「今日はエイプリルフールだぜ!」
「…そうだったっけ?」
そうだったんだ………
エイプリルフールってあれよね、嘘をつく日。
嘘をついても許される日。
ふーん……
「こんばんわ」
「いらっしゃい」
世間ではエイプリルフールだというのに、こいつは自室で優雅にお茶か。
まぁ、私もついさっき聞いたんだけど。
「ねぇ、聞いた?」
「ん?」
「さっき、私の家の近くで火事があってね、魔理沙の家が燃えたのよ」
「え…」
「気の毒にね」
「そう、それは大変ね…」
なんだか本当に、悲しそうな顔だな…
嘘なんだけど、ここまで真にうけてとられると………
なんか、面白くないな。
「………」
「………」
「魔理沙は、神社に住むのかしら?」
「え?」
「だって家が燃えたんでしょ?貴女がここにきてるってことは、貴女の家じゃないんでしょ」
「………いや、その」
「………」
「嘘よ?」
「…え?」
「だから、さっきのは嘘」
「…なんでそんな嘘つくのよ!冷や冷やしたじゃない!」
………咲夜が怒鳴った。
「………はぁ」
「…………怒鳴ることないでしょ、ちょっとした冗談なんだから」
「ちょっとしてないわよ、いくら魔理沙だって家がなくなったりしたら困るに決まってるじゃない、気の毒だわ」
「なんでそんなに気にかけてるのよ」
「そういう話じゃない!」
「なによ!魔理沙のこと、そんなに大事なの!?」
「だから、そういうことを言ってるんじゃないって、何度も言わせないでよ!」
「………」
「……嫌いよ、そういう冗談」
「あんたのことも、嫌いだわ」
「え………」
「知人の不幸を、冗談でも笑話にしようとするなんて最低だわ」
「……私」
嫌い、だって。
咲夜が私のことなんて、嫌いだって。
好きだとか嫌いだとか、咲夜の口から聞くことは本当に稀なのに。
私がはじめて聞いたそれは、よりにもよって後者だった。
「………ごめん、ごめんなさい」
嫌いだなんていわれて、面と向かって座っていられない。
少し混乱してはいたけど、私はとりあえず体を動かした。
ゆっくり立ち上がって、入り口のドアノブに手をかけた。
今、ここであれはエイプリルフールの嘘だから、なんて言っても仕方ないだろう。
エイプリルフールでなくとも嘘は嘘なんだ。
私は少し、過激な嘘をついてしまった。
でも、嫌いだなんて酷いじゃない。
貴女のことが好きだから、こうして何度も何度も貴女の自室に訪れているのに。貴女だってそんな私に何度もお茶を出してくれているのに。
いきなり、そんな冷たいことを言うなんて、酷い。
ドアノブにかけた手が動かず、目頭が熱くなってくるのを感じた。
こんなところで泣いたら、なんて情けない女なんだろうと思われる、ここはぐっとこらえて、何か捨て台詞を残して………
「アリス」
「………」
「こっち向きなさい」
言われたとおり、咲夜の方を向くと。
「………」
咲夜がカレンダーを手に持っていて、今日の日付、4月1日を指差していた。
「…え?」
「貴女が悪いのよ、あんな不謹慎な嘘をつくから、からかいたくなったの」
「………」
「あっ、マズい…」
私がぼろぼろと涙をこぼしているのを見て、焦った咲夜は私を急いで抱きしめた。
「ごめん」
「………ううぅぅ」
「ごめん」
「バカ!」
「ごめんってば」
「私、貴女に嫌われたらどうしていいかわからない……」
「嫌いになんてならないから、泣かないで」
「………うん」
「…ほんと、泣き虫」
「………」
「なんでこんな子、好きになっちゃったかな」
「…悪かったわね!」
まだまだあふれる涙が止まらない、咲夜に抱きとめられて、初めてその口から好意を聞けた。
私にとって、多分これ以上の幸福は今はない。
「………そういえば、咲夜」
「落ち着いた?」
「ん………うん」
「そう」
「どうして、私が言ったことが嘘だってすぐわかったの?」
「簡単なことよ、魔理沙が午前中にここにきて、エイプリルフールだぞって宣伝してたから」
「………」
「正直私も忘れてたけど、急に意識しだしてね、そこで貴女が自信満々でそんなことをいうもんだから」
「…そっか」
「………あとは、そうね………貴女だって、友人がそんな目にあってたら気を使うでしょ?」
「まぁ、ね」
「そういうことよ」
.
嘘ですマジごめんなさい
エイプリルフールでもないのに嘘ついてすみません
咲アリ可愛いです
嘘を吐くことに慣れていなさそうな気がしますね。
さりげなくさらっと告白する辺りが瀟洒です咲夜さん。
モニターの前で必ず悶えるw
素晴らしき咲アリ!!!
三点リーダーは偶数回が良いと聞いたことがあります
咲夜さん視点というか心情も気になります
乙女シリーズは短くなるのが特徴です。
三点リーダは偶数がいいんですか……俺は1回か3回で並べてしまう癖があるようです。
なんてこったい(´^ิ౪^ิ)
チラッ