八坂様はすごく残酷なお方だ……
八坂様は私に凄く優しくしてくださるし、私のことを可愛がってくれる。
そして、八坂様自身は気づいていらっしゃらないが、
あのお方は、私の心を一瞬にして奪っていってしまう……
優しいほほ笑みを私の方へ向けながら……
でも、私は知っているんです。
八坂様は本当は私など見ていないということに……
あの方は洩矢様しか見ていないということに……
秘め心
私が八坂様に対するその思いに気づいてしまったのは、
ちょうど私が中学に入った時でした。
私にとって、その時までは八坂様はお母さんのような印象でした。
優しくて、頼りになって、心配性な所もあって……
しかし、八坂様が、中学の制服を着た私を見て、
初めて『かわいい』でなく、『綺麗になった』と言ってくださったとき、
私は自分の心に何か、嬉しい以外の全く別の感情が生まれていたことにきづきました。
その日以来、八坂様を見るたび、私は胸が自然に高鳴ることに気付きました。
クラスでも、いつも集中して授業を聞いていた私でしたが、
その時以来、暇があれば八坂様のことを考えてしまうようになっていました。
クラスの友達からも心配されました。
そこで、私は友達に思い切ってこの気持ちのことを話してみました。
すると、友達は言いました。
それは恋だと……
しかし、その言葉に私は驚きませんでした。
なんとなく自分でも分かっていたからです。
この気持ちは、恋だと……
そして、私はさらに気づいてしまったのです。
今の私の顔は、恋する乙女の顔だということに……
そんなことに、気付かない方が良かったのに……
私は、恋だと気づいてから以来、たいして執着のなかったルックスに、
凄く気を遣うようになりました。
また、八坂様の心を少しでもひくために、どんなことにもがんばりました。
家事、勉強、スポーツ、美容……何事にも一生懸命が好きな八坂様の為に、
精一杯の努力をしました。
私の努力は、きちんと形になって現れました。
八坂様にも褒められることが多くなりました。
しかし、八坂様に褒められれば褒められるほど、私の欲望は大きくなっていきました。
八坂様を本気で手に入れたいと思うようになっていきました。
しかし、私が心を射止めれるのは学校のつまらない男子ばかり……
当然私はそんな人たちとはお付き合いもしませんでした。
そして、私は中学時代を終えるころには気づいてしまいました。
自分は八坂様の為なら何でもできるということに……
高校に入る時に私は、気付いたことがありました。
八坂様が時折見せる顔が、私の顔にそっくりであるということに……
そして、その顔を見せるときはいつも決まっていました。
その顔を向ける相手は絶対に、洩矢様だったということに……
そしてその時初めて私は知りました。
八坂様は私を見てはいないということに……
八坂様は、洩矢様のことしか見ていなかったということに……
私は、しばらく茫然と立ちすくしていました。
そして、なんとも例えようのない、絶望感に襲われました……
私はその夜、久しぶりに泣きました。
恐らく、これからの人生でもう二度とあそこまで泣くことはないでしょう。
しかし、八坂様との関係を壊したくない私は、
無理に笑顔を作ってあの日までを過ごしました。
ある日、八坂様は私に言いました。
「幻想郷にいく」と。
私にとって初めていて聞く場所でしたが、八坂様の言うことに否定するつもりはないので、
私は、容易に賛成をしました。
洩矢様には許可をとっていないと聞き、私はなんとなく優越感を得ました。
私も洩矢様が嫌いなわけではありません。
しかし、憎いのです。
八坂様の愛を受けられる洩矢様が……
よくよく考えてみれば、そんな事を気にしているくだらない人間ごときが、
八坂様に愛されようと思ったのが間違いかもしれません。
しかし、どうしようもなかったのです。
私には、八坂様はすでに愛とか恋とかそういうものを超越した存在だったのですから……
ついに、私達が幻想郷へと、旅立つ日がやってきました。
その日は、一生懸命神社の掃除をして、
ついでに、近くの湖などを見て回りました。
湖を見て思い出しました。
ここは、よく八坂様と歩いたなと……
その姿を思い出していると、自然と涙がこぼれてきました。
幻想郷に行ったら帰ってこられないっと八坂様に言われていたからです。
この湖ともお別れとなると、
八坂様との思い出が一つ消えてしまうような気がしたからです。
私は、湖の畔で泣いていると、後ろから誰かに抱きしめられました。
その感触は、間違えるはずもありません。
八坂様の感触がしました。
私は、急いで涙を拭いて振り返りました。
すると、八坂様は懐かしげに湖の方を見るといいました。
「懐かしいね、この湖は 早苗が子供のころよく一緒に散歩したよね 覚えてる?」
「はい……」
「今日でここともお別れか……寂しいな……」
私は、八坂様の言葉に一度ぬぐった涙がまた溢れ出してきました。
八坂様が私との思い出を覚えていてくれて、
さらに、それとの別れを寂しがっているということに……
そんな泣きじゃくる私を見て、八坂様は優しく言いました。
「早苗も、この湖と別れるのは寂しい?」
「……はい」
「それじゃあ、こうしよう!! この湖もこの山自体全部向こうにもっていくと」
「え!?」
さすがにそれには私も驚きました。
八坂様が大胆なのは昔から変わりないですが、
そこまでのスケールで大胆なのは初めてでした。
八坂様は、混乱している私に優しく言います。
「私もさ、向こうでは早苗と一緒になにかしたって思い出が欲しいからさ」
「八坂様……」
「早苗と一緒に過ごした神社も、湖も、この山も思い出はすべてとっておきたいからね」
その言葉を聞いて、私は涙が止まりませんでした。
そんな私を気遣ってか、
任せといてといわんばかりに、胸を張る八坂様を見て、
私はつくづく思い知らされました。
本当に私は、八坂様が大好きなんだなって……
夜になって私と八坂様の二人で、向こうに行く準備をしました。
といっても、八坂様の力でいくので私にやることなんてありませんでしたが……
八坂様が、移動を開始する前に、私に言ってくれました。
「早苗 向こうは常識なんて通じる世界じゃない」
「常識……」
「常識なんかにとらわれていたら生きていけないことは確かだ、だから今から
常識を捨てなさい」
そういうと、八坂様は私の体を自分のもとに引き寄せて、
抱きしめてくれました。
その感触は、とても優しくて、暖かいもでした。
「はい!!」
私は思い切って八坂様の言葉に返事をしました。
すると、八坂様は笑顔を私に向けてくれました。
私もそれに微笑み返すと、八坂様は覚悟を決めたように言いました。
「それじゃあ、いくよ!!」
八坂様がそういうと、この神社と山と湖がだんだんと外の世界と、
切り離されていくのがわかりました。
どんどんと薄くなっていくその世界を見て、
私はふと、心の中で思いました。
これから行くのは常識の通じない世界、幻想郷……
幻想郷なら私と八坂様が結ばれることもあるんじゃないのかと……
そして、子供の時とは違う立場であの、湖を二人で歩けるのではないのかと……
そんな秘めた心を持ちながら、私、東風谷早苗はこの世界を後にしました……
諏訪子の気持ちがどうなのかで展開が変わってきますね。
ただ、神奈子様は大きなミスを犯した。常識は捨てるべきでなかったww
常識なんて捨てちまえ!きっともう神様に恋したこと自体がミラクルなんだYO!
これほど、可愛い早苗を俺は見たことがあったか…!?
諏訪子様との絡みが楽しみ