失恋しました
なんて言っても、別にお付き合いできませんって言われたわけじゃありません。
小悪魔さんが、パチュリーさんにひっついて離れない現場を目撃した時、近くにいたメイドの方が「パチュリー様は鈍い」とこぼしました。
それってつまりそういことだったんですね。
酷いです、私は全然知りませんでした。
小悪魔さんに会いたくて紅魔館を訪れていたのに、小悪魔さんは私に親切にしてくれているのはおまけで、本当はパチュリーさんのことが好きだったんですね。
だったら、最初に会ったときからそう言ってくれればよかったのに。
そう言ってくれれば恋なんてしなかったのに、酷いですよ。
結局私はその日は何もしないで紅魔館を出ました、せっかく気をつかってくれた美鈴さんには本当に申し訳ないのだけど、とてもこれ以上は居れそうにありませんでした。
最初は恋をしたんだなとは自分では思いませんでした。
紅魔館の中は恐ろしい場所だってイメージがあって、ビクビクしていた私に優しく声をかけてくれて、お茶も出してくれて本当に親切な方だと思いました。
それは私が紅魔館を訪れるたびに毎回でした、毎回小悪魔さんは親切にしてくれたんです。
感謝の気持ちがいっぱいになって、何かお礼がしたくてみんなに相談したら、当然のように好きなんだってからかわれた。でも私はそのときはそれを流すことができませんでした。
ちょっと考えると、私は親切で綺麗で頼もしい小悪魔さんに恋をしてしまったんだと、すぐに結論づけてしまいました。そしてそれを疑いませんでした。
夢中でした。
小悪魔さんに会いたくて、一緒にお話がしたくて一生懸命本を読みました。毎日毎日……
だから、今私は涙が溢れて止まらないんです。
一方的な恋でした、それでもかまわないと思って通っていたのに、こうして現実をつきけられると、こんなにも辛いなんて。
みんなの前で私は涙を流したことなんて無い、だって私は年長者だから。
でも今は涙が止まらない、湖に映る自分の顔が情けなくて…
「妖精さん」
「……あ」
誰かが声をかけてきていました。
私は目を急いで擦って、返事をしようとしました。
「ダメですよ」
でも、この方は私が目を拭おうとしたのを止めました。
そして優しい瞳で私を見つめ、声をかけてくれました。
「擦ったって悲しい時は涙は止まらないよ、もう出せるだけ出しちゃおうよ」
「………そ、そんなこと……」
そんなこと、人に話されなくたってわかってるつもりでした。
でも、じっと見つめられていると涙は自然と引いていきました。
「……もういい?」
「………」
この人は、私になんの用事があるんだろう。
見たところ人間さん、博例の巫女さんのような衣装だけど緑色です。
髪の毛も緑色で、蛇とカエルの飾りがついている左右非対称のちょっと変わった髪形でした。
「困ったことがあったの?私に話せることなら、なんでも聞くよ」
「……いいです」
他人に話したいことじゃない。一方的な好意だったことに気がつかないで、失恋したなんて。
「そんなこと言わないで、私、東風谷早苗」
「………大妖精って、呼ばれてます」
「あ、君が大妖精ちゃん?」
私のことを知ってるの?
早苗さんは表情を明るくした。
「貴女のこと、チルノさんから聞いてるよー、みんなのリーダーで、すごく力が強いって」
「…はい」
「そっか、やっぱりリーダーだとそれなりの悩みがあるんだね」
「……違います、そういうことじゃないんです」
「………聞くよ?」
話したい、と少しだけ思いました。
きっとこの方は、人の不幸を笑ったりするようなことはないと思うから。
とりあえず落ち着くために、湖の傍にある岩に腰をかけた。
「……好きな方、いたんです」
「………」
「その方、とても親切で、綺麗で、一緒にいると本当に楽しくて……」
「小悪魔さんでしょ」
「え?!」
「チルノさんから聞いたよ、あまりにもご執心だからみんなのことほったらかしてるって文句言ってた」
「……そんなこと言ってたんだ」
「そっか、じゃあ、小悪魔さんとはダメだったんだ」
「………」
わざわざ言わなくたって良いじゃないですか。そのことでずっと私は傷ついているのに。
それを察してか、早苗さんはちょっとだけ焦ったみたいで。
「ごめんね」
「……」
「私ね、多分今の貴女と同じなんだ」
「…え?」
「私、好きな人が紅魔館にいるんだ、一方的にだけど」
この人も、紅魔館に…?
