※ ただひたすらギャグに走ってみた結果がこの下にあります。
あと、会話文だけで成立しています。
~ いちじかんめ ~
「師匠ぉー。いらっしゃいますかー?」
「あら優曇華。どうしたのかしら?」
「いえ、今日の晩御飯は何に…って、なにしてるんですか?」
「見ての通り、薬の調合をしているところよ」
「へぇー。なんの薬ですか?」
「大したことないわ。ただの風邪薬よ」
「風邪? 誰か風邪でもひいたんですか?」
「いいえ。ただ今日は風邪薬を作りたい気分だっただけ」
「そ…そうですか。気分ですか…」
「気分なのよ。これ大切」
「へ…へぇー。そうだ、ちょっと見学してもいいですか?」
「見ても面白いものではないと思うけど、別にかまわないわ」
「ありがとうございます! 実は師匠が薬作るところ初めて見るんですよ」
「そうだったかしら?」
「はい。いつもタイミングを逃してしまっていて…」
「そう。だったら今日はじっくり勉強しなさい」
「はい!」
「いい返事だわ。なら、一から手順を言っていくわね。
分からない事があればその都度質問していいから」
「お願いします」
「そうね。まず材料を揃えないといけないわ。
今回は風邪薬ということで、それっぽい物を適当に集めます」
「ちょっと待ってください」
「どうしたの? もう分からないことが出てきたの?」
「それっぽいとか、適当とか。分からない事だらけなんですが」
「あらあら…。駄目ねぇ、優曇華ったら」
「なんで駄目呼ばわりされたのかも分かりません。
師匠、ちゃんと私に教える気あるんですか?」
「満々よ」
「だったらその材料を詳しく教えてください」
「仕方ないわね。今回の材料は、っと…」
「今回って」
「まず焼き豆腐」
「焼き豆腐が薬の原料になるのは初耳です、っていうかもうその時点でおかしいですよね?」
「私は毎回こんな感じよ」
「それも初耳です。そもそも豆腐はそれっぽいんですか?」
「そうね…。私も今回ばかりは焼き豆腐と木綿豆腐、どちらにするか悩んだわ」
「あ、そこからおかしかったんですね。
どうしてそれで毎回薬ができるんですか?」
「優曇華、私の能力はなにかしら?」
「ありとあらゆる薬を作れるんですよね」
「つまりそういうことよ」
「…すいません。私にもわかるようにトークのレベルを下げて頂けませんか?」
「だから、私の能力が勝手に薬を完成させちゃうのよ。
私が『こんな薬作りたいなぁ~』って思ってると、出来上がってるからあら不思議」
「師匠、やっぱり私に教える気ありませんね?」
「満々よ」
「…え、本気で言ってるんですか? 本当に能力なんですか?」
「だから言ったじゃない。気分は大切だって」
「それじゃあ誰も師匠から教われないじゃないですか!」
「そうね、私があなたに言えることがあるとすれば…」
「すれば?」
「私になれ。それだけよ」
「格好いいこと言ってても内容は滅茶苦茶ですね」
「まぁ細かいことは気にしないでとりあえず見ていったら?
