Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ゆうかりんについての云々

2009/12/20 18:44:09
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 風見幽香はああ見えて優しいところがある。その事実を知っているのはきっと幻想郷では、花と動物とリグルくらいだ。もしもリグルがそれを幽香に言ったのならば、幽香は笑顔でこう答えるだろう。
 「あら? あなたは昆虫でしょう? 動物には入らないわ、残念ね」と。
 リグルは一人で考えて身震いをした。あの底冷えするような目を思い出す。
 (ああ、やだやだ)


 幽香の花畑までの道を、リグルは早足で進んだ。邪念を払うように頭を振ると、リグルの足はまた速くなる。小道に植えられた花壇の花を揺らすように速かった。
 花畑に着き、幽香の姿を見た時から、リグルの中に違和感が生まれた。幽香はいつもの微笑を称え、花畑の真ん中に佇んでいる。格好も普段と同じで何も変わらなかったが、リグルの目には違うように見えた。リグルは花畑の横の舗装された道を通りつつ、幽香さん、と声をあげた。
 「ああ、リグル」
 幽香はすぐに振り返り、閉じた日傘の柄を握りなおした。そこでリグルは気づいた。日傘がスペアの物なのだ。幽香は日傘をたくさん持っている、どれがスペアなにかもわからないくらいに。けれど、いつものものと少し模様が違うことに、リグルは気づいた。フリルも一段足らないし、何より柄の色が違う。あれは柔らかな薄い赤だったが、これは炎のように赤く光沢がある。それに、いつものものは皮製の柄なのだ。リグルは心のうちで思い留まることにし、振り向いた幽香に笑いかけた。
 「いつもより、ご機嫌みたいですね」
 花畑の中に足を踏み入れると、リグルは草を踏む音が心地良かった。幽香はリグルに意味深な笑みを向けた。日傘の柄はしっかり握ったままだ。
 「そう見えるかしら?」
 やはり今日の幽香は何やら上機嫌らしかった。いつもなら蔑むような笑みを浮かべるはずなのに、幽香がリグルに向けたのはコスモスのように健気な笑顔だった。
 笑顔が綺麗すぎて気味悪い、とリグルは失礼だと思いながら思った。そのくらいに貴重だという意味も込めて、だ。
 「そうね、今日はご機嫌だから、一緒に日向ぼっこでもしましょうか」
 リグルに拒否権はないのか、幽香は言うなりその場に腰を下ろした。幽香の濃くも透き通るような緑の髪がふわりと揺れる。スカートはバルーンのように膨らみながら花の上に覆いかぶさった。リグルもその隣に腰掛けた。リグルは空を見上げながら少し安堵する。今日はとても天気が良かった。千切れたような雲は青い画用紙のような空に、一つ二つぽつんとあるだけ。昨日が雨だったから余計に綺麗だなあ、リグルは思いながら幽香の横顔を覗き込み、くすっと笑った。



 その日の午後を過ぎた頃だった。花畑からの帰り道をとぼとぼと進んでいると、リグルの前に橙が現れた。急いでいるのか、息を荒くしている。リグルは立ち止まると、幾分背丈の低い橙を見下ろした。
 「あれ、橙じゃん。何しているの? 急いでいるみたいだけど……」
 「あ! リグル! リグルも来ない? いいものがあるの」
 足を止めると、橙は早口にリグルに声を掛けた。いいもの? とリグルは首を傾げる。橙はいつものように屈託のない笑顔を浮かべて、迷うリグルの手を握った。リグルは咄嗟のことで、目を丸めて、走り出そうとする橙を呼んだ。何処に行くの、とリグルが慌てて言うと、橙は意味深な笑みを浮かべた。あ、幽香さんと一緒。リグルが次に何かを言うまえに橙は走り出した。
 「え、ちょ、わたしもっ!?」
 「はやく、はやく!」



