「あら……」
ふと外に目を向ければ、白い雪がふわりふわりと落ちてくるのが見える。
「咲夜、紅茶頂戴!」
「はい、ただいまお持ち致します」
紅魔館の赤い館を白く染める程、白い雪は降り続けた。
「お待たせしました」
「一秒くらいかしら?相変わらず早いわね、咲夜」
「お嬢様の為ですもの、当然ですわ」
「流石私の咲夜、ありがとう」
「どういたしまして、お嬢様」
紅魔館のテラスにて、レミリアは従者の咲夜と楽しげに会話をしていた。
「貴女のその能力、ほんと便利よねぇ」
「はい、お嬢様の我が侭にはとっても便利な能力ですわ」
「どういう事よそれ」
「ふふ、お嬢様のためなら何でも出来るって事ですわ」
心の底からの楽しげな笑い声が、テラスに広がる。
白い雪を見ながら、互いの事を語り合いながら。
***
「パチュリー様!」
「なぁに、小悪魔?」
薄暗い図書館では、小悪魔がパチュリーに飛びついていた。
心底楽しげな声である。
「今日はクリスマスですよ!」
「それくらい知ってるわ」
明るい声で歌うように言う小悪魔に、パチュリーは本へと視線を注ぎながら答える。
「じゃあ何かクリスマスらしい事しましょうよ、パチュリー様!」
「クリスマスらしい事ってなによ?」
「あれですよ、ケーキ!美味しいケーキ!」
パチュリーから離れて、何故か踊りながら小悪魔は言う。
「ケーキ、ねぇ……。咲夜に頼んで作ってもらおうかしら?」
「頼みましょうよ!咲夜さんのケーキならきっと美味しいですよ!間違いないです!」
パチュリーの言葉に、翼を羽ばたかせ尻尾を犬のように振りながら、小悪魔は言う。
「それだったら、レミィも誘って外で盛大にパーティでもしようかしら?」
小悪魔の楽しげな雰囲気にパチュリーもその気になってしまったらしい。
読んでいた本から視線を外し、小悪魔へと目を向けながら言った。
「いいですね!それいいです!歌って騒いで食べて呑んでパーティ!」
勿論、小悪魔としては願ってもいない事だ。
満面な笑顔でちぎれんばかりに尻尾を振りながら、小悪魔はパチュリーに飛びつき頬ずりをした。
「こら、いくら嬉しくっても限度ってのがあるでしょ」
「こあっ!?」
しかしその行為は、立ち上がったばっかりのパチュリーにしてみれば重くて仕方の無い事。
机の上にあった本を持ち、軽く小悪魔の頭を叩いて叱ると、小悪魔は短い悲鳴をあげてパチュリーから離れた。
「まったく。ほら、行くわよ小悪魔」
「は、はいっ!」
招く仕草をして小悪魔を呼びながら、パチュリーは図書館から出た。
そのパチュリーの後を、小悪魔が慌ててついていく。
この二人も、心の底から楽しげな会話をしながら。
***
「んー、今日は暇ですねぇ」
紅魔館の門前で、美鈴が精一杯背伸びをしながら言った。
今日はクリスマスな上に、雪が降っていて寒いから侵入者は来ないだろう。
「まぁ、そもそも来るとしたら魔理沙さんくらいですけどねぇ」
頬をポリポリと掻きながら、美鈴は空を見上げる。
どんよりとした雲空からは今も白い雪が降ってきていた。
「今日はホワイトクリスマスですねぇ」
腕を組んで頭の後ろに置き、そのまま壁に体重を預けながら呟く。
ホワイトクリスマス、その名にふさわしい程の白い雪原へと向けて。
「にしても暇ですねぇ」
休憩時間にでもなれば、そこらへんにいる妖精メイドとでもお喋りする事が出来るだろうが、生憎今は仕事中。
話し相手がいなくて少し寂しい気持ちだが、それも我慢しながら美鈴は空を見ていた。
仕事が終われば、楽しい時間が待っているのだから。
