<Theater of Alice>
暗い暗い森の中。
此処は魔法の森と呼ばれる場所。
その深い深い奥地、空からでも見つけるのが困難であろう所に、一軒の家が建っていた。
窓から家の中を覘くと、見渡す限りの人形人形また人形。されど同じ人形は一つも無い。
それらはゴシック、ワンピース、巫女服など、様々な服で着飾られている。
人形達はショーケースにしまわれているのがほとんどだが、数体が無造作に机の上や床に置かれている。
そんな人形たちがいる部屋の奥にある部屋。今はそこだけに明かりがついていた。
その部屋には金色の髪を持つ二人の魔法使いがいた。
魔界人のアリス・マーガトロイドと、人間の霧雨 魔理沙だ。
アリスは机に向かって人形を作っている。
チクチクチクチク……
魔理沙は床に寝転び本を読んでいる。
魔道書、小説、台本、絵本……様々な本が彼女の周りには本が散乱していた。
部屋の中は針の音と本を読む音だけしか無く、しかしそれは彼女たちの存在を確かに表していた。
カチリという音の後に、ゴーンゴーンと音が鳴り始めた。
1回・・・2回・・・・・・7回・・・・8回・・・
壁にかけてある時計が8時になったことを主張する。
時計の音が鳴り終わると、より深い静寂がやって来た。
耳鳴りのするような静けさ。森に生える木々の音も今は無い。
しかしそれは突然破られた。
アリスが人形を作る手を休め、言葉を発したのだ。
「スペルカードルールって、なんで律儀に守られてるのかしら」
「んー? あれ、アリス知らなかったのか?」
魔理沙は先ほどまでの静寂が破られたことなどなにも気にしてはいない。
むしろ静寂であったことすら気にしてはいなかったのだろう。
アリスの質問が意外だった事、そっちのほうがよほど重要なのだ。
「こっちに来たの最近だしね。作られた理由とか経緯とかは知らないわ」
「んー、簡単に言うと異変起こしやすいとか解決しやすいとか、あとゲーム感覚でできるだとかまぁ色々ある。とりあえずは人妖お互いに便利で必要なルールって事だぜ」
「ふぅん。妖怪にとって暇は最大の敵といった所かしら? でも妖怪が弾幕ごっこ中に急に本気だしたら、人間なんてイチコロじゃない?」
「まぁそうだな。妖怪の強さにもよるけど紅魔館の門番とかやばいな。本気で来られたら勝てる気しないぜ」
魔理沙が自分の拳を頭に当てコツコツと叩く。
妖怪に殴られたら頭なんかすぐ吹っ飛ぶという意思表示だろうか。
「実は私が本気出したらアンタを壊すことなんてわけないのよね」
「そいつは穏やかじゃないな」
「アンタが死んだら少なくとも私の家は穏やかになるかもね」
人形を縫っている針を魔理沙に向け刺すようなジェスチャーをするアリス。
魔理沙は苦笑いしつつ頬をぽりぽりとかいて、少し考えたあと口を開いた。
「弾幕ごっこの話」
「うん?」
「詳しく話そうか?」
「んー……そうね、ルールの抜け穴見つけて本気出すのも悪くないかもしれないわ」
「おいおい。物騒なのはその針だけにしてくれよ。」
「本気、久しく出してないから鈍ってるかも。どこかにいい実験体……いないかしらね」
熱のある横目で魔理沙を見つめる姿はあまりにも様になっていた。
アリスを人形のようだと比喩する人もいる。
たしかにその動作振る舞い、髪の毛、腕や足の一つ一つがまるで計算されたかのように整っている。
しかし、彼女は魔物だ。間違いなく魔物なのだ。
近づいたものは食べられるというのに、分かっているのに近づいてしまう。
花に誘われる虫のように。
『綺麗だ』
そんな思考を振り払うかのように、魔理沙はあわてて本で顔を隠した。
「いやそんな、私は食べても美味しくないんだぜ?」
「そうねぇ。ヤるなら人形たちにナイフを持たせて串刺しショーとかいいかも。いやでもその綺麗な肌がミンチになるのは勿体無いから、手足を切断して・・・・・・足は喘息魔法使いに、手は箱入り吸血鬼にでもあげて、体は私がもらおうかしら。毎日抱きマクラとして使ってあげる。うふふ」
「リアルで怖いからやめてくれ。でも、抱きマクラくらいならいつでもなってやるのだぜ?」
気恥ずかしさに恐怖が混じり、混ざり、複雑に絡み合う。
認めたくない恐怖。心から信じている友人に持ってしまう畏怖。
魔理沙は気が付かないうちに汗が背中を這っていた。
「"ダルマ"じゃなかったら抱き心地悪いから遠慮しておくわ。そうだ、もっとアンタが色々と成長したら中身抜いて"人形"にするのもいいわね」
アリスの指がどこを切ろうかと探るように人形の肌に添えられる。
喉からゆっくりと下腹部へと一直線に。その滑らかな動きは、まるで本当に切られているかの用な錯覚を魔理沙に起こさせた。
「えーと・・・・・・冗談だよな人形使いさん?」
「さぁどうでしょうね。普通の魔法使いさん?」
先ほどの視線よりも強い視線で魔理沙を射抜く。
人形に沿わせた指の動きそのままに。
切られている。視線がそのままナイフとなって喉に突き刺さる。
