「ご主人は年賀状終わったのかい?」
たった今寒中見舞いを出してきたばかりの星は、ナズーリンのその言葉に膝をついた。
「しまった、寒中見舞い出すのに頭いっぱいで忘れてた……」
「そろそろ出さないとまずいと思うよ、私は」
「ナズーリンは終わったのですか?」
「あと挿し絵だけ書いてだせば終わりさ」
「どうしよう、まったく考えてなかった」
頭をかかえる星を背中に、ナズーリンはこたつに入りながらサラサラと年賀状を書き続けた。
「まあ、ご主人は人づきあいがいいからね」
「そ、そうですか? てへへ、ほ、褒めても何も出ないですよ」
「こういう場面ではそれが仇になるんだよ。書く枚数が増えるから」
「はうっ」
ちょっと持ち上げられたと思ったら突き落とされる、星も大変忙しい。
「何はともあれ、さっさと書いた方がいいと思うよ」
「聖や他の方々はみんな書いたのですか?」
「聖はもう書いたらしいね」
「そうですか。いや、聖の水墨画はなかなかの風流さで人気があるのですよ」
「ああ、聖は今年はタイルアートで行くらしいよ」
「風流の欠片もない!?」
タイルアート技術、白蓮は魔界で神綺から直伝を受けたらしい。
そんな白蓮、タイルアート2級資格の持ち主であり、この免許があれば魔界産タイルが1割引きで買える。
「そんな他人の心配より、ご主人はどうするつもりなんだ?」
「はっ、どうしましょう……何かいいアイディアはないものか……」
「虎の絵を描けばいいじゃないか」
「そんな急に虎の絵と言われましても、モデルがなければ描けないじゃないですか」
「今すぐ洗面所に行ってみるといい、虎がいる」
「本当ですか?」
星は疑心を抱きながらも、言われるがままに洗面所に向かった。
そしてそこで、鏡で自分の顔を見た。
「はっ、そうだ、私は寅だった!」
これはいいアイディアを得たぞ、とルンルン気分で書斎に戻るとナズーリンに言った。
「ナズーリン、すっかり忘れてました! 灯台もと暗しとはこのことですね!」
「そのことなんだが、既にご主人のイラストを使うことは、私が真っ先に考えだしたんだ」
「じゃあお揃いってことで」
「閃いたの私だし、アイディア料みたいなご褒美があってもいいと思うんだ」
「!?」
「もし使いたいなら、ボンレスハムでも貰いたいところだな」
ナズーリンは終始星に背中を向けたまま淡々と作業を続けた。
残念ながら、ボンレスハムは昨日ぬえバーガーに挟めてしまったので手元にない。
「いや待てよ、ナズーリン、それなら私の肖像権はどうなるんです?」
「はうっ」
「まだ断りを貰ってませんよ?」
「……分かったよ、確かに私に落ち度がある」
「じゃあ、私もナズーリンとお揃いですね」
「しかしだよ、ご主人。ご主人がご主人のイラストを描いて出したとして、向こうはなんと思うだろうね」
「?」
「『自分を描いて終わりかよ』って、捻りの欠片もないという意見が集まるかもしれないね」
「い、言われてみれば確かに……」
「その辺はご主人、どう切り抜けるつもりなんだ? 今の時代、個性が大事だって言うよ」
「な、ナズーリンはどうするつもりなんですか?」
「それが私を今一番悩ませている問題なんだ」
淡々と言うナズーリンには、あまり焦りは感じられない。
その一方で星は、この問題に如何しようと一か所に立ち止まっていられず、こっちにウロウロ、あっちにウロウロ。
「ナズーリン、困りました。アイディアが出ません」
「だから私もなんだよ」
「その割にはナズーリン、落ち着いてますね」
「ご主人があわあわしすぎなんだよ。私はこうしてじっくり座っていると考えが浮かぶんでね」
「私とは逆ですね。私は散歩とかするとよく閃きますよ」
そう言いながら、星は近くの柱の周りをぐるぐる回っていた。
時には頭をかかえ、時には額に手をやりながら。
「まあ、そこは各自それぞれ違うだろうし、個人の自由ってのもあるからね。私は否定しない。
だが、これだけは忘れないでほしいもんだ。ご主人は毘沙門天の弟子である前に虎でもあるんだ。
そうやって1本の柱の周りをぐるぐる回り続けるのはよろしくない。時には逆回りもやるようにしないと──」
そこまで言いかけたナズーリンが、足音がしなくなったので振り返った。
そこに星の姿はなく、代わりに柱の周りに上質のバターが広がっていた。
「そら見ろ、言わんこっちゃない」
ナズーリンはかぶりを振りながら、そのバターの池から指でひとすくいすると、ぺろっと舐めてみた。
「ふむ、これは行けるな。そうだ」
まだ白紙の年賀状にバターを両面つけると、台所でこんがり焼いて、焼き色がついた頃を見計らって食べた。
「ああ、美味しい。これは上質のバタートーストだ」
それから、書きかけの年賀状をかき集めて
「こんな美味しいものは、私だけ食べたんじゃもったいない。皆にもごちそうしてやろう」
両面にきちんと文面を書くと、そこに滴るほどバターを塗り、こんがり焼いたバタートースト年賀状。
ナズーリンはそれを100枚ほど生産すると、きちんと住所も書いてポストにいれに行くのであった。
その帰り道、ナズーリンはついでにこのバタートーストに対して特許の申請をし、商標登録も行った。
その名こそ、『年賀星(ねんがじょう)』である。
なんて急降下なオチww
あと、ぬえバーガーってなんぞ……?
急カーブ過ぎるww
後続の人、ガンバ☆
正月が楽しみだ★
さっそく年賀状にバター塗って食ってみる
つかちびくろサンボwww
ナズーリン。よかったらぬえバーガーよりも俺が作ったホットドッグにかぶりついてみないか?ちゃんとバターも塗っておくから。
ところで、真空パックみたいのして運送中に崩れないようにすれば、ちゃんと切手を貼ってあて先書いてれば本当に届くんじゃなかったっけ?
トラック以上やるにはどうすれば…。貨物船なら大丈夫?
会社買収で丸ごとどーぞ
いえ拝見させて頂けるだけでひゃっほいなのですけれど。
すみません、寅さん。
ナズさんは私が頂いて逝きますっ!
いつもの如く、レスを返しに三千里。
>01
ハムだー×1
>02
ハムだー×2
ぬえが台所中の食品を無闇やたらにパンに挟めた危険な食品。
たまにぬえ自身が挟まっていたり
>03
ハムだー×3
>04
ハムだー×99
後続は箱スローが多いようで。
>05
ハムだー×99×?
>06
ハム人だー×100
銀河系の外からお越しで?
>07
元ネタ分かって頂きサンクス!
>08
トラックだー×1
ついでに頂いたホットドッグはナズの子ネズミ達にあげますね。
>09
警備員だー×1
>10
ホラーだー×1
(ちびサン分からないとちょっときつかったかな、今回は。反省)
>11
貨物船だー×1
>12
まあ、いつものことです。
>13
おまえは新しい定職につけー×5
>14
買収だー×1
必ずぬえが挟まっているとは限りません。
その正体不明さが売りなんです。
>15
ハンターだー×3.14
ナズさんはダメです、ナズさんは召し上がってはいけません。
その為にぬえバーガーがあるんですから(どういう意味だ