相手は誰?パチュリーさん?レミリアさん…?
「十六夜咲夜、メイドの人だよ」
「あ、うん…」
あの人か……ちょっと冷たい人みたいな印象があったけど、小悪魔さんは強くて頼もしい人だって言ってた。
「みんな意外と知らないんだけど、あの人って結構だらしないところあるんだ、そういうことを知れば知るほど、咲夜のことが判ってあげられてるって、嬉しくなって、でもね………咲夜のことをもっと好きで、親しくしてる人がいるんだ」
「………」
「悔しいけど……きっと私じゃその人みたいに咲夜とお近づきにはなれないの」
早苗さんの表情は落ち込んでいった、哀愁を醸し出している…
でも落ち込んでいるばかりじゃない、私にもそれが伝わらないように、早苗さんは話を止めない。
「喧嘩するほど仲が良いって言うのかな、あれって多分本当なんだと思う、ちょっと仲悪そうに口論していてもすぐにまた元通り、あんたはいっつもそうやって……って言うと、お互いつい笑っちゃって、次の瞬間にはまた微笑んでる」
「……」
「二人がちょっとでも仲悪そうにしてるのを見ると、やっぱり私は心のどこかで喜んでる……でもあの二人が本当に仲悪くしてるところを見るのも、辛い………本当に、なんで私こんなことしてるのかなって思うよ」
「………そんなに好きなの?」
「好きだよ、私は咲夜のこと、好き」
「……じゃあどうして、そんなに明るくしてられるの?」
「付け入る隙が無いのが、むしろありがたいんだよ」
「………?」
「だって、私にももしかしてチャンスがあるんじゃないかって思っちゃうじゃない?あの二人を見てるとそういうことってないんだ」
わからない。
好きな人に応えてもらいたいって思うものなんじゃないのかな。
「もし咲夜が、私のことが本当は好きだって言ってきたら、きっと迷っちゃう」
「嬉しくないの?」
「複雑だろうね、あの子とあんなに仲が良かったのに、どうしてそうなってしまったの?って思う、貴方達は本当に、お似合いだったんだよって」
………変わった人。
でも、健気な人だと思う。伝わらない好意に全力を尽くしてる、そしてそれでかまわないって思ってる。
私だったら、耐えられるかな……
早苗さんの顔を覗いた時、その瞳がちょっと潤んでるのがわかった。
どうして?かまわないって、今のままでいいって言っていたのになんで泣いてるの?
