Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妖怪として、毘沙門天として

2009/12/01 09:36:08
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「聖っ!」
「みんな…ただいま」
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…!」
「いいんですよ、星…貴方は貴方のすべきことをした、それだけです。それに…今こうしてここに来てくれたじゃないですか」
「…っ!聖ぃ…っ!」

そうして私は彼女と再会した…あの時の後悔と懺悔と歓喜を胸に。

「そういうわけでこの子の事、よろしくお願いします」
「ふむ…それが弟子か」
「よ、よろしくお願いします」
「…妖怪のようだが?」
「はい、そうです。ですがその中でも特に真面目ないい子ですよ」
「…まあいいだろう」
「頑張ってくださいね、星」
「は、はい!」

それからの私は聖の期待にこたえようと必死だった
流石に毘沙門天様は簡単には信用してくれなかったようで、お目付け役も付けられましたが…
それでも私のすることは変わらない。そう、あの時も…

「ご主人、聖がっ!」
「…騒がしいですよ、ナズーリン」
「これが落ち着いていられる場合か!?聖や皆が封印されるんだぞ!」
「…らしいですね」
「らしいですね、じゃない!こんなところで暢気に写経している場合では…!」
「駄目ですよ、ナズーリン」
「何故だっ!何故動こうとしない!なんとも思わないのか!?」
「…私は今は毘沙門天の代理なのです。その私が皆を助ける事は出来ません」
「…っ!星っ!お前はそれでいいのか!?皆をこのまま見殺しにすると!?」
「落ち着きなさいと言っているでしょう!」
「っ…!?」
「仮に私達二人だけで何が出来るというのです…!もろとも封印されてそれで終わりです。それだけはなんとしても避けなければいけない」
「だが…」
「私には…責任があるんです。聖より毘沙門天様に斡旋して頂いたときから…私は『毘沙門天』でなければならないんです…!」
「…ご主人」
「向かいたくないわけがないでしょう…出来ることなら私だって今すぐにでもここを飛び出していきたい!しかし私にはそれは出来ない、許されない!私は…私はもう…」
「…わかった。失礼する…騒ぎ立てて申し訳ない」

そうして私は寺に残った…いつものように寺で職務をはたしながら…
皆は怨んでいるのでしょうね…薄情者だと…裏切り者だと…
それでも私は…ここの留守を任された、皆が帰ってくるこの寺の…
そうして何年も…何十年も…何百年も後…

「…すっかり寺も荒れてしまいましたね…誰も来なくなったのだし、当然ですが…」

今ならここから抜け出すことも可能かもしれない…そんなことを冗談交じりに考えていたある日…

「…呆れた、まだあんたここにいたのね」
「…!その声は…」
「…久しぶりね、星」
「ムラサ…」

懐かしい…また会える日が来るなんて思ってもみなかった…

「…何の用でしょうか、見たところ…一輪に雲山もいるようですが」
「…正直あんたには言いたい事が山ほどあるんだけど…単刀直入に聞くわ、聖の封印を解く方法を教えなさい」
「…どういうことでしょう」
「どういうことも何もないわ。ただ聖の封印を解きに行く、それだけ」
「…船はあるんですか?」
「当然よ。私がここにいることが何よりの証左。それで?教えるの、教えないの?」
「…封印を解く為には聖の弟様、命蓮様の力が必要です」
「へ…?」
「?どうかしましたか?」
「い、いや…いいの?そんなにあっさり教えて…私としてはあんたと1戦やりあうつもりだったんだけど…」
「…私は妖怪です。ならば聖の封印に手を尽くすのは当たり前の事です」
「…変わり身の早い事で」
「なんとでもどうぞ。とにかく、命蓮様の力は今はあの倉…空を飛ぶ倉にあります。それを集める事が出来れば」
「なるほどね…一輪!雲山に船の準備をさせて」
「わかった」
「…あんたも来るの?」
「当然です。それに倉を集めただけでは完全とは言えない。私の持っている宝塔の力も必要です」
「…ちっ」

