Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

星屑の中の記録盤~Akashic Records~

2009/11/30 22:00:08
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「よぅ、アリス」
「何よ……あ! あんたこの前の魔導書どうしたのよ?」
「あぁ、あれならまだ使ってるぜ」
「そ、まぁそれなら別にいいわ」
「大丈夫だぜ。おまえの本はちゃんと返すからよ」
「……なんか私の本には価値が無いみたいな聞こえ方をするわ」
「きっと、気のせいだぜ」

魔法の森にあるマーガトロイド邸にて魔理沙は魔法の研究を手伝ってもらうために訪れていた。
いつもは自分ひとりで魔法の研究を行っているのだが、どうやら研究が行き詰っているらしく、魔法使いであるアリスにも意見を聞こうとしていた。

「それでな? アリス。ここがどうにもわからなんだけど……」
「へ~……あんた、こんな研究を今やっているの? これは結構時間がかかりそうね」
「だろ? でな、ここの部分が……」

マーガトロイド邸にて行われている魔法の研究。それは―――だった。
幻想郷でも未だかつて誰にもなしえなかった魔法を魔理沙は完成させようとしている。
それは人間という壁を越えて人間でありながら神に近づこうとする
禁忌でもあった。

アリスは最初、魔理沙から大雑把な事情を聞いた時に反対しようとしたが、魔理沙の確固たる意志の前に協力する事を約束した。
魔理沙が何を思ってこの魔法を完成させようとしているのかはわからないが、これが完成したときに魔理沙が魔理沙としての人間の部分が残っているのか不安でならなかった。

それほどこの魔法には失敗したときのリスクが高い。

そもそも魔法とは想いの力であると魔理沙は信じている。
幼少時に店の倉庫から持ち出してきた箒にずっと箒に乗って空を飛ぶイメージを描いてきた魔理沙。それが何日も何日も続いたある日、魔理沙の師匠でもあった祖母の助言により、魔理沙はついに箒に乗って飛ぶ事ができた。そして魔理沙に対して祖母は
「魔理沙。想いはいつかきっと力になるんだよ。信じて努力をすれば人間に出来ない事なんてないんだよ……」

そんな事を言われたような気がして、魔理沙はそれ以来ずっと出来る事をイメージして、その為の努力をしてきた。
自分には出来るようになれるんだ……と。









先日、魔理沙の周りに小さな変化があった。
それは彼女に大きな変化をもたらしていた。
自分が魔法使いになろうとした理由を思い出させてくれる大きな理由。
でも幻想郷にとってそれは、ほんとうにとるに足らない変化でしかなかった。

小さな変化が大きな変化を呼ぶ。
これは幻想郷に限らずどこにでも起こる事だ。
しかし今回の小さな変化は、そんないつもの大きな変化をはるかに超えた変化になろうとしていた。

「なぁ、アリスおまえほんとに良かったのか? 私に協力なんてしてるの知れたらタダじゃ済まないかもしれないぜ?」
「わかってるわよ。私も魔女の端くれ。あんたがやっている事がどれくらいのものか大体は把握しているつもりよ」
「そっか……なんか悪いな、ありがと」
魔理沙は満面の笑みでアリスにお礼を言う。
「べっ……別にそこまで感謝されるいわれはないわよ。それよりっ! 研究を進めるわよ」
「はいはい。まったく、素直にありがとうくらい言って欲しいもんだぜ。照れ屋だな、アリスは」




「…………あ、あ……がと」




アリスは顔を真っ赤にしながらかすれるような声でボソっと呟く。
魔理沙には何を言っていたのか聞き取れなかったはずの小さいな囁きは、アリスの仕草から伝わってきていた。






……





…………





………………




魔理沙とアリスが研究を始めてから数ヶ月が経ったある日。ついに魔法が完成を迎えようとしていた。

「魔理沙、あとは何?」
「あと……は、えと……血だな……でもダメだ。普通の血では反応しない。もっと精神状態が高ぶっている状態の血が良いみたいだ」
「そういえばそんな事も書いてあったわね」
「ただ……そんな状態を人為的に作り出す方法となる……と」

