××年程前の会話
「森近!」
「いきなり大声を出してどうしたんですか?霧雨の親父さん」
「喜べ!ワシ、遂に親父になるぞ!」
「はぁ…もともと霧雨道具店の親父さんじゃないですか?」
「違うわ!本当の意味で親父になるんだ!」
「…って事は?まさか…」
「…俺の嫁が今…おめでた三ヶ月って…」
「それはおめでとうございます!」
「よーし!今日は飲むぞ!付き合え森近!」
「わかりました、今日はとことん付き合いましょう」
「あっ、でもワシの嫁が心配だから早めに切り上げるぞ?」
「わかってます、月でも見ながら飲みましょう」
前から数ヶ月後の会話
「おう森近!聞いてくれ!」
「なんですか?」
「いや~わしの嫁が可愛くてね?」
「…惚気話ならやめて下さいよ、他の従業員も砂糖吐いてるじゃないですか」
「ぬ、なら仕方がない…まあ話したい事があるのは事実」
「なんですか?」
「実はもうすぐ生まれる子供の名前の意見についてな…」
「それは…」
「わし、男の子が生まれたら真理雄(マリオ)って名前をつけたいなって」
「…女将さんに止められたんですね?」
「なんでわかった!?むっ?もしやお前サトリ妖怪だな!?」
「頬に紅葉着けられてたら簡単にわかりますって…」
「…お前もわしの名前に賛成するよな?」
「…生まれてくる子供さんの為に女将さんの味方になります」
更に数ヶ月後
「も、森近ぁ~!」
「生まれたんですね?」
「うわぁぁぁっ!」
「ちょ、泣きすぎですよ…」
「わし…もう嬉しくて嬉しくて」
「…男泣きですね」
「ただ、女の子だったからわしの考えた名前全部使えなくって」
「仕方ないですよ」
「むぅ…岩男(ロック)とか沌濡羅(トンヌラ)とか考えておったのに」
「女の子ですからね(この人に名前付けさせたら絶対に駄目だ)」
「で、結局わしの可愛い嫁さんが『魔理沙』って名前に命名した」
「とりあえず、お子さんご誕生おめでとうございます」
魔理沙が生まれてから数年後
「もりちかぁぁぁああ!」
「な、何ですか?いきなり大声を出して」
「魔理沙に嫌われた……」
「…今度はなにやったんですか?」
「…可愛いから頬擦り…」
「ですから、きちんと髭を剃ってからってあれほど言ってたじゃないですか!」
「くぅ!髭を剃る間もない仕事が妬ましい!」
「また、忙しいんですか?」
「…ああ…博麗神社の巫女様と里の有力者達との間で少しな…」
「ああ、博麗の巫女が人間の味方だけでなく妖怪の味方じゃないかって言う…」
「全く…妖怪にも良い奴は居て、人の中にも怖い奴が居るって言うのに」
「親父さん……」
「だが、そんな事よりも魔理沙に嫌われた事が重要だ!」
「はぁ…感心して損しましたよ」
更に数年後
「森近…昨日から魔理沙に嫌われて嫁にも呆れられた」
「昨日って…誕生日じゃないですか、プレゼントでも忘れたんですか?」
「…プレゼントあげたんだけどな」
「プレゼント貰って怒るなんて…」
「だろ?『ダンベル』と『ブルワーカー』のセットなのに…」
「年頃の女の子にそんなのプレゼントする親父さんが可笑しいですよ!」
「いや、商人は体力勝負だからって、わしも子供の頃に渡されてな?」
「おやっさんは漢でしょ!…そんな物よりもこんな可愛いのあげましょうよ」
「そんな『魔法のステッキセット』なんて魔理沙が喜ぶとでも思うのか!?」
「でしたら、今から僕が魔理沙にプレゼントしてきますよ」
「おう、呆れられて来い森近!」
「ほら親父さん、魔理沙外で嬉しそうに遊んでるじゃないですか?」
「…くそっ!魔法グッズ全部お店から廃止してやる!」
そこから数ヵ月後
「森近…」
「霧雨の親父さん…本当にお世話になりました」
「…本当に出て行くのか?」
「はい…妖怪と人間の溝が深まって来ましたから」
「無念だ…お前程のような奴が出て行く事が…」
「それに、僕が居たら周りの従業員も白い目で見られるでしょう?」
「…いつでも戻って来い、俺も俺の嫁もそう願っている」
「ははっ、魔理沙もそう言ってくれて泣いてましたよ」
「よし!とっとと出て行け!」
「娘さんが絡むと本当に人が変わりますね…」
「当たり前だ!魔理沙がわしよりもお前の方に懐いて悔しいんだ!」
「はいはい…御達者で」
「…魔法道具全部禁止にしたら魔理沙が家出した」
「前のあれ本気だったんですか!?」
それからしばらくして…
「もりちかぁ!」
「おっと?珍しいですね霧雨の親父さん」
