深紅

私は祈るようにその双眸を閉じる
願わくばこの想いが　私が塵芥と消えるその時まで貴方に悟られぬようにと
私は貴方の為に自らの弱さを隠す　そうで無ければ気高き貴方へ従うには相応しくないから
そして私は誰にも知られぬ時の中でそっと涙を流す

この感情はきっと哀しい詩のように私を蝕む　それでも私は貴方を想い誓う　この身果てるまで尽くす事を
その儚い誓いは私の礎となり　遙かな時の先まで私を支えるだろう
切なさより深く　痛みより焦がれて
溢れ出しそうになるこの想いを　唯々この胸に閉じ込める　気高き貴方にこの想いは相応しくないから

貴方の我欲で空が深紅に染まる　それはまるで人の命が燃え立つよう
それでも私が貴方を信じる強さは揺るがない
貴方に私の鼓動を捧げたその時から
私の生きる意味は唯一つとなったのだから

例えこの世界が一方的に終わりを告げて来ようとも
貴方の声さえあれば　私は未来を切り開いて見せよう



貴方との出会いはまるで奇跡のようだった　私が握りしめた銀の牙
貴方へと延ばしたその牙が全て空を切り裂いた時　時間すらも超越する運命を私は知った

明日という無明の闇　その黒を超えて私が飛べるのは
貴方という絶対の真実を　私の傍らに確かに感じるから

貴方が描く深紅の炎　それに呼応するように目覚めるは紅き空
私が貴方の為に此処にいるという印　許されるのならばそれを貴方に刻みたい
遙か悠久の時が過ぎ去ってもなお　貴方という存在が私を想い出せるように
貴方の心　その片隅に住めるのならば　私は極彩色の華と散っても構わない

夢幻の如きこの世界　確かなものが何も見えなくても
貴方のぬくもりさえ感じられれば　私には他に何も要らない



例えこの世界が限り無い闇に包まれたとしても
貴方の声　それがあれば私の未来は繋がって行く

――それは、異なる時間を生きる者達の物語