「殺人ドール」
「ふふ、ミゼラブルフェイト。咲夜」
爽やかに日も暮れると、紅魔館の面々も活気付くというもの。
上機嫌におべべを召しかえたレミリアは、今宵の月のいい照りっぷりに感嘆していた。
「バッドレディスクランブルには最高の夜になりそうだわ」
「夜霧の幻影殺人鬼?」
「ええ、スカーレットデビル」
「と、なると、ソウルスカルプチュアですか?」
「レミリアストーカー、になるわね」
「では、ルミネスコシェということで」
「不夜城レッド」
少し寂しそうな表情をしてから、咲夜は一礼をしてその場を去った。今宵は、従者で二人過ごすには少し明るすぎる月なのだった。
レミリア・スカーレットはワガママで幼い吸血鬼であるからして、心底惚れこんでいる咲夜としては、時折寂しい思いもさせられる。
想い人が、違う人を想っているのを間近で見続けるというのは、えてして辛いもので。
「ルナ・ダイアル……」
咲夜は誰もいないことを確認してから、廊下ですすり泣きをしていた。
耳の良い門番は、その泣き声をいつも通り、聞こえないフリをしていた。
「彩雨……」
話してほしい、これでも自分は、あなたの親友だと想っているんですよ。その言葉を本人に伝えることは、美鈴にはできなかった。
あなたに私の何がわかるのと言われてしまえば、返す言葉が見つからないだろうから。
(私はどうして、こんなにも星脈弾なんだ……。大切な人一人、虹色太極拳できないだなんて)
下唇を噛んだところで、現実が変わるわけでもなく。それぞれが自らの力不足に悩み、打ちひしがれている。
それが紅魔館の現状であり、平和だということの証明でもあった。
スペルカードを日常会話に入れようという試みは、八雲紫によって提唱された。
曰く、弾幕ゴッコをもっと身近に感じることで自分のスペルカードの理解を深め、それが鍛錬にもなるという理由から。
おかげで会話が、なんとなく雰囲気で感じるしかない状態で色々めんどくさい。
風見幽香など、二個しか喋れる言葉がない。コミュニケーション能力が壊滅的だというのもわかりやすい。
しかし、引きこもり代表であるパチュリー・ノーレッジはやたらと雄弁になった。
火符、やら月符、やら、七種類の感情パターンを簡単に出せるのも魅力である。
ちなみに魔理沙はマスタースパークしか言わず、アリスは人形を動かして意思を伝えようとするが、イマイチどの人形がどの名前なのかが伝わらない。
伝わったところで大分どうしようもない。
さて、と。レミリア・スカーレットは一路博麗神社を目指していた。
今夜は月が綺麗だからとデートに連れ出す算段なのだ。霊夢が寝床にいようがいまいが関係ない。
霊夢は私の生活スタイルに合わせるべき。傍若無人に相手の都合など一切考えないのがレミリア流の淑女っぷり。
スパーン! と障子戸を壊す勢いで縁側を開放すると、そこには。
「ダメよ紫。二重結界してるんだから」
「うふふ、魅力的な四重結界の前ではそんな結界は何の意味もなさないわ」
「ばか。夢想封印しちゃう」
「とかいって天生しちゃうくせに。弾幕結界しそうなんでしょ?」
霊夢の布団で一人芝居をしている。八雲紫の哀れな姿だけが。
「レミリアストレッチするわよ?」
「夢と現の呪って、悲劇よね……。霊夢は今日は、魔理沙のところでパーティーなんですって。私呼ばれなかったわ。
ここに居るということは貴方も。人間と妖怪の境界っていうのは踏み越えれないものなのかしら。
禅寺に棲む妖蝶にしかならないじゃないの。こんなにおめかししてきたっていうのに」
「あんたの顔を見てると幼きデーモンロードしそうだわ……。さっさと消えなさい。スカーレットシュートされたくなかったら」
「あら? 八雲紫の神隠し。次の被害者は貴女なのかしら? レミリア・スカーレット?」
当事者の居ない戦争ほど虚しく無意味なものもない。
しかしこれほど熱く燃え上がり、遺恨を残す戦いも他にはないのだ。
「なぁ霊夢」
「何? あ、醤油とって」
「スペルカードを会話に入れなくていいのか?」
「ああ。そんなのを喜ぶのなんて、自意識過剰な妖怪たちとその従者ぐらいじゃないの?」
「そんなもんか。ほれ、醤油がマスタースパークだ」
「あーっ! かけすぎ!」
というネタがだな
意味不www
書籍組はもっと悲惨だろうけど。
>「では、ルミネスコシェということで」
多分ルミネスリコシェ?リが抜けてると思われます