「ねえ、霊夢。プレゼントくださいよ」
「はあ?」
神社にやって来て、開口一番おねだりすると少し驚いたような、そんな顔をした。
珍しい表情だなあ、とぼんやり思いながら本題に入る。
「今日はクリスマスですし。サンタクロースというのは赤い服を着ているものだそうですよ」
実際は記事になるかもしれないと思っただけなのだけれど。
適当にそれらしい理由を話してみれば、霊夢は興味のなさそうにはあ、とため息をついて。
「私に白羽の矢を立てないでよ。赤って言うなら紅魔館にでも行きなさい」
「隕石を壊すようなちみっ子達からのプレゼントはお断りです」
霊夢はどんなプレゼントを貰えというのだろう。
そのプレゼントは、弾幕の一つや二つで済むものではないと分かっているだろうに。
「それに、私は霊夢からのプレゼントが欲しいんですよ」
拗ねたようにそうつぶやいて見せると、霊夢は気持ち悪そうな目を向けてきた。
私の言っていることの真意を図るような、そんな瞳。
訝しむようなそれに耐え切れなくて顔を背ける。霊夢がはあ、と大きなため息を吐いた。
「私からのプレゼントなんてないわよ」
「そう言わずに。出来る限りで面白いものを用意してくださいよ」
じろりと睨むような視線がこちらを向いた。
「……あんた、やっぱり記事にしたいだけでしょう」
霊夢は今更なことを口にする。
そんなの、分かりきっているのに。
「いえいえ、あわよくば記事にしたいだけですよ」
「余計に却下。あんたは私を何だと思ってるのよ」
ネタになる人間だなあとか。
まあ、一緒にいて落ち着くという意味でも、非常に稀有な人物であるのだけれど。
「しかし、クリスマスにも新聞だなんて大変ね。この新聞馬鹿」
霊夢は呆れたような、あるいは拗ねているようなよく分からない口調で言う。
「馬鹿で結構。こういう日こそ、いいネタがあるのですよ」
「そういうものなのかしら」
そういうものなのです。だって、いつもと違うことはそれだけで面白いものだから。
「浮かれて馬鹿をやる人も、たくさんいるものですし」
「じゃあ、そんな人達を取材してくればいいじゃない」
何だか知らないけれど、霊夢はとても不機嫌な様子だ。
はて、私は機嫌を損ねるようなことを言ってしまったのだろうか。
思い返してみてもよく分からないので、遠回りに訊ねてみることにした。
「霊夢はお祭りごととか、好きだったでしょう?」
「好きだけどさあ。納得いかないこともあるのよね」
何が気に入らないのだろう。聞いてみてもよかったけれど、渋い表情になんとなく躊躇う。
私だって、聞いてはいけないことくらいは分かっているつもりだ。
霊夢はあることないことを根掘り葉掘り聞いてくる、と揶揄するけれど。
「……あんたからはないの? プレゼント」
「へ? ……あー、まったく考えてなかったですね」
話題をがらりと変えたと思えば、霊夢がそういったものを欲しがるとは珍しい。
私が持って来るなんてありえないだろうに、ちょっと期待しているような声だった。
返した言葉は気に入らなかったようで。
今度はあからさまに不機嫌な様子で霊夢は眉をしかめる。
「何で私からだけで、あんたからはないのよ」
ようやく納得がいった。
話題は変わっていたようで、その実全く変わっていなかったのだろう。
つまり霊夢はそれが気に入らない、と。そう言いたいらしい。
「私はいつも新聞を提供しているでしょう」
「押し付けのくせに」
「なんだかんだ言って、たまには読むくせに」
むー、とお互いに不満を口にしてみる。
しばし睨み合って、それから霊夢がふいと視線を逸らした。
「というか、私が言いたいのはそうじゃなくて」
霊夢は首を振りながら、難しい顔をしてみせる。
もごもごと言葉にならない何かをつぶやいていた。