その時アリスの家に大きな揺れが発生した。
それは家を倒壊させるほどの勢いで激しく揺れていた。

「魔理沙!!!」
「アリス!!!」

二人の魔法使いは近くにあった窓を突き破り、急いで外に飛び出す。
すると揺れはどうやらアリスの家だけに発生していたらしく、魔理沙たちが外に飛び出すと同時に揺れも収まっていった。


一息ついた魔理沙は虚空に向かって声をかけた。
「さて、そろそろ出てきてもらおうか紫」

魔理沙が声をかけてしばらく経つと、何も無いはずの空に亀裂が走り、そこから一人の妖艶な女性が姿を現した。

「魔理沙もついに私の姿を見つけられるようになったのね」
「まぁな、霊夢の家にやっかいになっていりゃ、自然と行動パターンが読めてくるもんだぜ」
「へぇ、驚いた。普段のまったりとした日常の中であなたがそこまで見ていたなんて、驚きだわ」
「私は常に努力を怠らないぜ。そしてこのタイミングで現れたってことは……」

魔理沙には正直、嫌な予感しかしていなかった。紫が絡んでくるとなると自分のやっていることが幻想郷においてとてもまずい事だということがバレたも同然なのだ。
奪われた春の時には全力を出していなかったであろう紫の雰囲気が今はまったく違っていた。

「魔理沙、あなたのやっていることは幻想郷に必要の無い魔法なのよ。早々に魔法の研究を中止しなさい」
「へっ、嫌だね。ここまで来たらもう後には引けないぜ。アリス、悪いな……厄介なものが出てきちまった。」
「かまわないわよ。ここまで来たら絶対完成させなさいよね。私が足止めしておくわ……いつまで持つかわからないけど」
アリスは相手との格の違いをはっきりと実感していた。
自分ではあいつに勝てないと。でも魔理沙の魔法を見てみたいという一心で死を覚悟して挑むことにした。
「アリス! 絶対死ぬなよ!」
魔理沙も同じく肌で感じていた。ここから先は妖怪同士の戦いなのだと。
身体能力ではるかに劣る人間では相手にならない事は目に見えていた。

「へぇ~……貴女が囮になるのね。いいわ、魔理沙を止める前にまず貴女を再起不能にさせてあげるわ」

魔理沙はアリスに感謝しつつもアリスの決意を無駄にしないためにその場を去り、自分の家へと魔法を完成させる為に必要になりそうな薬を取りにいく。








「どこだ……どこにあるんだ……魔力増強剤……」
家の中へと飛び込んだ魔理沙は部屋中のものをひっくり返してアイテムを探していた。

魔力増強剤は以前永琳に作ってもらった。
それは一時的に精神を興奮させて魔法の質を上げるための薬だった。
「あれを飲めば興奮作用で血に変化が現れるはず!」


魔理沙が探し始める事数分。ついにそれを見つけた。数分しか経っていないが魔理沙にとっては数十分もの時間が経ったような感覚に囚われていた。
「はやく……アリスの元にいかないと!」
箒をひっつかみ、猛スピードで魔法の森を超低空飛行で飛んで行く魔理沙。幻想郷元最速のスピードは伊達じゃない。

多分計算したら自己最速の記録でアリスの家についただろうか。だがそんなことは今はどうでもよかった。
魔理沙がアリスの家に着いたとき、アリスはぼろきれのような状態で地に伏していた。
アリスの身体からは真っ赤な鮮血が溢れ出し、地面を紅に染めていた。
血溜まりの中に眠る人形遣いの姿に魔理沙は持ってきた瓶を取りこぼす。
その瓶は重力に従いゆっくりと落下していき、地に接触すると同時に砕け散ってしまった。















