「えっ?屋台経営の秘訣を教えて欲しいの?」
屋台を開いていたミスチーの所にやってきた客がそんな事を聞いてきた
その質問に対してミスチーが笑いながら答える
「あははっ、そんなのがあれば私が教えてもらいたいよ…」
ミスチーの言葉に、仕方ないかと言った表情で苦笑する客
御酒が入った状態の半分冗談交じりの事だから仕方がない
そんなお客にミスチーが八目鰻を焼きながら話を続ける
「あ、でも色々と考えている事もあるんだよ?」
その話に興味を持ったお客がその話に耳を傾けると
ミスチーが少し困った様子で呟いた
「…う~んだけど今日は喉の調子が悪いからなぁ~…」
そこを何とか…とお客が伝えると
ミスチーが少し意地悪そうに口元をニヤつかせた
「お客さんの奢りで大吟醸を一杯プレゼントしてくれたら喉治るかも♪」
その言葉を聞いて、お客が一本取られたと言った様子で額を手で叩くと
傍に置いてあった大吟醸をコップに入れてミスチーに手渡した
「あははっ…ありがと♪まあ、つまらない事だけどね」
ミスチーがそれを一杯飲むと話を始めた
・・・
まずは、妖怪の山で屋台を引く基本なんだけど
安酒を大量に用意する事…
ちゅん…皆よく飲むんだけど、御金を払わない人が多いんだ
だから、そんな人達には安酒を用意するの
まあ、ある意味ただ酒になるんだけど此方の赤字は減らさないと
それに、そういう人達は色んな利点を持ってる場合が多いからね
・・・
「はい、八目鰻お待ちどう!」
先ほど頼んでいた八目鰻が客の前に出される
出来立ての熱い八目鰻を覚ましながら食べる
「熱いから気をつけてね?」
はふはふしながら食べる客が、話の続きを聞こうとする
だが、ミスチーは唯笑顔で此方を見つめるだけ
その姿を見て、客も笑いをこらえると
再びミスチーのコップに御酒を注いだ
「ん、それじゃあ話を続けるね?」
・・・
次は里で屋台を出す時の注意
此処でお店を開く時に気をつけないといけないのはね…
妹紅さんと輝夜さんの御二人…
決して御金を払わないとかじゃないんだよ?
むしろ、きっちりと御金を払ってくれる上客なんだよ
『片方だけ』ならね…
ちゅん…二人がお店に来た時はいきなり大喧嘩しちゃうからね
おまけに二人とも自分は悪くないって言い張るから
どちらも屋台の修理費払ってくれないし…
うん…こっちは大損害の上に暫くお店は御休みになっちゃうの
だから、里の周りでお店を開く時は
『蓬莱人お断り』の看板を立てておかないといけないの…
えっ?それでも頼まれた時?
…二人の家まで八目鰻を出前する事にしてるんだ
・・・
「あ、そうそう…これ御酒のおつまみにどうぞ」
ミスチーがそこまで言うと、話題を止めて小皿を手渡す
中に入っているのは向日葵の種である
少し香辛料をつけてあるので、御酒を飲むのに丁度いい
それをつまみながら、ミスチーのコップに再び御酒を注いだ
「さて、話を続けさせて貰うね?」
それを美味しそうに飲み干すと
ミスチーは話題を再開させた
・・・
次は博霊神社でお店を開く場合…
此処に行くのは月に二、三回程度なんだ
…うん、お客があまり来ないから…
でもね、此処だと色々と面白い事が起こるから楽しく歌えるんだ
…さてさて、此処での商売をする時の注意点なんだけど
『博麗の巫女に御飯を奉納する』こと
…あははっ……初めてあの神社に行った時にね
お腹を空かせて幽鬼になりかけている巫女を見つけて…
…博麗神社への奉納って意味で行く度に八目鰻を焼いて出してるの
ん?奉納した見返りはあるのかって?
その日一日はどの組織よりも優先的に守って貰えるんだ
・・・
そこまで話し終える頃
丁度、御酒もおつまみも客の前から切れた
「…さて、私の話も今日はこの位かな?」
それを見計らってミスチーも話を止めると
客もうなずいて、御代をテーブルの上に置いて
その場から立ち上がる
「そうそう、一番最後になるけどね屋台に一番大切な事はね?」
そんな客の背中にミスチーが一番大切な事をそっと告げると
「ちゅんちゅん、また呼んでくださいね」
客に対してお辞儀をして見送った
女将のお見送りの言葉を背中に受けて
客は『また頼もう』と心に思い
ほろ酔い気分で自分の部屋に戻った
背後で宵闇と亡霊に襲われそうになる寸前に
V100コングエンジンの爆音を轟かせて
去っていく夜雀の屋台を背中に
女将の言葉を頭に思い出しながら
「屋台に一番必要なのは、いざって時に逃げれる為の高性能な機動力だよ」
65トンの化け物を難なく動かすんだから
>背後で宵闇と亡霊に襲われそうになる寸前に
お客も乗せてやれよ…
死んじまうだろその危機的状況!
・・・と言えないところがみすちーたる所以か。