この話は、作品集52、『神様だって恋する』の続き件、『巫女さんだって恋をする』の裏話になっております。
もし宜しければ、そちらを先にお読み頂けると大変嬉しく思います。
これは忌々しき事体だ。
早苗が飛び出して、そろそろ半日が過ぎようとしている。
今だその足取りすら掴めていない現状に、私はついしかめっ面になってしまう。
何とかせねば……
何とかせねば……
そう思うのだが…………どうしても台所に立つ諏訪子が気になって仕方ない。
誘惑に負けて、居間からちらっと流し目で台所を覗く。
「よいっ……しょ!」
流し台の前で一生懸命に鍋をガスコンロに移す諏訪子の姿が見えた。
大事なのは丈の低さ。
基本早苗が立つ事を想定されて作られた我が家の台所は諏訪子にはどうしても高い。
ゆえに届かない背を補うために、彼女は度々背伸びをする必要に迫られる。
チラ。
するとどうだろう。
諏訪子の短いスカートから、見えてはいけないモノがその度に顔を覗かせているのである。
──純白だった。
(いかんいかん! 煩悩は捨てるんだ! こんなことでは何時になっても早苗は帰ってこないぞ!)
己を戒めようと、眉間の皺を更にきつく寄せる。
──が。
「んっと……!」
チラ。
ぐはぁあああああ!!!
私はその場でひとりごろごろと畳の上で悶絶した。
「す、諏訪子……やっぱり私も手伝うよ、指示をおくれ。」
「ん? そう? じゃあねぇ──」
流石に耐えられなくなったので、いっそ手伝う事にした。
「第一回! 早苗捜索会議を始める!」
「ええぇ~~」
二人だけで夕飯を囲みながら私はちゃぶ台の前でそう高らかに宣言した。
が、諏訪子は思いっきり不満そうな声をあげた。
「早苗なら大丈夫だよ。気持ちの整理が着いたら帰ってくるって……それより──」
諏訪子は言いながら私のすぐ隣まで擦り寄ってくると、私の二の腕に自らの腕を絡ませてきた!
こ、これは一体……!?
「ほら……今日は在り合わせの物しかないけどさ。明日は精のつくもの作ってあげるからさ……。」
「ぶっ……!?」
挙句にはそんなこともまで言い出す諏訪子。
どうした? キャラが違わなくないか!?
積極的な諏訪子に対し、私は早くもたじたじだ。
(早苗……早く帰ってきておくれ……)
もちろん諏訪子の好意は嬉しい。
ていうか今朝は自分からキスを迫ったくらいだが、私はあの時後悔したのだ。
早苗がもう少し大人になるまで待つべきだったのだ、と。
今だって何時帰ってくるかも知れない早苗に、私は正直ビクビクしているのだ……。
──諏訪子には悪いが、此処は我慢せねば……!
「ほらぁ~、折角作ったんだから……食・べ・て♪」
「い、イエスッ、サァー!」
私の自我崩壊するのが先か……はたまた早苗が帰ってくるのが先か……。
私は只、神に祈るしかないのであった……。
──あれ? 神様って私じゃん!
……駄目かもしれない。
その後の諏訪子からの追求に一切の容赦は含まれなかったと断言しよう。
翌日から彼女は台所に立つと決まって裸にエプロンだった。
「神奈子も……こういうの……好き?」
「ぶはーーーー!!!」
──正直、反則だと思った。
風呂に入れば、必ず背中を流しに来た。
「アノ……背中にアタタカナフクラミがアタッテマスが……?」
「へへへ……当ててるの♪」
──スク水から映える白い肌が妙に艶かしい……。
夜這いには毎晩やってきた。
「……………………。」
「ねぇ……神奈子……寝たふりなんてしてないでさ……私と良いこと……しようよ……」
──耳元に掛かる熱い吐息と服を弄る手の動きが尋常じゃないほどにヤバかった……。
絶望的だと思われていたそんな諏訪子の誘惑から、私はなんと一週間も持った。
しかしそれもギリギリのところで保っているに過ぎない……。
事体は最早一刻の猶予も許さないところまで来ているのだ……!
