Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

マインドエゴイスト

2010/01/07 02:35:17
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 ふらり、ふらり。無意識に身を任せて幻想郷を飛ぶ。私は無意識を操れる。操れるというよりは、意識して無意識になれるというか、なんというか。

 私はずっと昔に心を捨てた。覚妖怪という種族の所為で色々な人の心が視えてしまって、沢山の人の心は弱い頃の私を押しつぶすのに十分すぎる大きさをしていた。毎日毎日怯える私をお姉ちゃんは守ってくれていたけど、その所為で今度はお姉ちゃんが傷ついていった。
 心が怖くなった私は、心を捨てた。心を拒否した。


 私にとってそれは大きな決断で、失敗しちゃったなぁと思うところもいくつかある。

 でも、心を捨てて逆に得たものも多かった。まず、力。今まで守られているだけだった私は、自分であらゆるものに対抗するだけの力を得た。そして、一番大きかったのがお姉ちゃんが私のお守りから解放されたということ。これで負担も無くなるだろう、そう思った。

 だけど何だかお姉ちゃんの元気が無くなった。私と話をするとき何かを考えているような、元気の無い顔をする。それは多分、悲しいとかそういう顔なんだけど、私は悲しいってことがどういうことか分からなくなってしまっていた。





     1、マインドエゴイスト





 ふらり、ふらり。今日は人里を見て回ろう。私の格好は目立ちすぎるから、あんまりじろじろ見られるのも嫌なので能力を使おう。


 無になる。


 人里を堂々と歩く。誰も私を認識なんてしてやない。私が誰かに触れたり、声をかけたりしない限り私は無で居られる。独りで居られる。何だかとっても寂しいことだけど、誰かと関わって辛い思いをするよりはましかなぁなんて思う。



 暫く人里を歩いていると雨が降ってきた。最初はぽつり、ぽつり。雨宿りできる場所を探しているうちにざぁざぁと。視界に入った大きな木まで急いで飛んで、雨宿りをする。

 お気に入りの服も帽子もびちゃびちゃだ。ついてない。


 すっかり濡れてしまった自慢の髪を指で摘もうとすると、人がこちらに走って来るのが視界に入った。私と同じ境遇の人だろう。当たり前の話だけど、向こうは私が見えているけど、存在には気づいていない。

 シャツに赤いもんぺ、そして白くて長い髪には沢山のリボンをつけるというかなり奇抜な格好をした女の人が木に入ってきた。やっぱり服や髪はびしょびしょ。
「ふぃー、寒むかったー」

 そう彼女が呟いたと思うと、ジュッという音がして一瞬の内に服や髪が乾いていた。彼女からはほくほくと湯気が立ち上っている。



「お姉ちゃんすごいね! 何したの?」
「うわっ!? ビックリした」

 うふふ。無意識の能力を使いながら急に話しかける。この瞬間がたまらなく面白い。やられた側の人から見れば、そこに何も居なかったのに急に現れたといった感じなんだと思う。

「ねぇ、何したの?」
「ん、あぁ。これは火を上手く調整して、丁度いい熱をかけたんだ。で、水分を飛ばす」
「それ、私のにも出来る?」
「勿論」

 そういうと一瞬の内に今度は私の物が乾いた。そして体も温かくなっている。

「ありがとう! 私は古明地こいし。こいしでいいよ。お姉ちゃんの名前は?」
「藤原妹紅。お互い災難だな」

 名乗った後は特に会話が弾むというわけでもなく、ただ黙々と雨が止むのをまっていた。しかし一向に止む気配は無い。ざぁざぁと大量の水が空から落ちている。


 もう二刻は立ち尽くしたと思う。それでも雨は止む気配を見せない。人里では傘を持った人々が往来している。それを私達は遠くから見てるだけ。

「雨、止まないね」
「だな。おまえさん、家はどこなんだ? 傘も持たずに出てきて、家の人心配してるんじゃないか?」

 お姉ちゃんのことを思い出す。あの人、心配してくれてるのかな。私が居ないのなんていつものことだし、地下じゃ雨降ってるかどうかなんて分からないだろうし。

「んー、それは無いね。私のお姉ちゃん、多分今頃本でも読んでるよ。妹紅お姉ちゃんだって心配されてるんじゃないの?」
「私は一人暮らしだ」
「ふーん。なんか雰囲気に合ってるよ、一人暮らし」
「どういう意味だ」