「ふ~ん、ふふ~ん」
それまでの時間を潰すためにか、美鈴は鼻歌を歌いだした。
楽しい時間が待ち遠しくて仕方無い、心の底から楽しげな鼻歌を。
***
そんな楽しげな雰囲気を漂わせる紅魔館で、唯一つ暗い雰囲気を漂わせる場所があった。
紅魔館の地下室、フランドール・スカーレットがいる場所だ。
「……」
白く塗り固められた壁を、ただボーッと見ながらフランドールは暇をつぶしていた。
彼女にとって、今日がクリスマスでも明日が正月でも関係ない。
「……あーあ、何か起きないかなぁ」
頭がもげた熊のぬいぐるみの身体を掴みながら、フランドールは呟く。
「ねぇ、貴女は何か起きて欲しいと思わない?」
抱きかかえた頭の無い熊に、フランドールは首を傾げながら聞く。
しかし、口の無い熊が答えるわけも無い。
「つまんない……」
そう呟きながら、フランドールは熊のぬいぐるみを放り投げた。
白い綿毛で一杯の身体は、落ちても落下音がしない。
「つまんない、つまんない」
ころりころりと転がりながら、フランドールが呟く。
しかし、呟いただけで自分の声が部屋の中で響くだけだ。
「ねぇ、つまらないよお姉さま」
ずっと昔に、自分の事をこの部屋へと監禁した姉の名を呟く。
だけどその姉は、今はテラスで従者と仲良く話しているところ。
「ねぇ、パチュリーでもいいからお話に来てよ」
紅魔館の動く図書館、知識豊富な魔女であるパチュリーならフランドールの欲求を満たすくらいの話を知っているだろう。
だけどその魔女は、今は図書館で使い魔と仲良く話しているところ。
「ねぇ、暇な時でいいから遊びにきてよ、美鈴」
紅魔館の門番、木の棒一つでも玩具に仕上げる美鈴なら、新しい玩具でフランドールを楽しませてくれるだろう。
だけどその門番は、仕事中という理由で一人で門前に立っている。
「ねぇ、誰でもいいから」
――私の所に、遊びに来て。
紅魔館には、沢山の妖怪や妖精が住んでいる。
だけどみんなは、クリスマスという特別な日に浮かれてやってこない。
「つまらない」
ころり、と寝返りを打ちながらフランドールは頭の無い熊のぬいぐるみを見た。
「つまらない、つまらない」
白く塗り固められた壁からは、外の様子を見る事はできない。
「ツマラナイ!」
悲痛な叫び声を上げながら、フランドールは手を握り締めた。
同時に、頭の無い熊のぬいぐるみが破裂した。
「ツマラナイ、ツマラナイ!」
誰かを呼ぶその悲痛な声。
だけど誰も答えない。
紅魔館では、誰もが心から楽しんでいるから。
ふわりふわりと落ちてくる、白い雪を見ながら仲間と共に。
「誰か来てよ!」
ただ一人、孤独の寒さに地下室で涙を流しているフランドールには誰も気づかない。
「ダレカキテヨッ!」
――独りで、寂しいから。
そのフランドールの周りを、ふわふわな白い何かが漂っていた。
先ほど破壊した、熊のぬいぐるみの材料である白い綿毛だ。
その白い綿毛は、まるで雪のようにフランドールの身体にふわりと落ちた。
***
白い雪が降る中で紅魔館ではパーティが開かれた。
沢山の妖怪や妖精達が楽しげに雪と戯れながら。
――ただ一人、偽物の白い雪の中で涙を流しいている少女を除いて――
ふと外に目を向ければ、白い雪がふわりふわりと落ちてくるのが見える。
「咲夜、紅茶頂戴!」
「はい、ただいまお持ち致します」
紅魔館の赤い館を白く染める程、白い雪は降り続けた。
「お待たせしました」
「一秒くらいかしら?相変わらず早いわね、咲夜」
「お嬢様の為ですもの、当然ですわ」