「『 シキュウ サナエヲ カエサレタシ 』よし、これで良いだろう……!」
私だってただ流されていた訳ではない。
ついに早苗の所在を掴む事に成功したのだ。
──早苗は今、博麗神社に囚われているっ!!!
だから封書をして諸悪の権化たる博麗霊夢に(責任の押し付け)警告を促した。
が、やつはそんな事で素直に言う事を聞くような玉ではないのは分りきっている。
なんせ早苗は可愛くて良い子だからな。誰だって傍に置いておきたくなるのも致し方ない……。
しかし! 早苗は私のものだ! 誰にも渡さんっ!!
──決戦は、今宵となるだろう……。
「ねぇ……本当に行くの?」
心配そうに私を覗っている諏訪子の出で立ちは、もはやなじみの裸エプロン。手にはお玉まで装備されている。
絶賛クッキング中だ。
「ああ……早苗は必ず連れ戻してくる……!」
立ち上がり、居間から出て行こうとする私を諏訪子はそっと呼び止めた。
背中越しにしな垂れかかってくる諏訪子からは、どんな表情も読み取れない。
「ねぇ……考え直して? 早苗は……早苗は今自分の幸せを見つけたんだよ。それを壊す権利なんて私たちにもないよ──。」
信じられないその言葉に私は怒りで我を忘れて、諏訪子の華奢な両肩に掴みかかった。
──諏訪子はとても悲しそうな顔をしていた。
それを見て、カッとなった自分が嘘のように消えていった……が、納得なんて出来なかった。
「それじゃあ諏訪子は……このまま早苗が戻ってこなくても良いって言うのかい!?」
私には考えられなかった。
早苗が居ての守矢神社だと、私は本当に思っているからだ。
以前、私は『神社は巫女の為にあるのではない』とあの霊夢に言った事が有る。
しかし同時に、『神は人の為にこそある』と思っている。
ならば私達に一番強い信仰をくれる早苗の為にこそ、我々はあるべきなのだ。
──私たちの勝手な都合で連れてきた、せめてもの罪滅ぼしに。
「早苗が望むなら……私は一番それが正しいと思う。」
どうやら、話は平行線を辿りそうだ。
──すまない、諏訪子。
「……え?」
もはや言葉など要らない。
掴んだ肩をそのまま強く引き寄せ──私は諏訪子の唇を強引に奪った。
「っ──!」
私が瞳を閉じるまえに、驚きに目を見開いた諏訪子の顔が見えた。
しかし彼女は抵抗するでもなく、ただ私にされるがままだった。
「あ……。」
やがて力を失った諏訪子は、崩れ落ちるように私にもたれ掛ってきた。
諏訪子はどこかうっとりとした表情で固まったまま、目の焦点を完全に失っていた。
「…………未亡人には、ちょっと刺激が強すぎたかね。」
もちろん確信犯なのだが、今はなりふり構ってなど居られない。
すぐにでも、早苗の元に向かわねば……!
霊夢に向かって、眼を飛ばしたまでは良かったが、思わぬ事態が起きた。
妖怪の賢者、八雲紫の登場である。
最初は場を収めにでもやってきたのかと思いきや、そうではなく、なんと私の早苗に向かって思いっきり殺気を飛ばしていた。
どうやら、早苗が霊夢を誑かしたと、本気で考えて要るようだ。
愚かな……私はそう思った。真実を見失った彼女に同情すら覚えるほどに。
しかし事体は深刻だ。
三人の実力者がぶつかり合えば、早苗も無事では済まないだろう……。
しかも勘違いとはいえ、八雲紫は早苗を敵視している。
私は一体どうすれば……!
手を出しあぐね、されども引く事もできない。
私は完全な手詰まりを感じていたが、なんとあのにっくき霊夢がこの状況を打破せんと、動き出した。
「早苗……今から山に帰んなさい。」
私は耳を疑った──。
それは早苗も同じだったらしく彼女は戸惑いを隠せずにいたが、その後の霊夢の説得に応じ、私たちの元に帰ってくることになった。
(早苗の身を、優先したか……。)
敵ながら、あっぱれだった。
「すまない……。」
何はともあれ、こうして私たちの問題は解決した──かに思えた。
「ねぇ…………神奈子…………?」
ビクッ!!
