Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

寂しい夜に

2009/12/30 02:16:03
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 私の吐く白い息が漏れて、ゆらりゆらりと空気が揺れる。
 この部屋は、ただ寒いだけ。
 暖かい毛布はある。頼めば飲み物だって出てくる。体は確かに暖かい。
 けど――誰も居ない。
 美鈴が居ない。小悪魔が居ない。パチュリーが居ない。咲夜が居ない。妖精メイドだって居ない。そしてなにより、大好きなお姉様が居ない。

「寒いなぁ……」

 心が寒い。
 無性に会いたくなることがある。
 寂しい。
 これは、どうしても慣れない感情だ。
 私、お子様なのかなぁ。

「会いたいなぁ……」

 ベッドに腰掛けながら、足をぷらぷらさせる。ふかふかなベッドは、私のお尻をしっかりと包んでくれた。
 会いに行くのは簡単。重い扉を開けて、飛び出してしまえばそれで良い。
 でも、会いに来て欲しい。
 私を想って、足を運んで欲しい。
 とは言っても、わざわざここまで来るのは、お姉様くらいだ。
 だから、お姉様に来て欲しい。
 寂しいくせに、自分からは会いに行きたくない我侭。
 うん、私やっぱり子どもっぽいかも。
 来てくれるかな。
 耳を澄ませる。足音がしたら、それは合図。

「あ、聞こえる!」

 想いが通じたのか、お姉様がこっちへ向かって来ている。足音が聞こえる。
 私は自分の髪をくしくしと整えた。
 服装も、おかしいところは無いか確認した。
 大好きな人には、やっぱりちゃんとした格好で会いたいからね。

「フラン、入るわよ」
「どうぞ、お姉様」

 重い扉を隔てたやりとり。

「こんばんは、愛しのフラン」
「こんばんは、愛しのお姉様」

 姿が見えただけで、にへらとしてしまうのが分かる。
 多分、今の私はだらしない表情をしているだろう。前に、ふにゃふにゃとした笑い方だ、とお姉様に言われたことがある。嬉しいのだから、仕方無いよ。
 勢いよく抱き付いてみた。
 少しよろけながらも、お姉様の暖かい腕は、私をしっかりと包んでくれた。

「えへへ~」
「どうしたの、フラン? 今日は妙に甘えん坊ね」
「お姉様に会いたかったから」
「会いにくれば良いじゃない」
「会いに来て欲しかったの」
「よく分からないな」
「お姉様には分からないよ、多分」
「む……」

 お姉様がムッとした表情になったけど、気にしないで胸に顔を埋めてみる。
 私もお姉様のこと言えないけど、小さいなぁ。けど、ちゃんと柔らかくて温かい。それに、ふにふにしてて気持ち良い。
 なんていうか、落ち着く。

「んー……小さい」
「フランも変わらないでしょう」
「私、お姉様の胸好き」
「それを言われて、私はどんな反応すれば良いのやら」
「私をもっとギュッとすれば良いよ」
「それじゃあ、ギュッ」

 ギュ~ッとされる。
 ちょっぴり痛いくらい。
 でも、それくらいがちょうど良い。温かいし、柔らかいし、なによりお姉様を確かに感じることが出来るから。

「お姉様、おねえ様、おねーさま」
「何?」
「呼んでみただけー」

 お姉様が少し呆れたような表情をした。
 それでも、まだギュ~ってしてくれている。なんだかんだで、やっぱり優しい。
 だから、そんな優しいお姉様に、一つ意地悪をしてみる。

