「ねえ、慧音」
ふーっ、と煙草の煙をため息のように吐き出す。
ごそごそと身支度を整える背をぼんやりと見ながら妹紅は切り出した。
「もう、やめにしないかな、こんな関係」
ぴた、と動きを止めるその姿にかまわず続ける。
「最近寒くて人肌が恋しかったのは否定しないさ。
でもあの時は私も慧音もしたたかに酔って……」
「酔った勢いだった、といいたいのか?」
ゆっくりと振り向くシルエットに、妹紅は饒舌になる。
「そうさ、勢いだったのさ。
大体お前もそうだろう。里にはお前を気にするものがわんさといると聞いているぞ」
「っ、そんなことは、ない。私は……」
「ばかにするなよ。私だって里には降りるんだ」
かん、と火鉢に煙管を叩きつける。
「いいかげん、終わらせるべきなんだ、こんな関係は」
妹紅のほうを見ようとしない女。
妹紅はその背にゆっくりと迫っていく。
その手には、鈍く光るモノが握られていた。
「はい、ここまで。
『残酷、女を手ひどく振る女、鬼畜の所業のその果てに! ~女教師は見た~』
次回をお楽しみに~」
きゃあきゃあ喜ぶ子供たちに手を振って愛想をふりまきつつ、てゐは手早く紙芝居を片付けていく。
それを手伝いながら、鈴仙は釈然としなかった。
「……ねえてゐ、これいくらなんでもやりすぎなんじゃあ?」
「ちっちっち、れーせんちゃんはプロパガンダってものを知らない。
姫様が許可したんだから大丈夫大丈夫!」
「へえ、輝夜がねえ……。
アイツ最近やりあってなかったと思ったらこんなことを」
「げ、妹紅だ。退避、退避~」
ダッシュで逃げていくうさぎたちに、追いかけていく妹紅。
慧音はそれを見ながらため息をついた。
どうやらこの幻想郷にはプライバシーというものはないらしい。
先日手に入れた鈍い輝きを持つリングを見て、慧音はもう一度、幸せなため息をつくのだった。
…てゐは邪気だらけのようですがww
リングだけに丸く収まっててほっとした
しかしもこたんは煙管が似合うなぁ…