 「ねこぉ?」
 リグルが顔を顰めると、橙はにっこりと笑い頷いた。
 「この間見つけたの。捨て猫みたい、多分、人里から来たんだと思う。きっと藍様や紫様は飼っちゃだめって言うだろうから、ダンボールの中へ入れてね、草むらに」
 話し始めると、橙は足取りを穏やかなものに変えた。捨て猫だなんて、無責任な、と思いながらリグルも耳を傾けた。橙の話によると、その猫はとても人懐こい三毛猫らしい。やっぱり、飼われていたから人懐こいのかなと思いつつリグルが空を見上げていると、橙が、でも……と言葉を詰まらせた。
 「どうしたの?」
 「昨日、雨が降ったでしょ? 土砂降りじゃなかったけど、心配なの。ダンボールなんて紙だし、それに、もしかしたら震えているかもしれない。雨は寒いよ、とっても……。あの子、ひとちぼっちだったし、寒いけど、それよりももっとさびしいよ」
 ふと足を止めて俯いた橙は、スカートを握り締めた。スカートの下から真っ白なドロワーズが見える。深い緑の帽子が切なく震えているように見えたリグルは橙の頭を撫でて、少し腰を折った。リグルが顔を覗きこむと、橙は大きな目をうるうると揺らして唇を噛み締めていた。
 「だ、大丈夫だよ。今すぐ見に行こう、きっと大丈夫だって。あーもう、泣かないでったら」
 ぐしぐしと袖で涙を拭いた橙は大きく縦に首を振った。リグルは橙の手を握り、先を歩き出した。



 「これって……」
 猫の入ったダンボールは、橙の言う通り草むらにあった。木が何本も聳え立つ、少し暗い場所。けれど、すぐ傍の道から射す太陽の光で木々の間はほのかに光るようだ。リグルはダンボールの前で、橙と一緒に顎に手を寄せた。
 「……日傘?」
 橙が声をあげた。リグルもそれとなく頷く。紫様の日傘みたい、と続いて橙は呟いた。八雲紫はさて置き、リグルはその日傘にとっても見覚えがあった。大きなフリルの下に小さなフリルが幾つも重なり、柄は炎のような赤ではなく、やわらかな薄い――。
リグルは一つの結論に辿り着いた。見慣れた皮製の柄に、幽香の微笑みが重なった。まさかね、と思いつつも、リグルはそれ以外のものが思い浮かばず、橙に視線を向けた。
 「……リグル、見覚えがあるの?」
 「あ、うん。へへ、ちょっとだけだけど……」
 「でも良かった! 雨にも濡れなかったみたいだし」
 橙はリグルの言葉を遮るようにその場に蹲ると、歪になった日傘の下で鳴く猫の頭を撫でた。まだそれほど大きくない、きっとどちらかと言えば子猫に近いはずのその猫は、引き込もうとするほどの大きな目をくるくると様々な色に変えた。くんと上を向く鼻筋や頼りなさげな口元は、愛嬌がある。リグルも橙の横で膝を折った。
 「でも、いいのかな……」
 橙はダンボールの中から顔を覗かせる猫に微笑みかけながら、口元を歪めた。
 「何が?」
 「この日傘、ほら、錆びちゃってる」
 リグルは橙が指差す方を見た。確かに、中の骨組みが少し錆びている。もともとが日を避けるための日傘だ、雨の攻撃に耐えられなかったのかもしれない。とはいっても、ここは木々のお陰でそれほど雨も当たらないし、まだまだ使えるだろう。
 (これ、一体誰のなんだろう……)
 きっと幽香さんのものだと、リグルは思う。けれど、そこに確証はなかった。でもリグルは、あの幽香の微笑みに優しさを感じるのだ。だから、こうしてお気に入りの日傘を道端で濡れる猫に差す、そんな優しさを、彼女は持っているかもしれない。
 「ナーオ」
橙の腕の中で猫が大きく鳴いた。リグルははっとして顔を上げた、猫は橙の腕に中に居つつも、橙の後ろをずっと見つめていた。

