「妹が欲しい」
魔理沙の言動は往々にして唐突であり突然である。
びっくり箱の九十九神なんぞはこんな感じだと思う。一応人間だが。
秋も終わりかけな博麗神社の午後。
三人まったりお茶をしている中で、魔理沙がいきなりかつおもむろに切り出した。
「竹林にゴロゴロしてんじゃない?」
「いや紅は付かなくていい」
お茶をすすりながら返す霊夢にノンと示す。
どうでもいいがそいつは竹林「で」ゴロゴロしてるのだろう。
あんなのがゴロゴロ自生していたら火の海だ。
「いもぉと! プリンセスじゃなくていいからシスターだよ!」
「尼さんでもないからな!」とこっちを向く魔理沙。
私はそんなテンション高い物体へ優しく微笑むように生暖かい目を向け、
「そういうのは私じゃなくてあんたの両親に言いなさいね。
今は意味がわからなくてもいいのよ。その内わかるようになるから」
「それくらいは知ってるよ!」
叫んだ後、はっと顔を赤らめる魔理沙。
……ふむ。それがどういうことかを理解していて、なおかつ私に言ってくるということは、だ。
「落ち着きなさい魔理沙。私はやぶさかじゃないけど、それだと妹じゃなくて娘になってしまうでしょ」
「あんたも落ち着きなさいね」
すこん、と私の頭に針が突き立った。
ツッコミはせめて札にしてほしいところだ。
そしてやや寒々しくなった間を魔理沙はごほんと咳払いで流しつつ、
「アレだ。私は家出同然の身だし、戻って開口一番そんなこと言えるはずないだろ。
第一、仮にそうなったとしても産まれるまで約一年。
私が思ってるくらいに甘えてくるようになるまでまた数年。そいつはさすがに長すぎる」
ぜいたくなやっちゃ。ローマも妹も一日ではできんだろう。
「要するに自分より下の地位のヤツが欲しいわけね。哀しい子だわ」
「さらりとそういう発想に至るお前の方が哀しいと思うんだが。て言うか私のヒエラルキーは一番下なのか?」
お茶を飲み終えた霊夢が私の頭から針を抜き、無造作に血を拭き取りながら冷めた口調で言い放つ。
すでにかなりめんどくさそうだ。
「どっかから適当に借りてくれば? ほら、フランとか妹でしょ」
「弾幕介さず甘えられたら私じゃひとたまりもない。あいにく再生とか無理な身なんで」
チェンジ、とぼやく魔理沙。
「じゃあほら、さとりさんとこの。こいしだっけ?」
「そいつもフランと大差ないだろ。
そもそも無意識でふらふらされちゃ同じ家にいることすらおぼつかないぜ」
私の意見にまたもチェンジ、と。
「あとはえっと……。そうだ、山の神様のブドウの方。
秋……秋……、捻り……穣子?」
「無理。あいつらそろそろ引き籠もるから頼みにくい」
頭を捻って何とか思い出したらしき霊夢の提案も却下。
魔理沙にしては珍しく他人の事情を考えてる発言だ。まあ冬が近いのに引っ張り出すことも無かろう。
「どうしろっての。妹キャラなんてもういないでしょ」
「まだ最後に一人残ってるじゃないか」
「誰よ」
「お前」
びしりと魔理沙の指が私を指し示す。
「神綺の娘ってことなら夢子とかはお前の姉になるだろ。妹って立場には慣れてんじゃないのか」
「ああ。そう言えばそんな設定だったわね、あんた」
ぽん、と手を打つ霊夢。忘れてたなこいつ。
かく言う私はさすがに自分の身の上を忘れるほどの頭はしていない。
当然自身も「妹」のリストに入ってはいたが。
「いやよ。ずっと妹だったのがようやくあんた相手にお姉さんぶれてるんだもん」
ぷい、と顔を背けて拒否の意志。
魔界はパンデモニウムに住む中では末妹になる私。
夢子さんを始め、誰からも妹扱いでエラそうに威張れる相手がいなかった苦汁の日々。
お姉さんの言うことは聞きなさい的な理不尽かつ不条理な振る舞いが横行していたのだ。
曰く、「お姉さんが愛情込めて作ったんだから嫌いなものでも残さず食べなさい」とか。
曰く、「お姉ちゃん眠たいから抱き枕になりなさい」とか。迂闊に動けないのだ、アレは。
そんなよだれで枕を濡らされる毎日も幻想郷に移ったことで晴れて解放されたのである。
まあおかげで好き嫌いは無くなりましたが。
「えー、いいだろー少しぐらいさー」
「やだ」
なおもしつこく裾を掴んで上目遣いで食い下がる魔理沙。おのれこのかわいい生物め、ねだり方に慣れている。
しかしその程度で揺らぐほど私の意志はユルくはない。
「アリス、ちょい」
「あいた!」
ぎゅっと唐突に耳が引っ張られる。
何かと思えば霊夢が耳打ちしてきた。
(面倒だからちょっと話合わせてやんなさいよ。
どうせいつもの気まぐれなんだからすぐに飽きるって)
(……じゃあ霊夢がなってあげれば?)