分社を通して戻ってきた私を出迎えたのは、妙に殺気立った諏訪子だった。
いや、殺気というのも生易しい……兎に角、肉食獣を思わせるその気迫に、私は蛇に睨まれた蛙も同然だった。
あれ? 蛇は私じゃなかった?
「諏訪子……お、落ち着いて……! そ、そうだ。早苗だけど──」
「うるさいっ!」
「ひっ!?」
諏訪子の一喝に私は腰を抜かして、その場に尻餅をついた。
そんな私を上から見下ろしながら、徐々ににじり寄って来る諏訪子……。
「早苗、早苗って……この一週間、私があんなにも誘ってたのに……神奈子はそればっかり……。」
「いや、だってそれは仕方な──」
「言い訳は聞きたくない!」
どうやら我慢してたのは私だけではなかったようだ。
そうとう鬱憤が溜まっていたのか、ここまで怒る諏訪子を久々に見た。
「き、聞いてくれ諏訪子! 早苗のことはもう良いんだ!」
そう、時期に彼女は帰ってくる。
もう問題は解決したのだ。これで全て元通り──
「本当!? 神奈子……漸く分ってくれたんだね?」
「へ? いや何を言って……? 痛っ!」
私は知らないうちに後退っていたようで、部屋の壁にぶつかってしまった。
そして私の意識が一瞬後ろにいった隙に、なんと諏訪子は私に馬乗りになってきた。
「ねぇ……神奈子……私、もう我慢できないよ……?」
え~と、何がでしょうか?
そんな事はもちろん、怖くて聞けないが──。
どうやら事情を理解してくれてない諏訪子。
早くなんとかしないと早苗が戻ってきてしまう……!
「ちょっ、ちょっとタンマ! 諏訪子! 頼むから私の話を──」
「分ってる……なにも言わなくても良いよ……神奈子の愛が海よりも深いってこと、私は分ってる。」
ポッ。
そういって顔を赤くする諏訪子は可愛かったが、でも全然分っちゃくれていねぇ!
「だからほら……私の愛も、確かめてみたいでしょう?」
更には肩に掛かっているエプロンを自ら外す諏訪子。
ゴクリッ……。
まだ背中の結び目が解かれてないため、前が全部見えるなんてことにはならなかったが、
それでも諏訪子の控えめな胸がチラリと見えそうになっている。
これはまずい……!
極上のチラリズムを前に私の理性が風前の灯火だったが、なんとかして持ちこたえる。
そう、私にだってこの後の展開が読める。早くこの場何とかせねば今に早苗が帰ってきて──
ガラッ!
「神奈子様! 諏訪子様! 不肖、東風谷早苗! お恥ずかしながら戻ってまいりまし……た……。」
お恥ずかしいのはこっちです、ハイ。
完全に一週間前と同じ状況に、やはり早苗はその場で固まってしまった。
無論、私たちもだが──。
「…………逆。」
「「逆……?」」
早苗が呟いた言葉の意味が、すぐに理解できなかった。
しかし諏訪子と二人、声を揃えて口出し、更にはお互いの立ち位置をよくよく確認する事で漸く合点がいった。
──成る程、確かにあの時は私が上でした。
って、悠長にそんなことを考えてる場合ではないっ!
