小さな花が咲いている たくさんの緑の中、その一つだけ、何故か白い花びらをしていた
僕は特に気にも止めずに立ち寄った公園で休もうと椅子を探していたときにひょんに見つけた白い花 周りは緑色の草木が茂る中、本当にただ一つだけ、ここに花があった
風に煽られながらも、強く花びらをちらつかせ、雨に濡れながらも萎れずに上を向いていただろう白い花を・・・
不自然さなら天下一品のこの花だが、その花自体も何処か変な感じがする 普通なら、こんな所にひとりでに咲くことなどありえにくい気がするが、それでも花はある どういうことなんだろう
それの答えを知るには、僕は幼すぎたし、無知すぎた
もしかしたら、誰かが、この花を植えたのだろうとそう思っていた
「どうしたの、ぼうや?」
僕は、呼ばれて後ろを向くと、そこにはまるでお人形さんみたいな女の人が立っていた おもちゃ屋さんに行けば、売っていそうな服を着て、大きな傘を持った女の人が僕を太陽の光から守るように日陰を作っている
顔はいまいち暗くてよく見えなかったが、まだ日中だというのに見えにくいというのも良く分からない
「ここにね、白いお花が咲いてるの」
僕はお人形さんみたいな女の人に、花を指差しながら答えた
「あら、本当ね・・・」
女の人は、指の指す方向へ、視線を向けると白い花を見たらしく、納得がいってるようだ 僕はそんなようすを、一目、見てからまた花のほうを見る
「ねぇ、ぼうや。 そのお花、どう思うの?」
優しく、和む声だと思った 心が安らぐというのだろうか、身体や頭が少し火照るようなそんな感覚がする お母さんが僕を寝かせるときみたいな感じが頭をボーっとさせていく
そして、女の人から香るフレーバーな香りがもっと僕の頭をほわほわにさせていった
「僕は・・・」
「・・・」
「僕は、このお花が綺麗だと思います」
「そぉ? 嬉しい!」
とっても綺麗な声で、とっても可愛い声で喜ぶようすに僕は胸が踊った 純粋に嬉しかった どう見ても、年上の人に、どう見ても初対面では警戒しそうな人に気を許してしまった
「ぼうやは、お花好きなの?」
そう女の人は聞いた
「うん、好きです」
僕は正直に答えた 現に、一つだけ咲いている白い花は綺麗だと思ったし、緑の中、光っているこの花は、僕の目を釘付けにしていた
「そう・・・、ならもっと綺麗な花たちを見ない?」
「えっ・・・?」
「だから、もっとたくさんの本当に綺麗な花たちを見てみたいと思わないかしら?」
お人形のような人は、一際、優しい声で僕に問いかける 警戒心なんて、最初から持ってはいなかったけど、これから、何処かに行くと言うような口調だ
でも、僕は家に帰らなくちゃいけないし、時間が遅くなっては、お母さんが心配する 怒ったときのお母さんはとても怖い それだけは嫌だった
「ごめんなさい、僕、家に帰らないと・・・」
僕は言いづらかったが、空が暗くなって来ているような気がして今日はこれ以上、外には居られない
本当のことだから、別に下手に出る必要なんてなかったかもしれないけど、言いにくかった
「そうね・・・、分かったわ」
「ごめんなさい」
「いいわ、大丈夫よ。 でも一つ、お願いがあるの・・・、いい?」
「何ですか?」
「また、明日も来てくれる? この花を見に・・・」
本当に真っ暗で表情が見えないが、切実なんだと思う もしかしたら、白い花はこの人が植えたものかもしれなかった
ちょこんと植えた花を誰にも見てくれる人が居なくて、毎日毎日、自分自身で見に来て花が枯れていないのか、観察していたのかもしれない
そこで僕が、ちょうど見ていたからやっと気付く人が現れたと思って声をかけたのかもしれなかった
「・・・見に来ます。 待っててください」
「ありがとう。 待ってるわ」
「じゃあ僕、行かないと・・・」
僕は、この人を白い花のお姉さんと呼ぶことにした 敢えてお互い口に出さなかったけど、たぶん白い花のお姉さんも、僕が植えた人が誰なのか分かっていることを知っているんだと思う
それを分かった上で、見てくれていたことを喜んでくれたんだと思った
「また明日・・・」
日陰から、横へ脱し、真っ直ぐに家の方角へ走っていく 空は、もう星が見えるほど真っ暗で僕は昼に出たはずなのに、時間が経つのはとても早いと思うほどだった
小走りに、家に向かう途中、公園を出てからふと、後ろを振り向くと、もう白い花のお姉さんは公園に居なかった
