ススキノの幻想郷(ドリーム・クラブ)
ピュアな老紳士たちが俗世に疲れきった心と体を癒す、夢の楽園。
働く女の子の露出は激しく。通う男性たちの財布は緩く。
今日も札束を燃やして灯りをとる恰幅の良い紳士が、どれ、明るくなつたろうと声をかけると、嬢は燃えてゆく札束のみを見つめていた。
別に働く女の子は、ピュアでなくてもいい。お金大好きでもいい。
ススキノの幻想郷は、女の子の要望は基本的に全て受け入れる。それはとても残酷なこと。
「孫が居てな」
「お孫さんがいらっしゃるんですね」
厳かな表情を崩さぬ、和服の老紳士が、一際艶やかな嬢に手酌をされつつ、ぽつりと口を開いた。
この紳士、羽振りもよければ顔も良い。通うピュアオジイチャンたちをごま油のように絞り上げる嬢たちでさえ、彼の下ネタにはメロメロであった。
「いまはもうしわくちゃだが、若い時には魂魄流の看板を下げて、毎日3p三昧」
「まぁおじさまったら!」
「いや、稲荷寿司は若い頃からしわくちゃであった」
「あらあら」
甘い吐息を吐きつつ、脚を組みかえる嬢。しかし老紳士はそのような誘いに心を少しも動かされることもなく、常に同じ殺し文句を添える。
「そなたは、我が主の若い頃によく似ておられる」
「きゅんっ!」
働く女の子たちの中で、この殺し文句から逃れられた者は誰一人としていない。
皺の深い彼が目を細め、どこか遠い場所を見据えつつ放つ言葉。
どさくさ紛れに会計を少なく変えてしまうのも、女の性というものだった。
そんな彼は嬢のアフターへと付き合い、会員制の(心の清い者だけが通える)バーへと訪れる。
酔ったふりをしてしなだれかかる嬢を半霊に任せつつ、琥珀色の液体を嚥下する彼。
そっと飲み干されたグラスの横に、注文されていないグラスを置くマスター。
彼らは言葉ではなく、目で通じ合った。
「ここはワシが」
すっと財布を取り出し、眠ってしまった嬢を起こさないようにと細心の注意を払い、マジックテープ式の財布を開く。バリバリー。
寝てしまった彼女へとタクシー代も添えておくのが、彼をピュアな老紳士とたらしめる。
真の紳士たるもの、突然の雨にも動じない。彼の持つ傘は勿論トーツでもクニルプスでもない。
お店で貸し出しされる、塩化ビニル臭の強い赤茶けた泥のはねたビニル傘である。
しかし弘法は筆を選ばず。彼が悪漢を打ち据えるには、ビニル傘でも過ぎた業物である。
助けた少女はスレた目をしており、老紳士の問いかけにもまっすぐと答えようとはしなかった。
「孫のような年頃の女子がそのような表情をしておると、じいは悲しいのう」
おどけた老紳士は、少女の凍った心をも次第に溶かした。
キャバ帰りのことであった。
そんな彼がキャバへ通う収入源とは、長く勤めた屋敷からの振込みである。
いまは孫が、自分が居た場所にしっかりと座っているのだろう。
まだまだ半人前であろうが、自分がいればいつまで経っても甘えてしまう。
目に入れても痛くはない孫。敬愛すべき主人。離れて心が痛むわけがない。
「おじさま」
「ああ、少し昔のことを想っていたよ」
「どうぞ、私の給料から引いておきますので」
「すまないな」
トクトクと注がれる、優しい喉越しのドンペリゴールド。
哀愁を湛える爺の心を優しく包み癒す嬢たち。
嬢たちの心に腰掛ける老剣士。
ああ幻想郷よ、ここにあり。
妖忌・妖夢 「あ」「あ」
キャバクラへ通う収入源は別の店で働く妖夢なのであった……
しかして何と言う幻想郷。
でも良いよね、妖忌じーちゃんだもの。
孫が稼いだ金で何してやがる
聞き捨てならんな。早く投稿せんか
いやして下さいお願いします
妖夢はこんな大人になっちゃいかんよ。
続編……だと……!
楽しみにしてます!!
キャバ嬢はゆかりんか小町あたりを幻視
妖忌、お前……