔理沙が嫌がるのなら、今後の魔理沙対策に使用してみようか、などと考えていた。
「うん、美味い。あれだな、アリスは良い嫁さんになれるな」
「結婚願望なんて無いわ」
「そうか。ならこれからも私のためだけにクッキーを作りたまえー」
もふもふと小動物のようにクッキーを食べながら、そんな冗談を言う。
アリスは「はいはい」と、軽くあしらった。
「そういえばアリス、人形作らなくて良いのか?」
「あんたが居るから、したくても出来ないわよ」
「お前の器用さなら、人形作りながら会話しながらクッキー食べながら弾幕ごっこも出来るさ」
「そこまでいったら器用じゃなくて変人でしょ」
「あっはっは! アリスは充分変人だろ!」
「上海おいで。よし、構えて……一緒に目の前の馬鹿を消し去りましょう」
「待てアリス、私が悪かったから」
ひらひらと手を振って、そう言う魔理沙は、反省している様子は無い。
アリスは別に本気では無かったので、すぐに矛である上海を引っ込めた。
ため息を一つ吐きながら、アリスもクッキーを食べる。
「うん、美味しい」
「自分で言うか、普通? いや、これを不味いとか言うやつがいたら、私がぶっ飛ばすけどな。作ったアリスでも」
「物騒ねぇ。もっと優雅に美しくなれないのかしら」
「私はほら、美しいっていうよりは可愛いタイプだろ?」
「それこそ、自分で言うかしら普通。いや、まぁ可愛いけどね」
「……え? や、ぇ、うぇ?」
魔理沙からすれば軽い冗談のつもりだったので、可愛いなどと本当に言われるとは思っていなかった。思わず、少し慌ててしまう魔理沙。
逆にアリスは、特に慌てた様子も無く、至っていつもと変わらない。
「自分で言ったくせに、何慌ててるのよ。いや、照れてるのかしら?」
「ばっ!? だ、誰が照れるか! ただ、ちょっと驚いただけだよ。そんなこと言われたの、ほとんど無いから」
「だとしたら、周りのやつらはよっぽど鈍感なのよ。私の目には、魔理沙は立派な少女よ」
「む……例えば?」
魔理沙は正直、自分がアリスにここまで言われるほど、少女らしいと思える要素が特に思い付かなかった。なので、少し恥ずかしいことではあるが、尋ねる。
アリスは、魔理沙をジッと見つめた後、口を開いた。
「そうね、まずは髪」
「髪? うわっ!?」
アリスが手を伸ばして、魔理沙の髪に触れた。
突然のことに、魔理沙は驚いた。
「こんなにも、さらさらでふわふわで綺麗。手入れに気を使っていることが良く分かるわ。それと座り方。必ず裾を気にしながら座る。他には――」
「もういいから。なんか恥ずかしい……」
「そう? ま、あんたも立派な女の子よね」
珍しく、いつもの強気な態度では無くなっていた。
帽子を深く被り、顔を見えないようにしているが、アリスには魔理沙が今どんな顔をしているか容易に想像出来た。
「大体なんでそこまで観察してるんだ……」
「癖とか見抜いたりして、戦闘に役立てることも出来るからかしら。私にとっては、相手を観察するのが癖みたいなものなのかもしれないわ」
魔理沙は無言でクッキーに手を伸ばす。
そして、口に含む。何故か、さっきよりも味が甘く感じた。
「そういえばさ、アリス」
「んー?」
しばらく無言だったが、魔理沙がぽつりと言葉を発した。
「結局、私が何故サンタ服なのかは訊いてくれないんだな……」
「えぇ、どうせしょうもない理由だろうから」
「冷たいぜーそんな冷たいアリスは、ぬ茶を一気飲みすることをお勧めする」
「誰が飲むか!」
ぬ茶のペットボトルを持ち、アリスに迫る魔理沙。蓋は開けていて、無理矢理飲ます気満々だ。
「ちょ、やめなさいよ!」
「私が味わった苦しみを受けろー!」
アリスは飛び掛かって来る魔理沙の手首を押さえ、ぷるぷると震えながら対抗する。
ぎゃあぎゃあと暴れた後、結局アリスの腕力に負けた魔理沙が、ぬ茶を零してしまい、サンタ服がぬちゃぬちゃになってしまったそうな。
お姉さんアリスに妹魔理沙という感じで
霊夢とルーミアとは違う感じで姉妹っぽい感じがしましたw
外の人間はお茶に何を求めてるんだw
叫ぶ土偶が欲しいと思ってしまったw
魔理沙かわいいよ魔理沙
『ペット』ボトルで『お~いぬ茶』
何の迷いも無く椛の(……)をペットボトルに詰めたものかと思った私はもう駄目なのでしょうか……
見た目も全く判らないし。
あれか!!!
お~いぬ茶…おや?8番さんが私と似たような事を考えていたwww
私は咲夜さんの(……)かと思いましたww
>外の世界の飲み物だって
どこの世界だー!
魔理沙って周りが周りですから、あんまり褒められることに慣れて無いと思うのですよ!
>>2様
ぬるぬるすぎて、当たらないかもしれませんねw
>>3様
確かに言いそうですねw
ルーミアシリーズ読んで下さってるのですね、ありがとうございます!
ちなみに、ルーミアシリーズ番外編ラストは現在ちまちま書いています。
>>4様
あえて不味いものを求めているのかもしれませんねw
>>5様
叫ぶ土偶なんか持ってたら、夜うなされますよw
>>6様
では日本で明けメリという言葉を流行らせます!
>>7様
はい、土偶です。
魔理沙可愛いですよね! 女の子らしいと思うのです。
>>ぺ・四潤様
予告のをここにちまっと入れてみましたw
>>奇声を発する程度の能力様
あれですよ!
>>地球人撲滅組合様
どきがむねむね状態になりますね。
世界は複数存在するっ!
プロポーズキター