「……どうして?」
「………それが、私にもわからないんだなぁ……今のままでいいって自分でハッキリさせてるのに、本当は諦めだってついてるはずなのにね」
「時々、泣いちゃうんだ」
そっか、平気なわけがないか。
気丈な人なんだ、だからずっと堪えているんだ……
悩んでいるんだ、ずっと……
早苗さんの両頬を押さえて、その瞳をじっと見つめる。
「………」
「………かっこ悪いね私、貴女のこと慰めにきたのに」
「ううん、私なんかよりずっと立派」
「そうかな」
「そうだよ………」
「早苗お姉ちゃんって、よんでいい?」
「いいよ、大ちゃん」
涙ぐんでるのに平気なフリをして声を出すこの人を、私は見つめていたい。
尊敬する先輩だから。
。
なんて言っても、別にお付き合いできませんって言われたわけじゃありません。
小悪魔さんが、パチュリーさんにひっついて離れない現場を目撃した時、近くにいたメイドの方が「パチュリー様は鈍い」とこぼしました。
それってつまりそういことだったんですね。
酷いです、私は全然知りませんでした。
小悪魔さんに会いたくて紅魔館を訪れていたのに、小悪魔さんは私に親切にしてくれているのはおまけで、本当はパチュリーさんのことが好きだったんですね。
だったら、最初に会ったときからそう言ってくれればよかったのに。
そう言ってくれれば恋なんてしなかったのに、酷いですよ。
結局私はその日は何もしないで紅魔館を出ました、せっかく気をつかってくれた美鈴さんには本当に申し訳ないのだけど、とてもこれ以上は居れそうにありませんでした。
最初は恋をしたんだなとは自分では思いませんでした。
紅魔館の中は恐ろしい場所だってイメージがあって、ビクビクしていた私に優しく声をかけてくれて、お茶も出してくれて本当に親切な方だと思いました。
それは私が紅魔館を訪れるたびに毎回でした、毎回小悪魔さんは親切にしてくれたんです。
感謝の気持ちがいっぱいになって、何かお礼がしたくてみんなに相談したら、当然のように好きなんだってからかわれた。でも私はそのときはそれを流すことができませんでした。
ちょっと考えると、私は親切で綺麗で頼もしい小悪魔さんに恋をしてしまったんだと、すぐに結論づけてしまいました。そしてそれを疑いませんでした。
夢中でした。
小悪魔さんに会いたくて、一緒にお話がしたくて一生懸命本を読みました。毎日毎日……
だから、今私は涙が溢れて止まらないんです。
一方的な恋でした、それでもかまわないと思って通っていたのに、こうして現実をつきけられると、こんなにも辛いなんて。
みんなの前で私は涙を流したことなんて無い、だって私は年長者だから。
でも今は涙が止まらない、湖に映る自分の顔が情けなくて…
「妖精さん」
「……あ」
誰かが声をかけてきていました。
私は目を急いで擦って、返事をしようとしました。
「ダメですよ」
でも、この方は私が目を拭おうとしたのを止めました。
そして優しい瞳で私を見つめ、声をかけてくれました。
「擦ったって悲しい時は涙は止まらないよ、もう出せるだけ出しちゃおうよ」
「………そ、そんなこと……」
そんなこと、人に話されなくたってわかってるつもりでした。
でも、じっと見つめられていると涙は自然と引いていきました。
「……もういい?」
「………」
この人は、私になんの用事があるんだろう。
見たところ人間さん、博例の巫女さんのような衣装だけど緑色です。
髪の毛も緑色で、蛇とカエルの飾りがついている左右非対称のちょっと変わった髪形でした。
「困ったことがあったの?私に話せることなら、なんでも聞くよ」
「……いいです」
他人に話したいことじゃない。一方的な好意だったことに気がつかないで、失恋したなんて。
「そんなこと言わないで、私、東風谷早苗」
「………大妖精って、呼ばれてます」
「あ、君が大妖精ちゃん?」
私のことを知ってるの?
早苗さんは表情を明るくした。
「貴女のこと、チルノさんから聞いてるよー、みんなのリーダーで、すごく力が強いって」
「…はい」
「そっか、やっぱりリーダーだとそれなりの悩みがあるんだね」
「……違います、そういうことじゃないんです」
「………聞くよ?」
話したい、と少しだけ思いました。
きっとこの方は、人の不幸を笑ったりするようなことはないと思うから。
とりあえず落ち着くために、湖の傍にある岩に腰をかけた。
「……好きな方、いたんです」
「………」
「その方、とても親切で、綺麗で、一緒にいると本当に楽しくて……」
「小悪魔さんでしょ」
「え?!」
「チルノさんから聞いたよ、あまりにもご執心だからみんなのことほったらかしてるって文句言ってた」
「……そんなこと言ってたんだ」
「そっか、じゃあ、小悪魔さんとはダメだったんだ」
「………」
わざわざ言わなくたって良いじゃないですか。そのことでずっと私は傷ついているのに。
それを察してか、早苗さんはちょっとだけ焦ったみたいで。
「ごめんね」
「……」
「私ね、多分今の貴女と同じなんだ」
「…え?」
「私、好きな人が紅魔館にいるんだ、一方的にだけど」
この人も、紅魔館に…?
