「あなた、人間の男ね」
私の名前はフランドール・スカーレット、ここは紅魔館の地下、私の部屋。
人間の、しかも男がこの部屋に来るなんて初めてだわ。というより私は人間の男に会うこと事態が初めてだ。
初めてなのになんで相手が人間の男だなんてわかるのかって? 私のイメージとピッタリだったからよ。
人間の男がどうして私の部屋に来たのかを尋ねたが、男はとても驚いるような顔をするばかりで答えようとしない。
まったく、驚きたいのは私のほうよ。何か事情でもあるのかしら? まあいいわ。
再び男のほうを見ると今度はとっても困っているように見える。自分から来たくせに、なにをそんなに困っているのかしら?
しかし私も人間の男と接するのは初めてなので困ったわ。人間は脆いと聞くから弾幕ごっこなんかしたらすぐに壊れるだろうし。
え? 巫女達とはいつも弾幕ごっこをしてるくせにって? あいつらはもはや人間じゃないわよ。
そうだわ、せっかくなんだし練習をしよう。普通の人間と接する練習を。
「というわけであなた、私と付き合ってもらおうかしら?」
こうゆうのをデートと言うんだっけ。
男は最初は嫌がっていたが、私が【ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】を見せ付けるとしぶしぶと付き合った。
私の部屋でもよかったのだが、せっかくのデートなんだし私は外にでも行こうと思った。地下は暗いし辛気臭いからデートには向かないわ。まあ、デートというものがどうゆうものなのかは正直よくわからないんだけどね。
そうだわ、外へ出る前にお姉様に報告でもしようかしら。私が男とデートなんて知ったらきっと驚くわ。お姉様は最近本を読むのに凝っているから多分居場所は図書館だ。まあ、本と言っても漫画本だけどね。
私の予想通りお姉様達は図書館にいた。そして予想通り驚いてくれた。けれど、驚きすぎじゃない?
パチュリーと咲夜は驚きのあまり弾幕を張ってくるし、お嬢様と美鈴にいたってはなんだか喜んでいるように見えるわ。
「私初めてですよ!こんな奴漫画でしか見たことありませんもん!」
美鈴が人間の男と会うのが初めてだって? あんたいつも外で豆腐屋の親父と話しているでしょうに。しかも門番の仕事中に。
「生け捕りにするのよ咲夜! 霊夢達に自慢するのだから!」
お姉様も何を言っているのかしら。人間の男ってそんなに自慢になるのかな?
みんなが驚いてくれたのは嬉しいのだが、さすがに弾幕を張られるのであれば黙っているわけにはいかないわ。そう思って私も【レーヴァテイン】を構えようとした瞬間だった、
「ふ"っ"!」
突然お姉様達がうなり声を上げながら倒れだした。丁度腹にボディーブローを喰らったかのような倒れ方かしらねあれは。
状況がよくわからなかった私は慌ててお姉様達の元へ駆け寄ったが、白目を剥いていて起きる気配がない。
「まあいいわ、こいつらなんか放っておいて、外に出ようかしら」
そう私が言うと、男は相変わらず困っているような顔をするだけであった。
「まったく、どういうことかしらこれは」
私が男に尋ねても、苦笑いをするだけで相変わらず答えようとしない。
あの後外に出た私達だが、里へ行ったら人間達には驚かれ慧音には弾幕を張られるし、博麗神社へ行ったら霊夢や魔理沙には退治されそうになるし、逆に守矢神社へ行ったらあそこの巫女は興味津々でこっちに近づいてきたっけ。
しかも全員、お姉様達みたいに突然うなり声を上げながら倒れだすし、何がなんだかよくわからないわ。
どこへ行っても邪魔をされるだけなので、私は仕方なく自分の部屋へ戻ることにしたわ。
自分の部屋へ戻っても、特にやることがないので、私は男と話してみる事にしたの。
あたふたするだけで面白くのない奴かと思っていたけど、話してみると案外楽しいものね。馬が合うっていうのかしらこういうのって。なんだか初めて会ったようには思えないわ。
