「
拝啓
梅の匂いも感じられるようになり、日増しに春の暖かさと生き物の息吹が感じられる日々を、いかがお過ごしでしょうか。
私はと言いますと、いつも通り元気にアホらしく最強無双ぶりを発揮しています。
ついこの間も、太陽の丘で芽吹き始めた可愛い春の芽達を無残にも氷漬けにして遊んでいたところを、笑顔のとても素敵なお姉さんに諭され、改心したばかりです。
さてこの度、私の大親友である大妖精様にわざわざ手紙を出したのは他でもありません。
直接面と向かって言うのが恥ずかしく、このように回りくどい手法に頼らざるを得ませんでした。先にお詫び申し上げます。
いきなり本題に入るのも失礼かと思いますので、まずは私が大妖精様にどのようにしてこのような思いを抱くまでになったかを、ご説明させていただきたいと思います。
思えば初めて出会った時も、今のように雪の降る季節だったと、今でも瞼を閉じれば色あせずに浮かんでくるほど鮮明に覚えています。白骨のように白い野原、魔法の森の胞子群のように降ってくる雪、あまりの恐怖に毛細血管が収縮しきり、生きながらにして凍り付いた手足のように冷たい氷の湖面……。
あの日、貴方は湖畔でテッポウユリのように背筋を伸ばし、凛として佇んでいましたね。その視線は遠い山を見ていたようにも、霧の向こうの何かを見つめていたようにも感じられ、しかしどこでもない場所を見ていたのでしょう。
その貴方の瞳に最初に映ることが出来たのは私だったと思います。なにしろ当時から私は馬鹿で、これはもう生まれつきのもので生来の気質と言いますか、そのお陰で貴方と出会うことが出来ました。
きっかけは些細なこと。ミツバチが花々の密を吸いにやって来て、その体に付いた花粉をついでに落としていくようなものでしたが、上野・御徒町駅間ぐらい遠く離れていたおしべとめしべが出会う奇跡のように、貴方と私の友情ラブを深めていく重要な出来事です。
私を最初に見た時、貴方はライス元国務長官も押し黙るくらいの蔑んだ目でしたね。言葉も『馬鹿が……目障りな』と、非常に友好的な出だしでした。出会った瞬間にアレされなかったのは、きっとフィーリングが超マッチしたせいだと思います。今でもそうですものね。チョベリグ。
それからの月日は大麻草のように早く、刺激のある毎日でした。
貴方は妖精らしく、時には無邪気に、時には小悪魔(紅魔館の使い魔じゃないので注意)のように私と遊んでくれました。例えばあの時、私が蛙を氷漬けにして遊んでいた時も、大蝦蟇をテレポートさせて来てくれましたね。とても吃驚したのを覚えています。
おかげで大蝦蟇の腹を下すことに成功しました。それもこれも、貴方がまるで私を亡き者にしようとしてるのかもと思わせるぐらい、スリルある様々な遊びを紹介してくれたからです。とても感謝しています。ですが、セシウムの塊を湖に投げ入れる遊びは、湖畔の花達が傷つくので二度とやるな。
長々と書いてしまいましたが、そろそろ本題に入りたいと思います。
私達は長い間友達として付き合ってきましたが、ここの所、貴方の視線が薔薇のような情熱を帯びた物になっていることに気付きました。
実はもっと前からだったのかもしれませんが、生憎と私は馬鹿でしたので、なかなか気付けずにいました。ごめんなさい。
この幼き肢体に寄せられる、肉欲を全とする淫らで濃厚な棘が、爪先から細い太股、その狭間にある秘所から子宮を内包する腹部を上り、両の頂すら慎ましくある心臓の前、触れれば容易く壊れてしまいそうな、細い氷柱のような首、うなじと舐めるようにし、淡い唇、歯、頬、鼻、目、耳、額、髪の毛の一本に至るまで、それどころか内蔵にまで突き刺さるような感覚に、今ではこの未成熟な心と身体が疼いて仕方ありません。
これをどんな言葉で表わせばよいのか、例え表せたとしてもそれは文字としてあるだけで、決して伝えきれる物ではないでしょう。
ですが、この鼓動一つ一つが確かに貴方の所為であることを知って欲しく、自分勝手なことを承知で、こうして貴方に伝えたいと思いました。
もしもご迷惑でなければ、この思いの丈を受け取ってくださいますよう、お願い申し上げます。
敬具
大切で大好きな大ちゃんへ
チルノより
追伸
花は大切に扱いましょう。でないと死。
」
「……っと、ほら書き上がったわよ。お友達への感謝の手紙」
「おー凄い! たくさん書かれてる読めないけど。幽香、ありがとう!!」
太陽の丘の一角で、風見幽香とチルノという、片方が消し炭になりそうな二人組が座っていた。
向日葵をあしらった万年筆を片手に幽香は、
「ふふっ、面倒だったけど途中から捏造しまくりで楽しくなったから良いわ。それより次に大事な芽ーちゃんたちを苛めたら粉骨砕身するから忘れちゃダメよ」
そう言う彼女の傍らには、霜が溶けた滴で輝く子葉があった。
天狗すら逃げ出しそうな笑顔の幽香に対し、チルノは歯を剥いた笑顔を見せる。
「はーい!」
「本当に分かってるのかしら……」
霧の湖の畔で、大妖精は震えていた。
両手で掴み、辛うじて破らない程度に握り皺を作るのは、向日葵模様の便箋だ。
鼻血を垂らしながら、大妖精は問う。
「チルノちゃん、これって……」
「大ちゃんどう、かな?」
気恥ずかしさに両手を組み、上目遣いに大妖精を見た。
瞬間、大妖精から鋼鉄ワイヤーが異常荷重により切れたような音がして、
「チルノちゃん」
「うん」
「結婚初夜しよう」
「だが断る」
チルノにしては何かおかしいと思ったらそういうことでしたかwww
何やってんだよwwせめてナトリウムぐらいにしとけww
吹いた俺も馬鹿だ!
大ちゃんアルカリ金属を水に入れちゃダメwww
かつナイス応答!
きっと大ちゃんの目が血走りすぎてて何か危険を察知したに違いない
花の話題が多かったりと、何気に伏線張られてるところも上手いw
>上野・御徒町駅間ぐらい遠く
ちょwwwwwwそれ、あまりにも遠すぎですwwwwwwwww