 「え、――」

 リグルが振り返った途端に、人影がさっと動いた。猫はまだ橙の腕の中に居つつも、また大きく鳴いた。リグルはそれがまるで、行かないで、と言っているように思えた。さっと動いて走って行った人影の後姿を、リグルは目に焼き付ける。チェックのスカートに、太陽に反射する濃くも透き通るような緑色の、髪。橙がリグルの隣で目を丸めた。
 「幽香さん!」
 確証が、ぽっと浮かび上がった。確証というよりも、これが真実、とでも言おうか。リグルは橙が呼び止めるのも聞かずに、幽香を追い駆けた。自然と笑みが零れるのは、幽香がらしくもなく全力疾走をしているせいかもしれない。きっと幽香は猫に会いに来たんだろう、そしてそこにリグルたちが居た。リグルは頭の中で整理をしながら足を速めた。
 「ゆ、うかさん! 待って、幽香さん!」
 呼び止めるが、幽香は足を止めない。長いスカートが足に纏わりつくのか、その動きはとてもぎこちないものだった。リグルは堪らず、距離を縮めると幽香の腕を取った。反動で、幽香が見事に転げる。砂埃が舞うのを手で振り払いつつ、つられて転んだリグルは体を起こした。
 「ゆ、幽香さん……。す、すいません、その……」
 「……似合わないでしょ」
 「え?」
 俯いてスカートを地面に広げたままの幽香は、声を搾り出した。
 「私が、猫に傘あげる、とか……そんなベタなこと、似合わないでしょ!」
 橙の元からやって来たのか、リグルの足に猫が顔を摺り寄せた。そのまま猫は、覚束ない足取りで幽香の頬に鼻を押し付ける。
 「そんなことないですよ」
 幽香は顔を上げると、目を伏せた。
 「幽香さんは意地悪だけど、ほら、こうしてとっても優しいことを、みんな知っていますよ」
 幽香は体を起こすと、地面に座り込んだまま、頬を摺り寄せてくる猫を抱きかかえた。
 「何だか、藍様みたい!」
 追い駆けてやってきた橙が、リグルにそう耳打ちをした。藍様みたいに優しい笑顔、と橙は付け加えた。リグルは再び幽香に視線を向けた。そこには、いつもの意地悪な笑顔ではない笑顔があった。




 「その日傘」
 次の日、リグルはまた同じように花畑に行くと、幽香はあの日傘を差して立っているのを見た。幽香はリグルの声に、いっぱいのフリルの下から顔を出して微笑んだ。
 「ああ、リグル」
 リグルは幽香の傍に向かいながら目を細めた。いつもと変わらない光景だと思っていたのに、目を凝らすと、何か違うものがある。リグルはそれに気づくと、すぐに頬を緩めた。
 「なによ、」
 眉を寄せた幽香さんに、何でもないですよと言いながら、リグルは腰を落とした。
 「すっかり懐かれましたね」
 幽香の足元で猫が一鳴き。リグルは顔を上げて、幽香を見た。

 ――多分きっと、こんな幽香さんの笑顔を知っているのは、わたしと、花と、動物くらい。




 「ナーオ」






えんど
ツンデレゆうかりん
ドSかつツンデレがいい
お姉さんキャラもいい
小さいもの好きだともっといい
面倒見がいいともっといい
リグルと絡めたのはただ俺がリグ幽が好きだから
ブーメランパンツ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
なんだかヒマワリの香りがするなぁ。
2.ずわいがに削除
幽香はリグルと結婚すべき。
3.ぺ・四潤削除
うむ。理想のゆうかりんだ。
その後猫を膝に乗せたゆうかりんの隣に座ったリグルの触覚にじゃれついている様子が目に浮かぶ。
しかし、余韻に浸っていたところに貴方の名前で台無しにwwwww
4.名前が無い程度の能力削除
野暮なこと言わせてもらうとゆうかりんの傘は弾幕にも耐えられる不思議な傘で、雨ごときで錆びるとは到底思えない。ような気がする。

優しいゆうかりんは良いものです。
5.名前が無い程度の能力削除
あとがきには全面的に同意せざるを得ない
6.名前が無い程度の能力削除
貴公とは実に良い酒が飲めそうだ。
7.名前が無い程度の能力削除
後書きに全面的に同意

しかし捨て猫に傘をって…古いwww
8.名前が無い程度の能力削除
リグ幽って本当にいいものですね。