 ざぁざぁ、ざぁざぁ。
雨は止むどころかどんどん勢いを増していく。大粒の雨が、もはや泥になった地面をびちゃびちゃと打ち付ける。

「こりゃ大雨だな。暫くここから出れそうにないぞ」
「そうだね。あーあ、ついてない」
「くそっ。帰って酒でも飲もうかと思ってたのに」
「お酒って美味しい? 私はあんまりそう感じなかった」
「なら今度紅魔館というところでも行って来い。あそこの葡萄酒は子どもでも美味しいと感じるはずだ」
「子どもに見えるかもしんないけど、私結構歳とってるよ? もしかしたら妹紅お姉ちゃんより年上かも。何歳?」
「私は千近いと思うぞ?」
「嘘だぁ。妹紅お姉ちゃん匂いで人間って分かるもん。外見から見て二十はいってないね」
「私不老不死なんだ。呪いだよ、呪い」
「えー、すっごい! 刺されても死なない? いいなー」
「そんないいことばかりじゃないぞ。本当に」


 お互いコミュニケーションを好んで取るようなタイプではないのか、会話は切れ切れとしてしまう。それでも私は別に苦ではなかった。妹紅お姉ちゃんがずっと暖かく保ってくれているし、お互い黙っていても不思議と気まずい雰囲気は無かった。向こうはどう思っているか知らないけど。

 そうして黙ったまま、また時はゆっくりと流れる。


 ざぁざぁ、びちゃびちゃ。ざぁざぁ、びちゃびちゃ。
 もう雨はこれでもかというくらい降っている。人里のいくつかの家が、浸水対策を始めたのが分かる。

「すごい雨」
「こりゃ川も大変なことになってるな」
「大丈夫かな」
「ここの人間はそれくらい自分達で何とか出来る」
「強いんだね」
「自分達で何とかしなきゃ、死ぬってことがちゃんとよーく分かってんだよ」
「羨ましい?」
「何が」
「死ねること」
「妖怪みたいなこと言うな」
「妖怪だもん」
「……昔はそう思ってたけど、今は分からん」
「私と同じだね」
「何が」
「今はそれなりに幸せなんでしょ?」

 昔は私もそれなりに大変だった。精神状態は常に錯乱してたし、その原因である覚の力を無くしてみたら無くしてみたで、今度はお姉ちゃんと距離が離れてしまった。今は割りと慣れてきたというか、少しは分かり合えている気がする。でももし、私がこの先完全な無になっちゃったら、そのときはどうなっちゃうかな。


 ざぁざぁ、びちゃびちゃ。ざぁざぁ、びちゃびちゃ。
 未だに雨は衰えない。それどころか、ごろごろと雷まで鳴り出す始末。

「お前さ、お姉ちゃんは本読んでるって言ってたけど、ご両親は?」
「居ないよ。ずっと前に死んじゃった」
「悪いことを聞いたな。すまない」
「いいよ、私、無だから」
「無?」
「心が無いの。昔心が怖くて切り捨てちゃった。だから私は無」
「理性の無い妖怪と違って、普通に会話出来てる気がするけど」
「それは理性でしょ。感情が無いというか、ようは泣いたり笑ったり出来ないの」
「へぇ、そりゃつまらないだろうな。……お前、恐怖の味噌汁って話知ってるか?」
「知らない。何それ? 怪談話?」
「森の奥に住む、兄弟が居たんだよ。その兄弟が夕方お母さんに聞いたんだ。晩御飯何? って。そしたらお母さん、包丁持ってにっこり笑って、今日はおふの味噌汁よって言ったんだ。今日、ふの味噌汁。恐怖の味噌汁」
「うーん、二百三十四点。千点中ね」
「だめかー。これ私初めて聞いたとき結構笑ったんだがな」
「それはきっと笑いのツボが安いんだね」
「酒入ってたからな。お前はどんなとき笑ったり、泣くんだよ」
「だから出来ないんだって。でも」
「でも?」
「あくびをすると泣ける」
「涙が出るのと泣くのは違うだろ」
「そうだよね。あ、でも」
「こんどは?」
「お姉ちゃんがもし死んだりしちゃったら、そのときは泣きたい」
「そう思ってる内は泣けるだろ」
「だから泣けないんだって」