「あ…………あ…………あり……す……?」
















「なぁ……おい、アリス。返事をしろよ。は、はは……冗談だよな? おいもう起きろって」










魔理沙がアリスを起こそうと手を出すとぬるっとした感触が魔理沙を包んだ。

それは紅い血、赤より紅いアリスの血だった。
その現実に意識を呼び戻された魔理沙は目の前に紫が居るにもかかわらずまるで存在しないかのように叫び続けた……
















「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! アリスーーーーー!!!」
















「もう、お別れは済んだかしら? 魔理沙」
境界を操る程度の能力を持つ最強の妖怪、八雲紫は今さっき倒した相手には眼もくれず、魔理沙だけを見て言った。
「あなたがやろうとしていることのせいであなたの周りの人物に危害が加わる。さぁ……引き返しなさい。今ならまだあなたはあなたでいられる」


「……せぇ……う……せ…ろよ」

「???」
紫は魔理沙が何を言ってるか聞き取れなかった。






「私の前から失せろって言ってるんだよぉ!!!」

「!!!」
魔理沙のあまりの気勢に紫は思わずたじろいでしまう。

「そう、やりすぎてしまったかしら。あの人形遣いは生きていた方が良かったのね。」

「なんでアリスを殺した! どうしてそこまでする必要があったんだ!」
「私の邪魔をしようとしたから……かしら」

「許さないぜ……お前は許さない!」
魔理沙は紫に対してミニ八卦炉を向ける。

「へぇ……人間の分際で私に歯向かうというのね」

「うわぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!」
ミニ八卦炉に全ての力込めたマスタースパーク

それは正真正銘光の速さで紫へと襲い掛かった。

今まで見たことがない威力に紫が危険だと察知したときにはすでに遅かった。
光の速さで進む攻撃を見てから対応する術など持ち合わせている妖怪はいない。

魔理沙のミニ八卦炉が光った次の瞬間には紫の姿は掻き消えていた。
あとに残ったのは何かが通り過ぎていったと思われる地面をえぐったような跡だけだった。




「アリス! アリス! くそっ……」
魔理沙は急いでアリスの家へと飛び込み、研究の最終段階まで進んだ魔導書を掴んでアリスが倒れている外まで急いで戻った。

「待っていろよ、今なんとかしてやるからな」

持ってきた魔導書に詠唱を開始すると魔導書が光を放ちはじめる。
その魔導書を1ページ引きちぎり、アリスの血にまみれた身体にそっと触れさせる。
魔導書はすぐに血で汚れるがそんなことはお構い無しに魔理沙は魔導書を1ページ引きちぎり、今度は自分の胸へとあてがった。






―古よりつむがれる禁術、我今ここに術を為さんとする。其は心理であり、禁術である。我の魂と共に今ひとたびの活動を彼の者に与えんとする―





その時、魔導書から一際大きな光が発生して魔理沙とアリスを包み込んだ。
そして、それぞれから天に昇るまばゆいばかりの二本の光が発生した。
しかし、次の瞬間に光は収まっており、魔導書はなんの変哲も無いただの本になっていた。


ドサリ……と何かが倒れる音がした。
あぁ……そうか、私が倒れたのか、と魔理沙は自分が倒れた事に気付く。

魔理沙の為そうとしていた禁術。それは宇宙のどこかに存在すると思われているアカシックレコードから祖母の記憶を持ってきて人型の人形に憑依させることだった。
アカシックレコード。それは全てを記憶するという幻の存在。魔理沙は自ら肉の身体を捨て、アカシックレコードを探そうとした。
自分の全てを賭けて祖母にもう一度会いたいと思った。
ある日突然夢に出てきた祖母は笑っていた。いつもどおりの平和な笑顔で祖母と過ごす日常はかけがえの無いものだった。でも夢の最後にいつも祖母は言っていた。
過去の自分は捨ててはいけない。でも過去の自分よりもっと大切なものが今の魔理沙にはあると。

