「ねぇ、『トリックスター』」
そう呼ばれた彼女は、少し考えこう応えた。
「なんでしょうか、『ラスカル』」
「あら、『ラスカル』なんて可愛らしく呼んでくれるのね。『ブレイカー』とかそのまんまでもいいのよ」
「いいえ、私は嘘を付きませんので」
「そう」
ありがと、と短く返した『ラスカル』に、『トリックスター』が続けて、
「それで『ラスカル』、御用件は」
「あら、私は『トリックスター』を呼んだのよ」
くすくす笑う『ラスカル』が、
「ゲームをしましょう、『トリックスター』」
「ゲームですか」
「そう、ゲーム」
「『トリックスター』の、ですか」
「そう、『トリックスター』の」
「さて、どうしましょう?」
「さて、どうする?」
くすくす笑う『ラスカル』に、にっこり笑って『トリックスター』が、
「それでは『ラスカル』、隠れ鬼でもしましょうか」
「どんな風に?」
「まず私は今から、『ラスカル』と隠れ鬼をする事を館の者伝えて来ます」
「うんうん」
「5分もしたら済むでしょう、私はそのまま隠れます」
「私が鬼ね」
「はい。ですから、今から10分くらいたったら私を探し始めてください」
「時間はどうする?」
「今16時ですか……では、18時までに私を捕まえてくださいな」
「おーけー、分かったわ」
「それでは、」
Game start.
『ラスカル』がまず向かったのは、スタート地点である自室から一番近い、
「こんにちは、『キュリアス』に『トラブル』」
呼ばれた2人が答える。
「あら、貴女が『ラスカル』かしら」
「ええそうよ」
「あら。それでは『ラスカル』様、御用件は?」
「ここに『トリックスター』は来たかしら?」
顔を本に向けたままの『キュリアス』が、
「来たといえば、来たわねぇ」
「どれぐらい前?」
「10分ぐらい」
「隠れには来てないのね」
「そうね」
「来てないんじゃない」
「でも来たでしょ」
「そうだけど」
『キュリアス』と話すのは、どうにもいちいち面倒臭い。
「それで『キュリアス』」
「なにかしら」
「どうして話をしてるのに、本から顔上げないの」
「現実から目を背けたいの」
「……」
『キュリアス』が顔を上げずに指差した先は、
「……『トラブル』?」
「はい」
「嗚呼もう頭痛い……」
「楽しかった?ドミノ倒し」
「楽しかったです。本棚でドミノ倒し」
これはみごとにどんがらがっしゃん
「貴女は本当に『トラブル』ね」
「いやぁそれほどでも」
「褒められてない」
「まぁ、色々頑張ってね、『キュリアス』」
「貴女も『トリックスター』探し頑張ってね、『ラスカル』」
「ええ」
言葉を交わして図書館から出る。
元々魔窟を探す気は無い。年が明ける。
さて、次はどこに行こうか、と考える。
外側からじわじわ攻めて行こうかな。
「ということで、こんにちは『ガーディアン』」
「何がということで、なのか分かりませんが、こんにちは『ラスカル』様」
「さっきも言われて思ったんだけど、『ラスカル』に『様』って変じゃない?」
「では、恐れ多いですが『ラスカル』で」
「ええ」
『ラスカル』が本日何度目かの質問。
「ここに『トリックスター』は来たかしら?」
「どうでしょう、来たかもしれません。来てないかもしれません」
「意地悪ね」
「知ってます」
笑いながら答える『ガーディアン』が、
続けて一言。
「ただ、館の敷地の外へは行っていませんよ」
「意地悪なのやら親切なのやら」
「両方なんですよ」