 会話も段々はずむようになってきた。それでもやっぱり会話は途切れる。また静かに時は流れていった。


 ざぁざぁ、びちゃびちゃ。ざぁざぁ、びちゃびちゃ。
 夕暮れ。雷は収まったものの、雨は強く振り続けている。

「これ今日中に帰れるのか?」
「私は別に妹紅お姉ちゃんとここでずっとだべってるだけでもいいよ」
「お前のお姉ちゃん泣くぞ?」
「だから、家には私が居ても居なくても変わらないんだって。私は無だから」

 雨で視界が悪くなっている先をぼうっと眺める。すると、視界の奥から見慣れた姿がうろうろしているのが見えてきた。

「お、あれお前のお姉ちゃんじゃないのか? 胸に似たようなのが付いてる」

 番傘さしたお姉ちゃんが人里の方へ飛んできている。その手にはもう一つ傘。きょろきょろしながら人里へ降りていく。私を探しに来てくれたんだと思う。何で地底にいるのに雨だって分かったのか少し不思議に思ったけど、多分お空かお燐が地上に遊びに来てて、帰ってきたお空やお燐がびしょぬれになっているのを見て雨が降っているというのを知ったんだと思う。

 なんで、なんで。なんで私の心配なんかしてるの。私なんて、居ても居なくても一緒なのに。私が居ても、お姉ちゃんは気づかないくせに。お姉ちゃんは私が居るのか居ないのかもいつも分からないくせに。これでもし私が実は地霊殿に居て、能力を発動させているだけだったら、お姉ちゃんのやっていることは無駄だって、お姉ちゃん自身が知っているはずなのに。

 何だか苦しい。


 お姉ちゃんがこっちをちらっと見る。それでもお姉ちゃんには妹紅お姉ちゃんしか見えていない。私は見えていない。今の私は無だから。すぐに視線を逸らして、またきょろきょろし始める。

「声、かけなくていいのか?」
「いい」
「お姉ちゃん、お前のこと心配してるじゃないか」
「みたいだね」
「あの様子じゃ、幻想郷中を探し回るぞ」
「そんな馬鹿なこと、しないよ」
「一緒に帰らなくていいのか?」
「声、かけらん無い」
「私が呼んでもいいが、なるべくならお前が自分でお姉ちゃんを呼んだほうが……」
「やめ、て」

 私がそういうと、妹紅お姉ちゃんもこれ以上は何も言わなくなった。

 何でだろう、目頭が熱い。久しぶりに感じるこの感覚は、確かに昔の私は知っている。泣く前の、あれ。おかしいな。涙なんてすっかり枯れて、感情なんてすっかり無になっちゃって、何にも思えないはずなのに泣きそうだ。
 お姉ちゃんに、こんなとこ見られたくない。私は強い子だ。もう泣かない。泣いて、お姉ちゃんを困らせない。あれ? 今お姉ちゃんは困っているのかな。それすらも分からない。お姉ちゃんは何で困ってるんだろう。お姉ちゃんは何で私なんかの心配をするんだろう。妹だから? 私の方がよっぽど強いのに、私よりも弱いお姉ちゃんが、私を心配している。何でなんだろう。