「さ、早苗!?」
「良いんです……あの……すいません、お邪魔でしたね……ご、ごゆっくりどうぞ……」
とっても素敵な心遣いをして下さった早苗さんは、顔を真っ赤になされて居間から出て行かれた。
「早苗の許可も出た事だし……それじゃあ早速──」
まぁそういう流れになるよね、今のは。
怪しく目を光らせる諏訪子に、私はもうどうとでもなれという気持ちで身を任せた。
──今夜は眠れそうも無い。
もし宜しければ、そちらを先にお読み頂けると大変嬉しく思います。
これは忌々しき事体だ。
早苗が飛び出して、そろそろ半日が過ぎようとしている。
今だその足取りすら掴めていない現状に、私はついしかめっ面になってしまう。
何とかせねば……
何とかせねば……
そう思うのだが…………どうしても台所に立つ諏訪子が気になって仕方ない。
誘惑に負けて、居間からちらっと流し目で台所を覗く。
「よいっ……しょ!」
流し台の前で一生懸命に鍋をガスコンロに移す諏訪子の姿が見えた。
大事なのは丈の低さ。
基本早苗が立つ事を想定されて作られた我が家の台所は諏訪子にはどうしても高い。
ゆえに届かない背を補うために、彼女は度々背伸びをする必要に迫られる。
チラ。
するとどうだろう。
諏訪子の短いスカートから、見えてはいけないモノがその度に顔を覗かせているのである。
──純白だった。
(いかんいかん! 煩悩は捨てるんだ! こんなことでは何時になっても早苗は帰ってこないぞ!)
己を戒めようと、眉間の皺を更にきつく寄せる。
──が。
「んっと……!」
チラ。
ぐはぁあああああ!!!
私はその場でひとりごろごろと畳の上で悶絶した。
「す、諏訪子……やっぱり私も手伝うよ、指示をおくれ。」
「ん? そう? じゃあねぇ──」
流石に耐えられなくなったので、いっそ手伝う事にした。
「第一回! 早苗捜索会議を始める!」
「ええぇ~~」
二人だけで夕飯を囲みながら私はちゃぶ台の前でそう高らかに宣言した。
が、諏訪子は思いっきり不満そうな声をあげた。
「早苗なら大丈夫だよ。気持ちの整理が着いたら帰ってくるって……それより──」
諏訪子は言いながら私のすぐ隣まで擦り寄ってくると、私の二の腕に自らの腕を絡ませてきた!
こ、これは一体……!?
「ほら……今日は在り合わせの物しかないけどさ。明日は精のつくもの作ってあげるからさ……。」
「ぶっ……!?」
挙句にはそんなこともまで言い出す諏訪子。
どうした? キャラが違わなくないか!?
積極的な諏訪子に対し、私は早くもたじたじだ。
(早苗……早く帰ってきておくれ……)
もちろん諏訪子の好意は嬉しい。
ていうか今朝は自分からキスを迫ったくらいだが、私はあの時後悔したのだ。
早苗がもう少し大人になるまで待つべきだったのだ、と。
今だって何時帰ってくるかも知れない早苗に、私は正直ビクビクしているのだ……。
──諏訪子には悪いが、此処は我慢せねば……!
「ほらぁ~、折角作ったんだから……食・べ・て♪」
「い、イエスッ、サァー!」
私の自我崩壊するのが先か……はたまた早苗が帰ってくるのが先か……。
私は只、神に祈るしかないのであった……。
──あれ? 神様って私じゃん!
……駄目かもしれない。
その後の諏訪子からの追求に一切の容赦は含まれなかったと断言しよう。
翌日から彼女は台所に立つと決まって裸にエプロンだった。
「神奈子も……こういうの……好き?」
「ぶはーーーー!!!」
──正直、反則だと思った。
風呂に入れば、必ず背中を流しに来た。
「アノ……背中にアタタカナフクラミがアタッテマスが……?」
「へへへ……当ててるの♪」
──スク水から映える白い肌が妙に艶かしい……。
夜這いには毎晩やってきた。
「……………………。」
「ねぇ……神奈子……寝たふりなんてしてないでさ……私と良いこと……しようよ……」
──耳元に掛かる熱い吐息と服を弄る手の動きが尋常じゃないほどにヤバかった……。
絶望的だと思われていたそんな諏訪子の誘惑から、私はなんと一週間も持った。
しかしそれもギリギリのところで保っているに過ぎない……。
事体は最早一刻の猶予も許さないところまで来ているのだ……!
「『 シキュウ サナエヲ カエサレタシ 』よし、これで良いだろう……!」
私だってただ流されていた訳ではない。
ついに早苗の所在を掴む事に成功したのだ。
──早苗は今、博麗神社に囚われているっ!!!