「ねぇ、お姉様」
「んー?」
「私のこと、好き?」
「妹が嫌いな姉なんかいないわよ」
「じゃあ好きなんだね?」

 困ったように頬を掻くお姉様。
 そう、お姉様は意外に照れ屋だから、滅多に『好き』とハッキリ言わない。
 私の質問は、それを言わせるための意地悪な質問。

「う~ん……」
「嫌いなの?」
「いぁ、そんなわけは……」

 こうやって、おろおろとするお姉様を見るのも好き。
 わざと意地悪い笑みを浮かべて、お姉様を見る。
 お姉様は、うっ、とした表情になる。

「……私で遊んでるでしょう、フラン?」
「お姉様がたった一言、好きって言ってくれれば良いだけだよ?」
「くっ……」

 逃がさないように、お姉様の背中に回した腕に力を込める。
 こういうとき、お姉様はいつも逃げちゃうからなぁ。
 今回は逃がさない。

「す、すー……すー」
「す? はい、あと一文字だよ」

 面白いくらいに顔を真っ赤にして、口をすの発音で止めているお姉様。
 私は問題無用でその先を急かす。
 お姉様はしばらく唸っていたけど、ふぅと一息吐いて、決心したような顔で私を見つめる。
 さっきまでの照れが一切含まれていない、割と真面目な表情。
 たまに見せるこの表情も、好き。見た目は私とあんまり変わらない、幼い容姿なのに、こういう格好良い雰囲気は、私には出せない。

「フラン」
「ん」
「好き」
「ん、知ってるよ」
「フランは」
「え?」
「フランは私が好き?」
「んー……ひみつっ!」

 私がそう言うと、お姉様は顔をしかめた。

「ずるくない?」

 うん、お姉様の言うとおり、ずるいと思う。

「えへへ」
「笑って誤魔化さない」
「わっ!?」

 そおっと逃げようかと思ったら、抱き締める力を強められた。
 半目でお姉様が私を睨んでいる。
 あ、あはは~と笑って誤魔化そうとしても、逃げられそうにない。

「お姉様、ちょっと痛いよ」
「そんな言葉を求めているわけじゃあないのよ、フラン」
「ごめんなさい」
「そんな言葉でもないわ」

 お姉様が私に何を言わせたいかは、分かる。
 でも、恥ずかしいじゃない。
 いや、お姉様には言わせたけどさ。

「まさか私にだけ言わせて、あなたは言わないなんてこと、無いわよねぇ」
「ぅ……」

 お姉様が、とても良い笑顔でそう言ってくる。
 うぅ、言わなきゃ離してくれそうにない。
 すーはーすーはー深呼吸。
 胸がドキドキ高鳴るのが、よく分かる。

「お、お姉様!」
「はい、何かしら?」

 うぅ、その素敵すぎて腹が立つ笑顔が嫌だ。

「えーと、お姉様」
「んー?」
「そのー、お姉様」
「何?」
「うぅ、お姉様~」

 さっきの私より意地悪だぁ。
 もうなんか、殴りたくなってきた。殴らないけど。
 また、深呼吸。
 そして、しっかりと目を見つめる。恥ずかしいけど、頑張って見つめる。

「お姉様、好き」
「はい、よく言えました」
「ひゃぁ!?」

 頬にキスされた。
 突然のことに、思わず変な声を上げてしまう。
 好きって言うのは照れるくせに、こういうことはさらりとやってのけるお姉様が腹ただしい。
 うぅ、と唸りながら睨んでやる。

「そんな目しても、可愛いとしか言えないわよ」
「そ、そういう恥ずかしいことをさらりと言わないでよ!」
「可愛い可愛い、フランは可愛い」
「むぅ~!?」

 本当、なんで好きは中々言わないくせに、こういうことは大丈夫なんだろう。
 私だけ慌てて真っ赤で、なんか悔しい。
 お姉様は、余裕の笑みを浮かべている。
 むぅ、こうなったら。

「お姉様」
「んっ!?」
「っ……」

 唇同士を重ねる。
 突然のことに、目を大きく見開いて驚いているお姉様。
 うん、恥ずかしいけど、お姉様のこういう姿見れて良かった。
 マシュマロみたいにふにゅっと柔らかくて、抱き締めてるのと同じくらいに、ほわっと温かい。それに、なにより心地良い。
 自然と、背に回していた手に力が入る。
 しばらくして、ゆっくりと唇を離した。

