" />宴会の中で、二人 作者: 喉飴
Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

宴会の中で、二人

2009/11/30 22:47:04
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「あれは……」

 どんちゃん騒ぎの宴会。
 博麗神社に集まる者は、妖怪や人間、さらには鬼に天狗にと様々だ。
 みんながみんな、お酒を口にしたり他者との会話を楽しんでいる。
 そんな中、早苗は、一人他者を避けるように輪から離れている人物を発見した。
 その人物は、ただ一人で縁側に腰を下ろし、片手にコップを持っていた。隣りには、ふよふよと人形が浮いている。
 それが気になった早苗は、ゆっくりと近付く。ついでに輪から離れて、お酒を飲まされるのを避けたいと思う気持ちもあった。

「あなた、アリス・マーガトロイドさんでしたっけ?」
「そういうあんたは、確か東風谷早苗だったかしら?」
「えぇ、そうです。あ、隣り座っても良いですか?」

 早苗がそう言うと、アリスは露骨に嫌そうな顔をした。

「え、あ、ダメでしょうか?」
「いや、ダメってわけじゃあないけど……どうぞ」

 はぁ、とため息を吐くアリス。
 それを見て早苗は、もしかして一人が良かったのかな、と少し申し訳なく思った。
 とりあえず、許可をもらえたから隣りに腰掛ける。

「えっと、マーガトロイドさんは……」
「アリスで良いわ。呼び辛いでしょ、そっちだと」
「じゃあアリスさんで。アリスさんは、飲まないんですか?」

 アリスは片手にコップを持ってはいるが、中身は全く減っていなかった。

「これ、お酒じゃなくて水よ」
「え?」
「お酒を飲んでいるふりをしてるだけ。元から、大勢で飲んだり騒いだりするのは、あまり性に合わないのよ。飲むなら静かに少数で、って感じかしらね」
「そうなんですか。でも、なら何故宴会に?」
「質問の多い子ね」
「え、あ、すみません……」

 しゅんとなる早苗を見て、アリスは首を軽く傾げた。

「東風谷さんは――」
「あ、早苗で良いです。私もそちらですと呼び辛いでしょうし」
「そう。じゃあ早苗で。早苗は私がイメージしていたのと違うわね」
「え? イメージ?」

 今度は早苗が首を傾げる番だった。

「だってあんた、異変時や弾幕ごっこの時は変にテンション高いって聞いていたから。こんな常識人っぽいとは思わなかったわ。普段から立派な変人かと思ってた」
「だ……誰がそんなことを。いや、確かにテンション上がっちゃってたりしますけど」
「天狗の新聞に載ってたわ。妖怪退治に快感を見出すドS、ってね」
「ぐぬぬ……文さんですね。もしかしてアリスさん、最初露骨に嫌そうな顔したのって、一人を邪魔されたからじゃなくて……」
「うわ、面倒そうなやつに絡まれたなぁ、って思ったからよ」
「うぅ……やっぱり」

 自分の知らないところで嫌な情報が流されている事実と、そんな風に思われていたことにヘコむ早苗。
 今度からはもうちょっと冷静に大人しくいこう、と決意したのだった。

「だって、私の世界では無かったことばかりなので、そりゃあテンション上がっちゃっても仕方無いじゃないですか」
「普通の人間は環境が変わったりしたら怖がると思うけどね。逆にテンション上がるなんて、まるで幼い男の子ね」
「うぐぅ……」

 アリスの言葉が、まるでナイフのように早苗の心に突き刺さる。

「……そういうアリスさんは見た目通りですね」
「見た目通り?」
「物凄くキツいです。優しさが無いです」
「思ったことをただ口にしただけよ。何、優しくして欲しいの?」
「うぐぐ……別にそういうわけでは」

 ふむ、と考えるアリス。
 少しして、何かを思い付いたように早苗の方へと向いた。
 人形のような瞳が、早苗を捉える。
 そして、早苗へと手を伸ばし――

「はい、良い子良い子」
「……は?」

 頭を撫でた。
 ふわっと柔らかい髪が、心地良い。
 最初、突然の行動に何をされているか理解出来ていなかった早苗だが、しばらく撫でられているうちに、ようやく理解。
 そして、顔に紅葉を散らした。