(いやよめんどくさい。それに私ってば黒髪だし)
今さら髪の色とか言い出したよ。それ言ったら魔理沙だって昔は……おっと。
そして何やら先ほどの針をちらつかせ「誰か魔理沙と同じ金髪の心優しい少女はいないものかしら」などとぬけぬけと。
さすが博麗、マジ外道。
「……仕方ないわね。少しの間だけよ」
「ほんとか!」
ぱぁっと明るくなる魔理沙の顔。
へたれと言うなかれ。命あっての物種である。
◇ ◆ ◇ ◆
「……で、何で私の家なわけ」
「今は私たち姉妹なんだから同じ家なのは当然だろ?」
あれから神社を後にし、箒二人乗りで着いた先は私の家だった。
「それはまあ納得するとしても。何で姉が妹の家に押し掛けるのよ」
「……お前は私の家で寝泊まりしたいのか?」
「……そこは現実的なんだ」
あの家は居間に行くまでだけで埃のヴェールをかぶりそうなのでパスである。
掃除するにも一日程度では済まなそうだ。
「とりあえず夕飯の支度しちゃうわ」
「おう。そんじゃ私はその間にひとっ風呂いただいてくるかな」
「ええ、後で着替え用意しておくから」
上海に適当に指示を出しておき、私はキッチンへ。
神社に行く前にシチューの準備をしておいたので火を入れて。
あとはパンとチキンサラダでも……
「アーリスー!」
シチューをかき混ぜているといきなりお呼びが。
何だろう、シャワーが壊れでもしたかな。
脱衣所をのぞいてみると、浴室のドアの隙間から不満そうな魔理沙が顔を出していた。
「どうかした?」
「何で来ないんだよ」
「は?」
「普通、妹だったら『お姉ちゃん、背中流してあげる!』っつって許可も取らずに押し掛けて来るもんだろ!」
魔理沙が残念な人に見えてきた。怒るところなのか、それ。
「……それって妹の役なの?」
私の経験からして、普通それは姉のやることな気がする。
魔界では一人でお風呂に入っていたら誰かしら乱入してきたものだ。
よく考えたら乱入者の筆頭は姉ではなかったが。
「むぅ、どっちでもいいからお前も入れ。お互いの背中流せば問題もクリアーだろ」
そういうもんなのだろうか。
何言っても聞きそうにないので大人しく脱ぐことにする。大人の対応である。
シチューの番は上海に任せ、素っ裸になって浴室へ。
「姉より優れた妹が……」とぶつぶつつぶやいているが、体つきまで対応させんでもいいだろう。
そのうち大きくなるんじゃないの、と投げやりにフォローしておく。
それよりも、だ。
どうも両者の想定に齟齬があるようなので、この際溝を埋めておくべきではないかと思う。
「……じゃあ毎朝寝起きが悪いのを起こしに来るってのは妹の役じゃないか?」
「うーん……それは姉か妹かって言うより性格の問題じゃないのかしら」
「なら姉の嫁の位置を確保するべく近くにいるやつみんなに牽制をするってのはどうだ?」
「ごめん、突っ込む場所が多すぎてよくわかんない」
「エロいな」
「エロくない」
などとお互いの背中を流し合いながら。
お風呂から上がった頃にはシチューがほどよい感じに火が通っていて。
姉妹間じゃ「あーん」とかはしないわよねと釘を刺してみたら、スプーン持った魔理沙に舌打ちされた。
ベッドに入ると魔理沙がやたらとむくれていた。
わざとらしいほどに頬を膨らませて見事なスネっぷりだ。
理由を聞け、と全身からオーラを吹き出しているので仕方なく聞いてやる。
「何よその顔」
「なんか全然思ってたのと違うんだもん」
「……あんたが思ってるような妹ってのは幻想の存在なんじゃないの?」
「幻想郷 でそれを言うのかよ。
……いや、てことは逆に外の世界じゃそういう妹が一般的って証拠じゃないのか」
「……まあ、ごく狭い界隈では常識なのかもしれないけど」
神社から帰ってこうして寝る時間まで、終始やってることはいつもと大差なかった。
まあいつも通りにしてる私の行動が魔理沙の特殊な願望・要望に添わなかったからでもあるが。