だから封書をして諸悪の権化たる博麗霊夢に(責任の押し付け)警告を促した。
が、やつはそんな事で素直に言う事を聞くような玉ではないのは分りきっている。
なんせ早苗は可愛くて良い子だからな。誰だって傍に置いておきたくなるのも致し方ない……。
しかし! 早苗は私のものだ! 誰にも渡さんっ!!
──決戦は、今宵となるだろう……。
「ねぇ……本当に行くの?」
心配そうに私を覗っている諏訪子の出で立ちは、もはやなじみの裸エプロン。手にはお玉まで装備されている。
絶賛クッキング中だ。
「ああ……早苗は必ず連れ戻してくる……!」
立ち上がり、居間から出て行こうとする私を諏訪子はそっと呼び止めた。
背中越しにしな垂れかかってくる諏訪子からは、どんな表情も読み取れない。
「ねぇ……考え直して? 早苗は……早苗は今自分の幸せを見つけたんだよ。それを壊す権利なんて私たちにもないよ──。」
信じられないその言葉に私は怒りで我を忘れて、諏訪子の華奢な両肩に掴みかかった。
──諏訪子はとても悲しそうな顔をしていた。
それを見て、カッとなった自分が嘘のように消えていった……が、納得なんて出来なかった。
「それじゃあ諏訪子は……このまま早苗が戻ってこなくても良いって言うのかい!?」
私には考えられなかった。
早苗が居ての守矢神社だと、私は本当に思っているからだ。
以前、私は『神社は巫女の為にあるのではない』とあの霊夢に言った事が有る。
しかし同時に、『神は人の為にこそある』と思っている。
ならば私達に一番強い信仰をくれる早苗の為にこそ、我々はあるべきなのだ。
──私たちの勝手な都合で連れてきた、せめてもの罪滅ぼしに。
「早苗が望むなら……私は一番それが正しいと思う。」
どうやら、話は平行線を辿りそうだ。
──すまない、諏訪子。
「……え?」
もはや言葉など要らない。
掴んだ肩をそのまま強く引き寄せ──私は諏訪子の唇を強引に奪った。
「っ──!」
私が瞳を閉じるまえに、驚きに目を見開いた諏訪子の顔が見えた。
しかし彼女は抵抗するでもなく、ただ私にされるがままだった。
「あ……。」
やがて力を失った諏訪子は、崩れ落ちるように私にもたれ掛ってきた。
諏訪子はどこかうっとりとした表情で固まったまま、目の焦点を完全に失っていた。
「…………未亡人には、ちょっと刺激が強すぎたかね。」
もちろん確信犯なのだが、今はなりふり構ってなど居られない。
すぐにでも、早苗の元に向かわねば……!
霊夢に向かって、眼を飛ばしたまでは良かったが、思わぬ事態が起きた。
妖怪の賢者、八雲紫の登場である。
最初は場を収めにでもやってきたのかと思いきや、そうではなく、なんと私の早苗に向かって思いっきり殺気を飛ばしていた。
どうやら、早苗が霊夢を誑かしたと、本気で考えて要るようだ。
愚かな……私はそう思った。真実を見失った彼女に同情すら覚えるほどに。
しかし事体は深刻だ。
三人の実力者がぶつかり合えば、早苗も無事では済まないだろう……。
しかも勘違いとはいえ、八雲紫は早苗を敵視している。
私は一体どうすれば……!
手を出しあぐね、されども引く事もできない。
私は完全な手詰まりを感じていたが、なんとあのにっくき霊夢がこの状況を打破せんと、動き出した。
「早苗……今から山に帰んなさい。」
私は耳を疑った──。
それは早苗も同じだったらしく彼女は戸惑いを隠せずにいたが、その後の霊夢の説得に応じ、私たちの元に帰ってくることになった。
(早苗の身を、優先したか……。)
敵ながら、あっぱれだった。
「すまない……。」
何はともあれ、こうして私たちの問題は解決した──かに思えた。
「ねぇ…………神奈子…………?」
ビクッ!!
