私の吐く白い息が漏れて、ゆらりゆらりと空気が揺れる。
この部屋は、ただ寒いだけ。
暖かい毛布はある。頼めば飲み物だって出てくる。体は確かに暖かい。
けど――誰も居ない。
美鈴が居ない。小悪魔が居ない。パチュリーが居ない。咲夜が居ない。妖精メイドだって居ない。そしてなにより、大好きなお姉様が居ない。
「寒いなぁ……」
心が寒い。
無性に会いたくなることがある。
寂しい。
これは、どうしても慣れない感情だ。
私、お子様なのかなぁ。
「会いたいなぁ……」
ベッドに腰掛けながら、足をぷらぷらさせる。ふかふかなベッドは、私のお尻をしっかりと包んでくれた。
会いに行くのは簡単。重い扉を開けて、飛び出してしまえばそれで良い。
でも、会いに来て欲しい。
私を想って、足を運んで欲しい。
とは言っても、わざわざここまで来るのは、お姉様くらいだ。
だから、お姉様に来て欲しい。
寂しいくせに、自分からは会いに行きたくない我侭。
うん、私やっぱり子どもっぽいかも。
来てくれるかな。
耳を澄ませる。足音がしたら、それは合図。
「あ、聞こえる!」
想いが通じたのか、お姉様がこっちへ向かって来ている。足音が聞こえる。
私は自分の髪をくしくしと整えた。
服装も、おかしいところは無いか確認した。
大好きな人には、やっぱりちゃんとした格好で会いたいからね。
「フラン、入るわよ」
「どうぞ、お姉様」
重い扉を隔てたやりとり。
「こんばんは、愛しのフラン」
「こんばんは、愛しのお姉様」
姿が見えただけで、にへらとしてしまうのが分かる。
多分、今の私はだらしない表情をしているだろう。前に、ふにゃふにゃとした笑い方だ、とお姉様に言われたことがある。嬉しいのだから、仕方無いよ。
勢いよく抱き付いてみた。
少しよろけながらも、お姉様の暖かい腕は、私をしっかりと包んでくれた。
「えへへ~」
「どうしたの、フラン? 今日は妙に甘えん坊ね」
「お姉様に会いたかったから」
「会いにくれば良いじゃない」
「会いに来て欲しかったの」
「よく分からないな」
「お姉様には分からないよ、多分」
「む……」
お姉様がムッとした表情になったけど、気にしないで胸に顔を埋めてみる。
私もお姉様のこと言えないけど、小さいなぁ。けど、ちゃんと柔らかくて温かい。それに、ふにふにしてて気持ち良い。
なんていうか、落ち着く。
「んー……小さい」
「フランも変わらないでしょう」
「私、お姉様の胸好き」
「それを言われて、私はどんな反応すれば良いのやら」
「私をもっとギュッとすれば良いよ」
「それじゃあ、ギュッ」
ギュ~ッとされる。
ちょっぴり痛いくらい。
でも、それくらいがちょうど良い。温かいし、柔らかいし、なによりお姉様を確かに感じることが出来るから。
「お姉様、おねえ様、おねーさま」
「何?」
「呼んでみただけー」
お姉様が少し呆れたような表情をした。
それでも、まだギュ~ってしてくれている。なんだかんだで、やっぱり優しい。
だから、そんな優しいお姉様に、一つ意地悪をしてみる。
「ねぇ、お姉様」
「んー?」
「私のこと、好き?」
「妹が嫌いな姉なんかいないわよ」
「じゃあ好きなんだね?」
困ったように頬を掻くお姉様。
そう、お姉様は意外に照れ屋だから、滅多に『好き』とハッキリ言わない。
私の質問は、それを言わせるための意地悪な質問。
「う~ん……」
「嫌いなの?」
「いぁ、そんなわけは……」
こうやって、おろおろとするお姉様を見るのも好き。
わざと意地悪い笑みを浮かべて、お姉様を見る。
お姉様は、うっ、とした表情になる。
「……私で遊んでるでしょう、フラン?」
「お姉様がたった一言、好きって言ってくれれば良いだけだよ?」
「くっ……」
逃がさないように、お姉様の背中に回した腕に力を込める。
こういうとき、お姉様はいつも逃げちゃうからなぁ。
今回は逃がさない。
「す、すー……すー」
「す? はい、あと一文字だよ」
面白いくらいに顔を真っ赤にして、口をすの発音で止めているお姉様。
私は問題無用でその先を急かす。
お姉様はしばらく唸っていたけど、ふぅと一息吐いて、決心したような顔で私を見つめる。
さっきまでの照れが一切含まれていない、割と真面目な表情。
たまに見せるこの表情も、好き。見た目は私とあんまり変わらない、幼い容姿なのに、こういう格好良い雰囲気は、私には出せない。
