Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

参拝日和

2010/01/03 16:41:46
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かちゃり

家の鍵を閉めて空を見上げると、茫洋とした月が天蓋にうつっていた。
星々の輝きは遠く雲のかなたにあり、それらを見ることは叶わない。

「東経、ひゃくさんじゅう―」

「何してるの蓮子。早く行くわよ」

私がいつものように位置を視ているとメリーがそう急かしてきた。
いつもの癖なのだ。ついつい時間と位置を気にしてしまう。
今は星たちは隠れてしまって時間を視ることはできないが。

メリーに連れられて歩き出す。
寒空の下、私は晴れ着の振袖を着て歩いていた。
目的地は、はて?そういえばどこに行くつもりだっただろうか。

「メリー、メリー」

「クリスマスはこないだ終わったわよ」

誰がそんなことをのたもうたか。

「私、よく考えたらこれから行く場所を聞かされてないのだけれど」

「少し歩いたところにある神社よ。振袖を着て、12月も31日の深夜に他にどこへ行こうというのかしら」

成程至極まっとうな返答だ。
しかし私の記憶が正しければ、家を出た時に既に日付は1月1日になっていたように思う。
着付けに時間がかかったのだ。私が着付けなぞ出来るはずもなく、メリーのなすがままになっていたのだが
それが悪かった。私の服を無理やり脱がせたメリーは…うん、思い出すのはよそう。

「蓮子」

思案を巡らせて歩いていると、メリーよりも歩む速度が遅くなっていたのか。
気がつけば彼女の数歩後ろを歩いていた。

「どしたの?」

とてとてと駆け足で彼女の横に並ぶ。

「寒いわ」
「そうね、だからよそうと言ったのに」
「発想の転換よ」
「へ?」

そう言ってメリーは私の手を握る。

「寒いのならばくっつけばいいのよ、思いっきりね」
「メリー、何をどう転換すればそんな考えに行き着くの」
「ごめんなさい、欲望に忠実なだけだったわ」

悪びれずそう言う。嫌がるそぶりを見せてしまったが、私だってまんざらじゃない。

それからしばらく無言で歩く。

メリーとつないだ方の手が暖かい。
彼女のぬくもりがわかる。
つないでないほうの手が、寂しい、寂しいと私に告げてくる。
その感情を表に出さないように手をにぎにぎしていると、メリーがそれに気づいたのか
こちらを見て、どうしたの? と目で伝えてくる。
なんでもないよと、私も目で返答する。






そんなやり取りをしてからすぐに、目的の場所に到着した。
そこは案の定、大勢の人で混みあっていた。

私はメリーの手をより強く握る。

「はぐれたら、困るでしょう」

彼女に何か言われる前に言い訳をしておく。
ふふ、と口元を押さえて笑っていた。

「はぐれてもすぐにわかるわ。振袖にそんな帽子を被っている人は蓮子くらいだもの」

そう言ってまたくすくすと笑っていた。
何を隠そう、私は確かにいつもの帽子を被っていた。
これがなければ何かしまらない、のだ。新年なのにしめてしまったらだめなのだろうが。

そんな他愛のない話をしているとお賽銭を入れる順番がまわってきた。

5円玉を放り投げて、二拝二拍一拝する。

願い事を心中で呟いていると、何か冷たいものが頬を掠めていった。
メリーの仕業かと思い横を見るが、彼女はまだ何か一生懸命祈っているようだった。
結局なんだったのかわからず、私はメリーと屋台が並んでいるところまで帰ってきた。

「それで、蓮子は何をお願いしたの?」
「秘密、かな」
「えー」
「秘密があるほうが、女は美しいのよ」

もっともらしいことを言ってメリーの言及をかわしていると、ふとまた冷たいものが頬をよぎった。
それが何であるか、今度はすぐにわかった。
メリーも気づいたようである。

雪だ。

そう思い、私は空を見上げる。



そこにあったのはフワフワと舞い散る粉雪と、時間を告げる無数のきらめきだった。
「今年も、メリーと共にいられますように」



新年、皆様のご多幸と益々のご活躍をお祈りしております。
Nivis
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
今年も蓮メリは素晴らしいですな!!

着付けの所をできれば詳しく!
2.名前が無い程度の能力削除
目で会話出来る2人にやられた!秘封は癒しである!
それと新年明けましておめでとうございます
3.名前が無い程度の能力削除
目で会話するとか素晴らしいな。蓮メリ最高
ところで着付けのとこkwsk
4.えのぐ削除
ちゅっちゅというのを勉強させていただきました、多謝!