分社を通して戻ってきた私を出迎えたのは、妙に殺気立った諏訪子だった。
いや、殺気というのも生易しい……兎に角、肉食獣を思わせるその気迫に、私は蛇に睨まれた蛙も同然だった。
あれ? 蛇は私じゃなかった?
「諏訪子……お、落ち着いて……! そ、そうだ。早苗だけど──」
「うるさいっ!」
「ひっ!?」
諏訪子の一喝に私は腰を抜かして、その場に尻餅をついた。
そんな私を上から見下ろしながら、徐々ににじり寄って来る諏訪子……。
「早苗、早苗って……この一週間、私があんなにも誘ってたのに……神奈子はそればっかり……。」
「いや、だってそれは仕方な──」
「言い訳は聞きたくない!」
どうやら我慢してたのは私だけではなかったようだ。
そうとう鬱憤が溜まっていたのか、ここまで怒る諏訪子を久々に見た。
「き、聞いてくれ諏訪子! 早苗のことはもう良いんだ!」
そう、時期に彼女は帰ってくる。
もう問題は解決したのだ。これで全て元通り──
「本当!? 神奈子……漸く分ってくれたんだね?」
「へ? いや何を言って……? 痛っ!」
私は知らないうちに後退っていたようで、部屋の壁にぶつかってしまった。
そして私の意識が一瞬後ろにいった隙に、なんと諏訪子は私に馬乗りになってきた。
「ねぇ……神奈子……私、もう我慢できないよ……?」
え~と、何がでしょうか?
そんな事はもちろん、怖くて聞けないが──。
どうやら事情を理解してくれてない諏訪子。
早くなんとかしないと早苗が戻ってきてしまう……!
「ちょっ、ちょっとタンマ! 諏訪子! 頼むから私の話を──」
「分ってる……なにも言わなくても良いよ……神奈子の愛が海よりも深いってこと、私は分ってる。」
ポッ。
そういって顔を赤くする諏訪子は可愛かったが、でも全然分っちゃくれていねぇ!
「だからほら……私の愛も、確かめてみたいでしょう?」
更には肩に掛かっているエプロンを自ら外す諏訪子。
ゴクリッ……。
まだ背中の結び目が解かれてないため、前が全部見えるなんてことにはならなかったが、
それでも諏訪子の控えめな胸がチラリと見えそうになっている。
これはまずい……!
極上のチラリズムを前に私の理性が風前の灯火だったが、なんとかして持ちこたえる。
そう、私にだってこの後の展開が読める。早くこの場何とかせねば今に早苗が帰ってきて──
ガラッ!
「神奈子様! 諏訪子様! 不肖、東風谷早苗! お恥ずかしながら戻ってまいりまし……た……。」
お恥ずかしいのはこっちです、ハイ。
完全に一週間前と同じ状況に、やはり早苗はその場で固まってしまった。
無論、私たちもだが──。
「…………逆。」
「「逆……?」」
早苗が呟いた言葉の意味が、すぐに理解できなかった。
しかし諏訪子と二人、声を揃えて口出し、更にはお互いの立ち位置をよくよく確認する事で漸く合点がいった。
──成る程、確かにあの時は私が上でした。
って、悠長にそんなことを考えてる場合ではないっ!
「さ、早苗!?」
「良いんです……あの……すいません、お邪魔でしたね……ご、ごゆっくりどうぞ……」
とっても素敵な心遣いをして下さった早苗さんは、顔を真っ赤になされて居間から出て行かれた。
「早苗の許可も出た事だし……それじゃあ早速──」
まぁそういう流れになるよね、今のは。
怪しく目を光らせる諏訪子に、私はもうどうとでもなれという気持ちで身を任せた。
──今夜は眠れそうも無い。
諏訪子様破壊力高すぎる…
読み進めていったらなんて理想的な展開でと思ったらまさか!!!
ありがとうございます。ありがとうございます。これほど嬉しかったことはありません。
しかし神奈子様、こんな淫乱幼な妻との新婚生活に一週間も耐えるなんて勿体無い!!
これだけ積極的にしてもらって何を我慢する必要がある!!!それでも男か!!代わってくれ!!!
今後の早苗さんの行動が気になる