こうして私もようやく本心に立ち返れた…まあ、その途中で肝心の宝塔をなくしていたりと、あまり褒められたものではないのですが…

「…それで、あんたもここに住むの?」
「…どう、でしょうね。聖はともかく皆はそれを許してくれないでしょうし…」
「当たり前でしょう。誰があんたみたいな裏切り者…」
「あれ?ムラサいいの?この人がムラサの言ってた人の事じゃないの?」
「っ!?ぬ、ぬえ!?」
「…?失礼ですが貴女は?」
「私?私はぬえ、まあムラサの友達みたいなもん?ところで…あんたが寅丸星?」
「…?はあ…そうですが…」
「へー、ふーん、ほー…」
「あ、あの…何か?」
「いやいや別にー?なかなかの色男だなーと」
「なっ!?」
「…話がよく見えないのですが」
「いあね、よくムラサが地底にいたときにあんたのこと」
「わーーーっ!!!」
「あれれー、ムラサ顔赤いよー、どしたのー?」
「うっさいっ!つーか黙れぬえ!それ以上言うな!」
「…彼女に話したんですか?私の事を」
「そりゃーもう色々聞かされたってもんよ」
「…そう、ですか」

…いい話、ではないのでしょうね

「駄目ですよムラサ」
「ひ、聖…」
「星も私達にとって大切な家族ですよ?一人だけ追い出すなんて駄目です」
「で、ですが聖…こいつは…」
「?立派に寺に残って責任を果たしてくれたじゃないですか、何か問題が?」
「え、ええ!?」

…相変わらず、聖にはかないそうもない

「…いいんですよ、聖。どうあれ、私のした事は褒められた事ではありません」
「いけません」
「しかし…」
「では一輪、貴女の意見は?」
「へ?うーん、私は別に。雲山も問題ないって」
「ちょ、一輪!?」
「そりゃ昔の事はそうだけどさ、実際今回は星がいなきゃ駄目だったわけだし。まあそれに免じてってやつ?それに雲山も男一人は辛いってさ」
「ナズーリンはどう思います?」
「どうもこうもこの人は私のご主人だぞ?去れと言うなら私も共に去る」
「ね?」
「う…うー…あー、もう、わかったわよっ!認めればいいんでしょ!?認めれば!」
「ではこれで解決ですね。さあ、新しい寺を建てましょう!」

本当に…かないそうもないな、まったく…

「…いいのか、ご主人」
「ナズーリン。いいのか、とは?」
「聖のことだ…まだ、好きなんだろう?」
「ああ、そのことですか…いいんですよ、もう」
「ふむ?」
「確かに私は昔…いえ、今でも聖の事を…ですが、いいんです」
「どうしてだい?」
「一つはそうですね…この気持ちの正体がなんだか…わからなくなってしまいまして」
「わからない?」
「ええ。情けない話ですが今こうして考えてみると、本当にこれは恋慕だったのかな、と、そんなことを思ってしまいましてね」
「ただの憧れだった、と?」
「そのようなものです。子が母に向けるようなそんな、ね…」
「…一つ、と言ったな、もう一つは?」
「もう一つはそうですね…こうして皆に会えて…またもう一度皆で暮らしていける…そのことがたまらなく嬉しいんです」
「…ふむ」
「もし私が恋をしていたとしたら…本当はきっと寺の皆と一緒にすごす、そんな毎日を想っていたんじゃないか、今はそんな風に思うんですよ」
「…なるほどな」
「とはいえ自分でも本当の事はよくわからないんですがね、本当に恋だったのかもしれないし」
「まあゆっくり気持ちの在り処を探していけばいいさ…いつかきっと見つかると思うよ」
「何故そう思うんです?」
「ご主人の力は『財宝が集める程度の』じゃないか。その気持ちは間違いなく、掛け替えのない『財宝』だと、私は思うよ」
「…そうですね、ええ、大切な…何よりも大切な『宝』です」
「なら、きっと見つかるさ…いつか、ね」
「いつか、か…」

見つけたいと思う反面、このままずっと見えないままでいてほしい気持ちもありますね…不思議なものです…
ついカッとなって書いた、反省はしているが後悔はしていない

…はい、申し訳ございませんでしたorz
違うんです、棒役とかそういう意図は一切なしで、星君を男として一本書いてみたかったんです

星君の設定テキストを読んだのがいけなかった。あれを読んだ瞬間「実は星君は男で、聖にたいして想いを募らせていたのでは…」なんて考え始めてもう駄目、止まらなくなりました。
こういう話が好きなんです、百合でやればいいだろう、と言われるかもしれませんが、百合で書いちゃうと忠義とか立場より先に自分の中では背徳感がきちゃうので駄目なんです。ということで星君が男の子になりました。

最後になりましたが自分の稚拙でありがちな話を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
批判でも何でも感想をいただければそれだけで泣いて喜びます。
名前が無い程度の能力
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
話が早送りで進んでいくので心情を理解する隙間がありませんでした。なんかダイジェストを見てる感じ。
2.名前が無い程度の能力削除
丁寧な描写が欲しかった……! 発想が勿体無く感じてしまいました。