「こ、これじゃあ子ども扱いみたいじゃないですか! 優しいとはまた違うでしょう!」
「そう? でも実際、まだまだ子どもじゃない」
「子どもじゃないです! 離してください~!」

 両手をぶんぶんと振ってムキになっている姿を見て、やっぱり子どもっぽいなぁ、とアリスは思っていた。
 これ以上撫でていたら、拗ねてしまうのではないかと考え、少し名残惜しいと思いつつも止めるアリス。
 早苗はジトッとした目付きで、アリスを恨めしそうに睨む。

「うぅ、髪触られた~……子ども扱いされた~」
「良いじゃない、髪くらい」
「髪は女の命ですよ! そんなこと言うなら、アリスさんの髪、触りますよ?」
「どうぞ」
「……むぅ」

 全く動じないアリスを見て、これではあれだけ慌てた自分が馬鹿みたいじゃないか、と心の中で呟く早苗。
 そっと手を伸ばして、アリスの髪に触れる。

「うぁ……凄い」

 早苗は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
 それほどまでに、アリスの髪が心地良いものだった。
 柔らかいのはもちろんのこと、綺麗な金色。指で梳くと、さらさらとした髪質が本当に心地良い。

「これは、一体どんなお手入れを?」
「んー? いや、特に……」
「天性でこれですか。潰したくなりますね。あぁ、妬ましい。奇跡を起こして毛根を死なせてみたいです」
「物騒なこと言わない。早苗だって、充分綺麗な髪じゃない」
「そんなことないです」
「そんなことあるわよ」

 妬ましい妬ましいとぶつぶつ呟く早苗。
 やっぱり変人なのだろうか、とアリスは思った。

「はぁ……なんだかショックです」
「何がよ?」
「私と違って慌てたりしないですし、髪でも負けてますし、なんだか大人っぽさ完全敗北な気がします」
「早苗は人間でしょう。これから成長するじゃない。それに、充分髪綺麗だってば」

 実際、お世辞なんかでは無く、アリスからすれば早苗は充分魅力的だった。
 少しの間しか会話をしていないけれど、可愛らしいし感情豊かだし、話していて楽しい相手。まぁ、少し変人ではあるけれど。そう、アリスは思っていた。

「なんだかアリスさんって」
「ん?」
「お姉さんみたいですよね」
「そうかしら?」
「私は一人っ子ですから、お姉さんというものはよく分からないですけど。多分アリスさんみたいなタイプがお姉さんタイプなんだなぁって、思います」
「うーん、自分じゃあよく分からないわ」
「……そうだ。お姉ちゃんって呼んでみて良いですか?」
「……え?」

 今日初めてアリスが動揺した。
 早苗はその様子を見て、少し嬉しくなる。

「良いですか?」
「いや、ちょっと恥ずかしくない?」
「髪触っておいて何を言いますか」
「髪触るより恥ずかしいでしょ」
「いいえ、私はそう思いませんよ。アリスお姉ちゃん?」
「~っ!?」

 今度は、アリスが顔に紅葉を散らす番になった。
 赤くなったアリスは、さっきまでの余裕あるお姉さんというよりは、ただの恥ずかしがっている少女だ。

「アリスお姉ちゃん、どうしたんですか?」
「ぐぐ……」
「アリスお姉ちゃん、黙ってちゃ分からないですよ」
「くっ……恥ずかしいからやめなさい。それに、周りのやつらに聞かれたら何を言われるか……」

 早苗は話に夢中になっていて忘れかけていたが、今は宴会中。
 周りにはたくさんの人や妖怪がいるわけで。しかも、みんな酔っ払い。
 そんな中、お姉ちゃんと呼んでいる場面を見られたら、酔っ払いにとっては良い肴になってしまうことは明らかだった。