相手は誰?パチュリーさん?レミリアさん…?
「十六夜咲夜、メイドの人だよ」
「あ、うん…」
あの人か……ちょっと冷たい人みたいな印象があったけど、小悪魔さんは強くて頼もしい人だって言ってた。
「みんな意外と知らないんだけど、あの人って結構だらしないところあるんだ、そういうことを知れば知るほど、咲夜のことが判ってあげられてるって、嬉しくなって、でもね………咲夜のことをもっと好きで、親しくしてる人がいるんだ」
「………」
「悔しいけど……きっと私じゃその人みたいに咲夜とお近づきにはなれないの」
早苗さんの表情は落ち込んでいった、哀愁を醸し出している…
でも落ち込んでいるばかりじゃない、私にもそれが伝わらないように、早苗さんは話を止めない。
「喧嘩するほど仲が良いって言うのかな、あれって多分本当なんだと思う、ちょっと仲悪そうに口論していてもすぐにまた元通り、あんたはいっつもそうやって……って言うと、お互いつい笑っちゃって、次の瞬間にはまた微笑んでる」
「……」
「二人がちょっとでも仲悪そうにしてるのを見ると、やっぱり私は心のどこかで喜んでる……でもあの二人が本当に仲悪くしてるところを見るのも、辛い………本当に、なんで私こんなことしてるのかなって思うよ」
「………そんなに好きなの?」
「好きだよ、私は咲夜のこと、好き」
「……じゃあどうして、そんなに明るくしてられるの?」
「付け入る隙が無いのが、むしろありがたいんだよ」
「………?」
「だって、私にももしかしてチャンスがあるんじゃないかって思っちゃうじゃない?あの二人を見てるとそういうことってないんだ」
わからない。
好きな人に応えてもらいたいって思うものなんじゃないのかな。
「もし咲夜が、私のことが本当は好きだって言ってきたら、きっと迷っちゃう」
「嬉しくないの?」
「複雑だろうね、あの子とあんなに仲が良かったのに、どうしてそうなってしまったの?って思う、貴方達は本当に、お似合いだったんだよって」
………変わった人。
でも、健気な人だと思う。伝わらない好意に全力を尽くしてる、そしてそれでかまわないって思ってる。
私だったら、耐えられるかな……
早苗さんの顔を覗いた時、その瞳がちょっと潤んでるのがわかった。
どうして?かまわないって、今のままでいいって言っていたのになんで泣いてるの?
「……どうして?」
「………それが、私にもわからないんだなぁ……今のままでいいって自分でハッキリさせてるのに、本当は諦めだってついてるはずなのにね」
「時々、泣いちゃうんだ」
そっか、平気なわけがないか。
気丈な人なんだ、だからずっと堪えているんだ……
悩んでいるんだ、ずっと……
早苗さんの両頬を押さえて、その瞳をじっと見つめる。
「………」
「………かっこ悪いね私、貴女のこと慰めにきたのに」
「ううん、私なんかよりずっと立派」
「そうかな」
「そうだよ………」
「早苗お姉ちゃんって、よんでいい?」
「いいよ、大ちゃん」
涙ぐんでるのに平気なフリをして声を出すこの人を、私は見つめていたい。
尊敬する先輩だから。
。
早苗お姉ちゃんは強いなぁ
苦い話しの筈なのに仄かに甘いというか上手く言えない感じw
ジャージ長初デートも期待です。
早苗さんは実は結構包容力のある女の子だと思っています。
咲アリはあなたや色んな人の作品を拝見しているうちに一番好きな組み合わせになってしまいました。
かなり気になるんですがw
早苗お姉ちゃんは凄いなぁ。
ツライ恋をするけれどうつくしい
しかしこの2人は見た目も姉妹みたいでかわいいですね
ジャージ話期待してますぜ!
内容が凄く気になるww
いい子ですね、いい子は大好きですよ
はい、近いうちに投稿させてもらおうかと思っていますので、そのときはよろしくお願いします。
あの子が泣いてるよ