「流石私の咲夜、ありがとう」
「どういたしまして、お嬢様」
紅魔館のテラスにて、レミリアは従者の咲夜と楽しげに会話をしていた。
「貴女のその能力、ほんと便利よねぇ」
「はい、お嬢様の我が侭にはとっても便利な能力ですわ」
「どういう事よそれ」
「ふふ、お嬢様のためなら何でも出来るって事ですわ」
心の底からの楽しげな笑い声が、テラスに広がる。
白い雪を見ながら、互いの事を語り合いながら。
***
「パチュリー様!」
「なぁに、小悪魔?」
薄暗い図書館では、小悪魔がパチュリーに飛びついていた。
心底楽しげな声である。
「今日はクリスマスですよ!」
「それくらい知ってるわ」
明るい声で歌うように言う小悪魔に、パチュリーは本へと視線を注ぎながら答える。
「じゃあ何かクリスマスらしい事しましょうよ、パチュリー様!」
「クリスマスらしい事ってなによ?」
「あれですよ、ケーキ!美味しいケーキ!」
パチュリーから離れて、何故か踊りながら小悪魔は言う。
「ケーキ、ねぇ……。咲夜に頼んで作ってもらおうかしら?」
「頼みましょうよ!咲夜さんのケーキならきっと美味しいですよ!間違いないです!」
パチュリーの言葉に、翼を羽ばたかせ尻尾を犬のように振りながら、小悪魔は言う。
「それだったら、レミィも誘って外で盛大にパーティでもしようかしら?」
小悪魔の楽しげな雰囲気にパチュリーもその気になってしまったらしい。
読んでいた本から視線を外し、小悪魔へと目を向けながら言った。
「いいですね!それいいです!歌って騒いで食べて呑んでパーティ!」
勿論、小悪魔としては願ってもいない事だ。
満面な笑顔でちぎれんばかりに尻尾を振りながら、小悪魔はパチュリーに飛びつき頬ずりをした。
「こら、いくら嬉しくっても限度ってのがあるでしょ」
「こあっ!?」
しかしその行為は、立ち上がったばっかりのパチュリーにしてみれば重くて仕方の無い事。
机の上にあった本を持ち、軽く小悪魔の頭を叩いて叱ると、小悪魔は短い悲鳴をあげてパチュリーから離れた。
「まったく。ほら、行くわよ小悪魔」
「は、はいっ!」
招く仕草をして小悪魔を呼びながら、パチュリーは図書館から出た。
そのパチュリーの後を、小悪魔が慌ててついていく。
この二人も、心の底から楽しげな会話をしながら。
***
「んー、今日は暇ですねぇ」
紅魔館の門前で、美鈴が精一杯背伸びをしながら言った。
今日はクリスマスな上に、雪が降っていて寒いから侵入者は来ないだろう。
「まぁ、そもそも来るとしたら魔理沙さんくらいですけどねぇ」
頬をポリポリと掻きながら、美鈴は空を見上げる。
どんよりとした雲空からは今も白い雪が降ってきていた。
「今日はホワイトクリスマスですねぇ」
腕を組んで頭の後ろに置き、そのまま壁に体重を預けながら呟く。
ホワイトクリスマス、その名にふさわしい程の白い雪原へと向けて。
「にしても暇ですねぇ」
休憩時間にでもなれば、そこらへんにいる妖精メイドとでもお喋りする事が出来るだろうが、生憎今は仕事中。
話し相手がいなくて少し寂しい気持ちだが、それも我慢しながら美鈴は空を見ていた。
仕事が終われば、楽しい時間が待っているのだから。
「ふ~ん、ふふ~ん」
それまでの時間を潰すためにか、美鈴は鼻歌を歌いだした。
楽しい時間が待ち遠しくて仕方無い、心の底から楽しげな鼻歌を。
***
そんな楽しげな雰囲気を漂わせる紅魔館で、唯一つ暗い雰囲気を漂わせる場所があった。
紅魔館の地下室、フランドール・スカーレットがいる場所だ。