何か発見があるかもしれないじゃない」
「そうですね。何か得られるとは思いませんが、とりあえず見ていきます」
「じゃあ再開するわね」
「はい」
「ところで、あなたここに来た時何か言いかけてなかったかしら?」
「あぁ、そろそろ晩御飯の準備をしますんで、何がいいかなぁと思いまして」
「もうそんな時間なの。そうねぇ…寒い季節なのだし、お鍋なんかいいんじゃない?」
「それはいいですねぇ。温まりますねぇ」
「久し振りにすき焼きでもしようかしら?」
「おいしそうですね」
「そうね。とりあえず先に薬を作りましょう。材料を適当にぶち込んで…」
・
・
・
・
・
「完成したわ」
「はい、出来ましたね。で、これは何ですか?」
「見て分からない?」
「少なくとも薬には見えませんね」
「奇遇ね。私もよ」
「ですよね。で、改めてこれは何ですか?」
「一般的にはすき焼きと呼ばれる鍋物ね」
「なんで風邪薬を作ろうとした結果がすき焼きになるんですか?」
「仕方ないじゃない! 私が薬を作ってる最中に優曇華が晩御飯の話なんてするから!」
「気分がすき焼きに移ってしまったんですね。もう能力とか関係ないですね。
それと、逆ギレはやめてください」
「あら、ごめんなさい」
「いえ、私にも非はあります。
師匠が土鍋を持ち出した段階で止めるべきでした」
「薬の材料もうまい具合にお鍋にできそうな物ばかりだったものね」
「ええ。その中に牛肉が当然のように用意されていたあたり、狙ってたとしか思えません」
「でも諦めちゃだめよ、優曇華。もしかしたらすき焼きに見せかけた風邪薬かもしれないわ」
「そんながっかりなフェイントいりませんけどね。じゃあ食べてみてください」
「あなたも食べていいのよ?」
「私のような者が師匠より先にお箸をつけるなんてできませんから」
「優曇華…、なんて優しい子…」
「いいですから早くしてください。冷めますよ」
「それもそうね。では、いただきます………」
「…どうですか?」
「これは…!」
「これは?」
「見事なまでに風邪薬を装った…」
「すき焼きですね。じゃあみんなを呼んできます」
「最後まで言わせてくれないの?」
「師匠は食べててかまいませんが、ちゃんとみんなの分は残してくださいね」
「…待ってるわ」
「そうですか。ではしばらくお待ちください。あ、それと師匠」
「何かしら?」
「そのすき焼き、全然風邪薬装ってませんから」
ツッコミを忘れない優曇華であった
~ にじかんめ ~
「優曇華、時間いいかしら?」
「どうしたんですか、師匠」
「今日はちょっと面白い薬を作ってみたのよ」
「へぇ、どんな薬ですか?」
「それはね、駄目な人にしか見えない薬なの」
「…は?」
「名付けて『悔い改めよ』」
「誰もそんなこと聞いちゃいないです。
なんですか、それは薬と呼んでいい代物なんですか?
そもそもその言葉を聞いて薬を連想させる人はいるんですか?」
「『悔い改めよ』よ」
「なんで二回言ったんですか?
加えて尋ねるなら、それの薬としての効能は何ですか?」
「さぁ? そんなところまで責任持てないわよ。
私はただ、『こんな薬あったら面白いだろうなぁ』って思ってただけだから」
「師匠の能力って要するに何でもありなんですね。
まぁいいです。それで、その薬はどこにあるんですか?」
「あぁ、ここにあるわよ」
「へぇ、これがそうなんですか。
…何か普通に見えちゃってるんですけど」
「そうなのよ。私も見えるのよね。不思議だわ」
「師匠はむしろ自然な気がしますけどね」
「さらっと毒を吐いたわね。さすが私の弟子」
「それはいいですけど、これ失敗してるんじゃないですか?」
「やっぱりそうなのかしら…。こと薬に関してこの私が失敗するなんて…」
「まだこれを薬と呼びますか」
「あら、永琳に因幡じゃない。何やってるの?」
「姫様。実は新薬を開発したのです」
「師匠の心は折れないですね」
「ふぅん? どんな薬なの?」
「『悔い改めよ』です」
「…永琳ってたまに不思議なこと言うわよね」
「師匠、これが普通の反応ですよ。やっぱりそれは名前からして薬じゃありません」
「ベストな選択だと思ったのに…」
「まあいいわ。その薬の効果は何なの?」
「それは分かりませんが。駄目な人にしか見えないという一風変わった薬でして…」
「駄目な人にしか見えない…? それは薬と呼んでいいの?」
「駄目な人にはいい薬になるのでは?」
「上手いこと言ったつもりですか。そもそもそれは失敗…」
「それで、それはどこにあるの?」
「「…ゑ?」」
「なに驚いてるのよ。どこにあるのか聞いてるだけじゃない」
「ちょ、姫様本気で言ってるんですか!?
ほら私の掌に鎮座してるこいつが今話題の薬ですよ!」
「そうですよ! 性質の悪い冗談はやめてください!」
「二人して…。わかったわ、本当はそんな薬ないんでしょう。
私を騙そうったってそうはいかないわよ?」
(…どうしましょう優曇華。どうやら姫様本気みたいよ?)
(これはマズイですね…。要するに、成功品ってことですか…?)