「なんなんですか。霊夢らしくない」
はっきりしない様子に痺れを切らして、先を促すような発言をしてやる。
それでも霊夢はその表情を崩すことはなく。
「悩むくらいなら、行動で示せばいいのに。あなたはそういう人でしょう」
「……じゃあ示してやるわよ。あんた、もうちょっとこっち来なさい」
手招きされて、一歩近づいてみる。
するとぐい、と手を引っ張られて。
バランスを崩して転びそうになる直前。
霊夢のどうにでもなれという一言が聞こえた気がした。
「…………む?」
なにかこう、柔らかいものが唇に触れたような。
状況から考えるとその意味は目前なのだけれど。
いやいやしかし、どうしてそうなるのか私にはさっぱりだ。
「あー、うん、まあ。……これが、プレゼントで」
曖昧な言葉は照れ隠しなのだろう。
落ち着かなく目をきょろきょろとさせながら霊夢はそんなことを言う。
対する私はぽかんと立ち尽くすだけで。何を返すべきなのだろう。
「霊夢、馬鹿っぽい」
「な……っ!」
ああ、しまった。つい本音が出てしまった。
これは怒るよなあ。すごく睨まれてるし。
針が飛んでこないだけマシなのかもしれない。
「いや、そうじゃなくて。ううん、何でいきなりそうなるんですかね」
「あんた、この期に及んでそういうこと聞く?」
じとりと一層厳しくなる視線。
私だって納得いかないものはいかないのだ。
「人間に好かれたことが、ついぞないもので。理由――というか、訳が知りたいのです」
それも本当だけれど、実のところはただ聞きたいだけだったりする。
正直なところ、私は人間に好かれるようなことをしたことがないのだ。
何よりも霊夢のことは、嫌いじゃないし。
そんな人物にこういうことをされて、気にならない訳もない。
「言わないわよ。そんなの」
「えー? いいじゃないですか。一言だけでも、ね?」
うう、と困ったような声を漏らす霊夢。
そういう顔されると、ついからかいたくなってしまうのは悪い癖かもしれない。
「絶対、嫌」
「ちぇ。つまらないなあ」
けれど、霊夢は言う気配がなくて。
別に言いたくないなら、それはそれでいいけれど。……よくないけれど。
まあ、そういうことなのだろう。無駄に詮索してはいけないことらしい。
「ふむ。なら私からもクリスマスプレゼントを、ひとつ」
「え? 何?」
つぶやくと、心底意外そうに霊夢は顔をあげる。
何が来るのか、身構えているような感じだった。
いや、分かっているけれど少し傷つくなあ、その反応は。
「大好きですよー」
余裕っぽく、照れ隠しに語尾を伸ばしながら言ってやる。
ぱちぱちと瞬きをする霊夢。ちょっとして、ようやく意味に気付いたらしく。
「からかってるなら、承知しないわよ」
「流石にこういうことでからかったりはしませんよ」
む、と難しそうな顔をされる。信用ないなあ。
実際、私にもよく分からなくて、意味を問われたら少し困るのだけれど。
もしかしたら、霊夢もこういう気持ちなのかもしれない。
気まぐれではあるけれど。決して、からかいなんかではないのだ。
「う、じゃあ、もう一度言いなさいよ」
「言いませんよ。恥ずかしい。何で命令口調なんですか」
「…………だって」
下手に出るのはどうしても嫌らしい。まあ、出られない方が私としては嬉しいのだが。
「どうしても言わせたいなら、言いたくなるような状況にしてみせてくださいよ」
「言ったわね」
言いましたとも。いやはや、私も霊夢のことを馬鹿だと言えないなあ。
何かを考えているのか、私を睨むように見ている霊夢にキスをしてやる。
こんなことで顔が赤くなりそうなのを必死でごまかしてるだなんて、馬鹿なことこの上ない。
「ああ、今日のこと、新聞にしたら刺すからね」
ひとしきり騒いだ後の霊夢の一言。
こんな恥ずかしいこと残せるか!