にこにこ笑って答える『ガーディアン』
ため息ついて『ラスカル』が、
「ふわふわしてる奴って貴女みたいなのを言うんだろうね」
「おや、今は飛ばずに立っていますが」
「そうじゃない」
こいつと居ると、なんだか調子狂うなぁ。
こっちからも狂わせてやろうか。
「まぁいいや、じゃあね『ガーディアン』」
「はい」
「あ。ところでさぁ、」
「はい?」
「結婚式はまだ?」
『ガーディアン』がおもいっきりむせた。
「なななな何の話でしょうか!?」
「またまたぁ、ご主人様にメロメロなくせにぃ」
「もう、『ラスカル』!」
顔を真っ赤に膨れっ面で怒っている。
嗚呼愉快愉快。
「あの人の前でもそうしてあげたら喜ぶと思うけど」
「うぅ……本当に困った『ラスカル』ですねぇ」
「知ってるわ」
くすくすくす、と笑う『ラスカル』。
だって私は『ラスカル』だもの。
紅い月
「こんにちは、『ディア』」
「こんにちは、『ラスカル』」
「質問いいかしら?」
「ええどうぞ」
「ここに『トリックスター』は来たかしら?」
「残念だけど、来てないわねぇ」
「……そう、ありがとう」
「いいえ」
「ねぇ、『ラスカル』」
「なぁに?」
「どうして私は『ディア』なのかしら」
「……それは貴女が『ディア』だから」
「……そう、ありがとう」
「いいえ」
「ねえ」
「ん?」
「次からは、一言頂戴ね」
「うん、分かった。……ねぇ『ディア』」
「なぁに?」
「……ありがと」
「あら、何が?」
赤い紅い月
まいったなぁ、と『ラスカル』は思う。もう紅魔館中探したはずだ。
そろそろ時間も無い。もう探してない部屋など……
「……あ……あー……?」
1つあった。
「あら、見つかってしまいましたわ」
「……何してんの?」
「……毒味?」
「自分で淹れた紅茶のか」
「ええ、今日も問題なく美味しいですわ」
「そうそれはよかった……ってそうじゃなくて」
「なんでしょう」
「なんで私の部屋に居るの」
『ラスカル』が自分の部屋の扉を開けると、
そこには紅茶を淹れる『トリックスター』
「あら、ズルではありませんわ。これも作戦です」
「私、紅魔館のドアというドア開けて回ったんだけど」
「それはご苦労様です。喉も渇いたでしょう。紅茶でも如何ですか?」
「……喉のために貰う」
『トリックスター』の向かいに座る『ラスカル』
「はぁ、なーんか気が抜けちゃったわ」
「やっぱり、ここに居るのは意外でしたか?」
「まさか獲物が自分の足下にいたなんて思わないわよ」
「ふふ、それもそうでしょうね」
「まったくだわ、参っちゃうわね」
「それではこのゲーム、私の勝ちですわ」
『トリックスター』が奇術で取り出す懐中時計。
時間はジャスト18時。
「……え、でも私見つけたよ」
「ふふ、『ラスカル』、私は何をしようと言いましたか」
「何って、『隠れ鬼』をしようって……」
あ。
「ええ、私はまだ鬼に触られていません」
「あー……しまった、乗せられたぁ」
「まだまだですわね、『ラスカル』も」
「適わないなぁ、『トリックスター』には」
2人は顔に、悪戯的な笑みを浮かべて、
「結構楽しかったわ、『咲夜』」
「ありがとう、『フラン』」
「そういや、小悪魔が本棚でドミノ倒ししてたけど」
「私が教えた」
「やっぱり」
「美鈴が最近急に赤くなってわたわたしだすのは」
「私が煽った」
「やっぱり」
2人はそろって、くすくす笑って、
「やめられないわね」
「やめられないわね」
Do you like "trick"?