下へ。谷間もない胸の間、腹部、そして下腹部で深くえぐられる。
素手で腸を掻き分け、女性の証である大切な器官を引きずり出され・・・・・・
「えぅ・・・・・・・・」
「え、ちょっとまって冗談よ冗談。いきなり泣かないでよ。私は人外は人間にとっては怖いものだって言いたかっただけで・・・・・・人外には私も含まれてるのに、こんなのんびりされても困るというか戸惑うというか……」
「うわぁぁん妖怪も鬼も幽霊も魔人も怖いよぉ」
「あぁぁぁ、ごめん。ごめんね。大丈夫よ。妖怪からも鬼からも幽霊からも私がずっと守ってあげるから」
さっきまでの危険な雰囲気は一瞬で胡散した。
アリスの放つ異様な雰囲気に魔理沙の体が恐怖し、心までもが恐怖一色に染まってしまい、ついには号泣してしまった。
泣いているのは魔理沙なのに、アリスまでも泣きそうな顔をしている。
頭を撫でたり抱きしめたりするが、魔理沙はいっこうに泣き止む気配が無い。
どうしようかとアリスが魔理沙の顔を覗き込んだその時、魔理沙の口が不敵に歪んだ。
「なんちゃって♪ 自分の体くらい自分で守れるぜ」
不意に顔を上げたと思うと、ばぁっと舌をだした。
そのまま「うらめしや~」とでも言いそうである。
「え、なにウソ泣き?」
「女の涙は最強の武器なんだぜ? それにしても慌てるアリスはやっぱりかわいいのだぜ」
魔理沙はさっきのアリスの姿を思い出してカンラカンラと笑った。
しかし恐怖を感じていたのは事実。その笑顔はやはり無理をしているように見えた。
無理をしてでも笑う理由。それはやはり……
「本気で人形にしてやろうかしら……」
「さすがにこれ以上情熱的な目で見られたら、しーしー漏らしてしまいそうだから是非やめてほしいんだぜ」
「漏らすなら腋巫女神社の賽銭箱の中にしなさい。――はぁなんでアンタと話してると話が脱線するのかしら」
「なにも考えずに会話できるほど仲がいいってことだろう。人それを親友という」
「親友ねぇ」
「親友だぜ」
この友情が壊れることが何よりも怖いからだろう。
会話がふと途切れる。だけど居心地がいい静寂が二人を包み込んでいた。
紅茶を飲む音と本をめくる音。
人形に針を通す音。
それがお互いにそこに存在しているという安心感を与えている。
人間と妖怪の共存の一つの答えがここにはあった。
壁にかけてある時計が夜8時20分を示している。
「一ついいかしら『Marisa The Marionette of Alice(最愛にて心無き人間)』」
「何個でもいいぜ『Alice the Beelzebub's daughter(幻想にして幼き魔王の娘)』」
「スペルカードルールって、なんで律儀に守られてるのかしら」
--It continues through all eternity. (それはずっと繰り返される日常)
--The last marionette show.(それは人生の終焉)
--However, The dolls was laughing. (されど幸せな物語)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「スペルカードルールって、なんで律儀に守られてるのかしら」
「それは腋巫女のおしりペンペンが怖いからさ」
「魔理沙!? 何時からいたの!?」
「『弾幕制度ってさー』から」
「最初だけか・・・よかっ」
「3ループほど」
「オーマイガ! こ、これは今度の人形劇の練習なんだからねっ! 勘違いしないでよ!? 勘違いしたらすり潰すわよ!」
「『毎日抱きマクラとして使ってあげる。』光栄のキ↓ワ↑ミ→だぜ」
「サクリファイッ!」
「おぉ魔法使いこわい魔法使いこわい」
ばかばかと言いながらぽかぽかと魔理沙の胸を叩く。
恥ずかしさのあまり顔を魔理沙の胸にうずめる。
しかしその成長途中の柔らかさを認識してしまうと、さらに耳まで真っ赤に染めた。
そんなアリスを魔理沙は優しく抱きしめ、さらさらと流れる金色の髪を優しく、ゆっくりと包み込む。
うっすらと涙がうかぶアリスの瞳は、幸せそうに輝いていた。
人形「Am I already unnecessary? Only my Alice・・・・・・」
―Continue?_
でしょうか?
深いな、読みとり方。
そういう設定だったら申し訳ありません
英文は色々とれるようにしています。
そして正解は貴方の中にあるはず。
「きっとそれは楽しい物語」
「きっとそれは悲しい物語」
『それは幸せな(幸せだった)物語』
>妖怪の森→魔法の森のことでしょうか?
うわぁぁぁなんというひどい誤字をしてしまっただ
情報ありがとうございます!即修正致しました。
純情乙女で弾幕少女達のお姉さんになろうと必死で恋のいろはも友情のいろはも勉強中で・・・
そんな不器用なアリスをそっと抱きしめてあげたい
その気持ちにさせるアリスは罪深き乙女だぜ From 魔理沙
不器用なアリスかわいいよアリス
アリスと一緒に空を飛び隊一名参上!