「はあ?」
神社にやって来て、開口一番おねだりすると少し驚いたような、そんな顔をした。
珍しい表情だなあ、とぼんやり思いながら本題に入る。
「今日はクリスマスですし。サンタクロースというのは赤い服を着ているものだそうですよ」
実際は記事になるかもしれないと思っただけなのだけれど。
適当にそれらしい理由を話してみれば、霊夢は興味のなさそうにはあ、とため息をついて。
「私に白羽の矢を立てないでよ。赤って言うなら紅魔館にでも行きなさい」
「隕石を壊すようなちみっ子達からのプレゼントはお断りです」
霊夢はどんなプレゼントを貰えというのだろう。
そのプレゼントは、弾幕の一つや二つで済むものではないと分かっているだろうに。
「それに、私は霊夢からのプレゼントが欲しいんですよ」
拗ねたようにそうつぶやいて見せると、霊夢は気持ち悪そうな目を向けてきた。
私の言っていることの真意を図るような、そんな瞳。
訝しむようなそれに耐え切れなくて顔を背ける。霊夢がはあ、と大きなため息を吐いた。
「私からのプレゼントなんてないわよ」
「そう言わずに。出来る限りで面白いものを用意してくださいよ」
じろりと睨むような視線がこちらを向いた。
「……あんた、やっぱり記事にしたいだけでしょう」
霊夢は今更なことを口にする。
そんなの、分かりきっているのに。
「いえいえ、あわよくば記事にしたいだけですよ」
「余計に却下。あんたは私を何だと思ってるのよ」
ネタになる人間だなあとか。
まあ、一緒にいて落ち着くという意味でも、非常に稀有な人物であるのだけれど。
「しかし、クリスマスにも新聞だなんて大変ね。この新聞馬鹿」
霊夢は呆れたような、あるいは拗ねているようなよく分からない口調で言う。
「馬鹿で結構。こういう日こそ、いいネタがあるのですよ」
「そういうものなのかしら」
そういうものなのです。だって、いつもと違うことはそれだけで面白いものだから。
「浮かれて馬鹿をやる人も、たくさんいるものですし」
「じゃあ、そんな人達を取材してくればいいじゃない」
何だか知らないけれど、霊夢はとても不機嫌な様子だ。
はて、私は機嫌を損ねるようなことを言ってしまったのだろうか。
思い返してみてもよく分からないので、遠回りに訊ねてみることにした。
「霊夢はお祭りごととか、好きだったでしょう?」
「好きだけどさあ。納得いかないこともあるのよね」
何が気に入らないのだろう。聞いてみてもよかったけれど、渋い表情になんとなく躊躇う。
私だって、聞いてはいけないことくらいは分かっているつもりだ。
霊夢はあることないことを根掘り葉掘り聞いてくる、と揶揄するけれど。
「……あんたからはないの? プレゼント」
「へ? ……あー、まったく考えてなかったですね」
話題をがらりと変えたと思えば、霊夢がそういったものを欲しがるとは珍しい。
私が持って来るなんてありえないだろうに、ちょっと期待しているような声だった。
返した言葉は気に入らなかったようで。
今度はあからさまに不機嫌な様子で霊夢は眉をしかめる。
「何で私からだけで、あんたからはないのよ」
ようやく納得がいった。
話題は変わっていたようで、その実全く変わっていなかったのだろう。
つまり霊夢はそれが気に入らない、と。そう言いたいらしい。
「私はいつも新聞を提供しているでしょう」
「押し付けのくせに」
「なんだかんだ言って、たまには読むくせに」
むー、とお互いに不満を口にしてみる。
しばし睨み合って、それから霊夢がふいと視線を逸らした。
「というか、私が言いたいのはそうじゃなくて」
霊夢は首を振りながら、難しい顔をしてみせる。
もごもごと言葉にならない何かをつぶやいていた。
「なんなんですか。霊夢らしくない」
はっきりしない様子に痺れを切らして、先を促すような発言をしてやる。
それでも霊夢はその表情を崩すことはなく。
「悩むくらいなら、行動で示せばいいのに。あなたはそういう人でしょう」