「変わり者だけどいい奴らでね、本当に面白い子達だわ」
私が友達の話をすると、男は突然照れたような顔をしだした、なんであんたが照れるのよ。
「そうだわ、今からそいつらが遊びに来るのだけれども、あなたも会って見ないかしら?」
私がそういうと、男は突然慌てだしてそろそろ帰らなければならないと言い出した。
「あら残念ね、次はいつ会えるのかしら?」
私が尋ねると男はもう会えないと言い出した。理由を聞いたら男は少し迷ったあとに自分の話をしだした。
どうやら男は外の世界から来た人間らしい。幻想郷に来れたことに興奮した男は自分の能力を使って暴れまわりその結果、霊夢達に追われていたみたいだ。
なるほど、それで私の部屋へ逃げてきたという事ね。他の奴らに会うたんびに弾幕を張られていた理由もわかったわ。
「あなたはどんな能力を持っているのかしら?」
私がそう尋ねると男が少し迷った後に、
「えーと……、【ありとあらゆる者を気絶させる能力】だよ。それで君のお姉さんや他の人達を気絶させたんだ」
なるほど、だからあいつらは急に倒れたというわけね。しかし私の能力となんだか名前が被るわね。
「君のお姉さんを気絶させたのが、ボクってわかって軽蔑した?」
と、男が尋ねるがそんなを事するわけがない。ここじゃあそれくらいの事は日常茶飯事だし、むしろあっけなくやられたあいつらが情けなく思えるわ。
男が幻想郷にいられるのは数時間の間だけらしい、よくわからないけどこの数時間の間結界が和らぐとかなんとか。
「そういう事なら仕方ないわね、楽しかったわ今日は、さようなら」
私がそういうと男はほっとしたような顔をしながら帰っていった。まったく、変わった奴だったわ。そうそう、変わった奴らと言えばこれからぬえとこいしが遊びに来るんだっけ。
私が男とデートをしたと言ったらどんな顔をするのかしらね。考えただけでも今から楽しみだわ。まあ、これがデートと呼べるかどうかはわからないけどね。
「まったくもぉー、何やってるのよぬえはぁ」
こいしが私に対して悪態を付く。
「いやまあ、まさかフランが人間の男と認識するとは思わなくてね」
顔に付けていたお面を取りながらこいしに言った。
私の正体不明の種は物質の定義を否定し、見る者の頭の中からそれに似合った形として認識させる力を持つ。
レミリア達には漫画に出てくるような大怪獣、慧音や霊夢達には里を脅かすような凶悪な化け物、山の巫女にはどうやらエイリアンに私が見えたらしい。けれど、まさかフランが正体不明の生き物を人間の男と認識するとは思わなかったわ……。
「フランを脅かすなら私に任せろ! とか言ってたくせに、情けないわぁ」
「こいしはいいじゃん、隠れて見ているだけだったんだから。必死でごまかそうとする私の身にもなってよ」
「あら、ちゃんとぬえがピンチの時には助けてあげたじゃないの」
「あれやっぱり貴方か……、どうやってみんなを気絶させたの?」
「ぼでぃ~ぶろ~とか言ってたかな?お姉ちゃんがペットを生け捕りにするにはこの方法が一番いいとか言ってたわぁ」
こいしは嬉しそうに言うが私はまったく嬉しくない、だいたいそれ弾幕ごっこじゃ反則じゃないのか……。こいしのおかげで余計な嘘まで付くハメになったし……。
「しっかしぬえは嘘が下手よねぇ。外から来た人間だなんて、しかも【ありとあらゆる者を気絶させる能力】とかフランちゃんの丸パクリだし、流石にその発想は気持ち悪いわぁ」
「う、うるさいなぁ。私だって恥ずかしかったんだからね、それ言うの。フランにバレないようにと思って必死だったんだからね!」
「あんな面倒な事するくらいならすぐにバラしちゃえばよかったのにー」
「気軽に言ってくれるなこいしは、あそこでバレたらフランにどんな目に合うかわからないじゃないか、最悪きゅっとしてドカーンだ。それに……」
「それに?」
「私の正体不明に傷が付く」
「もうボロボロだと思うけどねぇー♪」
「ああん」
ボディーブローってwwwwww