そもそも姉と妹と言っても私は魔界ではほぼ与えられる立場だったのだし。
親愛の情は神綺様を筆頭に、上から下へ水が流れるように。一番下では人数分増えているわけだ。
「こうしてほしい」と望まずとも十分に満たされていた。と言うかあふれて溺れるくらいで。
私が何となく年下の魔理沙や霊夢の世話を焼いてしまうのもそのせいかもしれない。
にしても、結局こいつは何がしたかったのやら。
「……ん!」
「……何?」
体を横にしてこちらを向いた魔理沙が何やら訴える。が、意図がよくわからない。
「ん!」
やや広げた腕を強調するようにして、再び主張。
……ああ、なるほど。
頭を少しだけ近づけると、柔らかく抱えられるように魔理沙の腕の中に収まった。
たまにはこんなのもいいだろう。自分から求めるのも悪くない。
ここでは誰しも対等の関係なのだから。
ようやくこいつが何を求めていたのかわかったような気がする。
「おやすみ、まりさおねえちゃん」
「……うん」
さすがに恥ずかしいが、ちょうど顔は見られない位置なので問題ない。こっちからも見えないけど。
少しは歩み寄れたようなので、今日はこれでおやすみなさい。
翌朝。
目が覚めると、私と魔理沙の位置が入れ替わっていた。
何だか挟み込んでるみたいな感じになってるが息苦しくないのだろうか。
それはさておき。今日は予定も無いし、とりあえずもう一眠りすることにしよう。
──起こすのは妹の役目、とのことだし。
魔理沙の言動は往々にして唐突であり突然である。
びっくり箱の九十九神なんぞはこんな感じだと思う。一応人間だが。
秋も終わりかけな博麗神社の午後。
三人まったりお茶をしている中で、魔理沙がいきなりかつおもむろに切り出した。
「竹林にゴロゴロしてんじゃない?」
「いや紅は付かなくていい」
お茶をすすりながら返す霊夢にノンと示す。
どうでもいいがそいつは竹林「で」ゴロゴロしてるのだろう。
あんなのがゴロゴロ自生していたら火の海だ。
「いもぉと! プリンセスじゃなくていいからシスターだよ!」
「尼さんでもないからな!」とこっちを向く魔理沙。
私はそんなテンション高い物体へ優しく微笑むように生暖かい目を向け、
「そういうのは私じゃなくてあんたの両親に言いなさいね。
今は意味がわからなくてもいいのよ。その内わかるようになるから」
「それくらいは知ってるよ!」
叫んだ後、はっと顔を赤らめる魔理沙。
……ふむ。それがどういうことかを理解していて、なおかつ私に言ってくるということは、だ。
「落ち着きなさい魔理沙。私はやぶさかじゃないけど、それだと妹じゃなくて娘になってしまうでしょ」
「あんたも落ち着きなさいね」
すこん、と私の頭に針が突き立った。
ツッコミはせめて札にしてほしいところだ。
そしてやや寒々しくなった間を魔理沙はごほんと咳払いで流しつつ、
「アレだ。私は家出同然の身だし、戻って開口一番そんなこと言えるはずないだろ。
第一、仮にそうなったとしても産まれるまで約一年。
私が思ってるくらいに甘えてくるようになるまでまた数年。そいつはさすがに長すぎる」
ぜいたくなやっちゃ。ローマも妹も一日ではできんだろう。
「要するに自分より下の地位のヤツが欲しいわけね。哀しい子だわ」
「さらりとそういう発想に至るお前の方が哀しいと思うんだが。て言うか私のヒエラルキーは一番下なのか?」
お茶を飲み終えた霊夢が私の頭から針を抜き、無造作に血を拭き取りながら冷めた口調で言い放つ。
すでにかなりめんどくさそうだ。
「どっかから適当に借りてくれば? ほら、フランとか妹でしょ」
「弾幕介さず甘えられたら私じゃひとたまりもない。あいにく再生とか無理な身なんで」
チェンジ、とぼやく魔理沙。
「じゃあほら、さとりさんとこの。こいしだっけ?」
「そいつもフランと大差ないだろ。
そもそも無意識でふらふらされちゃ同じ家にいることすらおぼつかないぜ」