「……じゃあ示してやるわよ。あんた、もうちょっとこっち来なさい」
手招きされて、一歩近づいてみる。
するとぐい、と手を引っ張られて。
バランスを崩して転びそうになる直前。
霊夢のどうにでもなれという一言が聞こえた気がした。
「…………む?」
なにかこう、柔らかいものが唇に触れたような。
状況から考えるとその意味は目前なのだけれど。
いやいやしかし、どうしてそうなるのか私にはさっぱりだ。
「あー、うん、まあ。……これが、プレゼントで」
曖昧な言葉は照れ隠しなのだろう。
落ち着かなく目をきょろきょろとさせながら霊夢はそんなことを言う。
対する私はぽかんと立ち尽くすだけで。何を返すべきなのだろう。
「霊夢、馬鹿っぽい」
「な……っ!」
ああ、しまった。つい本音が出てしまった。
これは怒るよなあ。すごく睨まれてるし。
針が飛んでこないだけマシなのかもしれない。
「いや、そうじゃなくて。ううん、何でいきなりそうなるんですかね」
「あんた、この期に及んでそういうこと聞く?」
じとりと一層厳しくなる視線。
私だって納得いかないものはいかないのだ。
「人間に好かれたことが、ついぞないもので。理由――というか、訳が知りたいのです」
それも本当だけれど、実のところはただ聞きたいだけだったりする。
正直なところ、私は人間に好かれるようなことをしたことがないのだ。
何よりも霊夢のことは、嫌いじゃないし。
そんな人物にこういうことをされて、気にならない訳もない。
「言わないわよ。そんなの」
「えー? いいじゃないですか。一言だけでも、ね?」
うう、と困ったような声を漏らす霊夢。
そういう顔されると、ついからかいたくなってしまうのは悪い癖かもしれない。
「絶対、嫌」
「ちぇ。つまらないなあ」
けれど、霊夢は言う気配がなくて。
別に言いたくないなら、それはそれでいいけれど。……よくないけれど。
まあ、そういうことなのだろう。無駄に詮索してはいけないことらしい。
「ふむ。なら私からもクリスマスプレゼントを、ひとつ」
「え? 何?」
つぶやくと、心底意外そうに霊夢は顔をあげる。
何が来るのか、身構えているような感じだった。
いや、分かっているけれど少し傷つくなあ、その反応は。
「大好きですよー」
余裕っぽく、照れ隠しに語尾を伸ばしながら言ってやる。
ぱちぱちと瞬きをする霊夢。ちょっとして、ようやく意味に気付いたらしく。
「からかってるなら、承知しないわよ」
「流石にこういうことでからかったりはしませんよ」
む、と難しそうな顔をされる。信用ないなあ。
実際、私にもよく分からなくて、意味を問われたら少し困るのだけれど。
もしかしたら、霊夢もこういう気持ちなのかもしれない。
気まぐれではあるけれど。決して、からかいなんかではないのだ。
「う、じゃあ、もう一度言いなさいよ」
「言いませんよ。恥ずかしい。何で命令口調なんですか」
「…………だって」
下手に出るのはどうしても嫌らしい。まあ、出られない方が私としては嬉しいのだが。
「どうしても言わせたいなら、言いたくなるような状況にしてみせてくださいよ」
「言ったわね」
言いましたとも。いやはや、私も霊夢のことを馬鹿だと言えないなあ。
何かを考えているのか、私を睨むように見ている霊夢にキスをしてやる。
こんなことで顔が赤くなりそうなのを必死でごまかしてるだなんて、馬鹿なことこの上ない。
「ああ、今日のこと、新聞にしたら刺すからね」
ひとしきり騒いだ後の霊夢の一言。
こんな恥ずかしいこと残せるか!
あぁ良いですね、実に良いです!
これは良いクリスマスプレゼント!(だと、個人的には思ってます!
……実はたまたま通りかかった他の天狗が記事にしているという点で(爆
ちゅっちゅだ!
だがクリスマスは爆発しろ
しかし文は野暮だなあw
このリア充達を眺めるだけで私もリア充になれます。
ありがとうございます。