 その、何での部分の答えは遠い昔に置いて来てしまった気がする。もう私には理解することが出来ない気がする。

「う、あ……」
「泣いてんのか?」
「私は泣けないって、言ったじゃん」
「……そうだったな」

 なのにどうして、目頭が熱くなってきてるんだろう。


「なんでお姉ちゃん、私のこと心配して」
「愛してるからだろ」
「あ、い?」

 あい、愛。もう私には到底無縁の感情。どうやら私はお姉ちゃんから愛されているらしい。私もお姉ちゃんのことを愛していたと思う。あれ、でも、愛って何だっけ。

 愛が何だったか思い出せない。とっても暖かいことだった気がする。今妹紅お姉ちゃんも暖かいけど、これとはまたちょっと違った暖かさ。外からじゃなくて、中から暖まるような感じだったように思う。


 ふらり、ふらり。私の意識はどんどん無に向かっていく。考えれば考えるほど、頭ががんがん疼く。やめたい。この思考をやめたい。そう強く願って、きゅうっと目を瞑っていた。

 結局私はお姉ちゃんに声をかけず、木の下で雨宿りをして雨が通り過ぎるのを待った。



 雨が止んだのは翌日の明け方。それまで一緒に雨宿りをしていた妹紅お姉ちゃんは、よくこんなところで寝れると思う、すっかり眠ってしまっている。聞こえてないだろうけど、妹紅お姉ちゃんに別れを告げて、私は地霊殿を目指した。


 ふらり、ふらり。地霊殿を目指して飛んでいく。まず帰ったらお姉ちゃんになんて言おうか。そんなことも考えたけど、それは会ってからで良いと思い、今は早くお風呂に入りたいという一心で家を目指した。


 地霊殿の扉を開ける。お燐に聞いてみたら、お姉ちゃんは昨日夕方から出かけてしまっているらしい。

 まだ帰ってきていないようだった。



 お風呂から上がった私は珍しく能力を使わずに地霊殿で過ごしていた。何でか分からないけど、お姉ちゃんを待っていたかったんだと思う。

 だってもう朝だ。もしずうっと私を探してるとしたら、半日くらい探し続けていることになる。雨が止んだからもうすぐ戻ってくるとは思うけど。


 案の定お姉ちゃんはすぐに戻ってきた。
「ただいま。あらこいし、帰っていたのね。よかった」

 私が帰ってきたときよりもはるかにずぶ濡れで、服の所々には泥がくっついている。番傘は二つともぼろぼろに壊れていた。

「おかえり。どこ行ってたの?」
「地上に少し用がありまして」

 私にとって何事も無かったように話しかけるのは容易なことだった。だって私は無だから。

「こんな時間に? その格好、どうしたの?」
「帰り際森で野犬妖怪の群れに襲われちゃいまして、数が多かったのですが、私の方が上だったようで助かりました」


 森の方まで探しに行っていたらしい。きっと妹紅お姉ちゃんの言ったとおり、本当に幻想郷中を探し回ったんだと思う。

「私を探してたの?」

 言ってしまってから後悔した。お姉ちゃんが私を探していたということを強く認めてしまいそうで、それは事実なのだけれど、認めてしまったらその愛とやらまでも認めてしまうことになりそうで、無である私にとってはとってもとっても怖いことだった。


「ええ、まぁ」
「本当は私が家に居て、能力使っててお姉ちゃんが家に居ないものだと思い込んでるだけだったかもしれないのに?」
「そのときはきっと貴女が声かけてくれるでしょう。お姉ちゃんどこ行くの? って」


 苦しい。胸を締め付けるような、お腹の中を疼くようなその愛がとっても苦しい。

「地上に出たのはいいとしても、お姉ちゃんじゃ私を見つけられないでしょ?」
「確かにそうです。でも、貴女が私を見かければ声かけてくれると思いまして」

 私は昨日の出来事を思い出した。心配そうに覇気無く私を探すお姉ちゃん。本当に心配していたんだろう。でも私は何をした。お姉ちゃんを目の前にして、声をかけられなかった。私も私なりにお姉ちゃんのことを思っていた気がするけど、それは所詮私のエゴで、パラノイアにも似たものだったのかもしれない。