私の意見にまたもチェンジ、と。
「あとはえっと……。そうだ、山の神様のブドウの方。
秋……秋……、捻り……穣子?」
「無理。あいつらそろそろ引き籠もるから頼みにくい」
頭を捻って何とか思い出したらしき霊夢の提案も却下。
魔理沙にしては珍しく他人の事情を考えてる発言だ。まあ冬が近いのに引っ張り出すことも無かろう。
「どうしろっての。妹キャラなんてもういないでしょ」
「まだ最後に一人残ってるじゃないか」
「誰よ」
「お前」
びしりと魔理沙の指が私を指し示す。
「神綺の娘ってことなら夢子とかはお前の姉になるだろ。妹って立場には慣れてんじゃないのか」
「ああ。そう言えばそんな設定だったわね、あんた」
ぽん、と手を打つ霊夢。忘れてたなこいつ。
かく言う私はさすがに自分の身の上を忘れるほどの頭はしていない。
当然自身も「妹」のリストに入ってはいたが。
「いやよ。ずっと妹だったのがようやくあんた相手にお姉さんぶれてるんだもん」
ぷい、と顔を背けて拒否の意志。
魔界はパンデモニウムに住む中では末妹になる私。
夢子さんを始め、誰からも妹扱いでエラそうに威張れる相手がいなかった苦汁の日々。
お姉さんの言うことは聞きなさい的な理不尽かつ不条理な振る舞いが横行していたのだ。
曰く、「お姉さんが愛情込めて作ったんだから嫌いなものでも残さず食べなさい」とか。
曰く、「お姉ちゃん眠たいから抱き枕になりなさい」とか。迂闊に動けないのだ、アレは。
そんなよだれで枕を濡らされる毎日も幻想郷に移ったことで晴れて解放されたのである。
まあおかげで好き嫌いは無くなりましたが。
「えー、いいだろー少しぐらいさー」
「やだ」
なおもしつこく裾を掴んで上目遣いで食い下がる魔理沙。おのれこのかわいい生物め、ねだり方に慣れている。
しかしその程度で揺らぐほど私の意志はユルくはない。
「アリス、ちょい」
「あいた!」
ぎゅっと唐突に耳が引っ張られる。
何かと思えば霊夢が耳打ちしてきた。
(面倒だからちょっと話合わせてやんなさいよ。
どうせいつもの気まぐれなんだからすぐに飽きるって)
(……じゃあ霊夢がなってあげれば?)
(いやよめんどくさい。それに私ってば黒髪だし)
今さら髪の色とか言い出したよ。それ言ったら魔理沙だって昔は……おっと。
そして何やら先ほどの針をちらつかせ「誰か魔理沙と同じ金髪の心優しい少女はいないものかしら」などとぬけぬけと。
さすが博麗、マジ外道。
「……仕方ないわね。少しの間だけよ」
「ほんとか!」
ぱぁっと明るくなる魔理沙の顔。
へたれと言うなかれ。命あっての物種である。
◇ ◆ ◇ ◆
「……で、何で私の家なわけ」
「今は私たち姉妹なんだから同じ家なのは当然だろ?」
あれから神社を後にし、箒二人乗りで着いた先は私の家だった。
「それはまあ納得するとしても。何で姉が妹の家に押し掛けるのよ」
「……お前は私の家で寝泊まりしたいのか?」
「……そこは現実的なんだ」
あの家は居間に行くまでだけで埃のヴェールをかぶりそうなのでパスである。
掃除するにも一日程度では済まなそうだ。
「とりあえず夕飯の支度しちゃうわ」
「おう。そんじゃ私はその間にひとっ風呂いただいてくるかな」
「ええ、後で着替え用意しておくから」
上海に適当に指示を出しておき、私はキッチンへ。
神社に行く前にシチューの準備をしておいたので火を入れて。
あとはパンとチキンサラダでも……
「アーリスー!」
シチューをかき混ぜているといきなりお呼びが。
何だろう、シャワーが壊れでもしたかな。
脱衣所をのぞいてみると、浴室のドアの隙間から不満そうな魔理沙が顔を出していた。
「どうかした?」
「何で来ないんだよ」
「は?」
「普通、妹だったら『お姉ちゃん、背中流してあげる!』っつって許可も取らずに押し掛けて来るもんだろ!」
魔理沙が残念な人に見えてきた。怒るところなのか、それ。
「……それって妹の役なの?」
