俺設定有りです。
一年を通して特別な日というは、誰にでも何回かあるものだと思う。誕生日だとか、彼氏と付き合った日だとか。そういう嬉しい特別な日は記念日として、わくわくした気分にさせてくれる。
今日はとてもそんな気分になれるような特別な日じゃないけれど、それでも私はどこか嬉しくて朝早いうちから家を出るのだ。
今日は、私達四姉妹全員の誕生日であり、妹の命日でもあるのだから。
1、私達の音は届いていますか?
明け方の雲の上というのはとても神秘的で、美術の方面に疎い私にはよく分からないのだけど、ただ何となく絵画みたいだなと思わせるようなそんな景色だった。
晴れてよかったなーとか思いながら、私はそそくさと楽器の準備を始める。普段から楽器の手入れは欠かさないけれど、今日はいつもの倍は注意してチューニングをする。キーボードは自分の霊力を使って隅々までチェック。一緒に持ってきたドラムはチューニングキーを使って、これまた丁寧に調整を行う。
いつもの私達のようにどんちゃん騒ぎをするわけではないけれど、毎年今日という日が楽しみで仕方がない。今も気づけば鼻歌なんか歌っている。
この日は死んでしまった妹のレイラに、私達の年間報告をすることになっている。これはレイラが死んでしまったその日からの習慣で、毎年この日に行うのだ。
年間報告と言っても言葉で伝えるわけではない。私達はミュージシャンだから、音楽で伝えるのだ。それも決まって毎年同じ音楽。レイラが私達騒霊を生み出してくれて最初に教えてくれた曲。幻想郷ではもはや定番となりつつあるこの曲を、出来るだけレイラに聞こえるように雲よりも高いこの位置で演奏するのだ。私達は楽しかったことや大変だったこと、ちょっとした色恋沙汰(大体メル姉。そしてたまに元カレに対する恨みの念も混ざるからこのときは本当に大変なのだ。メル姉怖い)の話などをレイラに聞いてもらうように演奏する。
実際に音がレイラに届いているわけではないだろうけど、それでもなんだか優しく笑って、時には呆れて全部聞いてくれている気がして、その優しさが大好きなのだ。
それと、これは妖夢から聞いた話なのだが、この演奏はいつも幻想郷中に届いていて、沢山の人がこの日の朝は空を見上げているらしい。あの西行寺もこの日は必ず早起きをして聞いてくれているんだとか。
音楽をやる身である私から見れば、幻想郷中の人に聞いてもらえるということも相まってこの日の演奏が大好きなのである。
今年一年、幻想郷では温泉が沸いたり、大地震が起きたり、大きな船が幻想郷に来たりしたね、うん。あとそうだなぁ。めぼしい事件はそんなに無かったけど、大きな船が来たときくらいに紅魔館が謎の大爆発をしたとか、八雲が気まぐれで大宴会を開いたとかそんなぐらいだったかな。
ルナ姉はどうだったかな。相変わらず眠そうな顔して切れ味のあるボケをかましていたな。あ、そういえば料理が格段においしくなったね。妖夢に料理を教わっているらしい。そのまま掃除の仕方も教わってきて、家の掃除も私の分までやってくれないかなぁ。そういえば寝言で「レイラ……」って言うのが今年も直らなかった。サバサバしているフリをして、実は一番甘えん坊だったもんね。まだたまにずどーんと暗くなるから、しっかり決別できてないんじゃないかなぁって心配になっちゃうなぁ。
メル姉は相変わらずハッピーな乙女です。もう常に彼氏が居る感じ。羨ましいなぁ。でもファーストキスは心に決めた人っていう信念をまだ貫いているみたい。いい加減「誰か可愛い私の心を射止めてくださるステキな方はいないかしら~」ってたまに言うのがうざったいです。あの明るさは本当に羨ましい。
今年の私はどんなだったっけ。いつものように一年中アホなことやって笑っていたと思う。いたずらとかして結構姉さん達に迷惑もかけたけど、でもそれも含めて私だし、私が姉妹のツッコミ役として機能しているから毎日が楽しいわけだから全然問題ないよね。音楽面ではまた磨きが掛かったと思う。最近ではゆっくりとした心温まる感じの曲も好きになってきて、音楽の幅も広がった。
うん。今年一年、とても素晴らしい年だったかなぁ。
準備も終わって、色々と考えていたら姉さん達が到着した。そしていよいよ準備が整った。
「ハッピーバースデールナ姉、メル姉、そして私。レイラへ、これが一年間の私達です。聞いてください。ファントム・アンサンブル」
ちょっとの間だけ、幻想郷中を私達の音が覆った。
きっとその音は届いているよ、と思えました。
暖かいいい話でした。
絶対その音は届いてるはずだよ!!!!
ありがとうございます。初コメ嬉しすぎてテンションがおかしくなっています。
きっと幻想郷中の人妖もそう思ってくれていると思います。
>2様
プリバは皆大好きです! 姉妹属性に自分が弱いことを最近知りました。
>奇声を発する程度の能力
音は無限です。音楽は夢幻でございます。くっさー。