こつん、と足がぶつかった、コタツの中で。
「冷たいわ、メリー」
「あなたは温かいわね、蓮子」
もぞもぞと、メリーがコタツの中で起用に足を動かしている。
先ほどわが家に来たばかりのメリーの足は冷たい。
「やっぱり冬はコタツよねぇ」
しみじみと、蕩けた顔で呟くメリーだったが、
「あなた、本当は日本人でしょう」
私はそう言わずにはいられなかった。
「日本人だとかそうじゃないとかは瑣末な問題よ、蓮子。そもノスタルジーをコタツに感じるのは全人類共通
ではないかしら?」
「嘘っくさい理論ねぇ。そんなことよりも」
「よりも?」
愛らしく小首をかしげるメリーに、うっ、と気おされながらも続ける。
「あなた、12月も31日の大晦日に何ゆえに私の家にいらっしゃるのですかね」
もっともな疑問であろう。
私は大学で、論文やら学会の準備やらをしてごたごたしていたので、結局、実家に帰るのはまだ先の予定なのだが。
果たしてメリーはいかなる理由で私の家にいるのだろうか。
急遽秘封倶楽部の活動でもしたくなるような、結界のほころびを見つけたというのが妥当か。
「やぁね、蓮子。決まっているじゃない。わざわざ大晦日に押しかけてすることは一つよ」
大晦日を強調した。
どうやら倶楽部活動ではないようだ。というか私にも答えはわかっている、わかっているのだが、
この寒い時分の夜中に出かけたくない。だからどうか私の予感よ外れてくれ。
そう、祈った。
そして大きく息を吸い、私はメリーに問うた。
「で、その大晦日に押しかけてまですることっていうのは?」
ごくり、と生唾を飲み込む。
そうしてメリーは、告げた。
「初詣に行くに決まっているじゃない」
まいがっ!
「却下」
私は即答した。
「ダメよ、行くの」
さらに即答で返すメリー。
ぐぬぬ
「蓮子は、私と初詣、行きたくないんだ」
目に涙をためながら上目づかいでこちらを見てくるメリー。
なにそれ反則
「いっ、いや、決してメリーと初詣に行きたくないというわけではなくてですねはい、外があまりにも寒いというか
コタツから出たくないというか、その、本当は行きたいというか、もにょもにょ…」
しどろもどろになりながらも、なんとか言い訳を口にする。
「えっ、最後の方がよく聞こえなかったのだけれど、なんて言ったの?」
一瞬にして泣き顔から笑顔になっているメリー。
ちくしょう、やっぱりうそ泣きか。
「な、なんでもない!」
そう言って顔を背けると、両頬を何かにがっしりとつかまれ、無理やりメリーの居る正面に向かされる。
案の定それは、メリーの両手だったが。
「蓮子、やっぱり私とは初詣に行きたくないんだ」
じっと、涙を湛えた目で見つめてくる。顔を動かそうにもメリーに固定されていて動かない。
視線をそらそうにも、私はメリーの、水滴が今にも零れ落ちそうな目から、視線をそらすことができない。
吸い込まれるような感覚。
顔が熱くなる。
「私だって、私だってメリーと一緒に初詣に行けたら嬉しいわよ!」
何かとんでもないことを私は口走ってしまったような。
そっと、顔からメリーの手が離れる。
「可愛いこと言ってくれるわね、蓮子」
そうして正面には、にやにやと笑っているメリー。
またもしてやられた。ダメだ、あの状態のメリーには敵わない。
「で、でもメリー、私ほら、晴れ着とか持ってないし、準備するからせめて日が昇ってからにしましょう?」
最後の抵抗を試みる私だったが
「あら、それなら心配ないわ、ちゃんと蓮子の分まで持ってきているもの」
その抵抗は、あっさりと打ち破られるのであった。
というか、背後の大荷物はそういうことだったのか。
「さぁ、さぁさぁ蓮子、私が着付けてあげるわ」
「えっと、メリーさん、顔が怖いです」
目はぎらぎらと輝いており、唇の端からは涎が垂れている。
メリー、それは乙女がする顔じゃないわ
「とりあえず、邪魔なものは脱いでしまいましょうね!」
「いやぁあああああああ!」
どこにそんな力があるのか、私はメリーにひん剥かれながら、遠のいていく意識の中で
そういえば親戚にもらったみかんをダンボールから出してないなぁ
などと思うのであった。
初詣なぁ…いかないかもなぁ…
「お願い……私と一緒に……イこう?」涙目上目使いのメリーにそんなこと言われたらそれだけでイッちゃいそうです。
ひぃっ!地味に重大な問題!
もう、底の方が完全に腐ってそうだ。
ノ唱皈熙キ、ハ、ャ、驗Ζ、、ソ、゚、ォ、「ゥ`、キ、ニ、ソ、鬢、、、、ヌ、ケ、ヘ。」