 また、目頭が熱くなる。そうか。これが愛か。今きっと私はお姉ちゃんから愛を貰ってる。心を切り捨てて、無になって空っぽだった私に、一生懸命愛を注いでくれている。愛した分だけ愛されたい、そう思うのは本当に横暴なことだけれど、目の前のお姉ちゃんはばかみたいに思う。愛し方を忘れてしまった私にいくら愛を注いでも一向に愛されることは無いのに、自分が満たされることなんて無いのに私を満たそうとしている。あぁ、なんてばかなんだろう。

「お姉ちゃんばかだ。本当にばかだ。私ね、本当はお姉ちゃんを見つけてたんだよ。でも、声、かけらんなかった」
「泣いているのですか? こいし」

 はっとして目の横を触ってみる。そこには確かに涙が慕っていた。私は泣いている。お姉ちゃんは心配そうに私を見ている。自分は大変な思いをしたくせに、まだ私のことを想っている。おかしいでしょ、こんなの。だって、だって私はお姉ちゃんに苦労させないために心を捨てたのに、今こうしてお姉ちゃんは心配ばっかりしている。

「う……あ。泣いて、無い、よ」

 これ以上お姉ちゃんに心配なんてかけさせたくなかった。

「だって、私は、無だから。泣けるはず、無い」

 私は私に言い聞かせるように言葉をつむぐ。それでも涙は止まってくれやしなかった。

「お姉ちゃん、私が泣いてばっかで、困ってたから、私はもう泣かないって決めたのに。もうお姉ちゃん、困らせないって、決めたのに、なのになんで涙が出るの。なんで私泣いてるの」

 私の両目を何度でも掌でこする。それでも大粒の涙は止まらない。



 始めはぽたり、ぽたり。段々だらだらと。大粒の涙は、まるで昨日の雨みたいにどんどん強くなってきた。私はこんなにちっぽけだし、空はあんなに大きいから規模では全然違うけど、それでも何となく似ていると思った。

 ずるずると鼻水を啜る音まで聞こえる。息が上手く出来なくて喉がひっく、ひっくと鳴る。たぶん今私の顔は情け無いくらいくちゃくちゃになっちゃてるんだと思う。

「ごめん……ごめん、ね」

 私は何に謝っているんだろう。そもそも私はなんで泣いているんだろう。お姉ちゃんの期待を裏切ってしまったこと? 違う。そんなのいつものことだ。お姉ちゃんの愛が辛いの? 違う。私はそれがとっても嬉しい。じゃあ、お姉ちゃんを愛しているから? それも違う。私はお姉ちゃんを愛せていない。

 あぁ、そうか。

 お姉ちゃんを愛すことが出来ないことだ。

 私は無で、心なんてとっくにすっからかんだから、人を愛するということがどういうことだか分からない。


 お姉ちゃんが私を抱く。私が泣いてるから? 私を愛しているから?

「こいし、泣いてもいいんです。貴女はちゃんと泣けてるじゃないですか」

「ごめん、なさい。ごめん、なさい」
「いいんですよ。ただ、少しだけ寂しかったです」


 私には愛が分からない。愛にも色々あるらしい。多分これは、姉妹愛。姉妹がお互いのことを大切に想うこと。じゃあ私はどうだろう。私がよく分からないから、これは愛じゃないのかもしれない。


 難しいことはよく分からないけど、何となくこの手を放さないで欲しい。
 私は無意識の内にお姉ちゃんを強くぎゅうってしていた。

「私のこと、嫌いにならない、で」
「何言っているのです。嫌いになどなるわけないでしょう」

「お姉ちゃん、大好き」
「えぇ、私も大好きですよ。こいし」


 私は一日中泣けていた。





 ふらり、ふらり。こんこん、こんこん。
 夜になると無意識の内に妹紅お姉ちゃんの家を訪ねていた。

「こんばんはっー」
「およ、お前さん家教えたっけ?」
「里の人たちに聞いたんだよ。それよりもね、聞いて欲しいことがあるの!」



 私は無で、心なんてすっからかんなんだと思っていたけど、どうやら何にも無いというわけではなさそうだった。
愛は、人からしかもらえません。
それは恋人だったり、兄弟だったり、友達だったり。
ほんとこいしちゃんにいいお姉ちゃんが居てよかった。
鉄梟器師ジュディ♂(元フクロウちゃん)
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
「愛してるからだろ」
さらっとこの台詞が出てくる妹紅さんは本当渋いですわ。
泣けるってとても幸せなことですよね。
2.奇声を発する程度の能力削除
やばい…。正直、貴方が大好きだっ!