「へへ、驚いた?」
「さすがに驚くわ。でも、嫌じゃないわ」
「んっ……」

 今度はお姉様からのキス。
 ついばむように、何度も何度も角度を変えてのキス。
 ふわふわしてちょっと怖いけど、心地良い。

「んーお姉様」
「何かしら?」
「今日一緒に寝てくれる?」
「フランが望むなら、いつでも」
「じゃあ……一緒に寝よ?」
「えぇ、喜んで」

 お姉様が笑顔でそう返してくれた。
 今日は一人きりじゃない。
 寂しくない。お姉様が居てくれるから。
 今日は、温かくなりそうだ。
 
クリスマスにインフルエンザかかってました。喉飴です。
ただほわほわとしたレミフラなお話でした。
最近レミフラ少ないので。
そんにゃこんにゃではありますが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。
喉飴
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コメント



1.ずわいがに削除
喉飴さんはインフルエンザにかかっても、咳は出ないし声も枯れないと信じております。
だってこんな蜂蜜みたいに甘い話が書けるんですから。
2.名前が無い程度の能力削除
なんだこいつら可愛いすぎるだろチキショォォォォォ!!!!
3.ぺ・四潤削除
ウイルスがいい感じに回って喉飴氏の脳が更にアレになってしまわれた模様です。
おにゃのこ同士のちゅっちゅは最高だ!! いいぞもっとやれ。
4.名前が無い程度の能力削除
もっと朦朧すべき。
つ【ウィルス】
5.名前が無い程度の能力削除
レミフラ!レミフラ!
最近完全に枯渇してたレミフラ分補充できました
これで年が越せる
6.名前が無い程度の能力削除
にやにやほっこり
7.七人目の名無し削除
私の残機がヤバイことに……。
8.名前が無い程度の能力削除
ああもうニヤニヤが止まらない!!
9.名前が無い程度の能力削除
これだからあなたは……良い…。
10.名前が無い程度の能力削除
あまりの甘さに死ぬかと思った。
11.名前が無い程度の能力削除
この作品で初詣でに一人という現実に勝てる!
12.名前が無い程度の能力削除
胸焼けして来たじゃないか、どうしてくれる(誉め言葉)
ともかくこれで無事に年を越せそうだ。

来年も宜しく頼みます!よいお年を。
13.名前が無い程度の能力削除
実の姉妹同士でちゅっちゅとはなんてけしからん奴等だ!
だが無罪
14.名前が無い程度の能力削除
心が温まってきました
15.喉飴削除
>>ずわいがに様
確かに声が枯れることはなかったです。

>>2様
可愛いは正義ですよね!

>>ぺ・四潤様
だいぶ頭がおかしくなりましたw

>>4様
ちょ、やめてくださいw

>>5様
最近レミフラ少ないですよね。
楽しんでもらえて良かったです。

>>6様
ほわほわ。

>>七人目の名無し様
そんなにですかw

>>8様
糖分はかなり低めでしたが、楽しんでもらえてなによりです。

>>9様
はわ、ありがとうございます。

>>10様
糖分は30%くらいですよー。

>>11様
一人じゃないですよ。まわりがやけに暗いと思ったら、それルーミアですから!

>>12様
いえいえ、こちらこそよろしくお願い致します。

>>13様
可愛ければ無罪ですよね!

>>14様
ほぁ、それは良かったです。
16.奇声を発する程度の能力削除
年越し寸前に、こんな甘いお話を読める私は幸せ者だ!!!
17.華彩神護削除
神と呼ばれた事は無いですか?いえ呼ばせて下さい!この話は甘すぎてのどに来た。GJです。
18.喉飴削除
>>奇声を発する程度の能力様
読んでいただいて私は幸せです!

>>華彩神護様
ふぁ!?
あ、ありがとうございます!
19.削除
糖尿病にかかった豚は」どうすればいいんだ・・