「……」
白く塗り固められた壁を、ただボーッと見ながらフランドールは暇をつぶしていた。
彼女にとって、今日がクリスマスでも明日が正月でも関係ない。
「……あーあ、何か起きないかなぁ」
頭がもげた熊のぬいぐるみの身体を掴みながら、フランドールは呟く。
「ねぇ、貴女は何か起きて欲しいと思わない?」
抱きかかえた頭の無い熊に、フランドールは首を傾げながら聞く。
しかし、口の無い熊が答えるわけも無い。
「つまんない……」
そう呟きながら、フランドールは熊のぬいぐるみを放り投げた。
白い綿毛で一杯の身体は、落ちても落下音がしない。
「つまんない、つまんない」
ころりころりと転がりながら、フランドールが呟く。
しかし、呟いただけで自分の声が部屋の中で響くだけだ。
「ねぇ、つまらないよお姉さま」
ずっと昔に、自分の事をこの部屋へと監禁した姉の名を呟く。
だけどその姉は、今はテラスで従者と仲良く話しているところ。
「ねぇ、パチュリーでもいいからお話に来てよ」
紅魔館の動く図書館、知識豊富な魔女であるパチュリーならフランドールの欲求を満たすくらいの話を知っているだろう。
だけどその魔女は、今は図書館で使い魔と仲良く話しているところ。
「ねぇ、暇な時でいいから遊びにきてよ、美鈴」
紅魔館の門番、木の棒一つでも玩具に仕上げる美鈴なら、新しい玩具でフランドールを楽しませてくれるだろう。
だけどその門番は、仕事中という理由で一人で門前に立っている。
「ねぇ、誰でもいいから」
――私の所に、遊びに来て。
紅魔館には、沢山の妖怪や妖精が住んでいる。
だけどみんなは、クリスマスという特別な日に浮かれてやってこない。
「つまらない」
ころり、と寝返りを打ちながらフランドールは頭の無い熊のぬいぐるみを見た。
「つまらない、つまらない」
白く塗り固められた壁からは、外の様子を見る事はできない。
「ツマラナイ!」
悲痛な叫び声を上げながら、フランドールは手を握り締めた。
同時に、頭の無い熊のぬいぐるみが破裂した。
「ツマラナイ、ツマラナイ!」
誰かを呼ぶその悲痛な声。
だけど誰も答えない。
紅魔館では、誰もが心から楽しんでいるから。
ふわりふわりと落ちてくる、白い雪を見ながら仲間と共に。
「誰か来てよ!」
ただ一人、孤独の寒さに地下室で涙を流しているフランドールには誰も気づかない。
「ダレカキテヨッ!」
――独りで、寂しいから。
そのフランドールの周りを、ふわふわな白い何かが漂っていた。
先ほど破壊した、熊のぬいぐるみの材料である白い綿毛だ。
その白い綿毛は、まるで雪のようにフランドールの身体にふわりと落ちた。
***
白い雪が降る中で紅魔館ではパーティが開かれた。
沢山の妖怪や妖精達が楽しげに雪と戯れながら。
――ただ一人、偽物の白い雪の中で涙を流しいている少女を除いて――
しかし実際には、相も変わらず仕事に追われるサラリーマンや、家も無く、この寒空の下凍えてる人達、誰からも祝いや、慰めの言葉さえ掛けてもらえないひとりぼっち、こんな不幸に見舞われている存在も確かに存在している。
浮かれてばっかじゃいけませんね。
ごちそうはケーキとチキンでいいかな?シャンメリーも飲むか?
幽閉されていたフランにはあり得てもおかしく無いことなんですが、切ないですね……
大丈夫さフラン、明けない夜が無……暮れない日が無いように、いつか良いことあるって!
ここからどういう風に話を展開していくかによってはじめて面白いかつまらないかが判断されるのよ。
ぜひ続きを書いてほしいな。