愛の大切さ、素晴らしさを教えてくれてありがとう。
本当に良い姉妹だなぁ。
3.名前が無い程度の能力削除
愛って素晴らしいな…
4.名前が無い程度の能力削除
やばい。
さとりん、凄くいいお姉ちゃん。
こいしたん、超可愛い。
妹紅さん、とても格好良い。

素晴らしい作品を、有難うございました。
5.名前が無い程度の能力削除
好きなキャラたちが好きな雰囲気で書かれているだけでも嬉しいのに、話もこんなに良いなんて。
6.ずわいがに削除
おお! こいしよ ないてしまうとは なさけない
……もっと泣いてもいいのよ?
7.フクロウちゃん削除
コメントありがとうございます。

>1様
妹紅さんは本当格好いいお方です。洋物のハードボイルド映画にも出演できそうなほど格好いいです。
自分もいつから泣いていないのか、いいことのようで少し寂しいですね。泣き物でも借りてこようか。

>奇声を発する程度の能力様
こ、告白されてしまった。☆・*:.。.(o´∀`o ) キャー 褒めても何もでないというか、出すものが無いでございます。
古明地姉妹は本当原作もキャラ設定とかすっごい大好きなので、これからも沢山書いていきたいと思います。

>3様
愛いいですよね。愛さえあれば、なんてことは言いすぎですが、それでもやっぱり素晴らしい感情だと思います。

>4様
実はこの作品の思いついたいきさつが大雨大洪水な地下都市を色々な人がカオスなコスプレをしてカオスな選択肢を選び続け、某絶体絶命な都市を脱出する二作目をやっているときに思いついたなんて口が裂けても言えません。あれ買う前までは真面目なゲームかと思ってました。

>5様
ありがたきお言葉です。これからも色々なジャンルに挑戦してみたいと思うので、もしまた名前を見かけて時間がありましたら、呼んでやってください。跳ねて喜びます。

>ずわいがに様
こいしちゃん泣き顔が似合いそうです。悲しい背景があっただけに、その涙は本物なんだと思います。
8.名前が無い程度の能力削除
おお、いいね!
こいしとさとりの姉妹物は大好物で、それに妹紅がこんなにいい味出して絡むとは!
こいしが「感情が無い」という話を聞いて、即座に自分が笑った笑い話を披露する妹紅はいいお姉さんだと思います。
いいお話をありがとうございました。
9.鉄梟器師ジュディ♂削除
(プ□゚)フ【こめんとありがとうございます】ヽ('∀'ヽ)

>8様
いいとは、いいとはありがたいです! 個人的に3本指には入る出来だと思っているので、こいつが伸びてくれないかなぁと常々野心を抱いておりました。いつか続きみたいなもの書くかもしれないので、気が向いたらそちらもよろしくお願いします。
妹紅さんは私の中で三大心イケメンの内の一角ですからねぇ。こうでなくては! ってのを全面に出してみました。
10.名前が無い程度の能力削除
ほんと、すごくいいよ
理想の古明地姉妹でした
さとりんはたとえ注いだ側から零れても、いつまでもこいしたんに愛を注ぎ続けて欲しい
だってこいしたんは愛を感じることができるからね
11.鉄梟器師ジュディ♂削除
(プ□゚)フ【こめんとありがとうございます】ヽ('∀'ヽ)

>10様
ありがとうございます!
多分色々と大変な古明地姉妹ですが、それでもちゃんと姉妹をやってるんだと思います。
愛を注げるだけの器が無いのなら、こいしちゃんも手を出して受け取ればいいんですよね。さすがに器を持ってる人程は受け取れないと思いますが、手でもしっかりと注がれた愛を拾うことは可能だと思います。