僕は特に気にも止めずに立ち寄った公園で休もうと椅子を探していたときにひょんに見つけた白い花 周りは緑色の草木が茂る中、本当にただ一つだけ、ここに花があった
風に煽られながらも、強く花びらをちらつかせ、雨に濡れながらも萎れずに上を向いていただろう白い花を・・・
不自然さなら天下一品のこの花だが、その花自体も何処か変な感じがする 普通なら、こんな所にひとりでに咲くことなどありえにくい気がするが、それでも花はある どういうことなんだろう
それの答えを知るには、僕は幼すぎたし、無知すぎた
もしかしたら、誰かが、この花を植えたのだろうとそう思っていた
「どうしたの、ぼうや?」
僕は、呼ばれて後ろを向くと、そこにはまるでお人形さんみたいな女の人が立っていた おもちゃ屋さんに行けば、売っていそうな服を着て、大きな傘を持った女の人が僕を太陽の光から守るように日陰を作っている
顔はいまいち暗くてよく見えなかったが、まだ日中だというのに見えにくいというのも良く分からない
「ここにね、白いお花が咲いてるの」
僕はお人形さんみたいな女の人に、花を指差しながら答えた
「あら、本当ね・・・」
女の人は、指の指す方向へ、視線を向けると白い花を見たらしく、納得がいってるようだ 僕はそんなようすを、一目、見てからまた花のほうを見る
「ねぇ、ぼうや。 そのお花、どう思うの?」
優しく、和む声だと思った 心が安らぐというのだろうか、身体や頭が少し火照るようなそんな感覚がする お母さんが僕を寝かせるときみたいな感じが頭をボーっとさせていく
そして、女の人から香るフレーバーな香りがもっと僕の頭をほわほわにさせていった
「僕は・・・」
「・・・」
「僕は、このお花が綺麗だと思います」
「そぉ? 嬉しい!」
とっても綺麗な声で、とっても可愛い声で喜ぶようすに僕は胸が踊った 純粋に嬉しかった どう見ても、年上の人に、どう見ても初対面では警戒しそうな人に気を許してしまった
「ぼうやは、お花好きなの?」
そう女の人は聞いた
「うん、好きです」
僕は正直に答えた 現に、一つだけ咲いている白い花は綺麗だと思ったし、緑の中、光っているこの花は、僕の目を釘付けにしていた
「そう・・・、ならもっと綺麗な花たちを見ない?」
「えっ・・・?」
「だから、もっとたくさんの本当に綺麗な花たちを見てみたいと思わないかしら?」
お人形のような人は、一際、優しい声で僕に問いかける 警戒心なんて、最初から持ってはいなかったけど、これから、何処かに行くと言うような口調だ
でも、僕は家に帰らなくちゃいけないし、時間が遅くなっては、お母さんが心配する 怒ったときのお母さんはとても怖い それだけは嫌だった
「ごめんなさい、僕、家に帰らないと・・・」
僕は言いづらかったが、空が暗くなって来ているような気がして今日はこれ以上、外には居られない
本当のことだから、別に下手に出る必要なんてなかったかもしれないけど、言いにくかった
「そうね・・・、分かったわ」
「ごめんなさい」
「いいわ、大丈夫よ。 でも一つ、お願いがあるの・・・、いい?」
「何ですか?」
「また、明日も来てくれる? この花を見に・・・」
本当に真っ暗で表情が見えないが、切実なんだと思う もしかしたら、白い花はこの人が植えたものかもしれなかった
ちょこんと植えた花を誰にも見てくれる人が居なくて、毎日毎日、自分自身で見に来て花が枯れていないのか、観察していたのかもしれない
そこで僕が、ちょうど見ていたからやっと気付く人が現れたと思って声をかけたのかもしれなかった
「・・・見に来ます。 待っててください」
「ありがとう。 待ってるわ」
「じゃあ僕、行かないと・・・」
僕は、この人を白い花のお姉さんと呼ぶことにした 敢えてお互い口に出さなかったけど、たぶん白い花のお姉さんも、僕が植えた人が誰なのか分かっていることを知っているんだと思う
それを分かった上で、見てくれていたことを喜んでくれたんだと思った
「また明日・・・」
日陰から、横へ脱し、真っ直ぐに家の方角へ走っていく 空は、もう星が見えるほど真っ暗で僕は昼に出たはずなのに、時間が経つのはとても早いと思うほどだった
小走りに、家に向かう途中、公園を出てからふと、後ろを振り向くと、もう白い花のお姉さんは公園に居なかった