私の経験からして、普通それは姉のやることな気がする。
魔界では一人でお風呂に入っていたら誰かしら乱入してきたものだ。
よく考えたら乱入者の筆頭は姉ではなかったが。
「むぅ、どっちでもいいからお前も入れ。お互いの背中流せば問題もクリアーだろ」
そういうもんなのだろうか。
何言っても聞きそうにないので大人しく脱ぐことにする。大人の対応である。
シチューの番は上海に任せ、素っ裸になって浴室へ。
「姉より優れた妹が……」とぶつぶつつぶやいているが、体つきまで対応させんでもいいだろう。
そのうち大きくなるんじゃないの、と投げやりにフォローしておく。
それよりも、だ。
どうも両者の想定に齟齬があるようなので、この際溝を埋めておくべきではないかと思う。
「……じゃあ毎朝寝起きが悪いのを起こしに来るってのは妹の役じゃないか?」
「うーん……それは姉か妹かって言うより性格の問題じゃないのかしら」
「なら姉の嫁の位置を確保するべく近くにいるやつみんなに牽制をするってのはどうだ?」
「ごめん、突っ込む場所が多すぎてよくわかんない」
「エロいな」
「エロくない」
などとお互いの背中を流し合いながら。
お風呂から上がった頃にはシチューがほどよい感じに火が通っていて。
姉妹間じゃ「あーん」とかはしないわよねと釘を刺してみたら、スプーン持った魔理沙に舌打ちされた。
ベッドに入ると魔理沙がやたらとむくれていた。
わざとらしいほどに頬を膨らませて見事なスネっぷりだ。
理由を聞け、と全身からオーラを吹き出しているので仕方なく聞いてやる。
「何よその顔」
「なんか全然思ってたのと違うんだもん」
「……あんたが思ってるような妹ってのは幻想の存在なんじゃないの?」
「
……いや、てことは逆に外の世界じゃそういう妹が一般的って証拠じゃないのか」
「……まあ、ごく狭い界隈では常識なのかもしれないけど」
神社から帰ってこうして寝る時間まで、終始やってることはいつもと大差なかった。
まあいつも通りにしてる私の行動が魔理沙の特殊な願望・要望に添わなかったからでもあるが。
そもそも姉と妹と言っても私は魔界ではほぼ与えられる立場だったのだし。
親愛の情は神綺様を筆頭に、上から下へ水が流れるように。一番下では人数分増えているわけだ。
「こうしてほしい」と望まずとも十分に満たされていた。と言うかあふれて溺れるくらいで。
私が何となく年下の魔理沙や霊夢の世話を焼いてしまうのもそのせいかもしれない。
にしても、結局こいつは何がしたかったのやら。
「……ん!」
「……何?」
体を横にしてこちらを向いた魔理沙が何やら訴える。が、意図がよくわからない。
「ん!」
やや広げた腕を強調するようにして、再び主張。
……ああ、なるほど。
頭を少しだけ近づけると、柔らかく抱えられるように魔理沙の腕の中に収まった。
たまにはこんなのもいいだろう。自分から求めるのも悪くない。
ここでは誰しも対等の関係なのだから。
ようやくこいつが何を求めていたのかわかったような気がする。
「おやすみ、まりさおねえちゃん」
「……うん」
さすがに恥ずかしいが、ちょうど顔は見られない位置なので問題ない。こっちからも見えないけど。
少しは歩み寄れたようなので、今日はこれでおやすみなさい。
翌朝。
目が覚めると、私と魔理沙の位置が入れ替わっていた。
何だか挟み込んでるみたいな感じになってるが息苦しくないのだろうか。
それはさておき。今日は予定も無いし、とりあえずもう一眠りすることにしよう。
──起こすのは妹の役目、とのことだし。
妹魔理沙とか素晴らしすぎてヤバい。甘える魔理沙かわいい。
いや、それもありだな…
とっても素晴らしい!本当の幻想郷はここにあった!!
そういうことですね?
ママですね分かります
デレると凄そうだが。
あと「まあ」を少し削減すると読みやすくなると思う
あと挟み込んで(ry
だからかわいいですが。