そう呼ばれた彼女は、少し考えこう応えた。
「なんでしょうか、『ラスカル』」
「あら、『ラスカル』なんて可愛らしく呼んでくれるのね。『ブレイカー』とかそのまんまでもいいのよ」
「いいえ、私は嘘を付きませんので」
「そう」
ありがと、と短く返した『ラスカル』に、『トリックスター』が続けて、
「それで『ラスカル』、御用件は」
「あら、私は『トリックスター』を呼んだのよ」
くすくす笑う『ラスカル』が、
「ゲームをしましょう、『トリックスター』」
「ゲームですか」
「そう、ゲーム」
「『トリックスター』の、ですか」
「そう、『トリックスター』の」
「さて、どうしましょう?」
「さて、どうする?」
くすくす笑う『ラスカル』に、にっこり笑って『トリックスター』が、
「それでは『ラスカル』、隠れ鬼でもしましょうか」
「どんな風に?」
「まず私は今から、『ラスカル』と隠れ鬼をする事を館の者伝えて来ます」
「うんうん」
「5分もしたら済むでしょう、私はそのまま隠れます」
「私が鬼ね」
「はい。ですから、今から10分くらいたったら私を探し始めてください」
「時間はどうする?」
「今16時ですか……では、18時までに私を捕まえてくださいな」
「おーけー、分かったわ」
「それでは、」
Game start.
『ラスカル』がまず向かったのは、スタート地点である自室から一番近い、
「こんにちは、『キュリアス』に『トラブル』」
呼ばれた2人が答える。
「あら、貴女が『ラスカル』かしら」
「ええそうよ」
「あら。それでは『ラスカル』様、御用件は?」
「ここに『トリックスター』は来たかしら?」
顔を本に向けたままの『キュリアス』が、
「来たといえば、来たわねぇ」
「どれぐらい前?」
「10分ぐらい」
「隠れには来てないのね」
「そうね」
「来てないんじゃない」
「でも来たでしょ」
「そうだけど」
『キュリアス』と話すのは、どうにもいちいち面倒臭い。
「それで『キュリアス』」
「なにかしら」
「どうして話をしてるのに、本から顔上げないの」
「現実から目を背けたいの」
「……」
『キュリアス』が顔を上げずに指差した先は、
「……『トラブル』?」
「はい」
「嗚呼もう頭痛い……」
「楽しかった?ドミノ倒し」
「楽しかったです。本棚でドミノ倒し」
これはみごとにどんがらがっしゃん
「貴女は本当に『トラブル』ね」
「いやぁそれほどでも」
「褒められてない」
「まぁ、色々頑張ってね、『キュリアス』」
「貴女も『トリックスター』探し頑張ってね、『ラスカル』」
「ええ」
言葉を交わして図書館から出る。
元々魔窟を探す気は無い。年が明ける。
さて、次はどこに行こうか、と考える。
外側からじわじわ攻めて行こうかな。
「ということで、こんにちは『ガーディアン』」
「何がということで、なのか分かりませんが、こんにちは『ラスカル』様」
「さっきも言われて思ったんだけど、『ラスカル』に『様』って変じゃない?」
「では、恐れ多いですが『ラスカル』で」
「ええ」
『ラスカル』が本日何度目かの質問。
「ここに『トリックスター』は来たかしら?」
「どうでしょう、来たかもしれません。来てないかもしれません」
「意地悪ね」
「知ってます」
笑いながら答える『ガーディアン』が、
続けて一言。
「ただ、館の敷地の外へは行っていませんよ」
「意地悪なのやら親切なのやら」
「両方なんですよ」
にこにこ笑って答える『ガーディアン』
ため息ついて『ラスカル』が、
「ふわふわしてる奴って貴女みたいなのを言うんだろうね」
「おや、今は飛ばずに立っていますが」
「そうじゃない」
こいつと居ると、なんだか調子狂うなぁ。
こっちからも狂わせてやろうか。
「まぁいいや、じゃあね『ガーディアン』」
「はい」
「あ。ところでさぁ、」
「はい?」
「結婚式はまだ?」
『ガーディアン』がおもいっきりむせた。
「なななな何の話でしょうか!?」