「フラン」
「ん」
「好き」
「ん、知ってるよ」
「フランは」
「え?」
「フランは私が好き?」
「んー……ひみつっ!」
私がそう言うと、お姉様は顔をしかめた。
「ずるくない?」
うん、お姉様の言うとおり、ずるいと思う。
「えへへ」
「笑って誤魔化さない」
「わっ!?」
そおっと逃げようかと思ったら、抱き締める力を強められた。
半目でお姉様が私を睨んでいる。
あ、あはは~と笑って誤魔化そうとしても、逃げられそうにない。
「お姉様、ちょっと痛いよ」
「そんな言葉を求めているわけじゃあないのよ、フラン」
「ごめんなさい」
「そんな言葉でもないわ」
お姉様が私に何を言わせたいかは、分かる。
でも、恥ずかしいじゃない。
いや、お姉様には言わせたけどさ。
「まさか私にだけ言わせて、あなたは言わないなんてこと、無いわよねぇ」
「ぅ……」
お姉様が、とても良い笑顔でそう言ってくる。
うぅ、言わなきゃ離してくれそうにない。
すーはーすーはー深呼吸。
胸がドキドキ高鳴るのが、よく分かる。
「お、お姉様!」
「はい、何かしら?」
うぅ、その素敵すぎて腹が立つ笑顔が嫌だ。
「えーと、お姉様」
「んー?」
「そのー、お姉様」
「何?」
「うぅ、お姉様~」
さっきの私より意地悪だぁ。
もうなんか、殴りたくなってきた。殴らないけど。
また、深呼吸。
そして、しっかりと目を見つめる。恥ずかしいけど、頑張って見つめる。
「お姉様、好き」
「はい、よく言えました」
「ひゃぁ!?」
頬にキスされた。
突然のことに、思わず変な声を上げてしまう。
好きって言うのは照れるくせに、こういうことはさらりとやってのけるお姉様が腹ただしい。
うぅ、と唸りながら睨んでやる。
「そんな目しても、可愛いとしか言えないわよ」
「そ、そういう恥ずかしいことをさらりと言わないでよ!」
「可愛い可愛い、フランは可愛い」
「むぅ~!?」
本当、なんで好きは中々言わないくせに、こういうことは大丈夫なんだろう。
私だけ慌てて真っ赤で、なんか悔しい。
お姉様は、余裕の笑みを浮かべている。
むぅ、こうなったら。
「お姉様」
「んっ!?」
「っ……」
唇同士を重ねる。
突然のことに、目を大きく見開いて驚いているお姉様。
うん、恥ずかしいけど、お姉様のこういう姿見れて良かった。
マシュマロみたいにふにゅっと柔らかくて、抱き締めてるのと同じくらいに、ほわっと温かい。それに、なにより心地良い。
自然と、背に回していた手に力が入る。
しばらくして、ゆっくりと唇を離した。
「へへ、驚いた?」
「さすがに驚くわ。でも、嫌じゃないわ」
「んっ……」
今度はお姉様からのキス。
ついばむように、何度も何度も角度を変えてのキス。
ふわふわしてちょっと怖いけど、心地良い。
「んーお姉様」
「何かしら?」
「今日一緒に寝てくれる?」
「フランが望むなら、いつでも」
「じゃあ……一緒に寝よ?」
「えぇ、喜んで」
お姉様が笑顔でそう返してくれた。
今日は一人きりじゃない。
寂しくない。お姉様が居てくれるから。
今日は、温かくなりそうだ。
だってこんな蜂蜜みたいに甘い話が書けるんですから。
おにゃのこ同士のちゅっちゅは最高だ!! いいぞもっとやれ。
つ【ウィルス】
最近完全に枯渇してたレミフラ分補充できました
これで年が越せる
ともかくこれで無事に年を越せそうだ。
来年も宜しく頼みます!よいお年を。
だが無罪
確かに声が枯れることはなかったです。
>>2様
可愛いは正義ですよね!
>>ぺ・四潤様
だいぶ頭がおかしくなりましたw
>>4様
ちょ、やめてくださいw
>>5様
最近レミフラ少ないですよね。
楽しんでもらえて良かったです。
>>6様
ほわほわ。
>>七人目の名無し様
そんなにですかw
>>8様
糖分はかなり低めでしたが、楽しんでもらえてなによりです。
>>9様
はわ、ありがとうございます。
>>10様
糖分は30%くらいですよー。
>>11様
一人じゃないですよ。まわりがやけに暗いと思ったら、それルーミアですから!
>>12様
いえいえ、こちらこそよろしくお願い致します。
>>13様
可愛ければ無罪ですよね!
>>14様
ほぁ、それは良かったです。
読んでいただいて私は幸せです!
>>華彩神護様
ふぁ!?
あ、ありがとうございます!