「あ、あぁ、あああああああああああああああああああ」
誰一人いないと思っていた空間に声が響く。
目の前に広がる誰一人何一つ無い真っ白な空間。瞬き一つの間にいたという事実に呆然としていたため、暫くの間それが人の声であること、つまり自分以外の誰かがいるということに気がつかなかった。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌」
と、絶叫が途絶える。
そのあまりの変わり様に慌てて声がする方へと振り向き、なぜか自分の肩が見えた。
あぁ、そうだ、確かに自分の肩だと心のどこかが納得してしまう。そして店頭のビデオカメラの前を通り過ぎる際に自分の手を振るのと同じ感覚で、上下に手を振ってみる。
と、予想通り目の前の自分の腕が上下に動き、
自分に向かって振り下ろされた。
ひっ、と内心の悲鳴とともに顔を背ける。自分の意図と異なる動きをした腕を見ようとして、
「あああああああああああああああああああ、あ」
再びの悲鳴。我に返ると悲鳴の主へと問いかけ
「 」
が、声が出ない。あ、あ、と声を出そうとするが、二度、三度と繰り返しても音すら喉からは漏れない。喉がつぶれたのかと、慌てて口を押さえようとした左手は、
ぺたり
と、硬い物を掴み、左脛を何かが掴む感触がした。その感触に声を吐き出そうとしていた喉の奥に鉛の塊がごろりと転がる。ありえないはずの感触。左手を一回、二回と動かすのに合わせて、左脛が一回、二回と掴まれる。口を押さえているはずの手が。
総毛立ちながら恐る恐る左足を見下ろそうとし、見下ろす自分を見下ろしていた。
「どうかしましたか!」
呼びかけ。我に返って、左右を確認しようと首を振り、左を向いた自分の姿が見えた。鏡だ、鏡に決まっていると自分に言い聞かせながら、ゆっくりと反対側を向く。
が、鏡の中にいる自分の首はゆっくりとこちらに向いてくるだけだった。
自分の体が自分の思い通りに動かない。その事実に耐えきれず、ついに悲鳴を上げる。
「あ、あぁ、あああああああああああああああああああ」
目を見開き、絶叫を上げる自分の姿。その表情は既に老人のものであった。そんなはずは、と両手で顔を押さえようとして
ぺたり ぺたり
ぺたり ぺたり
しかし、手は顔に触れることなく。足を、腰を、腹を、胸を、這い上がってくる感触しかしなかった。自分の手が自分のモノでは無くなっている。その事実。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌」
そして、唐突に気がつく。この悲鳴は、さっきの悲鳴は、誰のモノだったのかと。
では、では、あの悲鳴は、最後の悲鳴は
そこまで思考が達し、
「あああああああああああああああああああ、あ」
絶望のあまり頭を掻き毟ろうとした両手は、想像の通り、首を掻き毟り力尽きた。
「予測通りで、何の足しにもなりませんわ」
そう呟いて、ゆっくりと隙間は閉じていった。
誰一人いないと思っていた空間に声が響く。
目の前に広がる誰一人何一つ無い真っ白な空間。瞬き一つの間にいたという事実に呆然としていたため、暫くの間それが人の声であること、つまり自分以外の誰かがいるということに気がつかなかった。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌」
と、絶叫が途絶える。
そのあまりの変わり様に慌てて声がする方へと振り向き、なぜか自分の肩が見えた。
あぁ、そうだ、確かに自分の肩だと心のどこかが納得してしまう。そして店頭のビデオカメラの前を通り過ぎる際に自分の手を振るのと同じ感覚で、上下に手を振ってみる。
と、予想通り目の前の自分の腕が上下に動き、
自分に向かって振り下ろされた。
ひっ、と内心の悲鳴とともに顔を背ける。自分の意図と異なる動きをした腕を見ようとして、
「あああああああああああああああああああ、あ」
再びの悲鳴。我に返ると悲鳴の主へと問いかけ
「 」
が、声が出ない。あ、あ、と声を出そうとするが、二度、三度と繰り返しても音すら喉からは漏れない。喉がつぶれたのかと、慌てて口を押さえようとした左手は、
ぺたり
と、硬い物を掴み、左脛を何かが掴む感触がした。その感触に声を吐き出そうとしていた喉の奥に鉛の塊がごろりと転がる。ありえないはずの感触。左手を一回、二回と動かすのに合わせて、左脛が一回、二回と掴まれる。口を押さえているはずの手が。
総毛立ちながら恐る恐る左足を見下ろそうとし、見下ろす自分を見下ろしていた。
「どうかしましたか!」
呼びかけ。我に返って、左右を確認しようと首を振り、左を向いた自分の姿が見えた。鏡だ、鏡に決まっていると自分に言い聞かせながら、ゆっくりと反対側を向く。
が、鏡の中にいる自分の首はゆっくりとこちらに向いてくるだけだった。
自分の体が自分の思い通りに動かない。その事実に耐えきれず、ついに悲鳴を上げる。
「あ、あぁ、あああああああああああああああああああ」
目を見開き、絶叫を上げる自分の姿。その表情は既に老人のものであった。そんなはずは、と両手で顔を押さえようとして
ぺたり ぺたり
ぺたり ぺたり
しかし、手は顔に触れることなく。足を、腰を、腹を、胸を、這い上がってくる感触しかしなかった。自分の手が自分のモノでは無くなっている。その事実。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌」
そして、唐突に気がつく。この悲鳴は、さっきの悲鳴は、誰のモノだったのかと。
では、では、あの悲鳴は、最後の悲鳴は
そこまで思考が達し、
「あああああああああああああああああああ、あ」
絶望のあまり頭を掻き毟ろうとした両手は、想像の通り、首を掻き毟り力尽きた。
「予測通りで、何の足しにもなりませんわ」
そう呟いて、ゆっくりと隙間は閉じていった。
…真面目に心配してます。体調管理だけはしっかりしてください!
これではゆかりんの小腹は永遠に満たされないじゃないか