「当たり前だ!魔理沙が一人暮らしするって聞いて走ってきたわ!」
「まあまあ落ち着いてくださいよ」
「女の子の一人暮らしなんて危険過ぎる!」
「いや、まあ確かにそうでしょうけど…」
「森近!魔理沙に変な虫が着かないように監視しろ!」
「監視しろって言われましても…」
「…それと、もし魔理沙がお前を頼ってきたら、手助けしてやってくれ」
「…わかりました……」
「ところで親父さん、天狗の新聞に魔理沙の活躍が載ってますよ?」
「よし!すぐに購読するから手配してくれ!」
紅霧異変後
「おう森近!」
「ああ、霧雨の親父さんどうしたんですか?」
「いや、紅魔館とやらに挨拶に行こうと思ってな」
「親父さんが?またなんで…」
「…商売の為だ」
「はいはい…」
「こ、こら!な、何を笑う」
「いえいえ何も…ところで親父さん」
「なんじゃ?森近」
「背中に隠してある『御挨拶』の箱が見えてますよ?」
「ぬあ!?」
「森近!次は冥界とやらに向かうぞ!」
「…(本当に過保護だな霧雨の親父さん)」
そんなこんながあって魔理沙が生まれてから大体二十年後
「森近…」
「霧雨の親父さん、どうしたんですか?」
「いや、魔理沙の奴もそろそろ良い相手の一人でも居ないかと思ってな」
「あ~…多分、そんな事全く考えてないと思いますよ?」
「まあ、わしの一人娘だから男なぞどれだけでも寄って来ると思うが…」
「いや、それよりも種族魔法使いになるから結婚しないって…」
「よし森近!魔理沙が魔法使いにならないように結婚を勧めて来い!」
「って、なんで僕なんですか!?」
「わしが御見合いの写真を持って行っても取り合ってくれんだろう!?」
「…なるほど」
「…お前に納得されるとなんだか悔しいな」
「とりあえず、魔理沙にこれを渡せば良いんですね?」
「おう!出来れば結婚相手も決めさせてこい!」
「そんな無茶な…」
「無茶でも良い、魔法使いになられるよりはましだ」
「…親父さん」
「そして孫が男の子の暁には今度こそわしが名前をつける!」
「まだ覚えていたんですかそれ!?」
数日後…
「森近…どうだった?」
「…えーと…結婚するだそうです」
「良くやった!」
「ただ、条件がありまして…」
「なんだ!?年上でも一応構わんぞ?」
「いや、確かに年上なんですけど…」
「おうおう、鍛冶屋の主剣君か?それとも酒屋の高次君か?」
「あ~…違います」
「だとすると、居酒屋の野辺君か?」
「いえ、そうではなくって…」
「…む?それ以外であいつより年上の奴いたかな?」
「いや…写真以外の人物だそうでその人以外は結婚しないと…」
「な、魔理沙にそんな奴が居たとは…」
「はぁ…何でも初恋の人だそうで」
「なら、その人に御見合いの写真を作らせないと…」
「その必要は無いそうですよ?両思いだそうですから」
「なんと!?その男の名前を教えてくれ」
「と言う訳で、親父さん娘さんください」
「OK!森近…お店の外に出ろ!」
それから更に数十数年の時間が過ぎた
「御久しぶりです、霧雨の親父さん」
(おう、久しぶりだな森近)
「…すいません親父さん魔理沙が魔法使いになるのを止める事が出来ませんでした」
(なんだと!?)
「ですけど…許してやってください」
(いや、許さん!…でも魔理沙は可愛いから許す)
「僕が一人だけ残されるのが嫌だと言って魔法使いになったんです」
(……まあ、嫁に先立たれたわしにもその気持ちは良くわかるがな)
「怒るのなら、僕だけにしておいてください」
(…ばかもん、そんな気も起こらんわ)
「…また来ますね?霧雨の親父さん…」
(ああ…次来る時は一緒に飲む酒も持って来い)
「なあ香霖…この酒どうするんだ?」
「ああ、これはね…こうやってコップに注いで…」
親父さん、飲みますよ?
でかした森近!さあ飲むぞ!
うわっ!?化けて出やがった?
その日『霧雨家』とかかれた墓標の前で
幽霊と半妖と魔法使いの三人が小さな宴会が開かれた
そして、幽霊になっても過保護っぷりは変わらずw
でもそれが良い!!!
つ 霖之助が修行していたのは魔理沙が生まれる前
などのツッコミどころはありましたが話の雰囲気や方向性はよかったです
お話は面白かったです。
良い親父さんですね
文章がないのが残念だが楽しめたぜ。
OK森近外に出ろで吹いたw
でも不思議なことに、読み終わったあとに涙が……
良い作品をありがとう