「またまたぁ、ご主人様にメロメロなくせにぃ」
「もう、『ラスカル』!」
顔を真っ赤に膨れっ面で怒っている。
嗚呼愉快愉快。
「あの人の前でもそうしてあげたら喜ぶと思うけど」
「うぅ……本当に困った『ラスカル』ですねぇ」
「知ってるわ」
くすくすくす、と笑う『ラスカル』。
だって私は『ラスカル』だもの。
紅い月
「こんにちは、『ディア』」
「こんにちは、『ラスカル』」
「質問いいかしら?」
「ええどうぞ」
「ここに『トリックスター』は来たかしら?」
「残念だけど、来てないわねぇ」
「……そう、ありがとう」
「いいえ」
「ねぇ、『ラスカル』」
「なぁに?」
「どうして私は『ディア』なのかしら」
「……それは貴女が『ディア』だから」
「……そう、ありがとう」
「いいえ」
「ねえ」
「ん?」
「次からは、一言頂戴ね」
「うん、分かった。……ねぇ『ディア』」
「なぁに?」
「……ありがと」
「あら、何が?」
赤い紅い月
まいったなぁ、と『ラスカル』は思う。もう紅魔館中探したはずだ。
そろそろ時間も無い。もう探してない部屋など……
「……あ……あー……?」
1つあった。
「あら、見つかってしまいましたわ」
「……何してんの?」
「……毒味?」
「自分で淹れた紅茶のか」
「ええ、今日も問題なく美味しいですわ」
「そうそれはよかった……ってそうじゃなくて」
「なんでしょう」
「なんで私の部屋に居るの」
『ラスカル』が自分の部屋の扉を開けると、
そこには紅茶を淹れる『トリックスター』
「あら、ズルではありませんわ。これも作戦です」
「私、紅魔館のドアというドア開けて回ったんだけど」
「それはご苦労様です。喉も渇いたでしょう。紅茶でも如何ですか?」
「……喉のために貰う」
『トリックスター』の向かいに座る『ラスカル』
「はぁ、なーんか気が抜けちゃったわ」
「やっぱり、ここに居るのは意外でしたか?」
「まさか獲物が自分の足下にいたなんて思わないわよ」
「ふふ、それもそうでしょうね」
「まったくだわ、参っちゃうわね」
「それではこのゲーム、私の勝ちですわ」
『トリックスター』が奇術で取り出す懐中時計。
時間はジャスト18時。
「……え、でも私見つけたよ」
「ふふ、『ラスカル』、私は何をしようと言いましたか」
「何って、『隠れ鬼』をしようって……」
あ。
「ええ、私はまだ鬼に触られていません」
「あー……しまった、乗せられたぁ」
「まだまだですわね、『ラスカル』も」
「適わないなぁ、『トリックスター』には」
2人は顔に、悪戯的な笑みを浮かべて、
「結構楽しかったわ、『咲夜』」
「ありがとう、『フラン』」
「そういや、小悪魔が本棚でドミノ倒ししてたけど」
「私が教えた」
「やっぱり」
「美鈴が最近急に赤くなってわたわたしだすのは」
「私が煽った」
「やっぱり」
2人はそろって、くすくす笑って、
「やめられないわね」
「やめられないわね」
Do you like "trick"?
誇りをくれたのがディアなら、奪ったのもディアなのだ!
あなたの紅魔館は皆瀟洒で素敵です
でもこういう雰囲気好きです
ただ『頭で理解するんじゃない!!雰囲気を読み取るんだ!!』……と勉強になりました。
フランはお姉ちゃんっ子だったんだよ…!
今回あとがきの所がアレなのでこちらから失礼します
そしてネタが分からないの声、分かりづらくて申し訳ありません……orz
ここで少し呼び名について補足しておきます
トリックスターとはtrickster、奇術師です
ラスカルはrascal、悪戯っ子ですね
キュリアスはcurious、好奇心が強いとかそんな意味です
トラブルはtrouble、厄介者だとかその他もろもろ
ガーディアンはguardian、守護者と一番捻りがないです
ディアはdear、愛しい人、となります
そして、トリックスターにはもう一つ意味が……といった感じです
後はただ、遊び好き達が遊んでいる話になります