(ていうか、どうして私たちに見えて姫様に見えないのよ)
(師匠、それはちょっと失礼かと…)
「なに二人でこそこそしてるのよ。もう私行くわね」
「…師匠」
「優曇華、何も言っちゃ駄目。悲しい事故だったのよ、これは」
「でも!」
「忘れましょう。それがお互いのためよ」
「~~~~っ! …はい」
その夜、二人は静かに泣いた
~ やすみじかん(かぐやのおへや) ~
「ちくしょう…、なんで見えちゃうのよ…。ちくしょう…! うぅ…」
結局みんなダメダメなのであった
~ さんじかんめ ~
「優曇華、また新しい薬を作ったわ」
「またやっちゃったんですね。今度は何ですか?」
「ほら、この前結局すき焼きになった風邪薬があったじゃない」
「師匠の言葉だけ聞くと意味不明過ぎますけど、確かにありましたね」
「それで、今回はそのリベンジの意味を込めて風邪薬を作ったのよ」
「はぁ、真っ当な薬のようですね」
「名付けて『ジェノサイドくん』よ」
「だから名前がおかしいって気付きましょう?
どうして風邪薬の名前でそんな一撃必殺の空気が漂うんですか」
「実はこれ、ただの風邪薬じゃないのよ」
「そうでしょうね。ネーミングが尋常じゃないですし」
「普通の風邪薬だとやっぱり面白味がないでしょう?」
「その発想は本当に必要ですか?」
「なんとこの風邪薬は、ありとあらゆる病原菌をたちまち滅殺してしまうの」
「凄いじゃないですか!」
「そう、凄いのよ。まさしく『ジェノサイドくん』と呼ぶに相応しい風邪薬だわ」
「風邪薬の領域は完全に踏み越えてますけどね。
あ、でもそんなに強力な薬だと副作用も強くなってしまうのでは?」
「そうなのよ。そのまま使用してしまうとウイルスと一緒に病人までジェノサイドしてしまうの」
「強力すぎるでしょう!」
「どうしてもこの副作用を抑えることができなくて、さすがの私も悩んだわ」
「先日豆腐の種類で悩んでいた人とは思えない悩みですね」
「悩み抜いた私が出した結論は…」
「結論は?」
「『ジェノサイドくん』と一緒にバイオハザード級のウイルスを服用すればイーブンなんじゃないの?
…という発想の転換によって導き出されたわ」
「…師匠、本末転倒って言葉知ってます?」
「砂糖で塩を中和するところからヒントを得たのよ」
「それ中和って言わないです」
「でもね、この用法には大きな問題があるの」
「そうでしょうね。薬とウイルスを同時接種するのは初めて聞きました」
「体内におけるワクチンとウイルスの激しい闘争が、結局宿主の肉体を破壊してしまうから困ったものだわ」
「…これって一応風邪薬の話題なんですよね?」
「やだわ優曇華ったら。今更何を言ってるのよ」
「今ちょっとだけイラっとしました。
ともかく、どうあってもその薬は使えない、という結論でいいのでしょうか?」
「死を覚悟して服用するのであれば使えなくもないわ」
「師匠、最後に聞かせてください。それは風邪薬なんですよね?」
「『ジェノサイドくん』よ」
「師匠」
「なに?」
「そろそろビンタしていいですか?」
「ど、どうしたのよ優曇華? 暴力反たわばっ!?」
暴力ダメ 絶対
~ よじかんめ ~
「というわけで、今回も新薬の作製に成功しました」
「師匠も懲りませんね。今日は何やらかしたんですか?」
「よくぞ聞いてくれたわね!