「それじゃあこれから、二人きりの時にだけお姉ちゃんって呼びます」
「勘弁して欲しいわ……大体、滅多に会わないでしょう。早苗と私は」
「うーん、じゃあ、もしよろしければですが、今度遊びに行っても良いですか?」
「絶対来るな」
「即断られた!?」
「恥ずかしいこと言われるって分かってるのに、了承するわけないでしょ」
「むぅ、なら勝手に行きます」
「うわ、迷惑」

 露骨に嫌そうな顔をするアリスに、早苗はえへへと笑い返した。

「何笑ってるのよ」
「いえ、別に~」
「なんか腹立つわね」
「えへへ」

 早苗は、なんだかおかしくて、楽しくて、笑っていた。
 宴会という騒がしい中、二人がいる場所だけは、静かに時間が流れていた。
 
早苗とアリスを書きなさい。それがあなたに出来る善行です。
そう、言われたので書きました。
地味に珍しい組み合わせかな。
そんなこんなではありますが、少しでも楽しんでもらえたら、嬉しいです。
喉飴
http://amedamadaisuki.blog20.fc2.com/
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コメント



0.簡易評価なし
1.無評価脇役 削除
プチ作品5000件目おめでとうございます!
ほのぼのとしたアリスと早苗さんに和みました
2.無評価名前が無い程度の能力 削除
珍しい組み合わせ。でも確かに姉妹という言葉がぴったりの二人が良かったです!
アリスは色んな人のお姉さんになれそうですね。本人は不本意でも。
3.無評価名前が無い程度の能力 削除
なにこれかわいい
4.無評価名前が無い程度の能力 削除
サナアリ分補給完了、っと。
5.無評価名前が無い程度の能力 削除
大いにその善行を積むべきである
6.無評価名前が無い程度の能力 削除
これはいい善行だ。
7.無評価名前が無い程度の能力 削除
確かに早苗さんは異変時と通常時の2重人格と言われると納得できるかも
あまり見ない組み合わせですが不思議なくらい違和感がなかった、GJ
8.無評価ぺ・四潤 削除
全くあなたって人は……
珍しい取り合わせかと思いきや、なんでこんなに自然なんだ。
そのうちこっそりと自律型カエル髪飾りとヘビ髪留め作ってたりしたらいいな。
9.無評価奇声を発する程度の能力 削除
こんなお姉ちゃんがいたら凄い嬉しい!!!
素晴らしきサナアリ!
10.無評価喉飴 削除
>>脇役様
わわっ!ありがとうございます。言われて気付きましたw

>>2様
ため息を吐きながらも、なんだかんだで放っておかないような気がします。
ありがとうございます。

>>3様
可愛さ感じてもらえて嬉しいです。

>>4様
サナアリ少ないですよねー。

>>5様
まだ善行足りませんかね。

>>6様
善行を積むことが出来ました。

>>7様
マイナーを書く者にとって、違和感無かったという言葉は本当に嬉しいです!
ありがとうございます。

>>ぺ・四潤様
自然ですか、ありがたいお言葉です。

>>奇声を発する程度の能力様
楽しんでもらえて良かったです。
11.無評価名前が無い程度の能力 削除
やばいこれはやばい。にやけて困るw
12.無評価名前が無い程度の能力 削除
にやければ、いいと思うよ
13.無評価喉飴 削除
>>11様
楽しんでもらえてなによりです。

>>12様
糖分はほぼ無いですが、少しでも楽しんでもらえたようで、なによりです。
14.無評価名前が無い程度の能力 削除
アリスは末娘だもんな
15.無評価名前が無い程度の能力 削除
末娘として可愛がられたアリスは他人にお姉ちゃんぶられると切なくてついつい甘えちゃうの
とかだといいなあ
16.無評価名前が無い程度の能力 削除
いいなぁ、なごんでにやけてしまう

>>奇跡を起こして毛根を死なせてみたいです
さらりと恐ろしいこと言いなさるwww
17.無評価名前が無い程度の能力 削除
微笑ましかったw