そして魔理沙は薄れいく意識の中で気付いた。祖母の記憶は私が持っている。別に祖母をこの世に呼び出してまでもすることだったんだろうか……と。
その為にアリスが犠牲になった事。そしてアリスの死を目の前にして気付いた。
私にはアリスに居て欲しい。
そばで照れながら話しかけて欲しい。
アリスは目標だった。
いつか人の身でアリスのような魔法使いになってやると。
そばにあるのに気付けなかった。
いや、近すぎたからこそ気付けなかったのかもしれない。

アリス……ごめんな……私の命で今回の事は多めに見てくれないかな。
また……

あえるといいな
















「魔理沙、今日はすっごいいい天気よ。ほら、起きなさいよ。こんな日は外で人形達と一緒に遊びたいわね」
あれから数年が経ち、魔理沙はずっと眠ったきり起きてこない。
心臓は既に止まっており、幻想郷の住人達は嘆き、悲しんだ。

しかしアリスは挫けなかった。いつかきっと魔理沙を蘇らせると信じて手を尽くしてきた。
日光が窓から差し込み、魔理沙の安らかな寝顔を照らしていた。
アリスはお茶を入れてこようと人形達と一緒に台所へと移動した。

魔理沙が今の状態になってからアリスは自分の家に戻らず、魔理沙の家でずっと一緒に魔理沙と暮らしている。
いつか彼女が起きたときにさびしく無いようにと。
魔理沙が寝ているベッドのサイドテーブルに魔理沙用の紅茶をことりと静かに置く。

「今日はハーブティーにしてみたの。こんなぽかぽかした日はゆっくりとお喋りしながら紅茶を楽しみたいわね」


「……っう……ぐすっ……魔理沙……ねぇおきてよまりさ!」

彼女の叫びは誰にも聞いてもらえることはない。だがそれでもアリスは叫び続ける。

「ねぇ……ぐすっ……お喋り……しよう……よ……紅白の巫女も待ってるはずだからさぁ」

もう枯れたと思ったはずの涙がまたアリスの目からこぼれ落ちる。
それは魔理沙の顔へとかかり、魔理沙が泣いているようにも見えた。

そして魔理沙に奇跡が起きる。
まぶたがぴくぴくと小刻みに動く。
その変化を捉えた瞬間アリスは涙で滲んで前が見えなかった。

そして魔理沙が目を開ける。
見慣れた天井に見慣れた人形遣いの少女
まだぼんやりとした頭で魔理沙は挨拶をした。















「ただいま」









「おかえり……魔理沙」
魔理沙とアリスのSSを書いてみました。 いかがでしたでしょうか?
魔理沙は努力して掴み取る少女なので想いの力は人一倍だと思ってます。
頑張れば何でもできるっ!      はずっ!

世界の秩序を保つために紫は魔理沙のやろうとしていたことを止めようとしますが、本当は魔理沙が魔法に失敗して永遠の別れになるのを防ぎたかったというまぁそんないつもながらの役回り。

今回のマリアリについては

知り合いからお題を頂戴しましたので甘い話を1mm程度取り入れつつダークな感じに仕上げてハッピーエンドにしてみました。
あとSS用なので戦闘シーンはスキマ送りにされましたw

最後に、ここまで読んでくれた方に無上の感謝を!
サークル StoneRain 
PONZAでした
PONZA
http://ponza884.web.fc2.com/top.html
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
やたら話を大きく見せてるのが逆にちっぽけに見えました。
2.名前が無い程度の能力削除
ヒロインの涙で起きる奇跡、ありきたりだがそれが良い。
3.名前が無い程度の能力削除
いいよ、いいよ、ハッピーエンドは大歓迎さ。
4.名前が無い程度の能力削除
与えられる情報が少なすぎる所為か、情景や心理を読み取りにくいです。特に序盤。
導入部分で読み手が置いてきぼりになる為か、
ストーリーだけがトントン拍子に進んで、味気なく思えます。
私も、話を大きく見せようとして薄っぺらいものになった、という印象です。

文章自体は良いのですが作品全体として見ると、言葉は悪いですがやや稚拙に感じました。
5.名前が無い程度の能力削除
バッドエンドかと思ったが、そんなことなかったぜ!ハッピーエンドいいよ。