今回の薬はなんと、言ったことが本当になる薬よ!」
「うわぁい、夢のようなお薬ですね。で?」
「で、って?」
「なんでそんな面倒な薬作ったんですかって聞いてんですよ」
「楽しいかなぁ、と思って」
「楽しいのは師匠だけでしょうね。とりあえずその薬を渡してください」
「いいけど、どうするの?」
「破棄します」
「そんな! この子は何の罪も犯してはいないのに!」
「そうですね。悪いのは全部師匠ですね。じゃあまたビンタしますか?」
「誰が渡さないって言ったのよ」
「最初からそうしてればよかったんですよ。
でも、実際師匠の能力って本当に何でもありなんですね」
「伊達に蓬莱の薬を作ってないわ」
「この前は風邪薬と称した劇薬も作りましたしね。
やっぱりこの薬を使ったら師匠の言うような効果が得られるんですか?」
「もちろんよ。名付けて『後悔先に立たず』よ」
「その心は?」
「飲んだその瞬間から迂闊なことが言えなくなるから」
「飲んだ事を後悔する程って意味ですね」
「それはそうよ。『自爆したいなぁ』なんて口を滑らせようものならそれが現実になっちゃうのだから」
「自爆願望のある人はそうそうお目にかかれないと思いますけどね。
師匠のその発想がちょっと怖いです」
「例えばの話じゃない」
「それと、そんな凶悪な薬を面白半分で作る師匠そのものが怖いです」
「それでも夢のような薬であることは間違いないのよ?」
「そうですねぇ。要は使い方次第なわけですし、妙なことを言わなければいいだけなんですよね」
「その通りよ」
「例えば『最強になりたい』、って言ったらそれが本当になるんですよね?」
「…最強、いえ、強さの定義って何かしら」
「は?」
「人はそれぞれが違う形の強さを持っているわ。それらを押しのけて頂点に立つ存在が最強と呼ばれるのかもしれないけれども、それはすべての強さを力で圧倒する存在なのかしら。だとするならば最強とは究極の恐怖政治に近いものにペラペ~ラ」
「面倒くさい! この夢のような薬面倒くさい!」
「要するに、あやふやな発言には効果がないってことよ」
「一瞬にして夢がなくなりましたね」
「そんなものよ。
お金持ちになりたいとか、偉くなりたいとか、そんなのは結局主観でしか測れないものでしょう。
どれくらいお金を持てばそう呼ばれるのか、どの程度の地位から偉いのか、それを測る物差しがないということよ」
「だったら、どんなのだったら実現するんですか?」
「自爆はオーケーよ」
「ずいぶんと自爆を推しますね。
私にはもう師匠が自爆願望者だとしか思えなくなりました」
「まぁ自分の夢を叶えるのに薬に頼ろうだなんて考えは甘いわね。
そう…、夢とは自分で実現させてこそ価値があるのだから!」
「そうですか。じゃあ予定通りこの薬は処分しておきます」
「え…? 誰かに使って遊ばないの?」
「碌な結果にならない事が目に見えてますので。
ていうか、あれだけ格好いいこと言った後で『誰かで遊ぶ』とか言わないでください」
「残念だわ…。汚い花火が見れると思ったのに…」
「やっぱり一押しは自爆ですか」
自爆ダメ 絶対
~ ごじかんめ ~
「優曇華、今回は『ジェノサイドくん』をパワーアップさせてみたわ」
「あれを強力にする必要はあったのですか?」
「とことん追求してみようかな、と」
「はぁ…。で、何が強力になったんですか? ウイルス殺傷能力ですか?」
「それは変わらないわ。というか、変えようがなかったわ」
「だったら何が?」
「副作用だけをひたすら強くしてみました」
「もういいよ」
どうもありがとうございました
漫才見てるみたいで楽しかったです。
えーりん自爆させて破片を全部小瓶に詰めて密封してみたらどうなるのか。
復活しようと破片を求めて蠢くのか。それともちびえーりんが大量増殖するのだろうか。
見える=駄目な "人" なわけで
ただの毒や。
会話文だけだが読みやすいし、テンポもいい。
そして面白いww
思い出ひとつの続きもぜひに
や
ひるやすみ
は何処行った!
「人ではない⇒駄目な人ではない⇒見えない」、となって鈴仙達には見えないはずだね。
多分「しか」が強すぎるんだと思う。
「駄目な人ならば見える」薬の場合だと、「駄目な人である⇒見える」…①となってさっきの命題の裏を取ることになるね。
この場合は対偶をとって「見えない⇒駄目な人ではない」となり、「妖怪や蓬莱人である⇒人ではない⇒駄目な人ではない」が真であるとして、
「見えない」ことと「妖怪や蓬莱人である」ことの包含関係はわからないことになり、「見えても見えなくてもどっちでもいい」ことになるか、
あるいは「薬は見えるものである」という常識にとらわれれば、駄目な人でない者にとっては①の命題は意味を成さなくなり、普通に薬が見えているとも考えられるかな。…まぁ風邪薬を作るつもりがすき焼きになっちゃう永琳のことだから「こまけぇことはいい」のかもしれないけどねww
で、マジレスしておいてなんですが、めっちゃ面白かったですww永琳と鈴仙の温度差がやばいww
よって、破片を密封しても意味はない。
そんな何の関係もないことは置いといて、面白かった。
まさか会話文だけで面白いと思えるとは・・・。
鈴仙のツッコミがあまりにも淡々としすぎているwwww
でもマジレスすると
輝夜は俺の嫁
鈴仙はやっぱりツッコミ役が似合うw